INDEE Japanメンバーが、今注目しているスタートアップ5選 (ジョブの分析付き)

Written by 加藤 寛士 on 2020-08-11

本記事では、現在INDEE Japanメンバーが”個人的に気になっている”スタートアップを1社づつ紹介し、ジョブ理論を用いた分析を行います。好評であれば、毎月継続していきたいと考えていますので、もしよければコメントなどいただければ幸いです。

津嶋 : INDEE Japanマネージングディレクター

概要

なぜ注目しているのか?

ZWIFTは、家庭にあるロードバイクの室内用トレーニング器具をインターネットに接続し、実際にペダルを漕ぐことでバーチャルなレースに参加することができるオンラインゲームです。「ゲーム」とは書きましたが、その実態は本格的なトレーニングツールの様相を呈しており、プロアスリートも日々活用しているトレーニングプラットフォームともなっています。

ZWIFTが面白いのは、自社ではシステムに必要なデバイスを開発も販売もしていないところです。ZWIFTは、様々なメーカーのデバイスを「ハック」し、ソフトウェア的に「ZWIFT対応」を実現することで、異なるメーカーのデバイスを使っているユーザーでもゲームに参加できるようなプラットフォームを形成しました。

ZWIFTのこれまで世界に存在しなかったサービスを作り出すにあたって、自らがビジネスを行うための新しい市場を「プロダクト開発」によって作り出すのではなく、「ハック」によって作り出しているところに興味深さを感じています。

 

 

ジョブ理論による分析

ジョブについて

ロードレースやトライアスロンにシリアスに取り組む際に必要となるロードバイクトレーニング。目標としているレースまでに、持久力やペダリングの技術を身につけ、地震の力を最大限に引き出す戦術を構築するためには、絶え間ない練習が必要となります。

既存解決策の問題

ロードバイクで本気でトレーニングすると、バイク並みのスピードが出てしまうため、安全なトレーニング場所を確保する必要があります。

しかし、交通状態・路面の状態・気象条件などが理想的な場所はどこにでもあるわけではありませんし、あったとしてもそこに移動するまでにも時間もかかってしまいます。そうした課題に対応するために、エアロバイクなどの室内トレーニング器具も開発されてきましたが、そうした方法で「気持ちの張り」を維持して追い込んだトレーニングを行うことはなかなか難しいという課題もあります。

解決策の優位性

ZWIFTは室内トレーニングですので、場所や時間を問わずに安全に取り組むことができます。また「様々なコースへの挑戦」「レース」「記録が残る」「ソーシャル」というゲーミフィケーション要素をモチベーションを高めるために取り込んでおり、最後まで気持ちの張りを保ったまま追い込んでトレーニングを行うことができます。

津田 : INDEE Japanテクニカルディレクター

概要

なぜ注目しているのか?

ExcelやGoogle Spreadsheetのスプレッドシート競争の上を行く、SaaSならではのデータベースも融合したソリューションは注目です。「表計算」という言葉が死語になるとしたら、こういうソリューションなのかもしれません。せっかく存在する無限の計算資源を2次元に詰め込まず、データベースを表、カンバン、ガントチャート、カレンダーなど、簡単に色々な見せ方ができます。

すでにユニコーンなので、多くの人がすでに注目してはいると思いますが、敢えてご紹介したいと思います。

 

 

ジョブ理論による分析

ジョブについて

「膨大に存在するデータを色々な切り口で整理したい」というジョブは仕事や生活の多くの場面で発生しており、デジタル技術が普及した現代では非常に普遍的なものであると言えます。

既存解決策の問題

表計算ソフトでは、大量データや複雑なデータを関連させて取り扱ったり、用途に応じて見せ方を自在に変えることには限界があります。一方で、データベースを扱うためには技術的な準備が必要で、誰にでも手軽に扱えるというものではありません。

解決策の優位性

Airtableは、誰にでも扱うことができる表計算ソフトのような操作感を実現しつつ、これまではデータベースを使わないとできなかった、データ同士の関連の設定や用途に応じた見せ方の変化を拡張的かつ直感的に付与することもできます。表計算ソフトにはなく、データベースにはある各種機能の利用について、スキル面でのハードルを下げることで広く支持を獲得し初めています。

山田 : INDEE Japanトレーニングディレクター

概要

なぜ注目しているのか?

チャレンジ社が販売しているEQG-Ⅲは、地震において大きな揺れの到来の前兆となる微細な揺れの到来を読み取り、通知する地震計です。

ユーザーが共同してコストを負担して、1つの会社が提供するサービスを享受するという中央集権的なビジネスのエコシステムがもてはやされている昨今、「地震」と「通知」というキーワード聞けば、緊急地震速報システムを連想する人がほとんどではないでしょうか?

