普及のSカーブ

前回、Sカーブを活用することで、新しいアイデアや技術を効果的に普及させることができるというお話をしました。このSカーブについてもう少し考えてみましょう。

スーパーカー消しゴムに見る普及プロセス

皆さんの学校でも流行ったかも知れません。私の通っていた中学ではスーパーカー消しゴムが流行を見せました。最初に遊び始めたのはオタクです。当時はそんな言葉はありませんでしたけど。彼らはクラスの主流派ではないものの、新しいアニメやプラモデルをクラスに持ち込むなどして、男子の遊びをいつも提案していました。もちろん、多くの遊びはクラスに受け入れられず、いわゆるオタクのようにマイナーな遊びに興じていました。しかし、スーパーカー消しゴムの場合は、一大ブームを呼んだのです。

ばねタイプのボールペン(BOXYです)のお尻で弾く遊びがそのきっかけでした。パチンとペン先をしまう動作で、ペンのお尻が飛び出し、それで消しゴムを弾く。これを参加者が順番に繰り返し、机に筆箱や定規を並べたコース上を競争。勝ち負けも絡んで盛り上がりました。今書いていても、休み時間を常に楽しみにしていたことを思い出します。このように盛り上がり始めると、当初オタクチームとは距離を置いていた女の子やスポーツにしか興味がない男子もゲームに参加します。もはやクラスは団結し、独自の正式ルールができ、大会まで開かれる始末。

皆さんの学校でも流行ったかもしれませんが、この流行のプロセスはどこでも基本的には同じなのではないでしょうか。

いくつかの集団に分けて普及プロセスを見ていきましょう。

  • 一番はじめに消しゴム遊びを持ち込んだ人たちはスーパーカーが好きなマニアでした。イノベーターと呼ばれる初期2.5%の人たちです。イノベーターはクラスに受け入れられるかどうかはあまり気にせず、新しいものにチャレンジします。
  • 次の集団はアーリーアドプターと言われています。スーパーカー消しゴムにゲームとしての一味を加えました。単なる「消しゴム」であれば、多くの人の賛同を得にくいということを直感的に知っています。彼らはオピニオンリーダーとも言われ、顔が広いため、イノベーターと付き合いがあるだけでなく、それ以外の普通の人たちとも交流します。イノベーターの次に新しいアイデアを取り入れる13.5%の人たちに相当します。ここまでで、累積16%の人たちになります。ジェフリー・ムーアはこの16%の線を『キャズム』と呼び、技術が普及するための大きなハードルであると言っています。このキャズムを超えなかった技術は多く、逆にこれを超えることで新しい技術は自然に広がるようになります。
  • 新しいゲームとしての提案があったため、スーパーカー消しゴムはキャズムを超え、次のアーリーマジョリティに取り入れられました。アーリーマジョリティは「普通の人」と言っても良いかも知れません。別段スーパーカーが好きなわけでもない。でも、自然に短い休み時間でもクラスで盛り上がれるゲームとして楽しめる。そんな理由で参加します。単に観賞し、集めるための消しゴムであれば、こういう人たちは興味を持つことなかったかもしれません。
  • レイトマジョリティはクラスの半数が遊ぶようになってから参加します。最初は無駄な遊びとして懐疑的に見ていた集団も、さすがに半数の人たちがスーパーカー消しゴムを買って遊ぶようになると、買って参加します。この人たちにとっては「普通」が心地よいのです。
  • クラスの大半がスーパーカー消しゴムで盛り上がっていても、冷ややかに見ている最後の集団はラガードです。ブームが去るまで参加しないかも知れません。ラガードは伝統を重んじ、変化を嫌うため、授業の合間にはいつも決まったことをして過ごしている可能性が高いです。

このように、それぞれの集団は異なる価値観や論理を持っています。現時点で市場の何%に普及しているかを考えることで、次はどういう人にどのようにアプローチをすればいいか見えてきます。特に、アーリーアドプターとアーリーマジョリティの間には”キャズム”と呼ばれる深い谷があると言われ、アーリーアドプターは採用してもアーリーマジョリティには普及しにくいという特性を持っています。つまり、受け手の価値観や判断基準が大きく異なるため、コミュニケーションの仕方やメッセージを変えながら普及させることが重要になります。良いモノは一部の人のおもちゃにしておくのはもったいないですから。

