「話をまとめる人」が実践する3つの習慣

仕事柄、色々な会合にでる機会が多いのですが、話がまとまらないケースが実に頻繁に発生します。同じ業界におり、同じ日本語をしゃべり、同じような関心事を持って集まっているにも関わらず、話は平行線。一向に話がまとまりそうにない。

そこで、議長やリーダーがしびれを切らして、自分と側近だけで決めると言い出す。それでは納得する人もいるはずもなく、会議で決まったはずのことも面従腹背。意識が合っていないので、上手くいくはずもないし、失敗すれば言いだしっぺの責任。いわゆる「梯子を外された」状態になってしまう。

一方で、彼に任せると「話がまとまる」という強者もいる。若くて経験も少ない割に、取り組むべきテーマが決まり、役割分担もしっかり決まる。すんなり、という訳ではないが、しっかり話し合った末に決まる。

業界のドンという言われるような人なら打てば響くように全員服従させることは可能かもしれない。こういった場合を除いて、新たな決めごとをする際には多少の軋轢は必要だ。少々の意見の相違はあるにせよ、話がまとまる時と決裂する時とではどのような違いがあるのでしょうか。

  • 責任を追及せず、原因を追究する
     誰々が悪い、○○省が悪い、などの批判に終始し相手と共感したとしても、協調する糸口は見つからない。話をまとめる人はどこがどのように問題なのか、という点を確認し合うようにしています。場合によっては、話し相手に原因があることがあるかもしれません。そのような場合、相手の責任を追及することなく、原因解消できるように話をまとめます。
  • 落とし所ではなく、ビジョンを共有する
     話がまとまらない人たちの会話を観察していると、相手の話も碌に聞く前から落としどころをお互いに探っている。ビジョンがなく、お互いの組織や立場の中間地点を探しあうだけだと、お互いに譲歩したような釈然としない結果になるだけでなく、本音で話していないため、話をまとめようという気がお互いに失せてしまいがちだ。
    相手の話に耳を傾ける必要があるのは、そのためだ。相手にとって何が良いのかを知るには、きちんと話を聞く必要があります。ビジョンというと、たいそうなもののように感じるかも知れませんが、共通の利害と言い換えても構いません。共通の利害でもっとも考えやすいのが、お互いに儲かる方法ということになります。
  • 文字通り話が「まとまっている」
     相手に何を期待し、どんなメリットがあるのかを絞った話ができるというのも、重要なことです。「何となく」はじまった集まりであっても、何かを決めていく際には論点を絞った話し方を心掛ける必要があります。さらに上記のビジョンや原因をきちんと相手に伝えるには、話がまとまっていなくてはいけません。ポイントを意識しないと、どうしても話がぼやけてしまいがちです。PREP法などを活用して、まとまった話を心掛けましょう。

Written by Shingo Tsuda on 2012-11-16

コミュニケーションの原理原則 2

前回はコミュニケーションの原理原則についてご紹介した。

この現実を理解した上で、下記の3ステップでコミュニケーションを行えばその成果を大きく高められる。

  ①目的の共有
  ②前提知識の共有
  ③本題の共有

つまり、話の本題に入る前に必ず①、②のステップを踏むということである。この2つのステップについて簡単に説明する。

【目的の共有】
まずなぜ話を聞いてもらいたいか?自分は何を聞き手に提供することができるのか?なんのために議論を行うのか?という目的の共有から始めないといけない。これこそがそもそもの聞き手の”興味”を引くために不可欠な要素である。これがうまくいけば、コミュニケーションのハードルの50%はクリアしたと行っても良い。

実際この行為は簡単なようで簡単ではない作業である。話の途中や会議の途中で、聞き手から”なるほど今日の目的はそういうことね”という発言を何度も聞いた経験はないだろうか。

【前提知識の共有】
毎日どれだけ同じ時間を過ごしていても、伝えたい本題のテーマを理解するために必要な前提知識が同じということはありえないという前提からスタートしなければならい。さらに実際は年齢、専門、性別、国籍、そしてなりより、その瞬間の”興味”など、複雑性が高まる要素が加わる。

伝える相手の立場に立ってみて、前提知識として何を補う必要があるかを想定してみることである。例えば、下記のような内容である。

 ・共通言語となる例え話
 ・本題に関する制約条件
 ・本題を理解するために不可欠な今までの経緯

ではこの3ステップを具体的な場面に当てはめて考えると下記のような組み立てが考えられる。

・参加者(聞き手)の多くが初見の場合
 
  ①目的の共有
  ②自己紹介
     →単なる自己紹介だけでなく、本題に関連するエピソードを含む
  ③本題

・前回からの継続議論

  ①目的の共有
  ②前回の議論のポイント振り返り
  ③議論

・専門が異なるメンバー間

  ①共通の目的の設定
     →利害が異なる部門が集まる場合、一つ視座を高めた共通の目的を設定する
  ②共通言語の構築
     →フレームワークや、情報の整理方法などメンバーの思考を整えるものを設定する
  ③議論