しかしチャレンジ社には、そうした戦略の裏を行くからこそ生まれる価値を提供しています。具体的には、どのような価値でしょうか? 以下、ジョブ理論を用いた分析をご参照いただければ幸いです。

 

 

ジョブ理論による分析

ジョブについて

チャレンジは”揺れる前の10秒が命をつなぐ”という価値を掲げています。チャレンジの地震計は、大きな揺れの到達に未然に備える時間を作り出すことで「地震から命を守る」という非常に重要度が高いジョブに取り組むことを助けています。

既存解決策の問題

地震の到来を未然に知らせる仕組みとして、日本では緊急地震速報がよく知られています。しかし、緊急地震速報は全国の要所要所に設置された地震計から集めた観測データを用いて通知を行う仕組みであるため、直下型の地震では揺れる前の通知が間に合わない場合があります。病院 ・ 学校 ・ 工場というようなわずかな通知時間の差が生死をわける可能性がある場所ではこれは大きな課題です。
また、緊急地震速報のようなシステムを構築し運用していくためには数百億円もの投資が必要となるという課題もあります。そうした公共投資が難しい国では、地震の到来を通知するシステムにはより確かな需要があります。

解決策の優位性

チャレンジの地震計を用いれば、病院・学校・工場のような、とくに地震のリスクが高い場所に直下型地震に対応するための”命を守るための数秒”を作り出すことができます。また、巨額の公共投資が難しい国においては、直下型地震以外の地震の発生通知も含めて対応ができる方法としてより大きな価値を発揮します。

星野:組織開発・事業開発ディレクター

概要

なぜ注目しているのか?

続きまして、少し身近な言語関連のサービスをご紹介します。会話の文字起こしや機械翻訳などのツールはAI技術の急速な普及を基盤として精度が加速しています。従来はGoogleなどによって誰でも使えるようにサービス化はされてはいたものの、アウトプットにはかなりの手直しを加えないと十分な精度はならす、結局人の手で翻訳をしたほうが効率が良いという状況にありました。

ししかし、「会話や動画・音声ファイルから自動的に文字起こしを行うotter」 や「ソーシャルに学習をおこなって成長するAIを活用した高精度機械翻訳である DeepL 」に触れて、そうした昔の印象は大きく変化した感を受けました。またこの技術の発展によって、より身近な存在になると思いますので、皆様にも紹介させていただきたいと考えています。

 

ジョブ理論による分析

ジョブについて

企業においては何かと情報をまとめるという業務が付きまといます。議事録を作る、イベントの参加報告を行うといった業務には未だ多くの方が携わっていることでしょう。特に外国語で行われた講演を人に伝えるための文字起こしに苦労されている方は多いのではないでしょうか。英語が堪能でない方にとってはリスニングだけでは苦しいので録音して後で何とかまとめようという流れで取り組んでいたでしょう。この手間を減らしたいというジョブは昔から今もなお残るものでした。

otterとDeepLを組み合わせるとそうした翻訳のジョブを機械的に解決できます。(otterで動画や音声から自動生成したテキストファイルに対して、deeplを用いて機械翻訳をかける)

既存解決策の問題

外国語の音声を日本語に文字変換する時には、外国語の音声を外国語の文字にする、次にその外国語を日本語に翻訳するというステップを踏みます。ところが従来のツールは精度がイマイチで手直しが多く発生し、工数が発生するという悩ましさがありました。この工数が避けなかったり納期がタイトな場合は、致し方なくコストを掛けて翻訳家・専門家へ依頼していたことでしょう。

解決策の優位性

文字起こしのOtterと翻訳のDeepLはどちらも精度が高いことが特徴です。これによって音声データ→Otter(文字起こし)→DeepL(翻訳)で日本語らしい文章に変換してくれます。少しマニアックな単語は手直しも必要だが、それもAI学習を重ねることで改良されることが期待されます。

実際、今回のコロナ禍によって海外カンファレンスが軒並みオンライン化したことを受け、オンラインカンファレンスにいくつか参加しましたが、時差があるのでライブでは参加せずに配信されているビデオを2つのツールで日本語変換し、ストレスなく内容をキャッチアップできました。

この2つの技術が連携すると、多くの人が海外のTVやライブ動画を精度の高い同時通訳と共に、一部のインテリではなく多くの人が海外の情報を身近に楽しめる日も近づくのかと想像せざるを得ません。

加藤

概要

なぜ注目しているのか?

特定の状況下で、不快な身体症状とともに強い不安感に襲われてしまう不安障害という病気。例えば「学校or 会社に行く」というようなことが特定の状況になってしまうと、学校や会社に行くことができなくなってしまいます。魔法アプリは、VR技術を用いて不安障害の治療をサポートするサービスです。

私自身は不安障害になった経験はないですが、知人が不安障害によって学校や仕事をやめてしまったのを見てきた経験から「不安障害の人も、再び自分らしく社会の中で活動できるようにする」という課題には注目してします。

こうした技術の普及によって、不安障害になってしまっても思い通りに人生を生きることを諦めない人が増えていくと良いですね。

ジョブ理論による分析

ジョブについて

現代社会において「学校や会社に行く」というジョブは、患者の人生に大きな影響を与えるため、当事者にとって重要度が非常に高いことが特徴と言えます。

既存解決策の問題

不安障害の治療に有効と言われている暴露療法は、少しづつ不安を引き起こす「特定の状況」慣らしていくことで行われます。具体的には、実際に少しづつ学校や職場にいる時間を長くしていくことで、不安による発作を起こす必要がないことを心身に教える過程を繰り返して行います。

しかし暴露療法では、「療法を受ける最中に発作が起きてしまうのでは?」という不安感から療法を受けること自体に強い恐怖感を抱く患者も多くいます。こうした恐怖感は、予期不安と言われ実際に「特定の状況」に置かれなくても、想像しただけで発作が起こるなど、より症状が悪化してしまうケースも有るようです。

解決策の優位性

暴露療法のプロセスにバーチャルリアリティーを用いることで、安全な場所で自分のペースで治療に取り組むことができます。また、もし暴露療法中に症状がでてしまっても誰かに迷惑をかけることもないため、心理的な負担なく予期不安を軽減しながら治療に取り組むこともできるのではないかと期待しています。

ひとりでできるジョブ調査

Written by 加藤 寛士 on 2020-07-10

近年、マーケティングや新規事業開発の場面で「大事だ、大事だ」といわれるようになってきたジョブ理論ですが、正直なところなんだか「わかったようでわからないモノ」であると感じていませんか?

