新規事業の関門

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明けましておめでとうございます!
INDEE Japanも6年目に突入し、ここまでにご縁を頂いたプロジェクトの成果をきっかけに、新たな展開と発展のある1年となると思います。「イノベーション」というテーマにありながら、引き続きしっかりとした成果を出していく所存です。
2017年もどうぞ宜しくお願いいたします。
さて、昨年末に実施したアンケート調査から面白い結果が得られたので、ちょっと共有させてください。
こちらのグラフkadai.pngにあるように、新規事業ではアイデア着想が一番大変だ、と認識されている方が多いようです。
そして、同じくらい大変なのが、やっと出たアイデアを承認してもらうこと
この2つの課題認識が60%を占めています。
しかも、アイデアを出す上で難しいと感じている方の約80%は「ニーズに確信をもてない」という理由を挙げています。ビジネスモデルを理由に挙げている方も少し存在しますが、シーズよりもニーズにより大きな課題がありそうです。
これはとても興味深い結果です。
アイデア出しを改善するために、「ブレーンストーミング」や「アイデア募集コンテスト」といったシーズ側の取り組みが目立つ一方で、「ニーズがわからない」のですから、不安になるのもやむを得ないと言えるでしょう。また、こうした取り組みの結果、アイデアの数がいくら増えたとしても、ニーズに合っているかどうかは運任せのままというのは理想とは程遠い状態です。
さて、「アイデアを出す」ということは、多様かつ大量の情報をインプットし、繋げるという一連の作業です。その中で、「繋げる」作業はワークショップで改善できることです。しかし、「インプット」に関して2つの情報が圧倒的に不足していることが経験上感じます。
1つは、他の業界や海外でどのようなサービスや商品がウケているかという情報。
もう1つは、そもそも人は何を、なぜ欲しがっているかという情報。
前者は、最新の技術シーズを理解する上でも役立ちますし、幅広いニーズを把握する上で具体的なアイデアの種になります。
後者は、アイデアを出した後に待ち構えるいくつもの難関を乗り越えるための必須要件です。
いかなるシーズもニーズと結びつくことなく成功することはありえません。ニーズに注目すると、JOBSメソッドのような総合的な手順、顧客インタビューやエスノグラフィーのスキルなども大切ですが、人に対する興味意思に対する意識行動に対する内省が長い目では効いてくるのではないかと思います。ビジネスがあって人がいるのではなく、人がいるからビジネスが必要とされているのですから。
Written by Shingo Tsuda on 2017-01-06

大企業がアクセラレーターをやる意味

最近はメットライフが最近立ち上げたCollabや東急アクセレートプログラムのような「ポストアクセラレーター」「スケーラーレーター」と呼ばれる施策を取り入れている企業が増えています。これはとってもいい流れだと感じています。

元来、アクセラレーターは資源のないシード期やアーリーステージのスタートアップを発掘し、投資・育成するのが狙いですが、大企業の持っている資源は貯蓄とリスク回避の結果の賜物なので、どうなるかわからないようなスタートアップにスパッと使うような価値観を持ち合わせていません。むしろ、プロダクト・マーケット・フィット(PMF)の検証を終えたベンチャー(厳密にはこのステージに来るとスタートアップと呼ばない)とコラボをして双方にとってのシナジーを創り出すのがこのポストアクセラレーターやスケーラーレーターの狙いです。

目に見えないもの

大企業は優秀な人材、資本、信頼のブランド、顧客基盤、設備、どのアセットを見てもスタートアップを圧倒する力を持っています。しかし、イノベーションの歴史を見ても、そして社内の新規事業で頑張っている人たちを見ても、イノベーションを阻害するものが山積みなのも事実です。

部分が良くて、全体がダメだということは組み立て方が間違っているからで、「仕組み」「プロセス」という言い方をする人や、KPIや戦略に起因すると考えている人もいますし、クリステンセンのように「価値観」「行動規範」だという人もいます。

それを部分的に打開し、ベンチャーのような仕組みで動く別部隊を立ち上げている企業が増えています。古くは社内ベンチャー制度が流行し、その後CVCのようにベンチャーキャピタルを模したアプローチ、近年では企業内アクセラレーターを導入する企業が増えています。