特に日本語は英語と比較してハイコンテクスト、ローコンテンツと言われるように、同じ言葉から想起される理解のばらつきの幅が大きくなる。日常における”言った言わない”の原因の殆どは、この認識のばらつきによるといって間違いないと考えている。

つまり深くない間柄の日本人同士のコミュニケーションでは、一段と上記のステップが不可欠になる。これを個人として、そしてチームとして習慣化できれば確実にコミュニケーション齟齬は減っていく。是非習慣化していただきたい。

Written by Tatsuro Tsushima on 2012-11-10

三つの輪での自己認識、やるべきorやりたい

3週間前にコラムをアップした時には、まだまだ残暑厳しいという感じだったが、

ここ数日で一気に冬めいて来た。今年は秋という季節を味わえずに過ぎてしまうのかもしれない。
何か少し損をした気分がする。
今回は3週間前の 自分の力を出し切りたい! の補足として、もう少し三つの輪についてお伝えしたい。
三つの輪は以下に示す様に、やるべき事(Must)/やれる事(Can)/やりたい事(Will)で構成されている。この三つの輪の重なり合う領域に、何が来るかを考える事で、自己認識の現状を把握をしていく。
三つの輪テンプレ80%.png
ここに書かれることは、仕事、趣味、自己啓発、社会活動等、様々だ。
やるべき事(Must)には、会社からの期待・義務、家庭での役割、社会的な使命などが来るだろう。
やれる事(Can)を考える際には、今までの自分の経験を振り返って行くと分かり易い。
取得した資格や、仕事やスポーツでの実績、長年携わってきた業務、プレゼンテーション・論理思考といった得意技などが挙げられる。
そして、やりたい事(Will)、ここは改めてじっくり考えてみて欲しい。
楽をして暮らしたい、お金の心配から解放されたい、周りから評価されたい、自分で誇れる仕事をしたいといった漠然とした願望だけなく、是非具体的なものも盛込んでほしい。ハードルを上げる必要は無い。The Bucket list「邦題:最高の人生の見つけ方」の主人公たちの様にリストアップするのも良いかもしれない。
基本的に自己認識なので、自分がそう認識していると思うのならば、何を書いても良い。粒度がバラバラでも構わない。
例えば、”世界を救う!”というのがど真ん中に来る人もいるかもしれない。これはこれで良いのだが、粒度が粗すぎるとその後の具体的な活動に結びつけ難い。”世界を救う!”ために、何をしたいのか?何が出来るのか?今、何をすべきなのか?という所で立ち往生しかねない。先ずは思うがままに書いてみて、具体的なものにブレイクダウンして、どの領域に来るのか見直したり、表現を工夫したりして、仕上げて行けば良い。
組織単位でチームビルディングとして行う場合には、粒度は重要だ。自由に書くというステップを最初に敢えて踏むのは良いが、それをブレイクダウンして行けない場合は気を付ける必要がある。漠然としか書けない場合、チームメンバーへのメッセージが十分に伝わっていない、本音を言わずに優等生的な答えに留まっている可能性がある。これでは自己認識は浅いままだし、チームビルディングも進まない。勿論、無理やり具体的に書くのでは本末転倒だが、自分の書ける範囲で出来るだけブレイクダウンしてみるステップは重要だ。
組織として行動していくのであれば、全社、部門、部、課へと方針となるやるべき事(Must)を展開して行くのがオーソドックスな考え方である。
しかし、実際にこの三つの輪を書いてもらうと、組織からの期待であるやるべき事(Must)が「漠然としていて良く分らない」という意見が多い。また、同じチーム内で行っているのに、個人間のバラツキが大きかったり、現在の業務の実態との乖離が大きく戸惑う方もいる。こうしたチームメンバーの認識の違いを見える化し、そこから実態に合った、皆が納得し、次の行動につなげる事の出来るやるべき事(Must)を描く事がチームビルディングとしてのポイントになる。
このオーソドックスなやり方では上手く行かない場合がある。新規事業の立上が正にそれに当る。前コラム 何を効率化しますか? の中でも触れたが、既存の枠組みを超えた課題解決に取組む際には、そもそもチームとしてのやるべき事(Must)を描けない事がある。この場合はこの絵をぐるっと時計回りに回して頂き、各自のやりたい事(Will)の共有から始める事が大切である。
三つの輪(やりたいが上)80%.png
ここにはもちろんチームとしてのやるべき事(Must)に重ならない私的なものもあるかもしれないが、私的な部分を共有する事で価値観の共有を進める事が出来る。こうした価値観レベルの共有から出てきたテーマがチームとしてのやるべき事(Must)になり得るかを後から検証して行くという進め方である。
既存の枠ではビジネスが立ち行かなくなってきている現在、改めてやりたい事(Will)ベースで考えていく事の重要性が増している。ちなみに、やれる事(Can)から考え始めるという進め方もあるが、それこそ既存のルールがガラガラと変わって行く世界ではお勧めできない。
 これからの事業を造っていくには思いこそが重要。
 Where there is a will, there is a way.
 初めに思いありきである。
Written by Tatsuya Yamada on 2012-11-02