弊社のクライアント様も「ジョブ理論は、実際に現場で使いこなせるようになるまでに大変な修養が必要」と誤解されていることがよくあります。 (ジョブ理論は、応用の幅や可能性が非常に大きいものではありますが、どんな規模・どんな段階にあるビジネスに於いても気軽に使い始めることができるものです。)

そこで本記事では、ジョブ理論を初めて知った人でも消費者からジョブを聞き取ることができる方法をSTEP BY STEPでご紹介したいと思います。


売れてる商品には必ずジョブがある

復習になりますが、ジョブというのは「顧客が片付けようとしている用事」のことです。( ジョブの考え方にあまり馴染みがない方は、こちらで概要を解説していますので確認してから読み進めてください。) これは別の視点から捉えると、「人はいくら良いモノだからといっても、理由もないのに買い物しない」ということでもあります。

そして、クリステンセン教授がジョブ理論で示したのは「売上をあげるために、まず顧客が購買に至る理由を分析してみるべし」ということでした。日々消費者としても買い物をされている、皆さんからしたら「それはそう」と感じたのではないでしょうか?


ジョブが「わかったようでわからないモノ」に感じられてしまう理由

自分が消費者のときはしっくりときていたはずのジョブが、売る側に立ったとたんに「なんだかわからない」と感じてしまうのはよくあることです。私は、主な理由は2つあると考えています。

まず、人がモノを買うからにはジョブは確実に存在するのですが、一般に消費者は購買の理由を描写できるほどの「明確なジョブの自覚」を持っていないということがあります。濃い霧の中で自分の手のひらを見るときのように、近くに存在することは確かでも、よく見えてはいない状況にあることが多いということです。

つぎに、「ジョブのようだけどジョブではないもの」の存在があります。このことについては今回は深入りしませんが、要は「ジョブとジョブでないもの」を区別する必要があり、それがややこしいことがあるということがあります。


誰でも使える! ジョブを聞き出す6つの質問

そこで、そうしたジョブ理論にまつわるややこしい話やトリビアル理屈をいったんわきに置いて、ジョブ理論の現場での活用をはじめることが出来ないか?という狙いで、消費者からジョブを聞き出すことができる究極の6問をまとめてみました。

今日ジョブ理論を知った人でも使いこなすことができるように。そして、ジョブにまとわりつく霧を払うことができるように構成しています。

なお、調査対象となる商品をitemと記載していますので、調査したい商品に書き換えて使ってください。( 究極の6問は、ゲーム機、コーヒー、通勤電車、どらやき、ファミリーレストラン、旅行予約サイト など toCの商品やサービスを想定しています )


究極の6問

  1. itemに1年でいくらぐらいお金を使いますか? 概算で教えて下さい
    • —– 円
  2. 普段itemを使って何をしていますか?思いつく限り(できれば3つ以上)箇条書きで列挙してください。列挙が終わったら、列挙した中で、自身にとって最も重要なものに◎、次に重要なものに◯をつけてください
  3. itemを◎をつけた目的で使うときに、何をしていることが多いですか?思いつく限り箇条書きで列挙してください
  4. 普段itemを◎をつけた目的で使うときに、気分や心理状態にどのような変化がありますか? 複数ある場合は最もよくある変化について教えて下さい
  5. もし、itemを◎つけた目的で使うことができないとすれば、あなたの生活はどのような変化がありそうですか?最も気になる変化を一つだけ教えて下さい
  6. もし自分がitemを開発・販売する立場になるとしたら、◎つけた目的で使うために、どんな点を改善・改良しますか? 一つだけ教えて下さい

※こちらから6つの質問を使った調査を行うための調査票をダウンロードできるようにしてあります。必要な方は、編集・印刷してご自由にお使いください


究極の6問の使い方

1問目について、商品の性質上1年という期間設定がふさわしくない場合は適当に書き換えて使ってください。(例えば、調査テーマが自家用車などの場合は、5年程度にしたほうがよいでしょう)

調査票を消費者に渡して記入してもらうか、本記事を見ながら聞き取りを行ってください。消費者がつかまらない場合は、まず上司・同僚・部下・知人・家族・自分などで試してみても発見はあると思います。より確かな回答を得たいと感じたら、消費者へのインタビューをセットアップしてくれる調査会社を探してみましょう。

調査票が集まったら「結果の読み解き方」を参照しながら、読み解きをしてください。itemはどのようなジョブに基づいて購入されていて、どのような改善が推奨さそうか、ジョブ理論を用いてたくさんのヒントが得られるはずです。


