既存事業とは違う 計画立案の9カ条

今回はスタートアップと既存事業のマネジメントの違いについて論じてみたい。よく企業内の新規事業はスタートアップとは事情が違うと思われる方もいるが、事業の立ち上げ方の基本は同じだと捉えた方が良いと思う。むしろ既存事業の重力に負けて勢いが鈍ってしまいがちなため、よりスタートアップ風を意識した方が良いでしょう。

マネジメントと言えば、PDCAサイクルを真っ先に思い浮かべる方も多いのではないだろうか。Plan-Do-Check-Actの頭文字をとったこのサイクルはいろいろな場面で応用できる。

この一連のサイクルの中では無論Do-実行ステップが重要だ。業務を遂行しなくては何も起きない。だが、マネジメントの役割はその遂行される業務の目標や手段を有意義にすることである。あさっての方向でチームがいくら努力しても全く報われないからだ。マネジメントの役割は意味のあるDo-実行を生むことであり、PDCAサイクルの中ではPlan, Check, Actに集約されている。

既にご存知の方も多いとは思うが、PDCAサイクルについておさらいしてみよう。
まずPlan-計画。優れたマネジメントは優れた計画から始まる。この計画に基づきメンバーは準備をし、結果を予測する。計画が優れていれば何をどのように行うかという具体的なイメージをチームが持つことができ、チームの方向性も定まる。そのチームの戦略と言っても良いだろう。
つぎはDo-実行だ。各メンバーは計画に従って業務を遂行する。
実行結果を確認するのがCheck-評価だ。実行した結果を計画と比較し、何ができたのか、何か不十分だったのかを分析する。ここでも元の計画が曖昧だと、検証ができないことになる。
評価した結果の対策がAct-改善。前段階の検証結果をもとに改善策を打つ。
この一連のサイクルは一度ではなく繰り返し回されることで、継続的な成長を生むと同時に組織は学習することができる。すなわち、P-D-C-A-P-D-C-A-P-D-C-A ・・・と続く。
マネジメントとは言うものの、既存事業では、PDCAサイクルを現場が主体となって回すことは可能だし、奨励されている。これが「カイゼン」や小集団活動で代表されるようなチームによるマネジメントである。非常に具体的で着実な改善改良を繰り返すことで、業務の品質や効率を高めることができる。

スタートアップの特殊事情

スタートアップではそうはいかないことが多い。特にPlan-計画ではスタートアップと既存事業の違いが顕著だ。既存事業での計画は現場で行われていることの延長線上にあり、パワーポイントやエクセルに書かれた計画はリアリティを持って伝わる。今行われていることをベースに計画はロジカルに組て立てられる。そうやってボトムアップに積み上げられた予算計画がそのまま全社の計画になる企業も多い。計画は数字に強い計量屋さんが行うのが役割分担になるのはそのためだ。
一方、スタートアップは、現場の改善ではない。仕事の現場に計画の答えはないのだ。計画を無理やり立てたとしてもロジックもリアリティもない計画を実行するという大きな違いである。ではどうするか?
スタートアップの計画立案のポイントを9つ挙げる。
  1. クリエイティブな人が描く
    数字が強いから、ロジカルだから、といった理由は役に立たない。
  2. 計画の前提となる北極星を描く
    北極星には、計画では表しきれないことを遠い目標として置く。未熟な計画を信じたくなるような未来像にしたい。
  3. 計画とは予想でないことを十分に意識する
    既存事業では客観性が求められ、計画と予想はほぼ同義語になってしまっている。スタートアップでは予想というより意志が詰まっているものとしてとらえるべきだろう。
  4. 誰のための計画なのかを意識して描く
    スタートアップの計画は、投資家向け(社内の新規事業であれば経営層)のために必要とされることも多い。この場合は、魅力ある事業案として「ウリ」を意識した内容にする必要がある。メンバーの行動指針のための計画であるなら、彼らの力量に合わせた粒度で描きたい。
  5. 学習のポイントを書く
    新しい事業はやりながら学んでいくプロセスが必須である。直接ビジネスにならなくても、将来のために学べる活動については計画しておく。
  6. 重要な仮説は早めに検証する
    やりやすいところから着手する計画にしがちだが、早めに重要な仮説は検証しよう。見直すなら早い方が傷は浅い。
  7. 実現性は「こうすれば実現する」と言い換える
    一般の計画には「実現性」というハードルがある。しかし、新しいことをやる以上、ここの根拠は比較的弱くなりがちだ。上の項目にも似通ってくるが、実現性を客観的に証明することはあきらめて、実現するためのハードルを説明する方がよい。
  8. 自分しか知らないことを書く
    既存事業の計画には客観性が求められる。しかし、新規事業の場合はあなたにしかできない理由が求められる。また、自分だけの情報は他者から論破されることを最後まで守ってくれる。
  9. 計画は仮の計画であることを強く強く強調する
    多くの先人達が言っているように、計画は何度も見直される。新しい領域のビジネスを始めることで得られる情報は、実行する前に得られる情報の何倍も多い。始めてから見直さないほうが変だろう。
Written by Shingo Tsuda on 2013-07-20