Written by Shingo Tsuda on 2012-07-13

スタートアップは普通に進めると失敗する

今回は少し大げさに思えるタイトルをつけてみましたが、この言葉にピンと来ていただけるかどうかが今回のテーマになります。

 前回のブログではビジネスのスタートアップに共通する罠のとして”顧価値提供者とユーザー間でのコミュニケーションのずれ”の原因。そしてそれを解消するために有効な施策は”高速仮説検証プロセスをプロジェクト計画に盛り込む”ことだとご紹介しました。今回はこの続きです。

まず前提としての重要な問いは、

人が関わる事象において誰もが共通して陥る罠の裏には、
人間の特性としての原因があると仮定した方が自然だと思いませんか?

言い換えると、人が普通に行うとそうなるという事象の原因は、まさに人の本能的な判断や行動にあるということです。我々はスタートアップの難しさもまさにこの点にあると考えています。

今回のテーマである施策の本質は、この人の本能的な思考や行動特性を意図的に変えるための手法とも言えます。この点をご理解いただければ、これからの説明により深く納得いただけるはずです。

前回、メーカーとしての提供価値がユーザーニーズとずれる原因は、プロジェクトが進むにつれて初期に設定した目標仕様がそもそも仮説であるという事を忘れてしまう点にあると紹介しました。この問題を解決するために必要となる具体的なしかけとは、開発当初設定している目標仕様を、ユーザーとのコミュニケーションを通して改良、改善させていくというタスクを忘れず実行させてくれるものであれば有効ですね。

そしてプロジェクトを進める上での問題が、もう一点あります。それは人の行動は”計画”というものに引っ張られ易いという特性です。みなさまもご経験がおありかと思いますが、先が見えないようなプロジェクトにおいて初期に立てた計画の精度や納得感は往々にして低い。この事実もプロジェクトが進み、関わる人が増えていくいくうちにいつのまにやら忘れ去れてしまいます。そして、なんとなく違和感を感じつつも、プロジェクトは初期の計画通りに進められ結果火を吹き始める。つまり、一度立てた計画を途中で修正、改善するということは、想像以上にハードルが高いという点も人の本能的な行動として必然的な現象だと言えます。

この二点の問題を解決するしかけが、今回のテーマである”高速仮説検証プロセスをプロジェクト計画に盛り込む”という事になります。

つまりこれは、初期の目標仕様は仮説であり、それを検証しつづけるプロセスが必要という事をチームメンバーにリマインドし続ける”しかけ”です。さらに、そのこの仮説検証プロセスを初期計画に入れることにより、いきなり数年もしくは莫大な費用を要するような製品開発に着手することを避けることができます。つまり、開発メンバーおよび事業化メンバー双方が如何に初期の仮説を検証するためにまず何から着手すべきか?どんなレベルの製品プロトタイプを作るか?または形にするまえのコミュニケーションツールとしての提案資料を作るか?という事に頭と時間を使うようになります。この結果、提供価値とユーザーニーズのずれが低減されていきます。

そしてイノベーティブな提供価値のスタートアップのように世の中にまだ存在しないような新しい価値を生み出す場合はより難しくなります。なぜならば、まだマーケットが存在せず、ベンチマークとなる競合製品も存在しないため、初期の目標仕様および計画の精度が低くなります。そのために仮説検証の”高速性”つまりより多くの検証サイクルが必要になります。そして、提供価値を形にできない段階での、ユーザーとのコミュニケーションが不可欠になります。これは誰も進んではやりたがらない非常に不安定なコミュニケーションです。これ乗り越えていくためには、高いレベルの創造力と表現力、そして行動力が不可欠であることは容易に想像できると思います。

繰り返しになりますが、スタートアップは既存マーケットに提供価値を投入するという通常のプロジェクトの進め方では失敗します。それを回避するために有効な施策は、

高速仮説検証プロセスをプロジェクト計画に盛り込む

だということです。

この事実をベンチャーのスタートアップおよび企業内新規事業立ち上げのチームメンバーそしてあなたご自身と共有できれば、より多くの努力が実を結ぶと確信しています。そして今、私自身もこの罠にはまらないように仮説検証を繰り返しています。