結果の読み解き

  1. itemに1年でいくらぐらいお金を使いますか? 概算で教えて下さい
    • 回答の金額の平均や最大値が大きければ大きいほど、市場やビジネスチャンスも大きいということです。得られた回答をもとに市場規模を推測してみましょう
    • なお、ヘビーユーザー(オタク)は一般の消費者とは全く異なる回答をする問いなので、調査対象者がヘビーユーザーであるかどうかは見極めてから結果を読み解くようにしましょう
  2. 普段itemを使って何をしていますか?思いつく限り(できれば3つ以上)箇条書きで列挙してください。列挙が終わったら列挙した中で、自身にとって最も重要なものに◎、次に重要なものに◯をつけてください
    • メインとなる質問です。この質問で列挙されたものがジョブとなります
    • ◎や◯がついたものは、回答者にとってとくに重要なジョブです
  3. itemを◎をつけた目的で使うときに、何をしていることが多いですか?思いつく限り箇条書きで列挙してください
    • 本問ではジョブに対応する「状況」がわかります
    • クリステンセン教授はその著書群の中で「ジョブは状況とセットにして考えなければいけない」と何度も言及しています (それだけ重要なものであるにもかかわらず、「状況」をおろそかにして考える人が多いということでしょう)
    • 状況」は、なぜ消費者がそのジョブを重要と考えてるのか?どうすれば消費者をもっとうまく助けることができるか?を考える有力なヒントになります
  4. 普段itemを◎をつけた目的で使うときに、気分や心理状態にどのような変化がありますか? 複数ある場合は最もよくある変化について教えて下さい
    • クリステンセン教授はジョブを網羅的に抽出するために、機能的ジョブ・社会的ジョブ・感情的なジョブの3つの視点を使う方法を紹介しています
    • 究極の6問の2問目に対する回答では、機能的ジョブや社会的なジョブが列挙されることが多いのですが、感情的なジョブは見逃されることが多いのでこの問題で改めて確認します
    • 感情的なジョブは「使いやすさ」や「体験」の観点から商品を改善する有力なヒントになります
  5. もし、itemを◎つけた目的で使うことができないとすれば、あなたの生活にどのような変化がありそうですか? 最も気になる変化を一つだけ教えて下さい
    • 本問では、消費者がジョブを重要だと思う「理由」を探ります
    • 「理由」が消えるとジョブは極めて弱くなり、商品が不要になることがありますので、理由を知っておくことは非常に大切です ( 例えば、学校を卒業すると「学校に学生として所属したい」というジョブのために購入された制服が不要になる )
  6. もし自分がitemを開発・販売する立場になるとしたら、◎つけた目的で使うためにどんな点を改善・改良しますか? 一つだけ教えて下さい
    • 本問では、itemのジョブに対する満足度と満足できてない点を確認します
    • 満足度を高めることができれば、類似商品から一歩抜きん出たステージで消費者の支持を集めることが出来ます

まとめ

「高度に習熟していないと使えない」と誤解されがちなジョブ理論ですが、本記事がきっかけとなって実際に現場で使える豊かな発想をもたらすジョブ理論の効用を体感していただければ幸いです。

究極の6問をご活用にいただくにあたって、理解しにくい部分や疑問などがあればぜひメッセージください。本記事に加筆・改定を加えつつお答えしていこうと思います。


プロユースのジョブ調査のご紹介

最後に少しだけ宣伝をさせてください 。

弊社では、本格的なジョブ調査をと分析行うサービス、ジョブセグメント市場分析とファーストサーチを提供しています。

  • ジョブセグメント市場分析 (通称:ジョブレビュー)
    • ョブレビューは定量調査型のジョブ調査です
    • 調査テーマとなった商品についてのネットリサーチを行い、市場をジョブベースのセグメントで切り分けて、セグメントごとの重要度・満足度・消費金額ベースのシェアを算出し、レポートを作成します
    • 市場に顕在化しているジョブを定量的に評価することができるので、最初に行うジョブ調査や定点での調査におすすめです
  • ファーストサーチ
    • ファーストサーチは定性調査型のジョブ調査です
    • 弊社に所属する各分野におけるジョブ調査のエキスパートがインタビュー形式で調査を行い、レポートを作成します
    • 究極の6問やジョブレビューでは不可能な、市場に顕在化していないジョブの探索も行うことが出来ます
    • 先行してジョブレビューを行い、次にファーストサーチを行うことで、より特定のジョブに対する理解の解像度を高めたり、特徴的な回答をした消費者にインタビューを行うこともできます

どちらも弊社が、大企業からスタートアップまで新規事業開発の支援の実際の場面で培ってきた、ありったけのノウハウを詰め込んだ分析を行うサービスです。


究極の6問よりも、広く深い系統的な調査を検討されている方は、ぜひ弊社担当( indee_web@indee-jp.com ) までご相談ください。

筆者もジョブレビューの開発には深く関わっています。手前味噌ではありますが、クオリティには正直自信があります。ジョブレビューを通じて、皆様のビジネスの発展に貢献できること楽しみにしております。

「1億人に歯磨き粉の常用を習慣化させた男」と 「1億人に日常的な運動を習慣化させようとしている男」

Written by 加藤 寛士 on 2020-07-06

今日多くのサービスがユーザーに継続して使ってもらって、初めて提供者に利益をもたらすビジネスモデルを採用するようになりました。

提供者側が対価を受け取る前にユーザーに使ってもらって、良さをわかってもらい、さらに習慣的に使ってもらう」というビジネスモデルです。横文字で”サブスクリプション”なんて言われて、最近もてはやされてもいるようですね。(S製薬のDリンクル方式(?)といえばイメージしやすいでしょうか。)

選択肢過剰社会でビジネスを行う場合、新規顧客獲得コストが最も高くつくためにこのようなビジネスモデルが流行しているのだと思います。


一方で、普通は新しい習慣を身につけることはユーザーに大きな負担を強いることも忘れてはいけないでしょう。習慣化を達成するためには、例えば以下のような問題がすべてクリアされている状況を維持する必要があるからです。


  • 時間問題
  • お金問題
  • 周囲の理解問題
  • 上手にできない問題
  • やめる言い訳が思いついてしまう問題
  • なんだかどうでも良くなってくる問題
  • どうしても飽きてくる問題
  • 気分が乗らなくなってくる問題
  • すぐに効果が得られない問題

