Moatとは?参入障壁と何が違うのか?

Written by 津田 真吾 on 2022-02-08

まず最初にUbieの創業チームが話しているこのポッドキャスト、めちゃくちゃ面白いんでスタートアップとか事業開発やってる人は是非聞いてください!
とくにMicrosoftとSlackの分析は冷静かつ謙虚かつ大胆ですごいです。

(Ubieを知らない人も少なくなっているかもしれませんが、ユビーAI受診相談などを開発しているユビーです。最近は海外進出し、英語版もリリースしてたりします。)

さて、これを聞いて触発されたので書くんですが、Moat(モート)って考えてますか?

“参入障壁“という言葉の方が比較的馴染みがあるかもしれませんが、Moat(モート)というのは、似て非なるキーワードです。

Moatとは、日本語で“堀”を指す言葉で、城を守るために周囲の地面を掘りこんで、簡単には敵に攻められないようにするアレです。水が張ってある堀もありますし、単なる溝になっている堀もあります。Moat に対して参入障壁はBarriers to Entry、ということでMoatよりは鉄壁な言葉のニュアンスに違いがあります。

しかし、Moatと参入障壁には言葉のニュアンス以上に違う点があるのです。というのも、参入障壁とはあくまでも大企業が安定した経営を続けるために築くものだからです。市場のパイを新参者に取られないように特許や規制で固め、新しい業者の参入コストを大きくすることが狙いです。

他方のMoatは、Ubieのように自社も成長しながら、マーケットを拡大していく際に築くものです。なので、前提として競合も存在しているし、市場のパイも成長しているという違いがあります。つまり、競合は今後も増える前提に立ち、それらの競合よりも早く成長できるように、自社に有利な条件をつくるという発想が必要です。喩えるなら、忍者が前に全速力で走りながら“まきびし”を後ろに撒いて、追いかける敵をさらに遅くさせるイメージです。

Moatは自社事業をつくりながら、同時に、他社との本質的な優位性を築くことが求められることにあります。

TAMが大きければ大きいほど、そのマーケットは魅力的です。目標が大きく、攻めてるスタートアップほど、真剣にMoatと向き合うことになるはずです。

Moatのジレンマ

Moatと向き合うと、とあるジレンマに気づくかもしれません。

そのジレンマとは、「作りやすいMoatは他社も乗り越えやすく、強いMoatを作るのは大変だ」ということです。手に入れやすい優位性は、あっけなく優位性を失う、つまりEasy Come Easy Goですね。

Moatは自社にとっての難易度と他社にとっての難易度で4つの象限に分けることができますが、めったにEd象限の選択肢はないということに愕然とするのです。

自社には容易だが
他社には難しい
Ed
自社・他社にとって
ともに難しい
Dd
自社・他社にとって
ともに容易
Ee
自社にとって難しく
他社には容易
De

その割に、De象限にあるような戦略は案外あるものです。当たり前ですが、この象限の戦略は回避され、選ばれません。

そうなると、事業を進めながら自然にできるようなMoatが次に魅力的に見えます。しかしこれらのMoatは他社にとっても比較的獲得が容易なEe象限にあることが多いです。例えば、事業開発を加速し、知名度の先行者利得を得ようと考える会社がこれに当たります。スタートアップの限られたリソースで築ける1~2年の先行者利得は、そこまで大きくはありません。スタートアップが数年かけて作った知名度も、大企業が本気でテレビコマーシャルを打ちまくったりすれば、あっけなく消えてしまうリスクがあります。

Ubieの例のように、KOLのような獲得コストがかかるけれど大事な顧客につかってもらうことや、リアルなユーザーデータを獲得することは自社にとっても遠回りですし、他社にとっても築くのが大変なMoat(Dd象限)です。

この象限を攻めるという一見骨が折れる泥臭い戦略は、成功すると大きなMoatを築けるというメリットがあります。そして出来上がってみると、必ず予想以上の効果があったりします。

予想以上の効果というのは「他社の意欲を削ぐ」という効果です。

追従しようと思っていた他社から見て、Dd象限のMoatが他社の手に落ちると、「自社には難しいけれど、他社はやり切った」というDe象限に見えてしまい、回避されるのです。これこそが強いMoatの他ありません。難攻不落だと敵に思われれば、仮に裏門が開いていても、敵は攻めて来ないのです。

Do things that don’t scale

Paul Graham

Paul Graham(ポール・グレアム)が言うところの「スケールしない」泥臭いことをやり切る目的は、このDd象限のMoatを作る目的だと捉えてはどうでしょうか?


