「デジタルの対義語は?」を聞かれたら?

Written by 山田 竜也 on 2020-09-04

「デジタルの対義語は?」と聞かれたら、何と答えますか?少し考えてみてください。「何言ってるんだ、そんなの アナログ だろ」という答えが返ってきそうですが、最近のDX(デジタルトランスフォーメーション)の文脈で語られているデジタルって、アナログの対義語としてのデジタルでしょうか?

Wikipediaではデジタルトランスフォーメーションとは「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるという概念」で、2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱したと書かれていますが、ここには所謂デジタル/アナログ(不連続/連続)の意味は表現されていません。

Wikipediaで原典を辿ろうとしたら、余計に分からなくなってしまった典型なのですが、デジタルトランスフォーメーションの特徴の一つとして挙げられていた以下の言葉は腑に落ちました。

 

デジタルトランスフォーメーションにより、
情報技術と現実が徐々に融合して結びついていく変化が起こる。

 

自分が考えた「デジタルの対義語は?」の答えは「 フィジカル 」です。言葉的には肉体的、身体的なものがイメージされるかもしれませんが、自分の意図する所としては、所謂、モノ、物体、実体のあるものという意味です。

ビジネス的な文脈ではデジタルトランスフォーメーションを推進するやり方としいていくつかのステップが示されていますが、最初のステップはどれも「デジタル化」です。フィジカルな実体のあるものをデジタル化してデータとして扱える様にする事から始まります。そして、このステップこそが、最も本質的な差を生み出している。だから、デジタルの対義語はフィジカルという発想に至りました。

そうなると次に出てくるのはIoTです。モノのインターネット化は手段としてのRFIDが出てきた辺りから現実的になってきました。いつの間にか洋服のタグに明らかに回路と分かる模様があったり、日常生活でも目にする機会は増えてきましたが、1999年にはマサチューセッツ工科大学 (MIT) のAuto-IDラボがRFIDを商品に込み込み市場分析を行うという研究プロジェクトを開始していた様で、20年前には構想されていたものになります。
10年前の2010年代には、米ゼネラル・エレクトリック (GE) など米国勢が中心の「インダストリアルインターネット」、ドイツ政府による「インダストリー4.0」というデジタル化政策も出てきていますので、大体10年刻みぐらいでコンセプトのリニューアルが行われているだけなのかもしれません。バズワードに踊らされずに、バズワードの変化の歴史を辿ると各段階で追加されているコンセプト、本質的な違いが見えてきます。

更に最近はボーンデジタルの商品も増えてきていますので、デジタル化するというよりも、デジタルが主流の世界で以下にフィジカルを活かすか?ハイタッチな演出をするか?という発想に切り換える方が有効かもしれません。

コロナの影響で、ただでさえデジタルが幅を利かせていた世界で、更にフィジカルが追いやられてしまいました。デジタルは安価にコピーがかからないという特性があり、広く配信するには便利ですが、質の低いものを大量に生産して大量に消費して、消費者の体験をチープなものにしてしまう弊害もあります。

デジタルの活用は当たり前として、いざという時の本物、貴重なフィジカルの体験をどう活かすかが、今後考えていくべき論点では無いでしょうか。

INDEE Japanメンバーが、今注目しているスタートアップ5選 (ジョブの分析付き)

Written by 加藤 寛士 on 2020-08-11

本記事では、現在INDEE Japanメンバーが”個人的に気になっている”スタートアップを1社づつ紹介し、ジョブ理論を用いた分析を行います。好評であれば、毎月継続していきたいと考えていますので、もしよければコメントなどいただければ幸いです。

津嶋 : INDEE Japanマネージングディレクター

概要

なぜ注目しているのか?

