「やらない」をやらない

「マシュマロ・チャレンジ」をご存知でしょうか?

photo from flickr https://www.flickr.com/photos/aalto-cs/

乾麺のパスタと、紐、テープを組み合わせ、てっぺんにマシュマロのついたなるべく高いタワーをつくるゲームです。

4人のチームで協力してつくるのですが、これが案外難しい。。。

 

このゲームは世界中で行われていて、世界記録もあります。色々なコンテストが行われており、成績の傾向があることがわかっています。例えば、建築を学んだ建築家たちの成績は、もちろんとても良いです。逆に、成績が悪いのはとても頭の良い、MBA卒業生。彼らの成績は平均的なタワーに届きません。

そして、平均を上回るのは小学生のチームです。

 

photo from flickr https://www.flickr.com/photos/wfryer/11849237403

小学生を含め、成績の良いチームは、タワーを立てる前に数多くの「実験」をしているという共通点がありました。逆に、成績の悪いチームは「議論」に時間をかけてしまうという傾向があります。議論と計画に時間を使いすぎて、いざパスタを手に計画を実行しようとすると… ポキッっと、終わってしまうのです。

ほとんどの人にとって、パスタで構造物をつくることは初めてのことです。にも関わらず、「やってみる」前に議論と計画ばかりをやってしまうことで、結局本物に取り組むことが疎かになってしまいます。

イノベーションも同じです。

面白いアイデアが生まれたとき、チャンスが回ってきたとき、ついつい「議論」してしまいがちです。こういう議論の結論は往々にして「見送り」「先送り」「さらなる検討」などとなってしまいます。このような結論になってしまうのは、ポストイットを使っていないから、とか会議室が古いから、などといった議論の仕方の問題ではありません。参加者の誰もが答えを持たない問いだからです。クリステンセンは企業が「合理的な」判断をしてイノベーションの機会を潰している、と『イノベーションのジレンマ』で語りました。冷静な分析をすればするほど、「やらない」をやってしまうのです。

イノベーションマネジメントとは、この「やらない」をやらないことのほかありません。タネを育てるには、水や養分も必要ですが、除草剤も取り除かないといけませんが、「やらない」を生んでいる仕組みは議論以外にも数多く存在しています。しかも、新規事業には有害な除草剤も、既存事業にとっては有益なことも多いので、きちんと畑を分ける必要があります。

企業内で新しいビジネスが生まれなかったり、体質が変わらない理由はしっかりと存在しています。その理由を取り除いてから進めたいところです。

Written by Shingo Tsuda on 2017-06-12

アイドルもビジネスモデルイノベーション

 

「フリー素材アイドル」のMika+Rikaはビジネスモデルイノベーターなら応援したくなる双子ユニットです。
2014年から活動を開始した2人は、「イメージ」を売るアイドルでありながら写真の著作権と肖像権を「フリー」にしています。フリーにすることで、知名度・認知度を高め他の収益を得るというビジネスモデルは、CMタレント業界のフリーミアムとでも呼ぶべきアイデアを採用し活動しています。
最近ではYoutube等でライブやMVの動画をアップし、無料で視聴できるようにしているミュージシャンが多いですが、Mika+Rikaはさらに画像を編集可能にしてバナー広告やウェブサイトに使用可能にしています。
むしろユーザーが「看板」として使う素材になることに配慮して、画像のように「白看板」を持った画像を無料で提供しています。

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こちらの写真は、実際に書店で販売されていたMika+Rikaの写真集です。販売といっても価格はゼロ円!限定発売を行なっていた渋谷TSUTAYAのレジでも店員がわざわざ「0円」を打ち込み、レシートも発行する徹底ぶりでした。写真集といいながら、POPに使えそうなポストカードサイズの写真が何種類か同封されていたり、まさに「広告として使ってください」という素材がたくさん含まれています。とことんフリーなやり方は、ユニークさや奇抜さばかりが目につくのですが、実はじわじわと効果をあげているようです。というのも、ソニーXPeriaのテレビCMに採用されるなど、知る人ぞ知る存在からメジャーな商品のブランディングに使われるタレントになりつつあるからです。

Mika+Rikaを初めて見たとき、その美貌に目を惹かれたのではありません(大変失礼ながら)。彼女たちが親しみやすく、好感度を持たれるべきキャラクターであることを、見た目や言葉だけでなく、「フリー」であることからも発信されていたからです。