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Written by Tatsuro Tsushima on 2012-07-06

世界を変えるには自分自身を変えることから

   何かを変えるってことは自分自身を変えるということと
   ほとんど同じなんだよ 

 これはSEKAI NO OWARIという日本の4人組バンドの”天使と悪魔”という曲の一節です。
 どんな発見も発明もそれがもたらす新しい価値を受け入れなければ、イノベーションにはつながりません。テクノロジーの変化により可能になるイノベーションもありますが、自分自身の物事の見方を変えていく事で可能になるイノベーションの方が多いのではないでしょうか。そんな事を改めてさせてくれた一節だったので引用しましたが、「自分自身の価値観を変える大切さ」という意味で共感して頂けますでしょうか。
 例えば、人類が火を発見した時、最初は暗闇を照らしてくれる、身体を暖めてくれるという価値しか見いだせなかった。動かない火に対して直接感じられる価値がそれだけだからです。でも、そこに野獣が表れて、思わず火のついた棒で振り払い、相手に思いがけないダメージを与えられたとしたら・・・。火というものに敵を追い払うという新しい価値が生まれたかもしれません。更には獲物を捕えることに利用したり、獲物を調理するという価値も発見された。
 同じモノであっても、”照らすもの”、”暖めるもの”という固定概念を外せば、そこに”追い払う”、”捕える”、”調理する”という新たな価値を発見できる。価値の枠組みは人が決めているのです。
 昨今の多くのイノベーションと呼ばれる事例が、技術的にはそれほど目新しくはないもので出来ているというのは、良く目にする話題ですが、ちょっと負け惜しみの様にも感じます。価値という観点でのどういう新しさがあったかに、もっと素直に目を向ける必要があるのではないでしょうか。
 人は新しい価値観に遭遇した時に戸惑います。即座に受け入れるイノベーターもいれば、最後まで受け入れないラガードもいます。エベレット・ロジャーズ氏は著書イノベーションの普及の中で、イノベーター、アーリーアダプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードという5つの属性を定義しました。多くの発明が伝播しきることが出来ないのは、発明の良さ、正しさよりも人々の考え方、慣習を変える事の難しさにある事を豊富な事例を基に示しています。
 では、どうすれば物事の見方を変える事が出来るのか?
 一つには多くのマーケティングに書物で書かれているような新しいスタイルの提供です。音楽は「部屋の中で楽しむもの」という価値観を「歩きながら楽しむもの」に変えたのがウォークマン、「いつでもどこでも好きな音楽全部を楽しむ」に変えたのが、iPod&iTunesです。
 
 ただ、こうした新しいスタイルの提案は日々ユーザーと接して観察し感じたり、自分自身の強い拘りが無いと中々見つけられません。
 もう一つ、強制発生的に誰でも出来るアプローチが、ブレーンストーミングの際にも良く使うWhat ifです。「全ての障害がなくなったら?」、「リソースを何でも好きなだけ使えるとしたら?」というのが良くあるパターンですが、これはどちらかと言うと解決策一般に対する問いです。新しい価値という観点では「量的変化を質的変化に変える」というのがポイントです。
 例えば、
  「今の10分の1の重さの車があったら?」
  「今の10分の1の厚さのPCがあったら?」
  「ユーザーはどんな価値を感じるだろう?」
 という問いです。
 価値観の変化は量的な変化では生まれにくいですが、
 量的変化も一桁変わるようなレベルであれば質的な変化として受け止められます。
 MAC Book Airを封筒から取り出すプレゼンは正にこれを実現していたのではないでしょうか。
 ちなみに、最初に紹介した歌詞の続きは、こうです。
  
   「僕ら」が変わるってことは「世界」を変えるということと
  
   ほとんど同じなんだよ
 
 これぞ、正に普及です。
 周囲を巻込んで、「僕ら」を増やしていく、それは自分が感じた価値を皆にも共感してもらうということです。
 どんなに優れた商品・サービスでも、その価値を自分自身が本気で伝えられなければ、誰にも共感されないですよね。
 同じ10分の1の厚さのPCでも、それを本気で伝えるものでなければ、ただのスペック比較になりかねません。
 本気で信じる価値を本気で伝えていく。
 イノベーションを始めるには、ここからです。
Written by Tatsuya Yamada on 2012-06-29