ZWIFTは、家庭にあるロードバイクの室内用トレーニング器具をインターネットに接続し、実際にペダルを漕ぐことでバーチャルなレースに参加することができるオンラインゲームです。「ゲーム」とは書きましたが、その実態は本格的なトレーニングツールの様相を呈しており、プロアスリートも日々活用しているトレーニングプラットフォームともなっています。

ZWIFTが面白いのは、自社ではシステムに必要なデバイスを開発も販売もしていないところです。ZWIFTは、様々なメーカーのデバイスを「ハック」し、ソフトウェア的に「ZWIFT対応」を実現することで、異なるメーカーのデバイスを使っているユーザーでもゲームに参加できるようなプラットフォームを形成しました。

ZWIFTのこれまで世界に存在しなかったサービスを作り出すにあたって、自らがビジネスを行うための新しい市場を「プロダクト開発」によって作り出すのではなく、「ハック」によって作り出しているところに興味深さを感じています。

 

 

ジョブ理論による分析

ジョブについて

ロードレースやトライアスロンにシリアスに取り組む際に必要となるロードバイクトレーニング。目標としているレースまでに、持久力やペダリングの技術を身につけ、地震の力を最大限に引き出す戦術を構築するためには、絶え間ない練習が必要となります。

既存解決策の問題

ロードバイクで本気でトレーニングすると、バイク並みのスピードが出てしまうため、安全なトレーニング場所を確保する必要があります。

しかし、交通状態・路面の状態・気象条件などが理想的な場所はどこにでもあるわけではありませんし、あったとしてもそこに移動するまでにも時間もかかってしまいます。そうした課題に対応するために、エアロバイクなどの室内トレーニング器具も開発されてきましたが、そうした方法で「気持ちの張り」を維持して追い込んだトレーニングを行うことはなかなか難しいという課題もあります。

解決策の優位性

ZWIFTは室内トレーニングですので、場所や時間を問わずに安全に取り組むことができます。また「様々なコースへの挑戦」「レース」「記録が残る」「ソーシャル」というゲーミフィケーション要素をモチベーションを高めるために取り込んでおり、最後まで気持ちの張りを保ったまま追い込んでトレーニングを行うことができます。

津田 : INDEE Japanテクニカルディレクター

概要

なぜ注目しているのか?

ExcelやGoogle Spreadsheetのスプレッドシート競争の上を行く、SaaSならではのデータベースも融合したソリューションは注目です。「表計算」という言葉が死語になるとしたら、こういうソリューションなのかもしれません。せっかく存在する無限の計算資源を2次元に詰め込まず、データベースを表、カンバン、ガントチャート、カレンダーなど、簡単に色々な見せ方ができます。

すでにユニコーンなので、多くの人がすでに注目してはいると思いますが、敢えてご紹介したいと思います。

 

 

ジョブ理論による分析

ジョブについて

「膨大に存在するデータを色々な切り口で整理したい」というジョブは仕事や生活の多くの場面で発生しており、デジタル技術が普及した現代では非常に普遍的なものであると言えます。

既存解決策の問題

表計算ソフトでは、大量データや複雑なデータを関連させて取り扱ったり、用途に応じて見せ方を自在に変えることには限界があります。一方で、データベースを扱うためには技術的な準備が必要で、誰にでも手軽に扱えるというものではありません。

解決策の優位性

Airtableは、誰にでも扱うことができる表計算ソフトのような操作感を実現しつつ、これまではデータベースを使わないとできなかった、データ同士の関連の設定や用途に応じた見せ方の変化を拡張的かつ直感的に付与することもできます。表計算ソフトにはなく、データベースにはある各種機能の利用について、スキル面でのハードルを下げることで広く支持を獲得し初めています。

山田 : INDEE Japanトレーニングディレクター

概要

なぜ注目しているのか?

チャレンジ社が販売しているEQG-Ⅲは、地震において大きな揺れの到来の前兆となる微細な揺れの到来を読み取り、通知する地震計です。

ユーザーが共同してコストを負担して、1つの会社が提供するサービスを享受するという中央集権的なビジネスのエコシステムがもてはやされている昨今、「地震」と「通知」というキーワード聞けば、緊急地震速報システムを連想する人がほとんどではないでしょうか?

