QBハウスは誰のジョブを解決している?

Written by 山田 竜也 on 2019-03-25

 破壊的イノベーションやジョブ理論等のセミナーで事例として活用させて頂いている10分カットのQBハウスを運営するキュービーネットホールディングス株式会社が一般社団法人日本能率協会の2018年度のKAIKA大賞を受賞しました。私もユーザー兼KAIKAの検討委員として北野社長他スタッフの方にインタビューさせて頂き改めてファンになりました。

 テーマは「〜業界常識を覆してでも実行した、全社レベルの人間醸造大逆転劇〜」

 QBハウスというと「10分間でカットのみ、通勤途中の便利な立地で高回転を維持」と収益を生むビジネスモデルの話ばかりが着目されますが、今回のテーマは、そのモデルを実現する社内での人材育成がテーマでした。

 さて、「QBハウスは誰のジョブを解決している?」と聞かれたらどう答えますか?
 もちろん、写真の素敵なお兄さんお姉さんに、頭をさっぱりしてもらいたい我々一般ユーザーが頭に浮かびますが、実は彼・彼女のジョブも解決しています。これが今回お伝えしたいポイントです。

 

ユーザーへの価値提供の仕組み x 価値を生み出す社内の仕組み

 

 10分カットの様な新しいカテゴリーを作っていくには、ユーザーのジョブを解決して価値を提供するだけでなく、その価値提供を実現する仕組みを作っていく必要があります。そのためには、そこで働いてくれる社員のジョブを解決しなければなりません。

 

 セミナー等でQBハウスの事例を話すと、「簡単に真似されるのではないか?」という質問を受けます。確かに10分カットだけを売る(アンバンドリング)、価格を一律1,000円でわかりやすくする、想定ユーザーの生活導線上の目立つ場所に出店する等の工夫は比較的真似しやすいかもしれません。
 しかし、本当に簡単に真似し易いのならば、なぜ他の美容室や理容室はやらないのでしょうか。やれない、もしくは、やりたくないのではないでしょうか。

 この質問には、「QBハウスはヘアスタイリストのどんなジョブを解決しているのでしょう?」と質問で返しています。約7割が3年以内に退職するとも言われているブラックなイメージのある業界、シャンプーばかりで指が割れ、お客さんの髪には触れられずに休日返上で練習・・・という状況でヘアスタイリストが解決したいジョブは何でしょう?

 ・美容学校を卒業したスタイリストは、見習いでも、早く接客できる様にしたい

 ・経験の浅いスタイリストは、接客の機会が少なくても早く成長したい

 ・この仕事が好きなスタイリストは、ブラックな業界でも、ホワイトに働きたい

 

 こうしたジョブに答えるために、QBハウスは業界常識を覆して様々な施策を実施してきました。この部分は一朝一夕では真似できません。
 職人気質で技術は背中を見て盗む世界に、給料をもらいつつ、専門のトレーナーから1日8時間しっかり学べる6ヵ月の LogiThcut カリキュラムを提供しています。LogiThcutは属人的な技術を徹底的に分解して論理的な(Logical)考え方(Thinking)に基づいたカット理論でカット経験が無くても6ヶ月間で店舗デビューできる様に育てます。

 必要な道具が全て揃ったシステムユニットは改良を重ねて5世代目。10分間での身だしなみを実現するために、無駄な動作を極限まで省いています。
 全てはスタイリストが力を発揮するため、その結果、お客様が望むサービスを受けられる様にです。「ちょっと時間ができたからQBハウスでさっぱりしよう!」とまさに目的ブランド(あるジョブを片付けようと思った時に真っ先に想起されるサービス)になっています。

 

価値を生み出す社内の仕組み = 業界の不を破壊する仕組み

 