そこで多くのサブスクリプション型のビジネスでは、ユーザーにそうした数多の困難を乗り越えてもらう対価として、(一般に膨大な手間をかけて) 毎日のようにリッチなコンテンツやインセンティブを提供し続けています。

しかし多くのサービスが、そうした実直で献身的な努力にもかかわらず確実にユーザーに習慣的に使ってもらうことができずに、苦戦を強いられているようです。


そこで今回は「プロダクトデザインにおける習慣の形成」をテーマに、わずか10年で1億人の習慣形成を達成した歴史的な成功事例を紹介し、その事例の観察から行動経済学が解明した「プロダクトデザインに応用可能な戦略」についてお伝えします。

さらに、その戦略を(自覚的にかはわかりませんが)上手に活用し、現在進行系で1億人の運動習慣の形成を目指しているスタートアップ企業をご紹介します。



3週間では足りない習慣形成

よく言われる習慣形成の知恵として、「まず3日、そして3週間続けることができれば、それは習慣になる」というようなことが言われています。その知恵に従って、習慣化が達成されるまでの間、一定のインセンティブを与える方法がビジネスの場面でもよく取られています。

ちょうど今(2020年7月)、国が電子決済の利用を促進するために最大5,000円分相当の「マイナポイント」の付与する施策をおこなっています。これも、インセンティブを使って、電子決済利用の習慣化を狙ったものと言えるでしょう。

また、ソーシャルゲーム業界では「初回登録から14日間ログインボーナス」のようなキャンペーンを行うことは、ほぼ全てゲーム運営のデフォルトとなっているようです。


また、モチベーション理論などの視点から提供される習慣化の戦略として「小さな達成を可視化せよ」みたいなこともよく言われています。


もちろんそうした戦略は、ある程度の有効性が確認されたものではありますが、これをお読みの方であれば、「インセンティブ」や「達成の可視化」をプロダクトデザインに組み込んで、ユーザーに先行して達成感や心地よさや便利さを体験させたはずなのに、それでも習慣が形成されない。という経験もしていることでしょう。

習慣形成には、先程簡単に思いついただけでも9つもの問題がクリアされている状態を保たなくてはいけないのです。さらに強力な戦略の併用が必要な状況もあるということだと思います。



1億人に歯磨き粉の常用を習慣化させた男

ここでプロダクトデザインの妙に基づいて成された習慣形成について、歴史的に知られた成功例を一つ紹介しましょう。


成功例の舞台は1900年代の初頭のアメリカ。人口は1億人。ほとんど誰も「歯磨き粉」を使っていませんでした。この状況から初めて、1910年代までのわずか10年足らずで、ほとんどのアメリカへ国民に歯磨き粉を常用する習慣を作り出した男がいます。

その男は以下のように広告を使い歯磨き粉を改良することで、アメリカ人1億人に歯磨き粉を使う習慣を作り出しました。

  • 「歯を磨いてしばらくすると、歯や舌にぬめりを感じること」を自覚させる広告をする
  • 「歯のぬめりを感じたときには、歯磨き粉を使って歯を磨こう」と呼びかける広告をする
  • 歯磨き粉にミントの香料を仕込み「歯磨き粉を使うとミントの清涼感を感じることができる」と広告する

ちなみに、その男の名前はクロード・ホプキンスと言います。一部の人達にはおなじみの現代広告界のレジェンダリーの1人ですね。


行動経済学が解き明かしたホプキンスの魔法

アメリカ人の口腔衛生に大きな好影響をもたらした歯磨き粉ムーブメントですが、行動経済学の学者たちはこのムーブメントを観察し、マーケティング戦略として再現可能なテクニックに落とし込んでいます。

その戦略とは一言で言えば「習慣化にはキュー・リワードの組み合わせて習慣化することが有効」ということです。キューとは習慣を開始するきっかけ、リワードとは習慣を達成した時に得られる報酬のことです。


クロード・ホプキンスの事例ではキューは「歯や舌ににぬめりを感じること」、リワードは「ミントの清涼感」となります。「歯にぬめりを感じたら、歯磨き粉を使って歯を磨くと、ミントの清涼感を得られる」この3STEPを組み合わせた習慣化を目指したということです。


少し話がそれますが、広告を依頼されたクロード・ホプキンスが、「虫歯が原因で年間数万人が亡くなっています」「口がきれいであることはモテるための最低条件です」「歯がきれいだと、食事が3倍増しで美味しく感じるという分析結果が出ました」のような安直な広告を打つことをせずに、習慣化のムーブメントを設計した非凡さには、レジェンダリーと呼ばれるだけの手腕を感じざるをえませんね。


習慣の形成にはリワードだけでなく、キューが必要というのは言われてみれば、ごく当たり前のことのような気もしますが、たった10年で世界を全く新しいものに変えた実績を考えると、とても強力なテクニックと考えて良さそうです。



1億人に日常的な運動を習慣化させようとしている男

「習慣化を価値に変える」ことに取り組んでいる、現在進行系のスタートアップ企業も紹介しましょう。


LiveRunは、スマートフォーン活用して、毎日定時に10回程度バーチャルグループランニングを配信しているウェブサービスです。


LiveRun | ライブラン | ランニング | ウォーキング


LiveRunは「運動の習慣形成」に取り組むために設計されたアプリケーションですが、彼らにとってのキュー・リワードは何でしょうか?