しかしチャレンジ社には、そうした戦略の裏を行くからこそ生まれる価値を提供しています。具体的には、どのような価値でしょうか? 以下、ジョブ理論を用いた分析をご参照いただければ幸いです。

 

 

ジョブ理論による分析

ジョブについて

チャレンジは”揺れる前の10秒が命をつなぐ”という価値を掲げています。チャレンジの地震計は、大きな揺れの到達に未然に備える時間を作り出すことで「地震から命を守る」という非常に重要度が高いジョブに取り組むことを助けています。

既存解決策の問題

地震の到来を未然に知らせる仕組みとして、日本では緊急地震速報がよく知られています。しかし、緊急地震速報は全国の要所要所に設置された地震計から集めた観測データを用いて通知を行う仕組みであるため、直下型の地震では揺れる前の通知が間に合わない場合があります。病院 ・ 学校 ・ 工場というようなわずかな通知時間の差が生死をわける可能性がある場所ではこれは大きな課題です。
また、緊急地震速報のようなシステムを構築し運用していくためには数百億円もの投資が必要となるという課題もあります。そうした公共投資が難しい国では、地震の到来を通知するシステムにはより確かな需要があります。

解決策の優位性

チャレンジの地震計を用いれば、病院・学校・工場のような、とくに地震のリスクが高い場所に直下型地震に対応するための”命を守るための数秒”を作り出すことができます。また、巨額の公共投資が難しい国においては、直下型地震以外の地震の発生通知も含めて対応ができる方法としてより大きな価値を発揮します。

星野:組織開発・事業開発ディレクター

概要

なぜ注目しているのか?

続きまして、少し身近な言語関連のサービスをご紹介します。会話の文字起こしや機械翻訳などのツールはAI技術の急速な普及を基盤として精度が加速しています。従来はGoogleなどによって誰でも使えるようにサービス化はされてはいたものの、アウトプットにはかなりの手直しを加えないと十分な精度はならす、結局人の手で翻訳をしたほうが効率が良いという状況にありました。

ししかし、「会話や動画・音声ファイルから自動的に文字起こしを行うotter」 や「ソーシャルに学習をおこなって成長するAIを活用した高精度機械翻訳である DeepL 」に触れて、そうした昔の印象は大きく変化した感を受けました。またこの技術の発展によって、より身近な存在になると思いますので、皆様にも紹介させていただきたいと考えています。

 

ジョブ理論による分析

ジョブについて

企業においては何かと情報をまとめるという業務が付きまといます。議事録を作る、イベントの参加報告を行うといった業務には未だ多くの方が携わっていることでしょう。特に外国語で行われた講演を人に伝えるための文字起こしに苦労されている方は多いのではないでしょうか。英語が堪能でない方にとってはリスニングだけでは苦しいので録音して後で何とかまとめようという流れで取り組んでいたでしょう。この手間を減らしたいというジョブは昔から今もなお残るものでした。

otterとDeepLを組み合わせるとそうした翻訳のジョブを機械的に解決できます。(otterで動画や音声から自動生成したテキストファイルに対して、deeplを用いて機械翻訳をかける)

既存解決策の問題

外国語の音声を日本語に文字変換する時には、外国語の音声を外国語の文字にする、次にその外国語を日本語に翻訳するというステップを踏みます。ところが従来のツールは精度がイマイチで手直しが多く発生し、工数が発生するという悩ましさがありました。この工数が避けなかったり納期がタイトな場合は、致し方なくコストを掛けて翻訳家・専門家へ依頼していたことでしょう。

解決策の優位性

文字起こしのOtterと翻訳のDeepLはどちらも精度が高いことが特徴です。これによって音声データ→Otter(文字起こし)→DeepL(翻訳)で日本語らしい文章に変換してくれます。少しマニアックな単語は手直しも必要だが、それもAI学習を重ねることで改良されることが期待されます。

実際、今回のコロナ禍によって海外カンファレンスが軒並みオンライン化したことを受け、オンラインカンファレンスにいくつか参加しましたが、時差があるのでライブでは参加せずに配信されているビデオを2つのツールで日本語変換し、ストレスなく内容をキャッチアップできました。

この2つの技術が連携すると、多くの人が海外のTVやライブ動画を精度の高い同時通訳と共に、一部のインテリではなく多くの人が海外の情報を身近に楽しめる日も近づくのかと想像せざるを得ません。

加藤

概要

なぜ注目しているのか?