導入したはよいけれど、必ずしもうまく動いている訳ではないのでしょうか。しっかり予算割り当てて、トップもコミットし、人数も掛けている。しかしうまくいかない。


それは、目に見えるものばかりに対処しているからです。その結果、目に見えないものに足を引っ張られて、イノベーションが頓挫します。ブレーキ解除を忘れてアクセルを踏んでいます。前述した「仕組み」「プロセス」「KPI」「戦略」は目に見えます。しかし、「価値観」や「行動規範」は目に見えません。目に見えないものを変えるのは骨が折れますし、本当に変わったかどうかを検証するのはさらに難しい作業です。どこかのコンサル会社による「戦略」で変わると思うのは相当楽観的な考えではないでしょうか。

価値観に合うもので「違うもの」

価値観に合うものでも新しいものは存在します。時代に合わせる力を持つベンチャーがいたら、自社の資源をそこに投入し、今の時代に適合したビジネスモデルイノベーションを起こすことは可能です。例えば、メットライフはデジタルの力を活用した保険ビジネスを展開するベンチャーを探しています。東急アクセラレートプログラムは沿線住民の課題の変化に適合した商品やサービスを募集しています。スケーラーレーターという名前どおり、PMFの検証が終わったものであれば、スケールを求めて大企業と組むのはどちらにとっても理に適ったやりかたです。

たまに、シードやアーリーのスタートアップに関われないことを自嘲気味に語る人がいます。ですが、人のダイバーシティーが求められるように、企業のダイバーシティーだととらえた方がよいのではないでしょうか。皆さんどう思います?

Written by Shingo Tsuda on 2016-12-05

KLIでやってはいけないこと

前回はイノベーションの進捗をはかる指標としてKLIをご紹介しました。
「行動した結果、どんな学習をしたか、どれだけ顧客のことを理解したか」を
評価指標としておいても、それだけでは人はなかなか動けません。
そもそも新しいことをやるのには抵抗があるし、
それを慣れていないやり方でいけないとなれば、なおさらです。
その気にさせるのが先か?
まずは黙ってやらせてみろなのか?
有名な
「やってみせ
 言って聞かせて
 させてみて
 ほめてやらねば
 人は動かじ」
の一節が頭をよぎります。
社内にイノベーターのメンターがいれば良いですが、そもそもそういう人がいなくて困っているわけなので「やってみせ」の段階でつまづいてしまうのが現状です。
思考よりも行動、行動することで一次情報を得る
結論としては、ここは、「とにかく行動させる」ということに尽きます。
だからと言って、「イノベーションを起こせ!」「ビジネスチャンスを見つけろ!」と掛け声をかけるだけでは空回りします。
もう少しフォーカスを絞りましょう。
KPIで言うと結果系だけでなく、そこに至る過程となるプロセス系の指標を追加するイメージです。
行動の方向性を示す前に、そもそも、なぜイノベーションが必要か?という認識を醸成しておくことが必要です。
危機感だけだと余計既存ビジネスを守る方向にも走りやすいので、既存ビジネスで稼ぎつつ、イノベーションへの新規の投資を続けることを大方針として打ち立てる必要があります。ここは仕組みを作るというよりも、トップや部門長の本気のメッセージでしか示すことはできません。
方針が示されて、どんな分野を狙えば良いのか(目指すべき成長分野)、どんなビジネスが求められているのか(自社の顧客ベースや組織能力に対しての新規度合い)、事業コンセプト(ハードウエアからサービスへのシフト等)が見えてくると、そのためにとるべき行動を考えやすくなります。また、ここが具体的に示されるほど、トップの本気度は伝わります。反面、賛否も別れます。停滞した組織にインパクトを与えるには、賛否が大きく分かれるぐらいの劇薬が必要なときもあります。
この辺りがイノベーションマネジメントとして工夫すべき最初のポイントになります。
  KLIを設定するときにやってはいけないこと①: 結果系だけを定義する
やることだけではなく、やらないことを決める
プロセス系のKPIを設定するときには、やることだけでなく、やらないことを決めることも必要です。
イノベーションも、やりましょうだと、結局やらずに終わってしまいます。退路を絶ってまでやらせるとなると、やる側もやらせる側もハードルが高くなりますが、失うものが多すぎる大企業の中で敢えて取り組ませるには、既存のしがらみから解き放つ必要があります。
一つのやり方としてよく紹介されるのが、__%ルールです。
ここで注意しなければいけないのは、「やってもいいよ」では機能しないということです。
3MやGoogleの成功例は、”やりたいことで価値を生み出したい”、”単におもしろいことをやりたい”というモチベーションを持った人が沢山いるという前提があります。こうした文化がない企業で導入しても、よほど余裕がある人か、本業が上手くいかない人の加点狙いに使われてしまいます。
「やってもいいよ」ではなく、「やれ!」にすると行動は少し変わってきます。好きにやれと言われても・・・という人には明確なテーマを与えたほうが効果的です。ただし、この場合はテーマをどう選ぶかという課題が残ります。会社としての取り組みテーマを示せていないと実行できません。
もう一つは「やらないことを決める」です。これには既存の研究テーマに期限をつけて強制退場させるという、相当現場から反対を受けそうなものもありますし、もう少しソフトにテーマそのものは変えないにしてもアプローチ方法を変えさせるというやり方もあります。
要は、「同じテーマに同じアプローチで取り組み続けて、いつまでたっても進展がない」という事態をなくすのが目的です。惰性で続けてしまっているプロジェクトを見つけたら、テーマとアプローチの双方での見直しをオススメします。
  KLIを設定するときにやってはいけないこと②: やることだけを定義する
Written by Tatsuya Yamada on 2016-11-30