後日談

このMoatの話をその後Ubieの阿部さんとしました。すると、一度DdのMoatを掘ったことで、さらに追加のMoatを掘る限界コストが下がり、当初選択肢がなかったEd領域の打ち手が増えている状況にあるそうです。
つまり、強いMoatをつくることで、提供価値とMoatが“複利加速度的”に増えている、ということを教えてもらいました。

一つ目のDdを泥臭く作り上げたUbieのサービスから得られるユーザー体験。この体験は、次なるData Moatとなるデータを生むマシンとなり、自己成長するエンジンにもなっているんですね。今後のUbieの成長と、世界への変化には期待しかありません。

スタートアップにとっての経路依存性とは?

Written by 津田 真吾 on 2021-06-28

どうやったら会社を成長させることができるのか?

今では本やネットの記事にあらゆる情報があふれていて、さまざまな戦略フレームワークやテクニックや事例が簡単に入手できますよね。実際、このブログにはジョブ理論ピッチのテクニック、成長戦略の描き方や事業開発のコツも紹介してきました。この手の知識はあればあるほど成功には近づきますが、知識ではカバーできないことの一つに「経路依存性」というものがあります。

経路依存性とは、簡単に言うと「物事を為す順序」ということになります。

人を増やしてから、開発をするのか?
開発を進めてから人を増やすのか?

ピッチコンテストに出てから、プロダクトをローンチするのか?
ローンチしてからピッチコンテストに出るのか?

資金調達を先に行ってから海外展開するのか?
海外展開で資金調達をするのか?

近い言葉に「優先順位」というものがありますが、ちょっと意味が違います。例えば、「マーケティングと開発の優先順位をつける」というのは、どっちも大事で、どちらにより時間とお金をかけるのか?という問題ですが、「経路依存」というのは、ある一方向に進んでしまうと戻れず、「違う景色」の中で次の意思決定をしないといけないことを指します。いわゆる「タラレバ」です。

さっきの例でいえば、開発を先に進めるとバグも埋め込まれてバグフィックスに向いた人を雇いたくなってしまいます。逆に、人を先に増やす決断をすれば、開発メンバーが豊富になりますが、分業されたアーキテクチャになります。順序が違うと、人数やプロダクトが同じように見えても、その中身は結構違うものになってくるのです。

スタートアップの経営者(社内スタートアップのリーダ含む)は、次の一手として何をするべきか悩んでいます。自覚しているかどうかは人によるけれど、今何をするべきか悩んでいたり、次の一手を最適化したい、成果を最大化したいと願っています。

「経路依存性」という言葉を知らなくても、次の一手に苦労し、色々な人に相談する人がいます。色々な人の話を聞くのは一見悪くない判断のような気がしますが、スタートアップの早期であれば早期であるほど、これはマズい結果となる可能性があるんです。早いステージのスタートアップは、プロダクトが存在していても完成度は低く、顧客もユーザーも多くいません。リソースも少なく、知名度も皆無です。そういう時期に得られるアドバイスは、間違っていません。「開発を進めた方が良い」「メンバーを増やそう」「資金調達を教えよう」「顧客を紹介しよう」など、ないないずくめのスタートアップにとって、指摘されることはは当たっています。話にウソがないだけに、アドバイスを聞いている起業家は納得してしまいます。親切な助言者が多くなると、いわゆる「アドバイスのフォアグラ状態」に陥ってしまいます。

「アドバイスのフォアグラ状態」にあるリーダーは、山積みになった重要課題に直面し、何から手を付けてよいのか硬直してしまいます。概してスタートアップを始めるような人は行動力が高いのですが、重要な課題をたくさん目の前に置かれるとさすがに体が止まってしまうようです。

「今、何をするべきか?」という問いは将棋に喩えると、「次の一手」ということです。一手一手ごとに盤面は変わり、その順序の大切さを忘れてはいけません。特に、大切なのはMVPをいつローンチするのか?そのフィードバックを得てプロダクトに改善を重ねるのと、資金調達や開発チームの増強はどういう順序で行うのか?といった意思決定です。さらには、社員第一号はビジネスサイドなのか技術サイドなのか?といった意思決定も、未来の経路を決定づけているので注意が必要ですね。

