人材育成のジレンマ

Written by 津田 真吾 on 2019-09-24

先日、業界でも有名な人事の専門家に会った。物言いは端的で、一瞬造詣の深さだけでなくビジネスに対する情熱が感じられる。所属するのは世界的に名の通ったというより、皆が憧れるような企業で、業績も悪くない。

その方は、「イノベーションが足りない」と言い出した。社員は優秀だが、既存業務を遂行することにばかり意識が向かっていると言うのだ。

そして、社員のマインドセットを変えたい、と。

もっとオープンに発想アイデアを出し、工夫をして、会社を変えてほしいと。

私はそこで「もしかしたら社員は、わざわざアイデアを出さなくても仕事が回るんじゃないですか?」と尋ねた。

さすがに優秀な方で、ピンと来たようだ。

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高度にトレーニングを受け、業務効率の高い仕事を継続的にしてきた社員の多い会社では、トレーニングを受けたこと以外のことは「やるべきでない」「やると非効率だ」「やったら怪我をする」と現場は考えていることが多い。

優れた会社であればあるほど、業務の仕組みの完成度は高い。つまり、業務は細分化され、専門的な担当者が作業をすることでバケツリレーが完成し、高品質な製品やサービスが顧客に届く仕組みになっている。

バケツリレーでは、一人一人が持ち場を離れず、最少の動きで次の人にバケツを渡せるように淡々と動くと最も効率が良い。この動きが最適化されることが多くの事業の目的になっている。

「イノベーションのジレンマ第5原則」組織の能力は無能力の決定的要因になる と書かれているバケツリレーで火を消していた人たちは、ポンプとホースがあっても対応が遅れるし、「消火器を探して持ってくる」という優れたアイデアも黙殺されてしまうのがオチだ。

イノベーションの第一歩は消す火を探すこと

バケツリレーに喩えると、イノベーションとはまず消すべき新たな炎、つまり解決すべき新たな課題を見つけることから始まる。そして、その火は持ち場をある程度離れないと見つからないものだということに気づく必要がある。

クリステンセンらは、『イノベーションのDNA』という書籍で多くの起業家やイノベーターと呼ばれる人たちを研究した結果、彼らは「発見力」が著しく高いことを発見している。

「発見力」というのは単に物事を注意深く観察することを指しているのではない。新しい人と会い、新しい業界を眺め、新しい問いを立て、新しい実験をして見る必要がある。

もちろん、これらの行動は一人一人の個人が取るものだ。元々、これらの新しい行動を積極的に取る行動特性を持つ人間も存在する。(それを測るにはイノベーターDNA診断が有効)

しかし、この人事責任者がそれまで気づいていなかったように、「持ち場を離れにくい」仕組みが出来上がっている状態では、マインドセットを変えろと言っても掛け声で終わってしまうのも事実だ。だから、多くの発想力強化ワークショップはその場だけ盛り上がって失敗するし、アイデアコンテストもアイデアを集ったあと、行き場がなくなる。

持ち場を離れられるのか?それが許されるか?

大企業からイノベーションが生まれやすい風土を作る第一歩は、アイデア出しワークショップをやることでも、オフィスレイアウトを変えることでもない。シリコンバレーに行くことでももちろんない。

イノベーションを社内から起こしたくても苦労している企業は多い。ほとんどの企業ではすでにワークショップを複数回開催し、アイデアコンテストも開催している。それらの企業の共通している問題は、「持ち場を守りながら」やっていることにあるのだ。

バケツリレーの持ち場を守りながら発見できるような課題はほとんどないし、あっても小さなアイデアになりがちだ。しかも業務外で素晴らしいアイデア出す人にも時々出くわすが、アイデアの評価者は現状の持ち場を守りながらの評価をしてしまし、ボツ案として葬られる。

なので、こうした企業ではまず「持ち場を離れて」問題を発見することから始めることを勧める。Get out of the building! というわけだ。もちろん、ジョブ理論のような発見手法があると、はるかにチャンスは見つけやすくなる。

スキル獲得のジレンマ

話はそこで終わらない。
組織が、個人のタガを外したとしても、人は得意なことをしたいものだ。つまり、引き続きバケツを受け渡し続けることを選ぶ可能性が高い。スキルが高いことが、イノベーションを阻害することになる。“組織の能力は無能力の決定的要因”であったように、個人の能力も無能力の決定的な要因となり得ることに注意したい。

私たちも、つい「強みを活かす」ことを志向してしまいがちだ。いまの強みを最大限に利用することを目指してしまうが、強みを使っているだけでは、その領域のみで狭い能力が高まるだけで、他の能力については一切開発されない。