特定の状況下で、不快な身体症状とともに強い不安感に襲われてしまう不安障害という病気。例えば「学校or 会社に行く」というようなことが特定の状況になってしまうと、学校や会社に行くことができなくなってしまいます。魔法アプリは、VR技術を用いて不安障害の治療をサポートするサービスです。

私自身は不安障害になった経験はないですが、知人が不安障害によって学校や仕事をやめてしまったのを見てきた経験から「不安障害の人も、再び自分らしく社会の中で活動できるようにする」という課題には注目してします。

こうした技術の普及によって、不安障害になってしまっても思い通りに人生を生きることを諦めない人が増えていくと良いですね。

ジョブ理論による分析

ジョブについて

現代社会において「学校や会社に行く」というジョブは、患者の人生に大きな影響を与えるため、当事者にとって重要度が非常に高いことが特徴と言えます。

既存解決策の問題

不安障害の治療に有効と言われている暴露療法は、少しづつ不安を引き起こす「特定の状況」慣らしていくことで行われます。具体的には、実際に少しづつ学校や職場にいる時間を長くしていくことで、不安による発作を起こす必要がないことを心身に教える過程を繰り返して行います。

しかし暴露療法では、「療法を受ける最中に発作が起きてしまうのでは?」という不安感から療法を受けること自体に強い恐怖感を抱く患者も多くいます。こうした恐怖感は、予期不安と言われ実際に「特定の状況」に置かれなくても、想像しただけで発作が起こるなど、より症状が悪化してしまうケースも有るようです。

解決策の優位性

暴露療法のプロセスにバーチャルリアリティーを用いることで、安全な場所で自分のペースで治療に取り組むことができます。また、もし暴露療法中に症状がでてしまっても誰かに迷惑をかけることもないため、心理的な負担なく予期不安を軽減しながら治療に取り組むこともできるのではないかと期待しています。

Democratizingとは? 破壊的イノベーションの新しい呼び名

Written by 津田 真吾 on 2020-07-27

海外スタートアップのピッチを聞いてると、“Democratizing”(デモクラタイジング)ということをしきりに言っています。

これは直訳すると「民主化」ということなんですが、民主主義を勝ち取ったわけでもなく、普段はあまり民主主義を意識しない日本人には感覚が分かりにくいかもしれません。

そもそも、一部の君主(=王様)や貴族から国を奪還?奪取?して市民たちのものにしたのが民主主義の発端だったということを考えると、ビジネスにおける民主化というのは「一部の限られた人たちにしかできなかったことを、多くの人に届ける」ことだと捉えるとわかりやすいです。しかも、これは言い方を変えた「破壊的イノベーション」そのものです。その理由は後述しますが、「特権階級にしか許されなかったことを、一般市民にも可能にする」というのは最高でしかありません。いくつか例を挙げていきたいと思います。


焼き肉

例えば、皆さん焼き肉好きですよね?これは韓国の宮廷料理です。牛肉が大量に作られるようになり、レシピが普及し、韓国に行かなくても、貴族でなくても、多くの人が食べられるようになりました。民間の焼き肉屋さんは、宮廷料理の民主化の一例です。


ブロックチェーン

ビットコインなどの仮想通貨は「貨幣の民主化」への期待が寄せられています。現在、多くの企業や人は円やドルなどの政府発行の通貨を信用しています。この「信用」を通貨の本質歳、通貨コントロールを各国政府の特権ではなく、多くの人の相互のチェックによって「信用」を構築しようとするのが暗号通貨です。通貨発行の民主化を可能にしているのがブロックチェーン技術ということで、関心を集めています。


Twitter、Youtube

一部の権力者にしか許されなかった「大衆に意見を言う」ことを可能にしたTwitter(や、こういうブログサービス)もメディアのDemocratizationといわれますね。


マネーフォワード

会計士や税理士を雇いたいけれど、お金が無い人にはマネーフォワードは救い主です。すでにインターネットによる無料の情報によって、法律の知識は一般市民にも手に入りやすくなりました。わざわざ法律の学校に行かなくても、ネットには多くの記事が公開されていて(もちろん嘘もありますが)、以前なら専門家に頼まざるを得ないシチュエーションにおいても、特別な費用をかけることなく知識を入手することが出来るようになりました。マネーフォワードは、知識だけでなく会計や簿記の作業を単純化し、資格を持たない多くの人にとってハードルを下げたサービスと言えます。