タイムマシンとどこでもドア

日本企業は技術があるのに、国際競争に負ける。
良いモノを作っていれば売れる、と思っていたが、そんなに甘くない。
欧米に先駆けて技術を確立したのに、標準化が下手。
最近の日本企業を取り巻く悲観的な声はこんな感じでしょうか?
タイムマシン
では良い技術や、良いモノ、進んだ技術とは何でしょうか?
この答えは過去の歴史を見ると見えてきます。例えば、ルネッサンスの三大発明。火薬、羅針盤、活版印刷。いずれもこの時代にヨーロッパが世界の中心となったきっかけとなる道具です。なぜ「大」発明なのかというと、普及し、時代を象徴するほど歴史を変えたからと言うことができます。この時に発明された3つの技術は、ルネッサンスに花開き、人々に大きな影響を与え、受け継がれてきました。今でも、私たちの生活に当たり前のものとして存在しています。
普及して定着したから大発明というと、一見逆説的に感じるかも知れませんが、実はダーウィンの進化論にも同じような説明があります。たくさんある突然変異のうち、環境に適合し絶滅せずに生き残った結果が「進化」であるという見方です。ダーウィン以前の見方は、生物が環境に応じて成長した結果が、現在の生物であるというものでしたので180度異なった考え方になります。しかし、特定の閉ざされた環境に存在するガラパゴス諸島の動物たちを見たダーウィンは、そもそも多様な生物は一時存在するが、その環境にとってマッチする生物だけが絶滅を免れるという進化論を唱えました。生き残ったかどうかが、「単なる突然変異」と「進化」を分ける、と言うと良いかも知れません。
ビジネスの世界に当てはめると、突然変異に相当するのが、一つ一つの発明や技術、環境に相当するのが市場、となります。もし、未来の市場をタイムマシンで覗くことができたなら…
勝つ技術を選択し、それに賭けることができると思いませんか?
どこでもドア
実は、先ほど例に挙げた三大発明の原型は中国にあったと言われています。なのに、三大発明を完成させ、フルに活用し、世界の覇者となったのは西欧諸国だったというのも着目すべき点です。タイムマシンが仮にあっても、中国だけを見ていたのでは三大発明はするりと手からこぼれ落ちてしまいます。
活版印刷はヨーロッパという土地柄があって、はじめて日の目を見ることになります。当時の裕福な権力者には聖書を大量に複製したいニーズがあり、アジアの言語と比べるとアルファベットは文字数も少なく取り入れる際のハードルも低かったという事情が後押ししました。その結果、中国ではなくヨーロッパで広がることになったのです。
可能性のある技術を”どこでもドア”を使って、いろんな所で試すことができたなら…
その技術は市場にとって価値のある形に成長しながら、きっと普及するのではないでしょうか?
もちろん、タイムマシンもどこでもドアも(今は)存在しませんね。
では、どうしたら良いでしょうか?
時間移動については、未来を想像し、その未来から遡って今を見るしか当分できなさそうです。しかし、空間移動についてはどこでもドアほどは簡単ではないにせよ、世界中を移動することが可能になっています。とはいえ、移動に必要な時間は限られています。その限られた時間でどこを市場とみなして新しい技術を持ち込んだら良いでしょうか?そのヒントを与えてくれるのが、E.M.ロジャースが発見した普及曲線、つまりSカーブです。イノベーションがSカーブ上のどこにいるのかを把握することで、どういう市場を探るべきなのかを示唆してくれます。

Written by Shingo Tsuda on 2012-06-22

スタートアップに共通する罠

最近、新規事業担当者やコンサルタントの間でリーンスタートアップという言葉が流行っています。この言葉にピンときた方はご存じのように、今年4月に日本語に翻訳されたエリック・リース氏の書籍が発端となっています。私も出版早々購入しまして拝読しました。

この本の主題となっているリース氏のスタートアップ体験は、開発主導型の新規事業やベンチャー創業期を経験したことのある多くの方々にとって、既知感として映ったのではないでしょうか。自分も例外なく10年前の半導体ベンチャーでの苦い経験をはっきりと思い出しました。そうこの既知感の中にこそ、スタートアップに共通する罠が潜んでいるのです。