このジレンマにも処方箋はあると考えている。

破壊的イノベーションが未成熟な技術や市場から生まれるように、スキル獲得も未成熟な領域に注目し、踏み込んでみるのだ。先人がいない、または少ない領域ではすぐに一流のポジションを築くことが可能になるだけでない。ゼロから始めることで伸びしろも大きい。何よりも、先人がいなければ教えてもらうわけにいかない。つまり「教えてもらう」から「自ら学ぶ」マインドセットを醸成することができるのだ。

インド人ファシリテーターの、とっても静かなデザイン思考セッション

Written by 山田 竜也 on 2019-09-16
デザイン思考のプロセスで一人静かに内省を繰り返す

先週末、2019年9月6,7日にクアラルンプールで開催された The 22nd IAF Asia Conference に参加してきました。IAF:International Association of Facilitators は1994年に設立され7つの地域に展開している Professional Facilitator の団体です。その中でもアジア地域は現在もっとも成長しているエリアとして注目されています。自分自身は2013年の東京大会からの参加ですが、ファシリテーターとして活躍したい方、ファシリテーションを活かしたい方へ、ネットワーキングとナレッジシェアリングの触発の場としておすすめです。

 

印象的だったセッションを1つ紹介したいと思います。Yateen Gharat氏(India)によるInsights from the Inside – Design Thinking approach for thought harvesting!!!

左がYateen Gharat氏(India)

参加前の勝手な想像は、インド人=アグレッシブで早口で高速回転、デザイン思考=アイディエーションとプロトタイピングで高速回転と、物凄く賑やかでアウトプット志向の場だったのですが、オープニングから中盤へとワークショップはより静かに、より内省的になっていきました。
そして、このとっても静かで内省的な時間が自分にデザイン思考のプロセスを見直す良いきっかけを与えてくれました。想定とは違う、そして、違うからこそ、自分だけでは気付けなかった気付きが得られるというのが、残り物セッションの醍醐味です(実は事前のセッション登録を忘れていて当日空いている中からえいやで選んだのがこのセッションでした(笑)

 

デザイン思考の5つのステップ

デザイン思考はこの5つのステップで表されます。

  1. 共感 人の声を聞き、その人や置かれた状況を深く理解する
  2. 定義 人の本質的にやりたいことを理解し、解くべき課題を定義する
  3. 発想 その人に素晴らしい体験をもたらすためのアイデアを出す
  4. 試作 そのアイデアがユーザー体験を変えることを示すプロトタイプをつくる
  5. 実験 プロトタイプを用いてユーザー体験全体を示し、フィードバックを得る

このステップ自体はシンプルで覚えやすいものだと思いますが、一つ一つのステップを実行する際に、自分の思考の枠を外さないと思考は深まらないしブレイクスルーは生まれません。
以前に参加したデザイン思考のワークショップでは、「ペアワークで相手へのインタビューを通して共感しその人の真の問題を定義するアプローチ」や「身近な社会問題に関してグループでディスカッションしながら進めるというアプローチ」が多かったのですが、今回は一人で自分にとって何が問題かを内省することに重点が置かれていました。Insights from the Insideというテーマ、誰かの問題を解決するのではなく、自分の問題を解決するという発想の逆転 Flip! が、改めて共感、定義のステップの大事さと難しさを実感させてくれました。そして、この2つのステップは、そのままジョブ発見のステップと繋がります。ジョブに関しても同様に自分自身のジョブは何かを考えてみることをお勧めします。

 

ジョブ理論は共感と定義のステップを実施し易くする

多くの問題解決手法と同様にデザイン思考も、前半の問題定義の部分と後半の問題解決の部分に別れています。それぞれの中で収束発散を繰り返しますし、良い問題が定義できても解決策がなければ問題定義や発見にまで戻る場合もあります。
そして、最初のステップをきちんと実践できていないまま先に進んでも、顧客や提供価値のはっきりしない曖昧な解決策にしかなりません。ただ、分かっていてもついつい解決策に走りたくなるのが人間の性でもあります。

自分以外に顧客を求める時には、共感と定義のステップにはターゲット顧客を巻き込んでインタビューをしてと大変手間がかかります。しかもインタビューの巧拙により確信を持てないまま進んでしますこともあります。
しかし、この自分の課題を解決するというテーマ設定では、手を抜かない限り自分自身との内省を繰り返すことができます。つまり、一人で短時間に仮説検証としての内省を繰り返すことができます。適当なテーマでおざなりにステップをなめるよりはより深い思考に辿り着くことができます
これは5つのステップ全てに当てはまります。自分は結局、共感、定義のステップで”立ち往生”していましたが、その分、デザイン思考のステップを活用する時のポイントと自身のInsights from the Insideに気付ける価値ある時間になりました。