Instagram

どうせなら撮られるなら綺麗なポートレートを撮って欲しいですよね?昔は宮廷画家に頼んで、絵を描いてもらう必要がありました。カメラが発明されてもなお、プロのカメラマンを雇う必要があったり、写真館に行かないと記念写真が撮れませんでした。今では誰もが綺麗な写真をスマホで撮ることができます。さらにInstagramを使えば色々なテイストで撮ることもできるようになりましたね。


MENOU

最後にご紹介したい例は、MENOUです。ディープラーニング技術を用いた目視検査サービスを提供しているのですが、大きな特徴は「精度の高いAI検査」を民主化している点です。特別なAIの知識やプログラミング技術を持たなくても、不良品と良品をシステムに教えるだけで、判断の仕方をAIが学び、同じ判断を繰り返すことができるソフトウェアを提供しています。機械学習エンジニアや画像処理技術者が不在の企業にとって、煩雑でコストのかかる目視検査を自動化することが可能になりました。


さまざまな例を見てきましたが、Democratizingという視点は新しい事業のタネになりそうなことを分かって頂けたでしょうか?それまで見過ごされていたローエンドの顧客や、未解決のジョブを持つ顧客を対象にした破壊的イノベーションとほぼ同義であることもご理解頂けたと思います。

既存の「貴族」に囚われず、「庶民」へと視野を広げ、より多くの人のジョブを片づけるサービスや製品がもっと登場することを期待しています。

創造と破壊 Innovation for Life vol.4

Written by 津嶋 辰郎 on 2020-07-20

栄枯盛衰をテーマに常に変わらないモノはない、変化しつづける事が自然の摂理ということをお話しました。しかし、残念ながら我々は変化を嫌ったり、不確実や不透明なことを不安に思うのが本能のようです。

今回のinnovation for lifeのテーマは創造と破壊。我々一人一人が持つ創造力を活用するために不可欠な変化の捉え方について取り上げたいと思います。

 

Innovation for Life vol.4 創造と破壊

不確実性が益々高まる現代社会において、幸せな人生をおくるために大切なことを考える問いを発信することでみなさまとご一緒により良い未来そして社会を創っていくチャンネル Innovation for Life・・・第四話のテーマは創造と破壊 ようやく当初予定の5分という枠に近づいてきました・・・(^^ゞ ※連動している…

 

世の中の変化は人の創造力によって起こされています。今な身近な不満は、我々一人一人が理想の形に作り変えていけば良いのです。

あなたが描く幸せな人生にとって、今必要なイノベーションはなんでしょうか?

一歩一歩は小さくてもいいんです。創造するという立場からみる、変化していく世界はきっとワクワクするものになるはずです。

優れたエンジニアはマネージャになるべきか?

Written by 津田 真吾 on 2020-07-16

私が駆け出しのエンジニアだったころ、

いや、『「エンジニア」である』ことすら認識できていなかったころ、つまり何とか仕事をして結果を出したい、貢献したいと考えているころ、『スーパーエンジニアへの道』という本に出合った。

スーパーエンジニアへの道 技術リーダーシップの人間学

スーパーエンジニアへの道 技術リーダーシップの人間学/G・M・ワインバーグ/木村 泉(コンピュータ・IT・情報科学) – 大きなシステムの形成という大変な仕事を成功させた例をみると、ほとんどが少数の傑出した技術労働者の働きに依存しているという。「アメとムチ」のみ…紙の本の購入はhontoで。

会社では、皆が忙しく、諸先輩方に仕事を教わることも大変だった。とにかく必死に喰らいついて、その諸先輩方が書いてきたドキュメントや図面を片っ端から読んだ。わからないことは、合間を見つけて色んな人に尋ねた。「なぜここの設計はこうなっているのか?」「その実験はどのくらい再現性があるのか?」「テストの結果はどういう意味があるのか?」

