ジョブ理論、ジョブの発見と表現のコツ

昨年、2017年の夏に「ジョブ理論」が出版されてから1年以上経ちました。
ジョブ(Jobs to be done)という言葉の認知度はジワジワと上がり、新規事業開発だけでなく、マーケティング、営業とジョブが語られる文脈も広がっています。我々は独自に開発した「JOBSメソッド」という形でジョブ理論を公開セミナー、企業研修、メンタリングの場で伝えてきました。セッションの参加者も3,000人を超え、さらに参加者の伸びは加速しています。

伝え方そのものも大分見直し、トレーニングセッションのクオリティも大分上がってきたと自負していますが、受講者が考え方を理解しても、理論を使いこなすには、訓練が必要です。特にジョブ理論はイノベーションを起こす方法とも繋がっているので、これまでの思考の仕方を変える必要があります。これこそが、ジョブ理論の価値であり、逆に実践する際の難しさとなっています。

ジョブ理論を実践する際の典型的なハードルが二つあります。一つはジョブを発見する際のハードル。もう一つは発見したジョブを表現する際のハードル。実践にてこずっている方へ、ハードルの超え方のコツをお伝えします。

 

ジョブの発見のコツ

ジョブは人間が特定の状況下でやりたい事/やらなければならない事。ソリューションはその事を実現したり/解決したりする。つまり、ジョブはソリューションに関係なく存在しているのですが、どうしても既存のソリューションの枠に嵌ってしまいジョブが見えなくなってしまう事があります。
例えば、自動車というソリューションが実現/解決するジョブは何か?を考えてみましょう。好きな時に好きな場所へ自由に移動する(機能的な目的)、ストレスを発散のために運転を楽しむ(感情的な目的)は直ぐに思い浮かぶと思います。では、エコ意識をアピールしたい(社会的な目的)はどうでしょうか?ここで「自動車は本来乗り物だしエコ意識をアピールするものではない、エコ意識をアピールするなら、そもそも自動車を使わない方がよい」と考える方は、枠に嵌っている懸念があります。
自動車を使わざるを得ない状況でもエコ意識をアピールしたいという状況はあります。例えば、運送会社の経営者が自社の環境への意識をアピールするために、ハイブリッド車を導入するという場合です。

ジョブを発見する際には、既存のソリューションの枠にとらわれずに、顧客の状況を想像し発想を広げるのがコツです。

 

ジョブの表現のコツ

ジョブを発見することはできても、頭にぼんやりとイメージは浮かんでいても、上手く表現できない。表現したときにニュアンスが抜け落ちてしまうという場面をよく目にします。
例えば、テレビが解決しているジョブを考えるとき、知識を得たい(情報番組)、映像を楽しみたい(映画)、リラックスしたい(バラエティ)等は比較的簡単に浮かんでくると思います。では、暇つぶしをしたいというジョブはどうでしょうか。そんな事言ったらテレビや番組を制作している方に申し訳ない気もしますが、娯楽があふれる今の時代には、暇つぶしの手段の一つとして雇われている/もしくは雇われていないというのが実態ではないでしょうか。
通常そのソリューションに対して使われていない様な表現にこそ、人間が本当にやりたい事が隠れていたりします。

ジョブを表現する際には、ソリューションの枠から外して、顧客の本音を表現するのがコツです。

 

発見と表現の二つのコツを紹介しました。そもそもジョブを発見するためには、ターゲット顧客の候補を探し現場で一次情報を得ることが不可欠です。貴重な一次情報からの洞察を活かすためにもこのコツを活用してください。

「ジョブ理論」を理解するところから始めたいという方には、定期的に公開セミナーを開催しておりますので、ご参加を検討ください。

直近の開催は以下です。

事業開発に役立つ「JOBSメソッド」基礎講座
2018年12月7日(金)10:00〜18:00
https://event.shoeisha.jp/bizgenews/20181207/