トランプ当選の影響なんて〇〇!

アメリカの大統領選挙はトランプ氏が勝ち、多くの人の予想と期待(自分も含め)を裏切った結果となりました。

FacebookやTwitterのタイムラインには、結果を受け入れらない人たちの絶望的なコメントが流れます。越境してカナダに住むことを真剣に考える人も激増したようで、トランプ政権下でどのような国になるのか、不安が渦巻いています。

日本でも、TPPや在日米軍の件など、人々は不安を抱え、メディアが増長しているように感じます。

 そんなとき、スタートアップ情報配信を行なっているCB Insights(自身もスタートアップである)のCEOが配信したブログが素晴らしかったので、共有しておきたいと思います。スタートアップ経営者ならではの視点ですが、誰にとっても何が大事なのかシンプルに書かれています。 ブログ原文はこちらです(許諾を得て訳しています)

タイトル:Memo: What Does The Election Mean For Us? (社員向けメモ:我々にとって選挙はどのような意味を持つのか?)



答え:雑音は無視しましょう 



CB Insights社では、月次のミーティングを開催し、財務業績や他の重要な指標を全社で共有しています。この全社ミーティングの最後には質疑を交換します。
今月は木曜日でした。ちょうど、選挙の後です。「我々にとって選挙はどのような意味を持つのですか?」という質問が何度か挙がりました。
下記がCB Insightsの共同創業者であり、CEOのアナンド(@asanwal)が送ったメモです。


皆さん、

月次ミーティングでは上手に答えることができなかったので、もう一度この場でトライさせてください。 

多くの皆さんが結果に驚き、またおそらく落胆していることを知っています。移民の息子であり、小さな娘を持つ父として、正直言うと、個人的な理由から違う結果を望んでいました。しかし、現実には制度があり、結果が出た以上は好きか嫌いかにかかわらず生きて行くしかありません。それがこの国の良いところでもあります。

もちろん、市民として政治にかかわることで変化を生み出すことはできます。しかし、それは個人としての判断であり、今回は違う観点で話をします。

これまでの話で私がどちらに投票したかはお分かりだと思います。しかし皆さんの投票活動は自由ですし、私は関与しません。

皆さんがヤルことをヤって、ヤルことが優れていて、つつましく、周囲を尊重する良きチームメイトであること以外はまったく関係のないことです。

政治批判をしたいわけではありません。

質問はCB Insightsに対する影響についてですので、本質的には政治的なテーマから、政治的な側面をなるべく取り除いて答えていきたいと思います。

続きを読む トランプ当選の影響なんて〇〇!