 

さて、今大会の参加には、最後にもう一つ”立ち往生”のおまけが着いてしまいました。

もはや最後尾もよく分からない長〜い列

台風15号の関東地方への直撃で、帰国便が大幅に遅延、そこまではまだ良かったのですが、無事に成田空港に着いてホッとしていたら、電車、バスともに運休でまさかの立ち往生。ネットに情報は流れていたものの、現場でどの列に並ぶかは直感での判断しかありません(笑)リムジンバスの列に並び続けて最終便のチケットをゲットしましたが、後ろにはまだ数百人並んでいました。皆んなどうしたのだろう・・・と後ろ髪をややひかれつつも帰路に着きました。

違和感を持ったのは、列に並んでいる間も、どんどん到着客が増えてくる事です。こんな状態の成田空港に降ろされても困るだろうに・・・、乗客には事前にアナウンスされていたのかな・・・、エアラインと空港と電車とバスとタクシーと、連携する事の必要性を強く感じた日でした。

人間の寿命が延び、ビジネスの寿命が縮む

Written by 津田 真吾 on 2019-06-27

人間の寿命が延びている。

私が就職した90年代の男性の平均寿命は76年生きていた。私が生まれた60年代はたった65年。それが今は23%も伸び、ほぼ80年となった。20で成人し、勤めるとして33%も長く生きることになる。

逆に、企業の寿命は縮んでいる。Innosightが発表したこちらのデータによると、60年代に30年間、世界トップ企業にランクインできていた企業は半分の約15年で退出させられている。

人の寿命が延び、企業の寿命が短くなると何が問題なのか?

所属している組織が、キャリアの途中で衰退し後輩が全然入らない。
就職したときに活況だった業界が、斜陽産業になる。
憧れの職業の待遇が悪くなる。

ここ数年の変化を感じることは難しいけれど、20年前ほど遡ると違いは歴然としている。当時日本が世界中から求められたエレクトロニクスや、精密部品の需要は軒並み低下し、工場もずいぶんと減った。立場上、組織の衰退を「ビジネス上の失敗」としてとらえるケースも多いが、私たち個人の生き方にも大きな影響があると言わざるを得ない。なぜなら、職業や所属する組織は私たちのアイデンティティーの重要な部分を占めているからだ。「インディージャパンの津田です。」「エンジニアです。」「研究者です。」「営業やってます。」「個人事業主として、デザインをやっています。」などなど、私たちは自分を説明するための「職業」や「所属」が必要だったりする。必要、というのは生物として生きるためというよりも、社会的に生きるために必要にという意味で。

アドラー心理学で有名な岸見一郎さんは、「仕事とは人の役に立ったと感じる時に訪れる」と言う。仕事を通じて、同僚や顧客、会社に貢献できた、と感じることが大事だというのは、私自身、日々実感する。その貢献していたはずの会社が傾いたら?役に立っていると思っていたのに、そうでもないということに気づいたら?ずっと続けてきた職業の需要がなくなってきたと感じたら?所属して頑張ってきた組織がなくなってしまったら?

短命化しているのは組織ではない

ここまで書いておきながら実は、短命化しているのは企業ではないことに注意したい。実際に、バブル崩壊を経ても多くの金融機関は(合併は著しいが)生き延びている。私がかつて所属していたIBMは3分の1ほどに縮小したものの、存命している。一方でスタートアップの大半は数年で消滅する。なので、大企業はスタートアップと比べて「安定している」というのは真理と言わざるを得ない。

しかし、IBMの例のように、その看板の下で働く人たちは減っている。勤めている人たちもずいぶん入れ替わっている。一方の株価は安定はしていることを考えると、安定しているのは株主なのかもしれない。では、何が短命化しているかというと、「ビジネスモデル」である。稼ぎ方が変わってきているのだ。

ハードウェア販売中心のビジネスモデルからソフトウェア販売、さらにはビジネスサービス、ついにはビジネスサービスを自動化したSAASサービスへと転換したとする。会社は残ったとしても、ハードウェアの技術職の必要性は減り、つぎにセールスマンの必要性は減り、と職種に対する需要は大きく変動する。価値の源泉がシフトすれば、企業はビジネスモデルをシフトさせることになる。必要とされるスキルもシフトしていく。