この先はポジショントークも含まれていますが、やっぱりコミットしていない人からのアドバイスはある程度割り引いた方が良いと思います。そして「専門家」も、その専門性に偏った助言をする傾向にあるので、そういうバイアスに気を付けた方がよいです。税理士の意見を聞いたがために、スタートアップに時期尚早な会計システムを導入してしまい、売り上げもほとんどないのにもかかわらず、細かな原価計算の集計作業に疲弊してしまった悲劇なども見てしまいました。こういう経路依存性をもたらす意思決定をするときに信頼する相手が“Skin in the Game”=リスクを背負っているかどうか、は非常に大事なファクターになるのではないかと思うんです。アドバイスによる中長期的な影響を共有できるのか、ということです。

さらにポジショントークを超えて暑苦しいかもしれませんが、こうした思いが私たちが立ち上げたシードアクセラレーター(ZENTECH DOJOX-DOJO)に込められています。起業家と一緒にリスクを取り、「アドバイスのフォアグラ状態」を避けることで未来への経路を高めていきたいと思います。

Airbnb とDOORDASH のわかりにくい話を敢えてしよう

Written by 津田 真吾 on 2020-12-11

AirbnbとDOORDASHが上場した。
それぞれ初値ベースで$101B(10兆円以上)と$66B(6兆円以上)の時価総額とされていて、これはさすがに驚愕する。ちなみに“ユニコーン”の定義は$1Bなので、この2社はユニコーンの定義を凌駕し、$10B以上のバリュエーションを持つ企業につけられる“デカコーン”ということになる。
どちらもYCOMBINATOR発のシリコンバレーIT系スタートアップという括りで語られる。

また、Airbnbは部屋の貸し手と借り手を繋ぐ“プラットフォーム型”ビジネスであり、DOORDASHは配達をしたいレストランと届けてほしい消費者を同じようにつなぐ。

不動産や物流資源共有する“シェアリングエコノミー”というラベルも共有し、似た用語で職業や会社、場所に縛られない“ギグエコノミー”だと称されたりもする。

ユニコーン、デカコーン、シリコンバレー、プラットフォーム、シェアリングエコノミー、ここまで挙げてきただけでも数多くの「キーワード」があるが、これらのキーワードでこの2社を理解することはできない。しかもこうしたキーワードで、新しい事業を起こそうとすると痛い目に合うだろう。なぜならこうしたキーワードは事業の一面、しかも学術的な視点から見た特徴や、従来ビジネスと比べると変則的な点を取り上げたものだからだ。

例えば、「ユニコーン」は元々、伝説上の一角馬のように「きっと未上場のまま$1Bのバリュエーションには到達できないだろう。できたらカッコいいけど。」というネーミングが発端とされる。しかし現実には、予想を上回りユニコーンは次々と登場していて、幻想で終わると思われていた評価額の10倍を付ける企業も現れたため新しくデカコーンという造語が必要となった。

AirbnbもDOORDASHもITスタートアップというカテゴリに置かれるのが一般だが、Airbnbにとっては貸し手物件が借り手の期待に沿うように管理し、体験を想像させる情報発信、人々が旅に求めることが何かを把握していないと成立しない。つまり不動産業や観光業という側面は無視できない。DOORDASHは実際の物流を行っている。配達員を安定して確保することも必須であり、プラットフォームとは言うものの、リアルビジネスにかなり近い。

シェアリングエコノミーというのも、後付けの名前なので注意が必要だ。日本では昔から、醤油などの調味料を近所で共有していたように、急に必要になったものや、一定期間しか使わないもの、非常に高価なものの貸し借りは経済的に合理的だというのは誰もが知っていた。これを今の時代に合わせた形で体現しているのが“シェアリングエコノミー”の他ならない。また、企業から見たらフリーランスやアルバイトを中心に業務を回すことは固定費や福利厚生費を抑えるメリットがあり、働く側はややこしい上司やルールに縛られずに生活できるメリットがあるので、ギグエコノミーは職人やクリエイティブな職業を中心にラベルが付けられる前から存在していた。インターネットを活用できる企業によって発掘が進んだという方が正確だろう。

新規事業を起こしたい、スタートアップして成功したい、という方はわかりやすいラベルやキーワードを超えてこの2つの会社を知ってみたらどうだろうか?日本にはユニコーンが足りない、とか経済が低迷しているとか、危機感を持っている読者もぜひ、とお誘いしたい。