何を効率化しますか?

部分最適とは何か?

既存事業、特に大企業では仕事の枠組みやプロセスは整っています。ある意味で完成形を示していると言っても良いでしょう。一般的に起きるような多く業務については、あまり非効率を感じることなくこなすことができるのではないでしょうか。もちろん、まだ成長過程にある中小企業においては十分に仕組みづくりができていないところも多いと思います。ところが、大企業では、通常のビジネスを回すための役割分担やルールは整備されており、各マネージャーはルールや前例に従って効率的に意思決定することができるようになっています。

ところが、このような大企業であればあるほど、会社の仕組みについて尋ねると、「部分最適」だと口々に言います。部分的に「最適」であるということはどういうことでしょう?
「最適」と自称できるほどの完成度にありながら、なぜ「部分最適」という言葉には不満の響きを感じるのでしょうか。実は、言っている本人も「最適」という最高の褒め言葉と自身の不満が同居していることに気づいていないことが多いのです。この点について考察してみます。なぜなら、この点がイノベーションとオペレーション(運営)あるいはオプティマイザーション(最適化)との最大の違いだからだ。

これらの部長さん方が「部分最適」という言葉を発する時の状況を注意深く観察すると、ちょっとしたイレギュラーなことをやろうとしている時であることに気づきます。例えば、少し背伸びをした開発、あるいは顧客との深い関係づくりをしようとすると、会社の仕組みが邪魔になってきます。これは、現状の業務をこなすことに特化した組織ができあがっていることの証です。なので、最近起きているような環境変化に対応しようとすると、足かせになり、部長さんも不満を感じることになります。

次のような事例は皆さんの会社にも少なからずあるのではないでしょうか。

“最近の引き合いトレンドは、技術提案を求められる”
“技術的に突っ込んだ商談が増えている”
“設計を始める前にマーケティング戦略を立てないと失敗する”
“既存の枠を超えたコストダウンが求められている”

「最適化」というのは、ある一定の条件が与えられたとき、結果を最大化することである。
例えば、特定の市場における特定製品の価格設定などは正解が求まるような格好の最適化問題である。

最適値からずれた価格設定をすると「損失」が発生し、効率が失われる。

ところが、その一定の条件が変わると、結果が最大となる条件は異なる。
例えば、同じ製品を新興国に持ち込んだ場合に、最適価格が異なることは容易に想像がつくことと思います。

さて、先ほどのよくある事例というのは、一般に仕組みの範囲外で活動することで改善することができます。
“最近の引き合いトレンドは、技術提案を求められる”  → 営業・技術間
“技術的に突っ込んだ商談が増えている” → 営業・技術間
“設計を始める前にマーケティング戦略を立てないと失敗する” → 企画・開発間
“研究テーマにビジネス視点が求められる” → 研究所・事業部間
“既存の枠を超えたコストダウンが求められている” → 設計・製造間

問題を変える

これらの例の様に、既存の枠組みを超えた課題解決をするということは、最初に与えられた問題を変えて取り組むということになる。

そもそもグラフの形が見えないので、最適値は把握できず、効率を図ることができなくなります。また、新たな変数が加わっています。当初最適化した数式すら変わったと認識すべきなのです。新たな変数が加わったことによる影響は、新たに学習する必要があります。曲線の形を知ってこそ、次の「最適化」を行うことができると認識しましょう。部門間連携と新規事業開発は程度の差はありますが、この点で同じです。どんな仕組みであれ、それはある特定の状況を効率よくこなすための手段でしかありません。

緩やかな業務変革であろうと、新規性の高い事業開発であろうと、もし既存の組織が個別最適化されていて不都合だと感じたならば、以下の点を心得ておくとよいのではないでしょうか。

  • 異なる状況で出来た仕組みには解けない事が多い
  • 新しい取り組みをする際には過度な効率を求めない
  • ベストな解でなくても、トライアンドエラーを通じて学習する
Written by Shingo Tsuda on 2012-10-26