 顧客やユーザーの未解決のジョブだけでなく、自分がいる業界の不の側面からも新規事業のテーマを発見できます。しかも、この場合は自分が当事者になれるので、業界構造の理解やジョブの理解のための活動を効率化できます。一方で、業界の当たり前に違和感を持てない可能性も高いので、ジョブ理論のレンズで丁寧に観察する必要があります。また、機能するソリューションを描くには、その他のステークホルダーのジョブも同時に解決しなければならないかもしれません。
 QBハウスは最初、業界に新しいサービスモデルを導入してユーザーのジョブを解決しました。しかし、フランチャイズでの拡大を急ぎ、サービスを提供する側のスタイリストのジョブは解決されないままでした。その後、現在の北野社長の体制下で、スタイリストを社員として雇い、トレーニングカリキュラムを構築し、持続可能なビジネスに育て上げました。
 QBハウスの様に、両者を同時に解決する形でソリューションを描ければ、同業他社が真似したくない破壊的イノベーションを起こすことができます。

 

 外のチャンスと内のチャンスの両方に目を向けて、
 顧客も自社もハッピーになる新規事業を作りましょう!

イノベーターは育てられるのか?

Written by 星野 雄一 on 2019-03-18

よく「イノベーターは育てられるのか?」という質問を受けることがあります。

 

イノベーターに求められる能力が先天的か後天的かといった要因に着目して質問される方、逆に結果に着目し、本当に結果を出せる人材になるかどうかという意味で質問される方もいますが、質問に対しては次のようにお答えしています。

 

「行動がイノベーターになる」という状態は作り出せます。

 

少し話を変えてみましょう。多くの人は社会人になった頃、新人研修やOJTもしくはインターンなどを通して、名刺交換の仕方や電話の取り方、議事録の書き方などを習得してきました。習得するためには学生時代に身につけていなかった行動の取り方を教えてもらい、それに沿ってやってみて、様々なケースで実践を積み重ねて身につけてきたのではないでしょうか。(教えてもらえず見よう見まねでやった方も多いかもしれません)

これらの行動は、すでに出来ている人にとっては当たり前のことであっても、初めてやる人にとっては全く当たり前でない行動であったはずです。が、いつしか出来るようになりました。


日本では経済成長と共に事業がスケールし、似たようなことをやれる人を増やすため、暗黙知であった行動を言語化やマニュアル化、OJTを発展させてきました。その結果、従業員は既存事業を回すための様々な行動は上手になっていきました。すなわち、行動を規定でき、やれる人が多くいて、自ら熟練を重ねれば、新たな行動は身につくということです。

 

そして、今、どうやったらイノベーターやイントラプレナーを育てられるかという議論が熱を帯びています。 それは事業の陳腐化スピードが早い、今の時代に必要な行動がそれだからです。

 

ところが社内を見渡しても、過去にイノベーションと呼ばれるような新規事業を起こした人は役員クラスを見ても極僅か。周りには経験者がいないので困ったものですよね。また、かつてはイノベーターの行動に関するモデル化、言語化が進んでいなかったので、仮に経験者がいたとしても一部の凄い人(変人?)が取る行動とされていました。その背景もあり、「イノベーターは育成できるのか?」という問いに繋がっているのだと感じます。

 

しかしながら今は新規事業開発の分野でも、その行動の取り方や考え方が言語化されてきました。イノベーターDNAモデルでは、質問力、観察力、ネットワーク力、実験力、そして関連づける力が必要な力と定義づけられており、事業機会発見のJOBSフレームワークや仮説検証プロセスなどの行動も言語化されています。

 

ですので、これらの知識・型を正しく取得し、新しい行動を素直にやってみて、素直にわからないところは質問し、様々な場面で実践を積み重ねることをやれば、結果として「行動がイノベーターになる」のです。


ただ、一つ気をつけなければならない点があります。せっかく型を教えてもらったのに、まだ慣れないうちに「自己流で創意工夫し始める」ことです。これはコーチやメンターが伝えていることを正しく理解しようとせずに自分の中で過去の経験・知識に当て嵌め、「前に聞いたあれと同じ」とか「それと似たようなことをして、昔◯○さんが失敗した」と判断し、安易にやるべきことを除いたり、やり方を変えたりしてしまうことです。どうなってしまうかは大体想像できるかと思います。

この辺りは茶道や武道の世界で言われる、守破離とも通ずるものがありますね。まずは守である、と。行動変容の基本は昔と何も変わりません。コンテンツが変わっただけです。

 

