仏作って魂入れず

新規事業開発部」「イノベーションセンター」「事業共創室」「◯◯イノベーション室」 ・・・このような名前の部署が最近増えています。

そして、そのような部署から相談が増えています。

よくある相談内容は、このようなもの:肝入りで部署ができて1年経ったのですが、成果があがっておらず、焦っています。この先どうしたらいいか、相談に乗って欲しい・・・ 

話を聞いてみると

  • 新規事業の組織をつくった
  • 新しいプロセスを定義した
  • 定期的なレビューがあり、報告する内容がなくなった

といったところ。

仏作って魂入れず

担当者にしてみれば、かなり切実な問題です。
なにせ新しい組織の責任者に就任したばかりで、初めてのことを任され、結果を期待されている訳ですから。
しかも、最初のプロセス設計に予算の大半を費やしていて、予算もほとんど残っていないという事態です。
なので、相談者もかなりバツが悪そうになんとかしてくれないか、という相談の仕方なのでこちらも放っておけません。

出来上がったプロセス、つまり仕組みが機能していることを証明するため、何か実プロジェクトで成果を出すことが求められます。一言で言うと、プロジェクトの「火消し」です。正確に言うと、トラブルが増えて炎上しているわけではなく、むしろトラブルすら生じていない仮死状態からの「蘇生」と言った方が正しいかもしれません。
私たちはメンバーと一緒に、新規事業プロジェクトの立案時に想定したことを聞き出し、重要かつ実現性の難しいものを問い直すことから始めます。

数回の打ち合わせである程度はブラッシュアップできたとしても、市場での検証にはかないません。仮説をベースに、市場検証を通じてビジネスプランの確度を高めるのです。この進め方については「リーンスタートアップ」や「ザ・ファーストマイル」にも書かれていますので、これ以上はここでは割愛します。

今回は、「なぜこうなったのか?」について考えてみたいと思います。

もちろん、その問題の原因は、時間とお金をつぎ込んでつくったプロセスにあります。

ですが、間違ったプロセスを設計してしまったわけではありません。理論的に間違っていない教科書からコピーされているので、プロセスは間違いようがありません。

プロセスの中身ではなく、意味

書かれたそのプロセスを読んだだけでは、その通りに「人はできない」ということなのです。人はそのプロセスの意味を、長年染み付いた従来の「仕事のやり方」に照らし合わせて理解してしまいます。書いてあることはイノベーティブでも、やっていることは昔のまま、といった感じでしょうか。とにかく、「惜しい・・・」のです。キモの部分がもやもやっとしていて、具体性が欠けていたり、誤魔化せるようになっていたりします。

例えば、「アイデア審査」というレビュー会がプロセス上規定されているとしましょう。
すると、レビューワーは「アイデア」として審査しないといけませんが、姿も形もないアイデアを評価したことなどある人は一般にいないので、混乱が起きます。その結果、既存事業のステージゲートで審査していたのと同じような観点で、同じような基準で、「切って」いくことになります。モノの生産であれば、歩留まりが悪くなったとしても品質が上がるのですが、アイデアの場合はかえって悪くなります。なぜなら、切られるのは人であり、モチベーションであり、アイデアだからです。

レビューワだけではありません。例えば、「顧客インタビュー」をして「インサイトを得る」とプロセスに定義されていても

  • 売る前から顧客を定めることができない
  • 顧客を定めても会いに行けない
  • インタビューをしたことがない
  • 聞いた言葉がインサイトにつながらない
  • 何をもってインサイトと呼ぶかわからない 

と、プロセスを初めて見た人にはその通りにはできません。

「プロセス」はしばしば「仕組み」という言い方をされるように、無機質で機械的なものだと認識されてしまう傾向にありますが、人が生かしてこそのプロセスです。あとから「蘇生」させるよりは「生きた状態」でつくりたいものです。

4コママンガは勢川びき(瀬川秀樹)さん作

Written by Shingo Tsuda on 2016-09-18