彼らのキューは「ライブであること」です。 一瞬では理解しにくいですが、記念日と同じ仕組みだと考えてみるとわかりやすいかと思います。

世界中の多くの人々が「1月1日に新年を祝う習慣をもっていること」をキュー・リワードで説明すると、どういうことになるでしょうか?


簡単ですね。


1月1日という日付を迎えることが、新年を祝うという習慣のキューになっているということです。 同様にLiveRunでは、カレンダーではなくて、時計がキューとして機能しています。「ライブであること」がキューとして機能しているというのは、例えば「6:30の時計を見ると、走り出さなくていけない感じがしてくる」ということです。


類似したコンセプトの運動支援アプリは、動画や音声コンテンツをいつでも利用できるようにしているものが多いですが、「習慣化」という側面から見ればライブランは他を圧倒していると感じます。実際に有料利用継続率93%という、この手のサービスを運用経験がある人からしたら、ちょっと意味がわからない数字が出ているようです。


キューが古典的であったのに比較して、リワードは極めて現代的です。LiveRunでは、「定期的に運動することの爽快さ」に加えて、「みんなでひとつのことに取り組んでいるという一体感」、「名前を呼んで、ほめたり、はげましたりしてもらえること」がリワードとして機能しています。


大の大人が「そんなこと」で? と感じられたかもしれませんが、ささやかなミントの清涼感ですら世界を一変させるきっかけになったのです。再び「ささやかなリワード」が1億人の生活習慣を変えるということも十分に起こり得るのではないでしょうか?

実際に「そんなこと」でも十分すぎるほどリワードとして機能しているようです。私もたまにグループランニングに参加させていただいているのですが、朝2回参加、夜2回参加するようなほぼLiveRunの中毒(笑)とも言える方も何人も見受けられます。デジタルテクノロジーを活用したつながりのなかにリアルなものを求めていく。とても現代的なリワードですね。



新規事業開発におけるキューとリワードの設計

LiveRunが、スマートフォン普及拡大を背景にキューとリワードを設計し挑戦を始めているように、新しいテクノロジーやビジネスモデルを駆使してこれまでになかったキューやリワードを作り出すことができるようになってきました。

弊社では「デジタルテクノロジーや心理学・行動経済学を活用した習慣形成」も視野に入れた、新規事業開発の総合的なコンサルティングサービスを展開しております。

お気軽にご相談ください。



行動経済学をプロダクトデザインに応用する

本記事は、『行動を変えるデザイン』を参照して執筆しました。情報は少し古いですが、心理学や行動経済学をに活用していくかを丁寧に解説したおすすめ本です!

『イノベーションって何すればいいんですか?』と新卒社員に聞かれたら?(その1)

Written by 加藤 寛士 on 2019-07-23

「イノベーションを起こすって具体的に何すればいいんですか?」と意識高い系の新卒社員に聞かれたときに、社会人の先輩としてどのように答えればいいのでしょうか?

今回はイノベーション・コンサルティングを専門とするINDEE Japanなりに、できるだけシンプルにその答えを考えてみました。

イノベーションとはなにか?

イノベーションとは『発明』と『普及』が両立したときに起きる現象のことです。

したがって、イノベーションへの取り組みの基本方針は、『発明』と『普及』の両方を成功させるべく活動をする。もしくは、両立できるように必要な支援を行い、エコシステムの整備を行うということになります。

INDEE Japanでも『発明』と『普及』の観点から、人事・ファイナンス・テクノロジー・マーケティング・ブランディング・オペレーション・ディストリビューションといった各領域における戦略策定と具体的な支援を行うコンサルティングサービスを提供しています。

それではまず『発明』について、もう少し詳しく見ていきましょう。

イノベーションの文脈における『発明』とは?

イノベーションのおける発明とは、端的に言えば「2つ以上の要素の新しい結合」のことです。スティーブ・ジョブズも以下のように言っています。

創造とは結びつけることだ
– スティーブ・ジョブズ

ここで、初心者イノベーターあるあるネタ(笑)を1つ紹介しますが、「2つ以上の新しい要素の結合」を『発明』と勘違いするということがあります。結合が新しい必要があるのであって、要素が必ずしも新しい必要があるわけではないということですね。

こうした誤解があるため、最先端を行くテクノロジーを駆使したおしゃれで新しいプロダクトに取り組まなくてはいけないという先入観が生まれ、取り組みのハードルが無意味に上がってしまい、身動きが取れなくなっているというのは、よく見かける光景です。

「おしゃれで最先端なプロダクトに見せること」はアーリーアダプターに対するブランディング戦略として有効なこともあり、イノベーティブと言われているプロダクトやサービスは、そうしたブランディングがなされることが多いようです。それが、「イノベーション = おしゃれで最先端」という誤解が生みやすい環境を作っているのだと思います。


イノベーションという言葉を現在のような意味で初めて用いたのはノーベル賞授賞者を複数育成し、20世紀の経済学を形作った天才の1人と言われ、近年さらにその先見性への評価も進んでいるヨーゼフ・シュンペーターという人物なのですが、彼はイノベーションが生まれる領域は以下の5つであると定義しています。

  • 新しい商品の創出
  • 新しい生産方法の開発
  • 新しい市場の開拓
  • 原材料の新しい供給源の獲得
  • 新しい組織の実現

シュンペーターも、結合の素材は必ずしも最先端かつおしゃれなテクノロジーではなく、ブランドだったり、顧客だったり、資金だったり、チャネルだったりするものと考えていたということですね。