Written by Tatsuya Yamada on 2018-12-03

カスタマーサクセスを成功させる組織

カスタマーサクセスに関する3部作の最終稿です。

その1:カスタマーサクセスとは何か?
その2:カスタマーサクセスとJobs to Be Done, Time to Value

 

前回は、カスタマーサクセスをサクセスさせるために重要な3つの要素を挙げ、最初の2つの要素について書きました。

(1)「顧客の成功」をいかに的確に捉えるか ( 顧客ジョブの把握)
(2)いかに早くその成功に近づけることができるか (タイムトゥバリュー)
(3)組織化とプロセス

今回は「組織化とプロセス」です。

 

カスタマーサクセスの組織化やプロセス化を目指す前に、一つだけ注意をするとしたら、

PMF前にカスタマーサクセスはできない

ということです。

 

しばしば、PMFに到達する前にカスタマーサクセス部隊を作っている会社を見かけますが、「1勝もする前から勝ちパターンはない」ことに気づいた方がよいと思います。

PMFして、顧客がどんなジョブのために製品を使っているのかを把握できた後に、初めてそれをパターン化したり、組織として運用することが可能になります。逆に、そのパターンがあることによって、例外が際立ち、アクションもしやすくなるという循環も生まれます。

 

タッチを決める

カスタマーサクセスの方法論として、フィットしたプロダクトと顧客に応じて「タッチ」を設定するということがまず重要になってきます。

「タッチ」というのは、顧客接点、この場合はカスタマーサクセスの濃密さ、を指す言葉です。ホテルのサービスで言えば、超高級ホテルや旅館はハイタッチです。おもてなしを提供するための接触が濃密ですね。大規模シティホテルは中くらいでしょうか。ロータッチと言えると思います。ビジネスホテルは、セルフサービスが多いです。宿泊客が自助的に過ごしやすくする工夫はされていますが、ホテルの職員が積極的に顧客に関わることはあまりありません。このように、技術を提供することで顧客が価値を最大化する支援をすることをテックタッチと呼びます。

ビジネスモデルキャンバスに精通している方には、CR (Customer Relationships)と同じことを言ってる!とすでにお気づきだと思います。

 

プロセス&KPI

組織・プロセスを考える手順としては、

顧客のKPIを知る → PMFしたプロダクト・顧客に対してタッチを決める → タッチを決める → 顧客のKPIを高めるために必要な資源と活動を定める → 活動を行うための資源を準備し、スキルを集める → 自社の活動のKPIを決め、継続的に計測する

 

タッチは利益構造を決めます。高付加価値製品は、高単価ですし、顧客企業の経営レベルが購入の意思決定をするため、ハイタッチなサポートが必要です。逆に、担当者レベルが使用するようなSaaSであれば、一人一人に個別な対応は困難です。限られた利益が一度に吹っ飛んでしまいます。したがって、技術を使い、顧客の自助的な「サクセス」を促すような活動をカスタマーサクセス部門が目指すことになります。

この新しいカスタマーサクセス部門に適切なKPIを設定することができれば、活動を修正しながら、さらに高い効果が出るようにすることができます。理想は顧客のKPIを、自社のKPIにすることですが、さすがに計測が困難かもしれません。そういうときは、サービスの活用度や利用率といった、自社でも計測可能な指標を設定します。自社KPIを顧客KPIに基づいて決めることが何よりも大切です。ついつい、「売上」のような数値を設定しまいがちですが、これでは漠然としていますし、カスタマーサクセスに取り組む前と代わり映えしません。顧客の成功と直接因果関係のある指標を設定します。

営業支援サービスなら、顧客の売上、客単価、顧客数などが顧客にとってのKPIですが、さすがにこれらを把握することは難しいかもしれません。ですが、システムに登録されている顧客候補数や、顧客増加のためのキャンペーン数などがKPIとして良いかもしれません。

BoxやDropboxのようなオンラインストレージなら、有料無料かかわらず記録されているデータの容量とか、読み書きされた回数とか、共有されているユーザ数、デバイス数などが考えられます。