そしてCMキャラクターとして登場する有名人が提供しているのは、まさに「誰もが知っているあの人が使っている」というイメージであることを気づかせてくれました。

つい私たちは、商品そのものだけで差別化しようとしますが、「収益モデル」も含めて工夫することがとても大事なんですよね。Mika+Rikaさんがもっと有名になったら、そんなビジネスモデルイノベーションをテレビで語る美人双子評論家になるかもしれませんね。

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Written by Shingo Tsuda on 2017-05-10

「 やらされ感」が働き方改革のKPI

働き方改革という言葉が一人歩き、いや、迷走しているように感じます。
色々な人がその違和感を表明しているけれど、おそらく根底のズレは「働き方」を測る指標として「労働時間」を取り上げている点にあるのではないでしょうか。長く働くべきだとか、短時間で仕事をしたいだとか。それって果たして「働き方」と関係するのか疑問をもってしまいました。
働き方改革をして労働時間を短くする、とか、働き方改革によって休暇取得を増やすとか、生産性を高めるとか…
そうなると、長時間労働は悪なのか、はたまた誰もが一度は経験する修行なのか、意見が激しく分かれてしまいます。
労働を強いているのが経営者であることもあれば、自らやりたくて働いていることもしばしば見受けるわけです。どちらでもなく、一人モーレツな人が周りにいると、暗黙に「強いて」いるような状況があることもわかります。なので、議論は平行線です。
視点を時間ではなく、「やらされていると感じる」かどうか?においてみてはどうかと思うのです。
ポイントは2つあって、1つは「やっている量」ではなく「主体性」。
もう1つは、きっかけはどうであれ、本人がどう感じるか。
そもそも「やらされている」と感じれば、人の生産性はガタ落ちするし、そもそも最低限の結果のために最大限のやらない理由を考える動機が生まれます。
また、きっかけとして上司や経営者から仕事を指示されたとしても、やっているうちに楽しくなったりすることもしばしばあるので、「本人がどう感じるか」が大切だと思うのです。
例えば、優秀なエンジニアがいたとします。とても有能なので、仕事をたくさん任され、評価も高いので次第に「マネージャーやって」という雰囲気になります。ここで、本人が「人の管理なんてやりたくない」という「優秀なエンジニアがマネージャーをやらされる」ことって組織よく起きるあるあるですよね。
会社として、優秀なエンジニアが組織をリードすることはメリットもたくさんあります。本人としても、やってみてところ新たな才能に気づくということもあるかもしれません。
けれど、そんな見込みで昇進させて「やらされ」続けているマネージャーがいたら、部下たちはたまったものではありません。本人が「やらされている」と感じている以上、スキルアップすることも、おそらくないでしょう。身につくスキルといえば、「いかに汗をかかずに最低限のことをやるか」ということに意識がいくことになるはずです。
やってみる前は毛嫌いしていた仕事を好きになったという経験も私にはあります。そういう時は、逆に気づきたくさんあって、学びも大きく感じます。なので、決して「全員の意見をもれなく聞いてから仕事のアサインを」といったような非現実的な理想を言っているのではなく、「やらされ感」を減らすような工夫はした方がいいのではないか、と思うのです。
とにかく、働き方の改革をするなら、量ではなく質的なKPIがあった方が何かと好都合なので、「やらされ感指数」を取ってみてはどうでしょうか。「やらされ感」がない組織は強いと思いませんか?

Written by Shingo Tsuda on 2017-04-26

ビジネスモデルキャンバス再考

ビジネスモデルキャンバス最高!

絵画用のキャンバスって普通は真っ白で、どこから書いてもよかったりしますが、ビジネスモデルキャンバス(BMC)には9個の枠があります。
それまで新規事業の構想を真っ白な紙に書いていた時代と比べ、BMCはとても魅力的に映るのではないでしょうか。

このBMCを初めて見た人の典型的なリアクションには、以下のようなものがあります。

  1. 分かる。もう頭の中で近いことをやってたけど、人に伝える際に整理されていいかも。 
  2. 納得。なるほど、今までやってきたことはいくつかの箱の中のことだけだったから、失敗したんだ。これからは全体像をとらえて事業開発しないと。 
  3. 手法化。これが新規事業をやる方法論か。勉強して理解しないと。 
  4. 分析。これで自社ビジネスや競合を分析したら面白いかも。理論武装に役立ちそうだ。 
  5. 無関心。こんなものでビジネスが立ち上がるなら誰も苦労しない。オレには関係ない。 

このように最初の反応は様々ですが、いざ初めて使ってみたときの反応はほぼ同じです。
「箱を埋められない…」
なんとかなるさ、とノリの良い人にとっては、検討している複数の可能性から1つだけを言葉にして書き込むのに抵抗を感じます。また逆に、ほとんどの人はビジネス全体のことなんて考えたことがないので、穴だらけで全部の枠を埋められないという事態が生じます。

なぜ、ここまで期待が膨らんだのか?