なお1つ補足をしておくと、結合する素材が新しければ、必然として結合も新しいものになるので、新しい素材を探し求めることも『発明』に対する有効な戦略の1つであることは確かです。

  • 大企業・歴史のある企業・技術に長けた企業であれば、他社が持ち得ない素材を社内から引き出す
  • 身軽さや少数精鋭の個人の能力がウリの新興企業であれば、技術や時代がもたらした新しい素材の可能性を誰よりも先に引き出す

というような活動に戦略的に取り組んで行くことは大切ですが、希少性の高い資源や新規性の高いテクノロジーも、”なにか”と結合することでしかイノベーションの文脈における『発明』とはならないという認識を持つことが大切です。これはイノベーションへの取り組みについての実践をするにあたって、1つのコツのようなものです。その認識を持てていないために、イノベーションへの取り組みが、単なる学究やオタク的な活動にとどまってしまっているというのも、またよく見られる光景です。


以上、「イノベーションに取り組む」とはざっくりとどんな活動なのか?、イノベーションという文脈における『発明』とはどんな活動なのか? についてできるだけシンプルに開設してみました。

意識高い系新卒社員のキワドイ質問に、答えをするために少しでもお役に立てたらうれしいです(笑)

次回その2では、 『普及』とはなにか? 、そして『発明』と『普及』どちらを先に取り組むべきか、少し深堀りして解説してみたいと思います。

ぶっちゃけ、イノベーションの推進にコンサルタントは必要なんです?

Written by 加藤 寛士 on 2018-12-24

こんにちは。
イノベーション支援のINDEE Japanで、デジタル領域を担当している加藤です。
 
本日はコンサルタントを使ってイノベーションの推進に取り組むメリット・デメリットを整理し、成果を残すためにはどんなコンサルタントに依頼すべきなのか?について考えてみます。
 


 

コンサルタントを使うメリットとデメリット

取り組みたい内容が、組織の活性化・制度設計なのか、アイディアに対する需要・技術の調査・評価なのか、サービス・プロダクトの開発なのかによっても異なりますが、イノベーションに取り組む際にコンサルタントを使うメリット・デメリットは以下のように整理できると思います。
 

  •  メリット
    • イノベーションへの取り組みに不慣れなため、効果的な施策が打てなかったり、調査や開発が遅延して市場から遅れを取ってしまうリスクを軽減できる
    • 外部の視点を加えることで、コアとなるアイデアから、さらなるビジネスの可能性を引き出すことができる
    • サービス・プロダクト開発の現場にコンサルタントをコーチとしてつけることで、幹部候補人材に実践を基礎とした高い教育効果を与えることができる
  • デメリット
    • 相手をよく知らないまま高額なフィーを支払った末、むしろコンサルタント側の事情で対外的なパフォーマンスにつき合わされてしまい、本質的ではない作業や面倒と付き合うことになってしまうリスクがある
    • ワークショップ実施などの施策により”イノベーティブな空気感”は醸成されるものの実績につながらず、「イノベーションの推進活動」そのものに社内で否定的な感情を生んでしまい、社員の士気が低下するリスクがある
    • イノベーションの推進を支援すると銘はうっているものの、外部のベンチャー企業に対する出資活動を支援しているだけのコンサルタントと付き合ってしまい、肝心の社内には意味のある変化を起こせないリスクがある

 
メリットに興味がある」 or 「コンサルタントに依頼したいけどデメリットは回避したい」という方は、少し長くなってしまうのですが、本記事の内容が参考になると思います。
 


どんなコンサルタントが実戦で役に立つのか?

有望な社内チームが形成されているに看板だけのコンサルタント未熟なコンサルタント足を引っ張っていて、うまくいかない例も数多く見てきました。
とくに、取り組んでいるサービス・プロダクトが、私個人も消費者として期待しているものであった場合、そのような光景を目にするとなかなか腹も立つものです。
 
そうした事案が少しでも少なくなることを願って、本記事ではイノベーションの推進に携わるコンサルタントの選定する際に重視したい点を3つお伝えしていきます。
コンサルタントの性格や得意/苦手はそれぞれですが、ご紹介する3点を高い水準で満たしていれば「こんなはずではなかった」ということはまず起こらないはずです。
 
 

視点1: いわゆる経営のエキスパートは、あまり役に立たない

 
「世界中で知られている大企業の経営にすら、コンサルティング経験があるのだから、1部門の社内風土改革ぐらいは…」
 
と思われるかもしれませんが、イノベーションへの取り組みと大企業の経営とは全く世界観が異なることには注意すべきです。
両者は言ってみれば、野球とレスリングほどに世界観が異なります。
両方を高いレベルでこなせてしまう、ジャイアント馬場のようなコンサルタントもいるのかもませんが、彼のような10年に1度の逸材にもどちらかと言えばレスリング向きというのはありましたしね…
 
大企業経営の仕事は一言で言えば、正確に判断を下すことです。
資本があり、顧客があり、顧客があり、人材があり、技術があり、協力者があり、市場があるという前提に立って、各要素の状態を的確に把握し、会社を機能させるために正確に判断することが、大企業経営で取り組むテーゼとなります。
 
一方で、イノベーションへの取り組みでは、何も存在しない状態が前提です。しかも、大企業経営のように「存在しないので買ってくる」という手法は通用しません。
なぜなら”存在しない”という言葉の次元も、大企業経営とは異なるからです。
 
イノベーションへの取り組みにおける”存在しない”とは、世界のどこにもない状態のことです。したがって「どんなものを作るのか」そのレシピすらも自分達で作り出す必要があります。
 