Written by Shingo Tsuda on 2018-10-11

カスタマーサクセス・JTBD・Time-to-Value

前回の記事では、カスタマーサクセスとは何かを書きました。

カスタマーサクセスとは、「顧客が成し遂げようとしていることを支援するための考え方およびその組織、戦略、オペレーションである。」

という長い書き方と、

カスタマーサクセスとは、「顧客のジョブ解決をゴールとする組織とその機能」

という短い書き方とがありますし、数式が好きな人には

CS (Customer Success) = CO (Customer Outcomes) + CX (Customer Experience)

という数式の方が覚えやすいかも知れません。

 

このカスタマーサクセスをサクセスさせるためには、3つのことが重要になってきます。

(1)「顧客の成功」をいかに的確に捉えるか ( 顧客ジョブの把握)
(2)いかに早くその成功に近づけることができるか (タイムトゥバリュー)
(3)組織化とプロセス

 

 

まず(1)です。どうやったら的確に顧客の成功を捉えられるのでしょうか?

「カスタマーサクセス」という言葉が主にSaaSのようなB2Bビジネスに使われることを考えると、顧客のジョブは割とシンプルな質問でわかります。
「(顧客の)部署のKPI(目指す指標)は何ですか?」

もちろん、KPIがあまり明確に設定されていない企業や部署も多く、はっきりしないかも知れません。ですが、会話を通じて、その顧客が重要視している指標を理解することは可能です。

 

例えば、人事部の採用課が相手である場合を考えてみましょう。

「KPIは?」と尋ねても「は?」みたいな顔をするかも知れません。なので「採用を増やしたいのですか?それとも質を高めたいのでしょうか?」と尋ねてみます。

すると、「採用する人数は各事業部から上がって来るので、人数は決まってるんですよ〜。。。しかも誰でも良いわけではなく、実はAI系のエンジニアの採用が難しくて・・・」と返ってくるかも知れません。

この返事から、採用課が目指していることは「各部門の要望を満たすこと」であることがわかります。特に、開発部門からの評価が得られれば「大成功」です。

このように顧客の成功を捉えると、単に人材を紹介するだけではなく、各部門の要望を整理したり、分析したりすることの重要性が見えてくるはずです。仮に人材紹介のプラットフォームを提供している企業だとすると、カスタマーサクセス部門にとって重要な仕事は「人事部が、各部門の求める人材像を理解しやすくする」ことになります。

シンプルに捉えるなら、ジョブはその部署のミッションやKPIだと考えるとよいでしょう。

 

(2)はタイムトゥバリューです。

つまり、いかに早く顧客が価値を感じることができるか、です。先ほどの人材紹介プラットフォームなら、使い始めてできる限り早く紹介できる人材が伝わるとよいでしょう。サービスを使い始めたとしても、肝心の人材情報に行くつく前にたくさんのフォームを記入させたり、ややこしい説明が多かったりすると、その前に顧客は諦めてしまうかもしれません。諦めなかったとしても、顧客側の負担が大きすぎて十分な価値を感じられないことも考えられます。フェイスブックは、初めてログインしたユーザーができる限り早く友人と繋がるか、という指標を重視することで顧客のタイムトゥバリューを高めています。

総じて、多くのサービスはタイムトゥバリューの設計が甘いように感じます。顧客の要望をしっかりと聞いて、無駄やリスクのない状態で価値を提供しようとするあまり「但し書き」「準備」が先立ってしまいがちです。ウェブサービスの「UX」や「デザイン」の問題という風に認識されているかもしれませんが、要は「使い始めてすぐに価値を感じられるか?」という観点でとらえてはどうでしょうか?価値を提供する場面まで極力ストレートな導線を描くのです。

 

一昔前までは、ユーザがサービスを使いこなすにはマニュアルを読み込むことが当たり前でした。使い方を一通り読んで、それから使用してみて、試行錯誤しながら成果を出してやっと価値を感じることができる時代でした。