その罠とは事業が成功まで行き着いたかどうかに限らず、開発主導型の新規事業スタートアップでは、

提供価値とユーザーニーズのずれ

に行く手を阻まれます。もし事業立ち上げを経験したあなたがこの実感していないならば、それはあなたが天才的なアントレプレナーか、既存マーケットに対する後追いのビジネスに携わっていたと言っても過言でないぐらい、高い確率で避けては通れない罠です。

ではこの事実を知ってさえいれば、回避できるか?といういうとそう簡単には行かない。それは同じ失敗が未だに世界中で繰り返されている事実によって、証明されていると言えるのではないでしょうか。では世界中を悩ませているこの罠の難しさはどこにあるのか?私はその一つを前述の言葉を”人”という切り口に変換して言い換えて、

価値提供者とユーザー間でのコミュニケーションのずれ

と言えると考えています。

ここでいう価値提供者とは新しい商品・サービスの開発者であり、それを提供する企業などの組織を指しています。なぜこのずれがおこるか?の問いの答えとして非常に根深い原因の一つとして私の仮説をご紹介したいと思います。

新しい製品を生み出すプロセスには表からは見えない多くの苦労があります。目標となる性能が実現できなかったり、原価がおさえられない中、社内のプレッシャーを振り払いながらも必死で計画の遅れを取り戻して・・・などなど開発現場には想定外の問題が日々起こっています。こうした逆境を乗り越えていくためには、開発チームにとって何か意識を集中する拠り所が必要になります。そしてそれは多くの場合、ナンバーワンやオンリーワンと言えるようなやりがいのある製品性能や機能が設定されます。いわゆる製品としての目標仕様です。私はここに大きな罠があると思っています。

目標設定は決して間違いではありません。むしろこれがあるから開発プロジェクトが成立する。問題は、開発を進めていく中で、困難を乗り越えて行く中で、着手時の目標仕様がそもそもユーザーニーズの”仮説”であったことを忘れてしまうことにあります。誰が設定した値だったか?そしてその数値の根拠はどこにあったのか?は開発後半にはぼやけてしまう。そしてユーザーに本来提供すべきは、ユーザーにとっての価値であったはずが、いつの間にか自分達が最も苦労して実現した機能や性能(オンリーワンやナンバーワンなど)にすり替わってしまうのです。

新製品の多くはまだ世にないもののはずです。それがイノベーティブであればあるほど、既存のものとは大きくことなる可能性が高い。ユーザーも実物を見て、触ってみないとその価値は理解できません。そして現在は20〜30年前には想像できないほどの速度で技術開発やユーザーのニーズが変化しています。つまり、現在においてこの開発初期のユーザーニーズに対する仮説の精度はかつてより低くなっていて当然です。

そもそもはユーザーのためを思って開発に着手したにも関わらず、いつの間にか提供側の思い入れに引っ張られて製品を形にしてしまう。この傾向は現場が自ら問題を見つけ、積極的に解決しようと動く日本人にとって特に強いと感じています。

このようにスタートアップの罠は知識や経験だけで対処できる問題だけではありません。人の”行動特性や思考特性としての罠”と捉えたが正しいと考えています。だからこそ何度も繰り返されてしまう。ではこれに対処する方法に何があるか?それはずばり、

高速仮説検証プロセス

つまり提供価値の仮説検証サイクルをプロジェクト計画に盛り込むという事に尽きると思います。

なんだ当たり前?!・・・とおっしゃるかもしれませんが、それを開発初期の計画から実行している例を私は殆ど見たことがありません。しかし、この効果は間違いありません。仮説検証サイクルというコンセプトをプロジェクト計画に入れるだけで、リリース計画が変わり開発初期にコミュニケーションすべき相手も変わります。日々のタスクや試作・製品仕様までもが大きく変わるということは、つまりプロジェクトメンバーの意識や行動が変わっていきます。それぐらいこのコンセプトには大きな影響力があるわけです。

では実際のプロジェクト計画において具体的にどう盛り込んでいくかは、また次回ご紹介したいと思います。

Written by Tatsuro Tsushima on 2012-06-15