Written by Shingo Tsuda on 2016-11-23

KLI (Key Learning Indicator)を設定しよう

以前書いたように、イノベーションとは「何か異なるやり方で、インパクトのある価値を生み出すこと」です。

インパクトのある価値が生まれるかどうかは、やってみなければ分からないので、重要なのは異なるやり方を試すことです。(実はイノベーションの世界もいろいろ研究されてきており、成功確率をあげる方法はいろいろとありますが)やらないと、インパクトを生むことはできません。

異なるやり方って何なんだ!と思われた方へ、

平たく言うと「慣れていないことへの挑戦」です。

自戒を込めてなのですが、慣れていないことをやるのは誰でも嫌なものですよね。

しかも、イノベーションの世界は不確実性が高いので、頑張ってやったとしても成果が上がるかは分かりません。

かといって、慣れていないことに挑戦しなければ(やり方を変えなければ)、得られる結果は従来と同じです。

「Innovate or Die …」

「やらなければならない・・・」という空気はしだいに現実味を帯びて、様々な業界を侵食しています。

とはいえ、一般的な願望としては、「なるべく楽して儲けたい」ですよね。

「楽して・・・」というと反論もあるかと思いますが、ドMの人は別として、なるべく効率的にビジネスを進めたい誰しも思うのではないでしょうか。

成熟した大企業でイノベーションを起こすにはどうすればよいのか?

危機感の醸成、啓蒙、トレーニング等、人材に働きかけるソフトな取り組みはいろいろありますが、制度として行動を促し、方向性を示すものも必要です。

既存事業と新規事業のKPI

すでに行なっている既存事業であれば、今期の売り上げのようにKGI(Key Goal Indicator)を設定し、顧客の訪問数、提案に至った回数、受注件数をKPI(Key Performance Indicator)にするという具合に、KPIの設定はイメージしやすいものとなります。

しかし、イノベーションではこうは行きません。新製品の投入率、戦略的な特許の取得件数、イノベーションパイプライン強度(イノベーションプロジェクト数 x 将来の収益の見込み)といったものもありますが、定量的とは言い難いですし、何より人の行動を促すという点で不十分と言わざるを得ません。

KLIとは何か?

では、どうすれば良いか?

お勧めしたいイノベーションのKPIは、ずばり!どれだけ学習したかです。

イノベーションの実行が難しいのは、不確実性が大きいからです。

プロジェクトの先行きは見えないし、顧客が買ってくれるかどうかも不明。さらに、思いがけないコストが乗っかってくる可能性もありますし、仕入先の品質も安定していないこともよく起こります。

そのように数多く存在する不確実性が減少することがイノベーションプロジェクトの進捗といってもよいでしょう。

したがって、新規事業のKLIとして、未知数として知らないことや、仮説に過ぎなくて不確実なことが減っているかどうかを計測してはどうでしょうか。

「ザ・ファーストマイル」には、2つの重要なツールが紹介されています。

一つは、仮説を重要度によって分類する方法です。これは、仮説(つまり、いずれ学ばないといけないこと)の重要性と確信度から、仮説検証の優先順位を決めるツールです。

もう一つは、確実性の遷移表です。事業の確実性(もしくは不確実性)を測り、事業として進捗している度合いを見る方法です。

この2つのツールを参考にKLIを設計してみてはどうでしょう。

勉強と学習

最後に、学習と勉強の違いに触れておきましょう。

これまで「学習」という言葉を選んで使っています。

しばしば「知る」こと「勉強」することと混同されていますので、説明します。

「勉強」は事実の確認に過ぎないが、「学習」には再現性を求める。

例えば、「火を触るとヤケドをする」と知ることと、「ヤケドをしない所作」を学ぶことは違います。

KLIというと、ついつい分厚いレポートをたくさん読みたくなりますが、それは入り口にしか過ぎません。

  • この業界はこうなっている (勉強)

  • この業界ではこうすれば売れる (学習)

この2つの表現を見てわかるように、勉強はあくまでも過去の事実やその仮説でしかありません。それに対して、学習は検証された仮説です。

このように、学習の観点を加えてイノベーションプロジェクトを進めてみましょう。

Written by Tatsuya Yamada on 2016-11-09