これから人生100年時代では避けては通れない環境変化に対して、必要な行動を素早く身につけて、行動変容を遂げていく必要性は今後も絶えず発生するでしょう。AI時代を迎えたら・・・といった議論もありますが、時代の変化があれば、変化している環境に自ら身を置き、先人の活きた知恵を学び、実践を積み重ねながら習得していく姿勢、すなわち「知的な謙虚さ」を持っていれば、特に怖がることもないでしょう。

スピンアウト、カーブアウトのススメ

Written by 津嶋 辰郎 on 2019-03-11

8年前の今日、起業の気持ちを固めるきっかけになった大地震を当時のクライアント先で共同創業者と経験し、それによる首都圏の交通機関の壊滅的な麻痺を通して忘れられない数時間を過ごしました。そして同年INDEE Japanがスタートすることになります。

現在は首都圏を中心として学生や20代を中心に起業が一つのブームとなり、日本においても起業≒若者というイメージが徐々に定着しつつある気がします。しかし、我々もZENTECH DOJO Nihonbashiをスタートしてから約3年に渡り、多くの若手起業家予備軍のよろず相談にのってきた中、世の中を変えたいとかより良くしたいという強い思いがある一方、圧倒的なほどの社会経験不足と知識の少なさに対して課題を感じざるを得ないという状況を多く目の当たりにしてきました。実際そう感じる人達には、現在も正直に一度就職した方が良いとアドバイスしています。

これだけ世の中には情報が溢れており、特に首都圏では会いたい人や話を聞きたい人にもアクセスしやすい環境が整ってきたとはいえ、実際20歳で一人の人間が身につけられることは20年以上前の我々世代とさほど変わっていないというのが実感でもあります。若者発として世界に発信できる事業が生まれるには、まだまだ時間を要するというのが現場での実感です。

 

一方、大企業での新規事業立ち上げプロジェクトや社内起業プログラム等での加速支援をしていると、入社して5年程度の若手から20年以上のベテランまで非常に高い技術力や巻き込み力、また特定の分野でのネットワーキング力を持ちつつ、自らのめり込む事業テーマを持っている企業内起業家に会うことがあります。もちろん会社の文化や成長ステージによって人数の大小はありますが、どんな企業でも必ず数名は存在します。そしてそういう人達は、既存事業の推進が花形である社内ではあまり高く評価されていないというのも別の共通点です。

多くのこうした企業内起業家と触れる中で、我々は下記の二種類のタイプがいることが分かりました。

 

・元来、思いが強く、自ら提案・チャレンジを積極的に行うタイプ

・仕事を進める中で、たまたま自分がのめり込むテーマに出会ったタイプ

 

今日のスピンアウト、カーブアウトというテーマの中で、注目したいのは後者のタイプです。どうしても”起業”という文脈で人を要件を考えると、前者のような外から見ても分かり易い特性を持ち、そうした経験を積み重ねてきた人物に注目されがちです。しかし、日本の社会的な環境で、特に大企業内や大学内で過ごしている研究者・エンジニアは、後者のタイプこそが、貴重な事業の機会を持っている人物ではないかと考えているのです。

ただこの後者のタイプが組織内で事業化に取り組む場合、大きな壁が立ちはだかります。まず個人としての社内の評価が高いわけではなく、社内に強力な人脈があるわけではないため、社内への発信力(特に上層部向け)や、巻き込み力(試作開発や顧客開発に関する協力体制の構築)の圧倒的な不足です(ただ一方、社内エースではないため個人として専任化という点ではやりやすかったりするのですが・・・)。

そういう状況下では、本人にとっても会社にとっても社内で事業化を進めるメリットは殆どないと言っていいでしょう。相当、強力な新規事業支援プロセスや社内体制があれば別ですが、正直そこまでの力を持つもの社内プロセスには我々も国内外共に未だ出会ったことがありません。

そこで我々がオススメしていきたい手段が、社外に別の会社を設立して事業立ち上げを行うスピンアウト・カーブアウトです。その具体的なメリットは、

 

・無条件で担当者の専任化が可能となる 

・固定費を最小化することでのローコストオペレーションが可能となる

・共同研究開発などのオープンイノベーションがやりやすくなる

・外部資金が調達しやすくなる(エクイティファイナンス)

・判断プロセスの簡素化されることで、事業化スピードが圧倒的に早くなる

 