山中先生のノーベル賞受賞の感動が冷めやらぬ中

10/8の夜。山中先生のノーベル賞受賞の記事を目にした瞬間、驚きと共に当事者でもあるかのような感動が沸き上がり、じんわり目頭が熱くなった。この感動の理由は、INDEE Japan設立に対する自分の思いを強くした約1年半前の出会いに遡る。

“医療テクノロジー”との出会い。

自分が就職を考える時には全く考えてもみなかった分野。
私は両親(DNA?!)のおかげで病院に縁が全く無い生活を送り、身近にも難病で苦しむ親族もいない。親族の中にも影響を受けるような臨床医や研究医もいない。そう考えると自分の人生において、医療という世界は最も遠い領域だったのかもしれない。

高度成長期の中、スーパーカーや宇宙開発に憧れて育ち、大学では人力飛行機開発に夢中になった。就職と同時にレーシングカーの開発に携わり、憧れの世界の内側で仕事をすることができた。縁あって日本のお家芸といわれた半導体製造装置ベンチャーの創業期からビジネススタートアップの経験することもできた。その後、ものづくり日本の復活?!という青臭いビジョンを描き、研究開発のコンサルティングに踏み入れ、数多くのトップメーカーの光と闇を見ることができた。この経験は、自分の中の事業と研究開発という断片的なパズルのピースをつなげることができた。自分の経験はすべて”ものづくり・ビジネス”という世界の深い理解に繋がっている。

どれの経験も心からワクワクできたし、寝る間も惜しんで取り組むほど楽しかった。何一つとして遠回りした印象は全くない。でも何か足らない気がしていた。贅沢な悩みかもしれないけど。まだ見ぬ自分の知らない世界を探していた。

ある日、当時のクライアントのご縁から幹細胞という世界に出会った。製品開発としては、いろいろな分野を見てきたが、医療、バイオはある意味初めて。しかし、そこには多くのエンジニアが次なる目標を見いだせないでいる他の日本メーカーの現状からは考えられないほど、未解決の課題が無尽蔵に眠っていた。いわゆるどこに向かう?何を研究開発する?やりがいは何?という議論が不必要なほどそこは課題が山積みではないか?!という純粋な驚きである。

そして先端研究をしているアカデミアという世界には、あたかも研究テーマが自分自身の人生のミッションのように必死で取り組んでいる研究者が沢山いる。「アカデミアってこんなに魅力的な世界だっけ?」とこれまでの自分の知る世界の情報の偏りを実感した。

こんな事を言うと怒られるかもしれないが、私が学生時代感じた大学に対する焦燥感は、理工学単独で課題解決できる世界の多くはやりつくされ、実用化、産業化としては疑問を感じる研究ばかりがなされていると感じる現実。この環境の中で、若手がモチベーションを維持していくのは難しい。一方、医学、薬学、生化学などの世界では数年先の実用化が期待できるような未知のテーマがごろごろ転がっている。まさに産業化との距離が非常に近い完成度の研究が行われている。

素人だからこその勘違いかもしれないがその可能性の大きさにワクワクした。

医工連携という言葉は業界の方々にとってはすでに使い古されているかもしれないが、産学連携と同様にコンセプトとしては長い一方、結果はまだまだ出ていないと感じている。まさにメカトロニクスのバックグラウンドを持つ日本の多くのエンジニアが、医学や生化学という知識との融合によるソリューションを考えることで、やりがいを実感を世界が描けるという可能性を確信した。

しかし、いくらアカデミアの研究成果が産業に近いとはいえ、そこは千に三つと揶揄される世界。事業化のハードルは限りなく高く、そして時間と資金を要する。そして大企業からの優秀な人材の流動性の低かった日本においては、こうした事業のスタートアップ経験者は極めてまれである。この領域のプロのニーズは今後確実に増えるはず。この仮説をメンバーで共有することでINDEE Japanはスタートした。

山中先生のノーベル賞受賞は、再生医療領域はもちろんのこと未来に夢を馳せている研究者に多くの勇気と自信を与えてくれたことは間違いない。そして、世界中の注目を浴びることで、研究予算、規制の見直しによる技術の進歩に拍車が掛かるとは間違いない。

そして、今そうした変化、進化していく医療テクノロジーの波の中に自分達が飛び込んだ事への追い風とその先に立ちはだかる様々な困難へのやりがいを実感している。

現状の研究開発に悶々としている研究者、技術者のみなさん!チャレンジできる課題はまだまだありますよ。世の中の変化を受け入れる努力を惜しまないかどうか?ではないでしょうか。

Written by Tatsuro Tsushima on 2012-10-19