キーワードを超えて、と言ってもAirbnbに泊まってみるということを言っているのではない。もちろん楽しめる体験ではあるし、百聞は一見に如かずではあるが消費者としての体験とは異なり、事業を起こすプレイヤーとしての体験が大切だ。これを追体験することは決して容易ではないが、そのチャレンジの歴史と泥臭い試行錯誤の人間模様を知ることで、決して「普通の」スタートアップなどないことはきっと理解できるはずだ。普通のキーワードを追っかけた「置きに行った」新規事業が失敗し、キーワードを学者たちに作らせたチャレンジが成功するということも。

YCOMBINATORからいくつか生い立ちを紹介しているので、代表的な例としてご紹介する。(日本語にさっそく訳してくれた方もいるようで、これもギグですね)
https://blog.ycombinator.com/the-airbnbs/
https://review.foundx.jp/entry/doordash-from-application-to-ipo

AirBNBとDOORDASHの上場をきっかけに、この2社のことを改めて読んだが、感じたことがある。それは、起業家は社長の形をしているがクリエイティブな実験家であり、スタートアップはビジネスの形をしたクリエイティブなチームであり、シードアクセラレーターは投資家の形をしたクリエイティブな塾なのだということを。

「1億人に歯磨き粉の常用を習慣化させた男」と 「1億人に日常的な運動を習慣化させようとしている男」

Written by 加藤 寛士 on 2020-07-06

今日多くのサービスがユーザーに継続して使ってもらって、初めて提供者に利益をもたらすビジネスモデルを採用するようになりました。

提供者側が対価を受け取る前にユーザーに使ってもらって、良さをわかってもらい、さらに習慣的に使ってもらう」というビジネスモデルです。横文字で”サブスクリプション”なんて言われて、最近もてはやされてもいるようですね。(S製薬のDリンクル方式(?)といえばイメージしやすいでしょうか。)

選択肢過剰社会でビジネスを行う場合、新規顧客獲得コストが最も高くつくためにこのようなビジネスモデルが流行しているのだと思います。


一方で、普通は新しい習慣を身につけることはユーザーに大きな負担を強いることも忘れてはいけないでしょう。習慣化を達成するためには、例えば以下のような問題がすべてクリアされている状況を維持する必要があるからです。


  • 時間問題
  • お金問題
  • 周囲の理解問題
  • 上手にできない問題
  • やめる言い訳が思いついてしまう問題
  • なんだかどうでも良くなってくる問題
  • どうしても飽きてくる問題
  • 気分が乗らなくなってくる問題
  • すぐに効果が得られない問題

そこで多くのサブスクリプション型のビジネスでは、ユーザーにそうした数多の困難を乗り越えてもらう対価として、(一般に膨大な手間をかけて) 毎日のようにリッチなコンテンツやインセンティブを提供し続けています。

しかし多くのサービスが、そうした実直で献身的な努力にもかかわらず確実にユーザーに習慣的に使ってもらうことができずに、苦戦を強いられているようです。


そこで今回は「プロダクトデザインにおける習慣の形成」をテーマに、わずか10年で1億人の習慣形成を達成した歴史的な成功事例を紹介し、その事例の観察から行動経済学が解明した「プロダクトデザインに応用可能な戦略」についてお伝えします。

さらに、その戦略を(自覚的にかはわかりませんが)上手に活用し、現在進行系で1億人の運動習慣の形成を目指しているスタートアップ企業をご紹介します。



3週間では足りない習慣形成

よく言われる習慣形成の知恵として、「まず3日、そして3週間続けることができれば、それは習慣になる」というようなことが言われています。その知恵に従って、習慣化が達成されるまでの間、一定のインセンティブを与える方法がビジネスの場面でもよく取られています。

ちょうど今(2020年7月)、国が電子決済の利用を促進するために最大5,000円分相当の「マイナポイント」の付与する施策をおこなっています。これも、インセンティブを使って、電子決済利用の習慣化を狙ったものと言えるでしょう。

また、ソーシャルゲーム業界では「初回登録から14日間ログインボーナス」のようなキャンペーンを行うことは、ほぼ全てゲーム運営のデフォルトとなっているようです。


また、モチベーション理論などの視点から提供される習慣化の戦略として「小さな達成を可視化せよ」みたいなこともよく言われています。


もちろんそうした戦略は、ある程度の有効性が確認されたものではありますが、これをお読みの方であれば、「インセンティブ」や「達成の可視化」をプロダクトデザインに組み込んで、ユーザーに先行して達成感や心地よさや便利さを体験させたはずなのに、それでも習慣が形成されない。という経験もしていることでしょう。