スキルをシフトするスキル

ビジネスモデルが短命化すると、このシフトが発生する回数が増える。寿命も延びているので、会社を転職する「転社」も増えるが、同じ会社内で求められる業務が変わる「転職」ももちろん増える。

そうなってくると、ある特定のスキルを身につけるというよりも、「スキルを身につけるスキル」みたいなものが必要になってくる。 急な変化のただ中にいて、混乱を目の当たりにすると、私たちは何か強い北極星となるような「答え」を求めてしまう。だが、過去に成功した「答え」であるビジネスモデルはすでに古びてしまっている可能性も高くやっかいだ。なにせ、終身雇用が崩れた今、会社勤めしていたとしても、労働の対価として給料をもらっている「事業」だからだ。

実はこのように、会社員も、まるで個人事業主として「会社に雇われている」という見方が大事だ。そして、「ジョブ理論」が身近にならないだろうか?ジョブ理論以外にも、イノベーションの文脈で語られるリーンスタートアップ、デザイン思考、ビジネスモデルキャンバスは会社レベルだけでなく、スキルをシフトしていくときにとても役立つ。

  • 会社に雇われているのはなぜか? (ジョブ)
  • 転職できるとしたら、どんな価値を提供することができるだろうか? (ジョブ、ビジネスモデルキャンバス)
  • 身につけたいスキルを(転職や学校に行き直さずに)使った最小限の仕事はないだろうか? (MVP)
  • 独立する前に副業で試せないだろうか?(リーンスタートアップ、デザイン思考)
  • 転職に成功したとしたら、どのようなリソースやパートナーが増えるだろうか?(ビジネスモデルキャンバス)
  • 転職に失敗したとしたら、どのようなピボットが考えられるだろうか?(リーンスタートアップ)

これらの問いを考えることは、最新のツールを使ってみたり、スタートアップ風のオフィスに模様替えしたりするよりもきっと多くの気づきがあると思う。こういう取り組みもやっているので、スキルをシフトするスキルにご興味のある方は覗いてみてはどうでしょう?

世界の人材開発担当にイノベーションはどう捉えられているか(ATD2019ICEより)

Written by 星野 雄一 on 2019-05-27

5月19日から22日にかけて、世界最大の人材開発のカンファレンスである ATD2019ICEがワシントンDCで開催された。米国で毎年行われているカンファレンスであり、今年は世界で13,500人、日本からも227人参加した。4日間掛けて300を超えるセッションがあり、多くは企業人事やトレー二ングに関わるような方々が参加している。今回はこのカンファレンスを通して、イノベーションという文脈で印象に残ったことを記載したい。(ATD2019ICEの全般的な考察は他社がアップすると思うので、そこはお任せする)

まず、3日目の基調講演に登場したセス・ゴーディン氏。マーケティングに関する著作を多数出版している氏は、新興企業の台頭により入れ替わりの激しい現在において、従来のマスを狙った平均値的なプロダクトではなく、オンリーワンを目指さなければ勝ち残れない、“どうしてもそれが欲しい人”に向けた商品開発をすることが重要である。そしてそのような観点でビジネスに取り組める人材が必要だと説いた。まさにジョブを捉えて事業開発をできる人材こそが今、求められているのだとの見解を示していた。そしてそれを阻むのは「誰が責任を取るのだ問題」。この議論が始まると失敗できずイノベーションは起きないとも合わせて伝えている。また、イノベーションを起こすリーダーシップはアートであるとも続ける。ややもするとリーダーに様々なスキルを求めようとするが、原点は"自分がどうしたいか”であり、人としてもオンリーワンであることの重要性を説いている。また行動を起こすための準備を躍起になってやるのではなく、自分がいくところにいく。そのようなマインドセットが人を動かすのだとの熱く説いていた。大変共感できる内容であった一方で、様々な内容を織り交ぜてスピーチしていたため、メッセージの拾い方は人それぞれかもしれない。

 

また数は少ないが、起業家精神やイノベーションのセッションも幾つかあった。その中で、イノベーションDNAの5つのスキルの話が複数のセッションで引用されていたのも印象深い。イノベーターの必要スキルという中で引用先が同じものであるということは標準的に受け入れられる考え方であることの証明であろう。ちなみにど真ん中のタイトルであった「起業家の才能開発」というセッションは日本人が私以外いなかったことが残念である


その他、ラーニングとラーニング技術の展望について語っていたセッションでは、ラーニングやテクノロジーの展望に着目するのではなく、人のLIVEに着目するのだということが主張されていた。ここでもジョブを捉えるというニュアンスが語られており、個々の技術(AI,VR,etc)に関しても、個々の技術が持つ本質的な価値について主張していた。テクノロジーに関しては数年前からも語られているが、参加者同士での会話を鑑みると、まだまだ導入には抵抗感はありそうだ。リテラシーの強化が必要と感じる。