その後、「ヘルプ」が当たり前になりました。マニュアルをさほど読まなくても、使用中に「ヘルプ」をクリックすると手助けが得られるというわけです。

「ヘルプ」ではまだ、ユーザの質問に対応する受動的な手助けだということで考えられたのが「ウィザード」のような仕組みです。ウィザードでは、最初にいくつかのシンプルな質問にユーザが答えれば、結果や結果に近いものを即時的に出すようなUXを提供します。

また、優れたタイムトゥバリューを提供する手法として「テンプレート」が挙げられます。あらかじめ用意された複数のテンプレートの中からユーザは選ぶだけで、ほぼ完成したものを手にすることができます。例として、インスタグラムは、どんなフィルターなのかを説明することなく、ユーザの希望するであろうフィルターを複数提示し、タップするだけで写真におしゃれな加工を施します。前時代的インスタグラムが存在するとしたら、ぼかしの入れ方や、彩度や明度の調整方法を紙のマニュアルでユーザに読ませるようなものだったでしょう。これでは、素敵な写真を共有したいという目的に到達する前に骨が折れてしまいます。

長くなってきたので、(3)は次回に回します。

Written by Shingo Tsuda on 2018-10-02

カスタマーサクセスとは何か?なぜ今注目されているのか?

「カスタマーサクセス」最近よく聞く言葉です。
カスタマーサポート、顧客中心、顧客第一、顧客満足、・・・同様の言葉が腐るほど生み出されてきましたが、掛け声だけで何も変わりませんね。
それなのに、今なぜ「カスタマーサクセス」なのでしょうか?

長々と書く前に、まずは自分なりの結論から書きます。

 

#顧客が成し遂げたいこと(=ジョブ)が成し遂げられることではじめて企業は成功する、からです。

 

 

 

まずカスタマーサクセスの定義から説明しましょう。

「カスタマーサクセスとは、顧客が成し遂げようとしていることを支援するための考え方およびその組織、戦略、オペレーションである。」

 

顧客が成し遂げようとしていることを考えているだけでは実行はできないし、組織がなければ業務へと落ちないし、戦略がなければ実行もおぼつかないので、単なる理念ではないことはもちろん大事なポイントです。

 

でも、これではカスタマーサポートといった過去の施策との区別がつきません。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの最大の違いは、カスタマーサポートは「顧客の不満」から仕事が始まる点です。カスタマーサポート部隊は、顧客の不満解消に向けてさまざまな手を尽くします。一方のカスタマーサクセスの起点は、顧客がサインアップすることです。新しい顧客が、サービスを使おうとしたその瞬間から顧客の成功を目指して支援します。

顧客の「不満」と顧客の「成功」、この2つは一見単なる表裏ですが、根っこはかなり違います。

例えば、ビジネスマンが2泊3日のシンガポール出張のために航空券とホテルをオンラインで手配するケースを考えてみましょう。顧客は、フライトの価格やスケジュールを見ながら比較し、予約を入れ、購入します。いざ出張に出かけると、フライトの遅延やホテルの不備を経験するかもしれません。このうち、顧客が本当に不満として声を挙げるとしたら、フライトの遅延やホテルの不備があった時くらいでしょうか。なぜなら、価格や価格表示がわかりにくければ、そもそも顧客化せず、黙ってサイトを去るだけです。一方で、顧客ジョブが成功することを軸に考えるなら、チケットの予約や購入は出張の本質ではないので、シンプルに手際よく済ませられたり、出張後の精算が楽だったりすることが重要だということがわかります。フライトの遅延やキャンセルの際には、迅速なサポートが求められることは言うまでもありません。

「顧客の不満」つまり、クレームを起点にしていると、知らず知らずのうちに顧客を失うことにもなりかねません。出張の計画を立てるのには不便だったりすると、顧客はクレームも言わずに黙って去るからです。これは静かにやってくる悲劇です。クレームもなく売上が下がると「サービスレベルの問題はない。きっと価格だ。」という論理から、価格を下げることで売上の回復を図ります。これもさらなる売上ダウンの要因となります。何が何だかわからないまま、売上ばかりが下がることになるのです。

 

