忖度というイノベーション・キラー

忖度が悪いという雰囲気は、日本が良くなっている兆しかもしれませんよ

先週、知人が言った言葉にハッとした。

確かに、以前は「空気読めよ ( ̄∩ ̄#」とばかりに、それまでの「雰囲気」や「流れ」、つまり前例と習慣に従った行動がよしとされた。

しかし、今は上司に忖度することは「悪」とまではいかないものの、格好悪いことだという認識が広まってきているのではないだろうか?

 

上司や関係部署に忖度すると、間違いなくイノベーションは起きない。

組織は既存事業を行うために設計されているからだ。各部署は、決まった事業を営むためのルールやプロセスが敷かれており、適したスキルを持つ人たちが集まっている。したがって、これらのルールやプロセスに従い、スキルを最大限に活かそうとすると、今やっていることからはさほど変わらないことしかできない。

The Window of Opportunity

「だから新規事業開発室を立ち上げた」とか「だから新規事業立ち上げプロセスを決めた」といった企業も増えているのは事実だ。それでもなお、「忖度」はイノベーション・キラーである。

そう断言する理由はこうである。

  • 想定可能な新規事業は過去にトライして失敗しているか、目新しさがなくて社内でのサポートが得られない。
  • 想定外の新規事業は、想定されたプロセスやルール、価値観を逸脱している。

クリステンセンも『イノベーションのジレンマ』で次のように語る。「組織の能力は無能力の決定要因である」。つまり、組織にとって特定のビジネスが得意であればあるほど、それ以外のビジネスは不得手になる。

忖度をしていると、ビジネスチャンスというのは簡単に逃げてしまう。Window of Opportunity、つまりビジネスチャンスの“旬”は本当に短い。私自身、早すぎて失敗したこともあるが、遅すぎて失敗した時の方が痛いし、引きずってしまう。

忖度ではなく、何をするか?

では忖度をせずに、どうすれば良いのだろうか。これには2つのアプローチがあると私は考えている。
一つは外堀アプローチである。外堀を埋め、「やらない理由」を排除していくアプローチである。ちょっとずつ外側から突破するこのやり方には忍耐強さが求められ、時間のかかる方法であるため、イノベーティブな匂いはしない。やっている本人からしてみれば、大企業の身動きの悪さとイノベーティブなアイデアを同時に目の当たりにせざるを得ないという精神的な辛さがある。この強烈な対比は、スタートアップと組もうとする大企業担当者の最大のフラストレーションと同じだ。ところが粘り強くこの外堀アプローチを続けていると、社内外に予想外の応援者がひゅっと現れることもある。
一般に企業内アントレプレナーはこのアプローチを取っているのではないだろうか。

外堀アプローチに加え、もう一つのアプローチである外圧アプローチを加えるのはとても有効である。つまり、顧客からの外圧を使うのだ。社内からの提案だけでは突破できないことも、「その新しいサービスが欲しい」といった顧客の生声とともに届けるのである。顧客開発を先回りして行うというリーンスタートアップな方法とも言えるが、単にビジネスリスクを下げているだけでなく、社内コンセンサスを得られるという点で効果的な手法となる。顧客だけでなく、シーズ思考になっている企業内では、強力なパートナーのバックアップも意味を持つことが多い。

まだまだ時間はかかるかもしれない。でも、既存の枠に忖度するのではなく、チャレンジする風潮はとにかく歓迎する。

Written by Shingo Tsuda on 2017-06-28