実際、新規事業立ち上げを必要としている内需型日本企業の問題は、既存市場が縮小傾向にあることがほとんどです。そのため、社内新規事業として提案されている筋の良いテーマの多くは既存事業と直接的に関係ないものが多くなるのは必然の結果です。そのため社内リソースが実際あまり有効に活用できないことが多く、結局、提案者の思いや実行力が最も重要なリソースということになります。であるならば最大限それを発揮できるステージを用意する方が、会社側そしてプロジェクト側の双方にメリットがあることは間違いありません。

チームのスキルと知識が不足している領域は、我々のような外部のアクセラレーターを活用したり、相性の合うベテランを支援者として補う事も可能です。また昨今多くの企業では当たり前になっている早期退職制度の取り組みを前向きに発信でいる形での制度設計をする事もできるのです。

 

そこで挙がってくる懸念が送り出す企業側との契約関係になります。しかしここも事業化が成立した後、または新会社設立x年後のレベニューシェア、優先的販売権、事業または製品のまるごとのとしての買い戻し権など新会社が目指す事業の形体に応じてクリエイティブに設定することが可能になります。

そんなに価値があるものを気易く社外に出してもいいものだろうか??・・・いやいや、

 

日本の大手企業で働く会社員は例外なく、自分が所属する会社を愛しています

 

この世界的にも稀にみる自社に対するロイアリティーが、日本企業の強さであったことを日本の経営者は忘れてしまってはいないでしょうか?企業内起業家はたとえ外に出たとしても、中長期的に間違いなく未来の自社にとって多くのものをもたらしてくれます。

どうでしょうか?特に今の日本の大手企業に働く層こそが、日本の伝統的社会と文化としての良き面を理解し大切にしようとしている人達ではないでしょうか?

 

こうした様々な理由と現場経験を通して、スピンアウト・カーブアウトこそが、現在の日本の置かれた状況に適した起業の方法論であり、多くの社内プロジェクトや企業内企業家にとって有効な手段であることを確信しています。そして、我々もこうした取り組みにチャレンジされたい企業や企業内起業家は全力でサポートいたしますので、このブログ等にピンときましたらお気軽にお問い合わせください。 

 

またスピンアウト、カーブアウト支援に着目しているプログラムでもあるKawasaki ZENTECH Acceleratorにも注目ください。

組織は“イノベーション”戦略に従う

Written by 山田 竜也 on 2019-02-18

先日、イノベーティブな組織への変革をテーマにしたセミナーを行った際、終了後に参加者から「もっと組織変革の話を聞きたかった」というコメントをもらった。イノベーティブな組織であるための要素を理解し、それへ向けてのイノベーション戦略を描くという内容だったのだが、いわゆる組織風土改革に関する内容をより期待されていたと気付いた。

なぜこのギャップが生まれたのか?

イノベーティブな組織になるためには、組織風土ではなく、イノベーション戦略の策定から始める必要があるというのが基本コンセプトなのだが、組織そのものへ直接働きかける事でも変革できると言う前提に立つと、その必要性がピンとこないのかもしれない。組織が先か?戦略が先か?どこかで聞いた様なテーマだが、有名なのは「組織は戦略に従う」だ。

「組織は戦略に従う」はアルフレッド・D・チャンドラーJr.の経営学の古典的名著で、1920年代に、GM、デュポン、シアーズなど当時の大企業が市場環境の変化に対応するために挙って採用した事業部制はどのような経緯で生まれたのかが描かれたものである。時代は違えど、市場の変化についていくためには先ず戦略ありきという点は共通である。そして、今、イノベーションを起こし続けられる組織になるために、イノベーション戦略が求められている。

 

戦略を描く → 組織に落とし込む → 具体的な行動を定義する

確かに戦略を描いても、それを組織に落とし込めなければ機能しない。明確な戦略、もっと噛み砕くと、何を目的・目標と定め、どのようなKPIを設定し、日々どのような行動を取るべきかが無いと、具体的なアクションには繋がらない。組織風土のような目に見えないものを日々の行動に落とし込むには、その風土を生み出すための具体的な行動が不可欠となる。

 

既存事業の中で根本にしている理念から行動を定義し浸透していく場合には、戦略そのものを変えるわけでは無いので、組織内の人の関係性にアプローチする組織開発的なアプローチも有効だが、新規事業を創出し続けられる組織になるには、既存事業とは異なる取るべき行動を示すために、イノベーション戦略を立てることから始める必要がある。

 

組織変革というテーマでも、既存事業を維持するためか、新規事業を生み出すためかでアプローチは大きく異なると言う事だ。

 既存事業? vs 新規事業?