カスタマーサクセスの必要性は、サブスクリプションやフリーミアムといったビジネスモデルの登場によって増しました。

サブスクリプションのサービスでは、顧客はサービスの利用権を月額や年額で購入します。簡単に言うと、顧客が使った分だけを支払う仕組みです。使わないモノを売り込まれて、タンスの肥やしになった経験が誰しもあるのではないかと思います。高額なソフトを導入したけれど一度も使われないものをShelfwareと言いますが、使う分だけしかお金を払わなくて良いサブスクリプションでは、売り手と買い手の利害が一致しやすくなります。

そもそも、サブスクリプションやフリーミアムといったビジネスモデルが登場した背景には、従来の製品販売型のビジネスモデルでは企業のゴールと顧客のゴールとが一致していなかったことがあります。企業の各組織は「販売量」「生産量」「売上」といった指標で仕事の成果を測る一方で、顧客はそれぞれの目標を持ちます。顧客の失敗を目指す悪徳業者も存在はしますが、悪意がなくとも、組織が分断しているために顧客の成功以外のために仕事をしているのが実態ではないでしょうか?例えばマンションの営業マンは、すべての物件が売れることを目標にしているのであって、そのマンションを買って入居する人が良い暮らしができるかどうかを業績目標にしていることはありません。

 

サブスクリプションやフリーミアムといったSaaSに用いられるビジネスモデルを採用している企業では、ユーザー数やサービスの使用期間に応じて売上が変わります。最初は数人で1カ月だけ使用してみたり、そもそも試用期間は無料だったりと、使って価値を感じるまでのハードルを極端に下げています。従来の製品販売モデルと比べると、最初に契約する金額が極端に低くすることで意思決定もスムーズな収益モデルを構築することができます。結果として、顧客とゴールが近い形での収益モデルになっているのです。

実は、SaaSの草分け的存在であるSalesforceの創業者 Marc Benioffが「カスタマーサクセス」という考え方を広めましたが、これまで述べてきたようなロジックで取り組んだわけではありません。Salesforceは画期的なSaaSではあったのですが、顧客を新規で獲得してもしても流出するという問題に直面しました。顧客の流出は「チャーン(Churn)」とも言いますが、Salesforceにとっては相当手痛いものでした。新規顧客の獲得には大変なコストもかかる割には、最初の契約は少額で、ろくに使う前から離脱してしまうのですから当然です。Benioffは、新規顧客への営業を一時的に止めて、既存顧客が成功するためにあらゆるサポートをするという戦略を立てました。ツールの使い方を丁寧に教えるのはもちろんのこと、Salesforceを導入する顧客のゴールである営業、営業管理に対する知見を惜しみなく出すなど、「顧客の成功」に向けた活動に集中したのです。Salesforceのツールを「使う経験」(CX=顧客体験)を通じて、営業成績が伸びるという「結果」(Outcome=結果)が得られた顧客はそのまま定着し、追加のユーザライセンスを購入し、Salesforceの営業成績も回復しました。『カスタマーサクセス サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』の著者らはカスタマーサクセスを以下の数式で表しているのは納得です。

CS (Customer Success) = CO (Customer Outcomes) + CX (Customer Experience)

 

つまりジョブ理論をご存知の方には、カスタマーサクセスとは顧客のジョブ解決をゴールとする組織とその機能、と言ってもよいかもしれません。

長くなりましたので、ジョブ理論との関係や、具体的な活動については次回書いていきたいと思います。

Written by Shingo Tsuda on 2018-09-25

7分36秒で理解するジョブ理論

イノベーションやテクノロジー関連のトレンドを知るために参考にしているサイトの一つに、レクサスのブランドサイトがあります。先日、そのサイトにジョブ理論を紹介する音声つき記事が掲載されていました。

 

わずか7分36秒の音声コンテンツですが、初めてジョブ理論を知る方にとっても明快な解説がなされています。

※ ジョブ理論は 片付け理論として紹介されています。

 


 

私は「ミルクシェイクとカーラジオと自動運転」は、「運転の退屈を紛らわす」という価値創造の面では競合しているんだなぁ…なんて考えながら聞いていました。

自動運転が十分普及すると、自家用車で移動しながらでも退屈しない方法(例えば、You Tubeを見る) ができるようになるので、カーラジオやミルクシェイク今ほど需要されなくなるだろうという仮説を立てることはできそうですね。

あなたは、どのような感想を持ちましたか?