新しいツールが登場すると、いつでも期待されるものですがBMCには期待が膨らむ要素がいくつもあります。

  • 「ビジネスモデル」という抽象的な概念を、目に見える「箱」で表現している。
  • 日本企業が自信を持つ「技術」とは一線を画す切り口がある。
  • 9つの箱の意味や内容について侃侃諤諤と会議室で議論できる。
  • 「シリコンバレー」ブランドがある。
つまり、BMCについて初めて話を聞いた人は、ぼんやりと考えていた「ビジネスモデル」に輪郭が生まれ、これまで苦労していた技術の商業化への期待を持ち、部下を集めて会議を召集しやすく、キャッチーなツールだと感じるのではないかと思うのです。

ビジネスモデルキャンバス再考

裏を返すと、「ビジネスモデル」についてぼんやりと考えていたり、技術の限界に薄々気づいていたりという程度の認識で、しかも会議室でのディスカッションとなってはフレームワークがいくら新しくても新しいものが出てくることはありません。すでに言語化できたアイデアを共通言語化するツールとしては、BMCは有効です。抽象的な概念が可視化されますし、ビジネスとして重要な部分にフォーカスが当たります。つまりBMCは、ビジネスアイデアのメディアではあるものの、決して新規事業が生まれる打ち出の小づちではありません。考えてみると、「共通言語化」する前に「言語化」しないといけないんですよね。
もし新規事業を生み出したいのであれば、ワークショップでみんなで書くのではなく、まずは黙々と言葉にして書いてみてはどうでしょう。


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Written by Shingo Tsuda on 2017-03-29

CVCの報酬はどうすればいい?



XEROXのパロアルト研究所(PARC)は、初期のマウスとGUIを発明しておきながら商業化に失敗した代表例とされています。PARCで当時開発されていた試作品を見たスティーブ・ジョブズが、そのアイデアをMacintoshに入れて大ヒットした伝説はあまりにも有名です。

PARCはその1件で評判を落としていますが、レーザープリンターの開発では大きな成功をしており、必ずしも失敗ばかりとは言えないようです。

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Apple Computerにアイデアを盗まれてパーソナルコンピューターの覇者となり得るチャンスを逃したことは、相当悔しかったのでしょう。XEROXの経営陣は、この教訓からXTVというCVCを立ち上げることにしました。この時のXEROXは相当懲りたと見て、本気の組織設計をします。独断で個人が200万ドルまでを投資する権限を与えたり、他のVCとの協調投資を行ったり、独立した組織にします。さらに、成功していたVCファームに倣って、個人への報酬体系も見直し、リスクテイクを奨励しました。その結果、XTVは大きな成功を収めます。8年間で2.2億ドルという他のVCを超える利益をあげる組織になりました。


しかし、そこまでの成功をしていながらXEROXはXTVをやめてしまいます。

その理由は「やっかみ」です。そんなこと?!かのシリコンバレーでもあるんですね。


投資先のベンチャーが成功すると、もちろんのことながらXEROXよりもチヤホヤされます。また、投資をしたXTVの幹部は「キャリー」というベンチャー投資から得られる成功報酬が3000万ドルを超え、XEROX本体の経営者よりも稼ぐことになってしまいました。(当然ながら)XTVの投資先はXEROXの隣接事業なので、「XEROXが作り上げてきた基盤を使って成長した」という理屈もわかりますが、スピード感、独立性、リスクテイクがなければ何も起きなかった可能性も十分あります。では、どうあるべきなのでしょうか?


まず、考えないといけないのは、スピード感、独立性、リスクテイク、といった特性は大企業の仕組みのままでは出すことができないという点です。仕組みの問題ですらなく、むしろ価値観かもしれません。そう考えると、大企業の問題は「現状維持を目指すのか」「成長を目指すのか」といった価値観の共有されていないことにあるのではないでしょうか。意外に感じられるかもしれませんが、イノベーション戦略を立てるときには、人の感情面に対するケアも考慮します。

Written by Shingo Tsuda on 2017-03-15