では、新規事業を、それもイノベーティブな新規事業を生み出して行くためには何をすれば良いのか?

 

組織の枠を超えて考えさせるために、個人を解放させても、組織の関係性を変えても、不十分である。Unstructure, Unlearningはステップとして必要だが、その上で、新規事業を生み出す組織を運営する新しいプロセスと新規事業のネタを探索し仮説検証していくプロセスをRestructure, Learningしていく必要がある。

 

マッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱した7S Modelで考えてみよう。このモデルは企業戦略の要素がそれぞれ関係しあっている事を示している。そして、成熟した既存事業を持つ企業はこれらが整合している。
問題は、一度は整合した要素をイノベーティブな組織を生み出し続けられる形に変化させるために、どう変えていけば良いか?と言うことだ。

多くの企業で取り組まれている活動は、ここの要素が整合しなければ機能しないものであることを無視して(もしくは、気付きながらもできずに)部分的な一点突破を行なっている様に見える。

一点突破の例

・組織構造
  新しい組織を新設して飛び地の新規事業に特化させるが、
  全体に何の影響も与えることができずに大きな変化に繋がらない。
・人材
  内部人材に組織の枠を超えた活動を期待し育成するが、
  組織の壁を超える人材は生まれてこない(もしくは出て行ってしまう)
・組織風土
  働き方に自由度を与え組織全体から湧き出すものに期待するが、
  ガス抜き的なアイデアしか出てこない。
・スキル
  選抜人材にビジネスモデルやデザインに関する教育を行うが、
  ビジネスの現場に置いては何も新しいアイデアが得られない。
・システム、制度
  ビジネスプランやアイデアを公募するが、
  現業の改善か個人の夢のようなアイデアしか出てこない。

こうした施策が機能しない原因は、既に整合している7つの要素の1つ(ないし2つ)から、全体をひっくり返そうとすることに無理があるからだ。

 

既存事業を守りつつ、新規事業も、イノベーションも起こせる組織になるには、既存事業と新規事業の戦略を分けるしかない。1つの企業に敢えてダブルスタンダードを許すのだ。

その上で、イノベーション戦略の下に
・組織構造をUnstructureし、新たな組織を新設する
・これまでの人材像を横に置き、新しい種類の人材を登用する
・既存事業を支えていた組織風土と異なる風土を認める
・これまで重視していたスキルをUnlearningし、新しいスキルを習得する
・新しいプロセスを定義する

 

ダブルスタンダードを許す事は、1つにまとまった組織では抵抗感があるかもしれない。その時は、7つの要素を全て持った特区的な組織を作ると言う手もある。何れにせよ機能する最少単位を作らなければ成果は得られない。

1920年代、「組織は戦略に従う」の中で、アルフレッド・D・チャンドラーJr.は市場の変化に合わせて企業が事業部制へと移行していく姿を描いた。それから100年過ぎた今、変化が加速する時代に、既存事業と新規事業を両輪とする組織への移行が求められている。

ディスラプトされる「管理」

Written by 津田 真吾 on 2019-01-20

AIに代表される新しい技術には、流行りも廃りもある。

AIがとりわけ流行っている(バズワード化していることも含め)背景には私たちの恐怖心がある。人間は未知のものを怖いと思うし、仕事を取られる、と報道されると私たちを不幸のどん底に陥れる見えない権化のように感じるかもしれない。しかも、このAIという化け物は「中間層」と呼ばれる普通の人たちに大きな影響を与えるという。