 

サブチャネルとしてのヒア

話は変わりますが、先日あるお気に入りのYoutuberが「ラジオは完全にオワコンで、今更全く価値もない」と発言しているのを聞きました。

彼のことは応援しているのですが、視聴者の状況の理解の面では”ずれている”と感じたことを覚えています。彼は、視聴者が動画を再生している時間の7割程度は画面を見てくれているという意識で放送しているのでしょう。

 

しかし、私が彼の動画を視聴するとき画面を見る時間は1割もありません。なぜなら動画を視聴するのは、家事する時であったり、運転する時であったり、運動する時であったり、買い物をする時であるからです。(彼の放送は視覚的にはそれほど面白いものでもないので、このような消費の在り方が特殊なわけではないと思います。)

要するに、私は彼の動画を「ながら」という条件付きでしか消費しないということです。つまり、彼がオワコンと言ったラジオ的な消費形態で彼のコンテンツが消費されているということです。

 

私が様々な”別のこと”をしながら動画を視聴したように、”ヒア”にはユーザーの状況依存性が低く、何か別の目的のために別の行動している人に対しても、情報を届けることができるというサブチャネル的な特性がありそうです。

 

レクサスのポッドキャスト

レクサスは今回紹介したような記事を、今ではあまり目立つこともなくなったポッドキャストで、わざわざ配信し続けています。

しかも、品質面で厳選されてはいるものの、内容はテキストアップロードされる記事の読み上げでポッドキャスト限定の情報を提供しているわけでもありません。

 

担当者はヒアラブルにする事で、Youtuberにとっての私のように、サブチャネルからしかアクセスできない顧客と関係性を築くことができることを理解しているのでしょう。レクサスの場合は、運転者との関係性を築くことが具体的な目的となるでしょう。

 

ヒアラブルに秘められた可能性

2018.8現在、audibleなどに代表されるヒアラブルサービスは国内ではそれほど流行っていません。しかし、車通勤が中心のアメリカなどでは多くのユーザーを獲得しています。

 

確かに、通勤通学者の多くが公共交通機関を利用する日本では、通勤通学の場面でヒアラブルの入り込む余地は、相対的に少なくなってはしまいます。しかし、スマホなど組み合わせて屋外で利用する無線ヘッドフォンの普及が急速に進んでおり、都市部では食事や買い物、運動をしながら音声コンテンツを消費する人々の姿も多く見かけるようになってきています。彼らに支持されるようなコンテンツをヒアラブルで提供できるサービスには期待が持てそうです。

 

また、コンテンツの作成者にとってもヒアラブルコンテンツは魅力的です。まず、最低限テキストと読み手が用意できれば制作できるため、動画コンテンツがよりも制作負荷が低く抑えられるという利点があります。さらに、AIや自動読み上げのテクノロジーを駆使して、リアルタイムにパーソナライズされたコンテンツを提供することもそれほど難しいことではないでしょう。

今後は、AIを通じて人間に何かを指示したり、情報を提供するという使い方もホームスピーカーより一歩進んだパーソナルな状況判断を踏まえたサービスの実現が期待できそうです。

 

もちろん、レクサスのように”ヒア”というサブチャネルを通じてユーザーと関係性を築くというマーケティング手法も、より強いトレンドを形成していくことでしょう。

 


 

INDEE JAPANでは、イノベーションの実現やジョブ理論の実践を支援するため、ジョブ調査・テクノロジーコンサルティング・サービスデザイン・人材開発・スタートアップ支援・協業先探索などの各種サービスを提供しています。

ご興味ありましたらぜひお気軽にお問い合わせください。

Written by Hiroshi Kato on 2018-08-15