 

なお、カンファレンスに参加する人は企業人事やトレーナーの方が大半であるが、その中で事業開発の分野での人材開発コンサルタントという明らかに異質な私は、名刺交換の際に仕事の話をすると面白がって頂けたようだ。何をしているのか興味深く聞いて頂けるのはありがたいが、企業の中でイノベーションというのはアイデア発想や意識づけといった要素が強く、イントラプレナーの輩出という部分にはまだまだ軸足を置けてないのだろうということでもあり、今後もイントラプレナー輩出に向けた活動を取り組み、企業人事の方が力を入れて取り組めるように尽力していきたいと改めて感じた。

日本の新規事業担当者に最も必要なこと

Written by 津嶋 辰郎 on 2019-04-15


日本の大企業内での新規事業担当者と一緒に仕事をするようになって我々ももう10年以上になる。その業務としての難しさの原因は数多くあるが、特に担当者自身にとって取り組みが必要な最も必要な課題は、


知識や情報のインプット量を圧倒的に増やす

事にあると確信している。実際こう確信する背景としては、

  • 新卒から1社のみにどっぷり浸かっているため、複数事業や他の産業の経験が少ない
  • 社会人になった後の既存事業領域以外の学習の機会が少ない
  • 展示会参加など、新しいトレンドを把握する機会が少ない
  • 社外との交流の機会が少ない

などの日本特有の労働環境や既存事業の業務環境に原因がある。

  

ここでご存じの方も多いかと思うが、敢えてアイデア発想の古典を紹介したい。


アイデアのつくり方:ジェームズ・W・ヤング

この中でも語られているように、アイデアの源泉はインプットの量であり、ゼロから何かを生み出すと言っても、真っ白なキャンパスに自由に何かを書いていいよと言われても、その元となる情報が自分の中に無ければ新しいものは生み出せないというのが真実ということである。



では特にどんな情報をインプット(または整理)すれば良いか?そのポイントを5つほど紹介したいと思う。

 

既存の自社事業のビジネスモデル(特に自社がユーザーに選ばれている本当の理由)
 長い間関われば関わるほど、実は複雑で分かり憎くなってしまうが自社のビジネスモデルというものである。ビジネスモデルキャンバスのフレームワークを学んだら、まずは自社のビジネスに対して記述してみることをオススメしている。特に比較対象として国内外の同業他社について描いてみると、同じ商品・サービスを提供している中でも、実はそれぞれ異なるビジネスモデルや価値提案で成り立っていることに多く気づくはずである。

 

技術領域以外の自社の強み
 特に研究開発機能を持つメーカーは”技術力=競争力”、”技術力=差別化要因”という枠にはまっている。しかしマチュアな事業であればあるほど実際はそうでないことの方が多い。自社のビジネスモデルを改めて分析することで、間違いなく大手企業には技術力以外に他社(破壊的なアプローチを掛けてきているスタートアップ含)にない強みが見つかるはずである。

 

注目されているビジネスモデル
 特にスタートアップや他の産業が採用している、新しいビジネスモデルは単なるアイデアから生み出されたものではなく、新しい技術(主にインターネットテクノロジー)や商習慣、規制の変化等の外部環境の変化・進化を活用して成立している。結果としてのモデルではなく、その生まれた背景を理解する事が重要である。

 

スタートアップが解決しようとしている課題(とその所在)
 特に短時間で高い成長を目指しているスタートアップが解決しようとしてる課題は、すでに顕在化している重要な課題であることが多い。特に日本にいると実感しにくい、海外先進国や新興国における課題情報から得られるインスピレーションは大きい。

 

世の中で注目されている技術分野
 技術開発の投資額が大きい領域を中心に進化していくことが考えられる。自社の既存技術を活かすに当たっても、こうした新しいトレンドの組み合わせで今まで解決が難しかったことを解決できるようになる可能性が高い。単なるトレンド情報の収集ではなく、組み合わせとしての活用方法という視点を持つだけでも見え方が変わるはず。

一方、今回はその詳細には触れないが、下記のような情報は実際は”社内説明向け”やエンタメ以外の目的ではあまり重要でない。これらの情報収集に偏りがちな方は是非時間の使い方を見直していただきたい。

  • 他社のイノベーション事例
  • 有名な企業家、学者の講演
  • 大学や研究機関のイノベーション講座  
  • 具体的な実事業ではなく”イノベーション”に関連するイベント