もちろん、こうした漠然とした恐怖はあまりタメにならないので、しっかり理解して怖がらないことは精神衛生上、良いことだろう。しかし、大変なことに我々はコンピュータやインターネットをそこまで理解していないのだ。インターネットの黎明期にインターネットとは何かを説明する機会が何度もあったが、今から思うと拙いし、その可能性の100分の1も語っていなかったのではないだろうか。言い訳も兼ねて説明すると、インターネットという概念は、通信を行うためのプロトコルと、プロトコルを利用してつながっているネットワーク、そのネットワークでやり取りされる情報を含むので、果てしなく成長しているのだ。この類の技術をしっかりと理解して・・・と腰を据えてやろうとすると、キリがない。結局のところ、わからなくて怖くなってしまう人もいるだろう。

忘れてはいけないのは、私たちはわからないままインターネットを使っているということである。飛行機がなぜ飛ぶのかわからないまま乗るし、インターネットを理解した上で使っている人も、薬のことは理解せずに飲んでいるかもしれない。逆にスマホを分解して完全に理解してから使うのはナンセンスだと感じるはずだ。

流行り廃りについて話を戻そう。
これは単なる現象のようにも見えるが、恐怖を乗り越えて使っている人に注目したい(実際のところ、初期のユーザーは怖いどころか好奇心満々でワクワクしながら人柱になっているのだが、どうなるかわからないという意味では似たようなものかもしれない)。産業革命によって機械化が進み、筋肉を要する重労働がたくさんの機械によってなされるようになったように、AIを使用し始めているのは、脳を酷使するような労働のサポートに対してである。

さらに、「多くの人がやっていることをやってくれる」「比較的つくりやすい」アプリケーションは、作り手の論理としても取り組みやすい。なぜなら簡単に作れて、めっちゃ儲かるからだ。多くの人がやっていて、頭を使っている割に、それほど複雑ではないこと、にAIを応用すると儲かるはずだ、ということで投資家もここに重点的に投資する。投資が集まると、エンジニアもたくさん採用でき、技術の完成度も高まり、プレスリリースもたくさん打てる、ということで流行る。

多くの人がやっていて、頭を使っている割に、それほど複雑ではないこと」がAIがもっとも伸び伸びと仕事ができることなのだ。その標的は「管理」をする仕事にほかならない。大きな会社になればなるほど管理の仕事が増える。現場の管理をする管理者を、管理する事業部長が、取締役に管理され、株主に報告する形 (少なくとも建前上は) をとっているのが一般的な会社である。もっと卑近な例では、会議室の使用も管理されているし、複写機の使用頻度も管理されているし、顧客の来店も管理されている。こうした会議室の予約管理や顧客情報管理は、どの会社でもITシステムを使うのが常識になっているのは、どの会社にも必要でありながら、AIとは呼べないようなローテクなITシステムで作れるからだ。会議室よりかは随分と複雑な人材を管理するAIサービスも出つつように、より複雑な管理をやってくれるAIは順々に登場するだろう。

こうなると別の恐怖が生まれる。仕事がなくなるかもしれない、と。特に中間層の管理職が減るのではないかと、言うのである。そうした管理は自動化されポストは減る方向性にあると私も信じている。前述した作り手の経済的な論理からもきっと優れた管理AIが増えるだろうと予測するが、そこには恐怖は感じない。なぜなら、減っているのは「労働」であって、「仕事」ではないからだ。産業革命によってなくなった「労働」は、みんなやりたくなかったような3Kの仕事ばかりだ。トラクターを使わずに畑を耕すことを考えてほしい。あるいは人力車で移動するのではなく、人力車を引っ張ることを想像してみるといいだろう。農作物がたくさん出来ることの方が、耕す作業そのものよりも大事だ。補足すると、ジョブ理論の観点からも「管理したい」というジョブよりも成し遂げたい仕事=ジョブに注目するべきだ。

AIが伸び伸びと仕事がする領域、つまり「多くの人が携やっていて、頭を使っている割に、それほど複雑ではないこと」 は、「一般的な業務」「デスクワーク」「創造性が低い」ということになる。 実は、そんな「労働」に私たちは恐怖を感じているということはないだろうか? 考えてみると、どこにでもあるクリエイティブではないデスクワークをやり続けることの方が怖いのではないかと思えてくる。「みんながやっている、ちょっとしか頭使わないこと」を離れ、身体が動いてしまうこと、考えたくてしかたないこと、思い描くのが楽しくてやめられないこと、を始める。そういう仕事はディスラプトされないだけではない。