日本でいちばん美味しいケーキを買ってくる能力と、市場を観察して皆に愛されるケーキを作る能力は全く異なるのと同じことです。
 


 
ところで、最近はMBAのコースなどでも『イノベーションへの取り組み方』を教える講義が増えてきたようで、知識は備えているコンサルタントも増えてきました。
もちろん知識があることはとても大切なことですし、良い風潮であると思います。
 
しかしいわゆる知識だけの、お菓子をつまみながらワイワイガヤガヤするワークショップを開催するだけのコンサルタントや、秘密の特製フォーム(笑)を埋めるだけで”イノベーションな雰囲気(笑)”を提供するだけのコンサルタントも、業界には多数存在しています。
また、コーチングと称して、場当たり的で衒学的な、マウンティングトークを繰り返すしか能がないのコンサルタントも残念ながら存在しています。
 
あなたが依頼しようとしてるコンサルタントは、「実践フェイズが具体的に支援できる実力」と「豊富な知識」の両面で本当に頼りになりますか? 依頼の前に、もう一度見直してみてください。
 
 

視点2: 戦士・魔法使いタイプよりも、勇者タイプを

 
「特定の領域で世界の頂点を極めたエクスパートなら、思いもよらない解決策を授けてくれるに違いない…」
 
と思われるかもしれませんがコンサルタントにもそれぞれ、向き不向きがあります。
 


 
コンピューターゲームには、その黎明期から人気が高く定番となっているRPGと呼ばれるジャンルがあります。
RPGは複数のキャラクターが自身の得意とする能力を発揮できる戦略を作り、強力な敵を倒すことを楽しむゲームなので、キャラクターごとの得意と苦手が明確に味付けされている事がほとんどです。
しかし戦闘が得意な戦士や魔法が得意な魔法使いなどと比較して、得意苦手があまりなく、総合力や状況適応力に優れた勇者と呼ばれるキャラクターもよく登場します。
実は、イノベーションに取り組む場合は、特定の業務・業界・オペレーションレイヤーに精通しているエクスパートよりも、状況適応力に優れた勇者タイプのコンサルタントのほうがうまく立ち回れることが多いのです。
 
例えば、エンジニアとしての実力は折り紙つきの世界的第一人者でもあっても、コンサルタントとしては、むしろ足を引っ張ってしまうということは多々起こります。
もちろんコンサルタント個人の性格や資質、視野の広さによってもその度合いは異なりますが、そうしたバックグラウンドがあると技術側面からしかイノベーションの構造を捉えられなくなる傾向があるからです。
 


  • 余談ですが、技術で突っ走って数々の変態的性能を誇るデバイスを開発したものの、買い手が全くつかないという経験を何度しても全く懲りる気配がない国を、私はよく知っています。
  • 消費者の立場からすれば、私もその国のことが大好きで「どんどんやれ」と応援しているのですが、生産者の側からしたら正直なかなかしんどいものもあることでしょう。

 
では、ここにマーケティングの実力が折り紙つきの人物も加わったら、ようやくイノベーションが実現するのでしょうか?
 
たしかに、2人の第一人者の能力を共に引き出して融合させることができれば、唯一無二の方法でイノベーションが促進できるかもしれませしれません。
しかし、あなたの会社にも世界一とはいかなくても世界で戦えるエクスパートが各分野で揃っているのではないでしょうか? とくに「現場は世界一優秀」と言われている日本企業にはそのような会社は多いはずです。
ではなぜ、あなたの会社であなたが今期待したような自然発生的にイノベーションが起こらないのでしょうか?
 


 
技術的なバックグラウンド持ち、ビジネス全般に十分な経験があるコンサルタントが、課題を的確に把握し、適宜不足している部分を補うことができればイノベーションは急速に進みます。
 
しかし、そのような働き方が得意な勇者タイプのユーティリティプレイヤーは、事業部制やセクション制で運用されている組織の中では真価を発揮できない傾向にあります。
 
そこで、組織の枠組みの外にある勇者タイプのコンサルタントは、その理想的な立場を活用してクライアントの利益に最大限の貢献することができるのです。
 
 

視点3: 「素質のある若手に自由にやらせる!」…だけでは足りません

 
「若手に自由にやらせる用意はできている。多少の失敗はフォローしてやる準備もある。」
 
という覚悟は素晴らしい(し、不可欠なも)ですが、その心意気だけではイノベーションへの取り組みは進まないこともあります。
 
イノベーティブな事業への取り組みでは、構造的に既存のビジネスと利害が対立が起こることが知られています。(イノベーションのジレンマ)
 
企画や調査の段階ではこの問題は顕在化しにくいのですが、実践フェイズに入ると壁として立ちはだかります。
社内のメンバーだけで進めようとすると、どうしても感情的にもビジネス的にも社内協力が得られなということが起こるのです。
 
「みんな薄々感じていたけれど…」 という状況で、ひとりひとりキーパーソンの意見を確認し、チームの背中を押してやる。それもよくあるコンサルタントの仕事の一つです。
 
世代・職位・立場超えた調整力が発揮できるか?も、コンサルタントに必要な素養として確認してみてください。
 


 
今回はイノベーションに取り組むにあたって、コンサルタントとの関係性について注意すべき点をまとめてみました。
 
次回は『オレたちはコンサルタント無しでやる』と決めた方向けに、最低限知っておいた方が良いことをまとめるつもりです。
それでは。良い年末をお過ごしください。