先日、ジョブ調査に関するセミナーを行なったときのことです。参加者から、とっても、とっても鋭い質問が来ました。
その質問はこんな形でした。

ジョブストーリーをつくる上で、ペルソナ的な情報があるのはナゼですか?

詳しく話を聞いてみると、ペルソナがあまり役に立たなかったために、ジョブ理論(Jobs to Be Done)に興味を持ったにもかかわらず、ジョブ調査の結果としてペルソナがあることに違和感があったというのです。
とっても鋭い指摘で、私も深く唸ってしまいました。
というのも、顧客のジョブがニーズを生んでいるのであって、顧客の年齢や年収などのスペックではないからです。ペルソナを描くことで、年齢や性別、住んでいる場所や家族構成など、顧客のことが生き生きと眼に浮かぶことを目指すのですが、仮にどんなにリアルに描いたとしても、どんな消費をするか、どんなものを欲しがっているのかは、わかりません。
顧客のデモグラを把握すると、顧客のことを分かった気になるという落とし穴があります。事細かな情報を得て、人物のことを分かった気になるのですが、では何が欲しいのかが分かったかというと、そうでもない。なので、セミナーに参加してくれたといいます。
この問いによって、それまでぼんやりと感じていたことを言語化することができたので、ブログでもご紹介します。


ペルソナを描く手法が用いられているのは、「顧客像を明確に」するためです。
しかし、その弱点も同時に「顧客像しか」明確にしないことです。
ではなぜ、ペルソナをジョブストーリーにいれるのか?
第一の理由は、顧客を分かった気になることが大切だからです。どのような手法を使おうとも、他人である顧客を完全に理解することは不可能です。顧客理解という「仮説」を立てる作業を適度に終えたら、検証しなくてはいけません。いい意味で「分かった気」、つまり「仮説がある状態」にして次に進めることが大切なのです。
第二の理由は、Product-Market-Fitに到達し、スケールする時には、デモグラが役に立つからです。ジョブの特定ができていて、Problem-Solution-Fitに到達しているのなら、次は同じジョブを抱えている他の顧客候補に大量に当たりたくなります。その際、デモグラについてのイメージがあると、顧客獲得の効率が高まります。住んでいる場所、普段行くところ、普段見るサイト、使うアプリ等々のペルソナ情報がこのときに役に立ちます。顧客が多く存在するデモグラに対して告知や広告をすることが可能になります。
その顧客の年齢や性別、居住地が消費者としての行動を決めている訳ではありません。人が何を欲しがっているかを理解するには、あくまでも「ジョブ」をとらえなければいけません。つまり、商品開発する前や、マーケティングメッセージを作るにはジョブを把握することが効果的です。ペルソナがあると、そうしてつくった商品やメッセージを、なるべく多くの人に届けることができるのです。


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