そうやって、やみくもに2年位やっていただろうか?
仕事は確かに覚えたし、ある程度のことは理解できたが、どうも足掻いているだけで、自分が成長している実感が得られなかったのだ。当時は自覚していなかったけれど、そういうやり方を続けていても結果は出るけれど、「マネージャ」や「リーダー」になれる気がしなかったのだ。

当時、私が配属された事業は急成長していたため、毎年増員され、優秀なエンジニアはマネージャにすぐ昇格するのが常であった。

しかし、ある日、一部の尖ったエンジニアの間ではこうも囁かれていたのである。

優秀なエンジニアをマネージャにすると、ダブルで弊害が起きる。1つは、優秀なエンジニアが一人減ることで、もう一つは未経験のマネージャが一人増えることだ。


この言葉は、正直驚いた。
事業が伸びる → 開発が増える → エンジニアが不足する → エンジニアを採用する → エンジニアを管理する必要が生じる → その辺で一番わかってそうな人をマネージャにする
という、どこでも起こり得るサイクルに冷や水を掛けるような議論だからだ。つまり、優秀なエンジニアをマネージャにすることには、経営判断とか、思想や理論に基づいて、といったセオリーがあるのではなく、事業が伸びるなかで、現実的な選択肢はそれしかないのである。

さて、『スーパーエンジニアへの道』を読んだ私は優秀なエンジニアがマネージャになることには、単純に反対できなかった。なぜなら、この本に書かれていた「スーパーエンジニア」というのはカッコいいエンジニアリングリーダー像だったからだ。優れたエンジニアが組織をリードすると、製品アーキテクチャが整い、プロダクトもすっきりする。

だからといって、優秀なエンジニアがマネージャになるべき、とも思えなかった。なぜならば、エンジニアリングを極めることと、本書に書かれているリーダーシップや「ヒューマンスキル」を身につけることは真逆に見えたからだ。昼夜図面を描き、実験に明け暮れていると却って人とは疎遠になり、コミュニケーションスキルは却って劣化する。機械は時に恐ろしい挙動を示すが、人間よりもずっと予測可能で、「作ること」ができる。技術に向け合えば向き合うほど、人と接することに億劫になる自分がいるのも事実だった。そういう状態でいきなりマネージャになり、部下の動機づけや評価、他部署との交渉や予算獲得などでいい仕事が出来るわけがない。


その後、自分の考えも紆余曲折がある。経験を重ねた結果、どっちのメリットもデメリットも理解できるようになったので整理してみよう。

優秀なエンジニアがマネージャになるメリット

  • 最初から信頼がある(エンジニアとしての実績を活かせる)
  • 技術的な難易度や重要性に応じた采配ができる(作業と開発と発明の違いがわかる)
  • 優秀なエンジニアの価値がわかる
  • いいエンジニアを見つけられる
  • 競合の技術ロードマップを読める
  • (コミュ障だとしても)エンジニアの気持ちがわかる
  • あらゆるものをハックすることに慣れている

優秀なエンジニアがマネージャになるデメリット

  • エンジニアの気持ちがわかりすぎて、開発目標が保守的になる
  • エンジニア以外の人脈やネットワークがない
  • 優秀なエンジニアリング人材が予算策定や計画立案や交渉などを行う
  • 開発ありきで、プロダクト開発以外の組織マネジメント手法が疎かになる


今はどう考えているか?

色々経て、今は違う考えに行き着いた。エンジニアのキャリアパスとして、マネージャーよりも向いている職業があると感じるようになった。

それは、一概に言えないが、起業するか、スタートアップの初期にジョインすることを勧めたい。なぜならば、上記のメリットの大きさを最もレバレッジできるからだ。デメリットを何百倍も超えるメリットを発揮することができる。仮に、スーパーなエンジニアだったとしても、事業が伸びていなければ、せっかくのアーキテクチャ構築力も、ハック能力もエンジニア目利き力も活かす場面がない。プロダクトと同時に組織を開発するような仕事は、まさにスーパーエンジニアが最も活躍する仕事だと思う。

ということで、賛同して下さるエンジニアリングをもっと高めたい人や、キャリアを発展させたい人がいましたら、こちらまでご連絡をお待ちしています。