習慣形成には、先程簡単に思いついただけでも9つもの問題がクリアされている状態を保たなくてはいけないのです。さらに強力な戦略の併用が必要な状況もあるということだと思います。



1億人に歯磨き粉の常用を習慣化させた男

ここでプロダクトデザインの妙に基づいて成された習慣形成について、歴史的に知られた成功例を一つ紹介しましょう。


成功例の舞台は1900年代の初頭のアメリカ。人口は1億人。ほとんど誰も「歯磨き粉」を使っていませんでした。この状況から初めて、1910年代までのわずか10年足らずで、ほとんどのアメリカへ国民に歯磨き粉を常用する習慣を作り出した男がいます。

その男は以下のように広告を使い歯磨き粉を改良することで、アメリカ人1億人に歯磨き粉を使う習慣を作り出しました。

  • 「歯を磨いてしばらくすると、歯や舌にぬめりを感じること」を自覚させる広告をする
  • 「歯のぬめりを感じたときには、歯磨き粉を使って歯を磨こう」と呼びかける広告をする
  • 歯磨き粉にミントの香料を仕込み「歯磨き粉を使うとミントの清涼感を感じることができる」と広告する

ちなみに、その男の名前はクロード・ホプキンスと言います。一部の人達にはおなじみの現代広告界のレジェンダリーの1人ですね。


行動経済学が解き明かしたホプキンスの魔法

アメリカ人の口腔衛生に大きな好影響をもたらした歯磨き粉ムーブメントですが、行動経済学の学者たちはこのムーブメントを観察し、マーケティング戦略として再現可能なテクニックに落とし込んでいます。

その戦略とは一言で言えば「習慣化にはキュー・リワードの組み合わせて習慣化することが有効」ということです。キューとは習慣を開始するきっかけ、リワードとは習慣を達成した時に得られる報酬のことです。


クロード・ホプキンスの事例ではキューは「歯や舌ににぬめりを感じること」、リワードは「ミントの清涼感」となります。「歯にぬめりを感じたら、歯磨き粉を使って歯を磨くと、ミントの清涼感を得られる」この3STEPを組み合わせた習慣化を目指したということです。


少し話がそれますが、広告を依頼されたクロード・ホプキンスが、「虫歯が原因で年間数万人が亡くなっています」「口がきれいであることはモテるための最低条件です」「歯がきれいだと、食事が3倍増しで美味しく感じるという分析結果が出ました」のような安直な広告を打つことをせずに、習慣化のムーブメントを設計した非凡さには、レジェンダリーと呼ばれるだけの手腕を感じざるをえませんね。


習慣の形成にはリワードだけでなく、キューが必要というのは言われてみれば、ごく当たり前のことのような気もしますが、たった10年で世界を全く新しいものに変えた実績を考えると、とても強力なテクニックと考えて良さそうです。



1億人に日常的な運動を習慣化させようとしている男

「習慣化を価値に変える」ことに取り組んでいる、現在進行系のスタートアップ企業も紹介しましょう。


LiveRunは、スマートフォーン活用して、毎日定時に10回程度バーチャルグループランニングを配信しているウェブサービスです。


LiveRun | ライブラン | ランニング | ウォーキング


LiveRunは「運動の習慣形成」に取り組むために設計されたアプリケーションですが、彼らにとってのキュー・リワードは何でしょうか?



彼らのキューは「ライブであること」です。 一瞬では理解しにくいですが、記念日と同じ仕組みだと考えてみるとわかりやすいかと思います。

世界中の多くの人々が「1月1日に新年を祝う習慣をもっていること」をキュー・リワードで説明すると、どういうことになるでしょうか?


簡単ですね。


1月1日という日付を迎えることが、新年を祝うという習慣のキューになっているということです。 同様にLiveRunでは、カレンダーではなくて、時計がキューとして機能しています。「ライブであること」がキューとして機能しているというのは、例えば「6:30の時計を見ると、走り出さなくていけない感じがしてくる」ということです。


類似したコンセプトの運動支援アプリは、動画や音声コンテンツをいつでも利用できるようにしているものが多いですが、「習慣化」という側面から見ればライブランは他を圧倒していると感じます。実際に有料利用継続率93%という、この手のサービスを運用経験がある人からしたら、ちょっと意味がわからない数字が出ているようです。


キューが古典的であったのに比較して、リワードは極めて現代的です。LiveRunでは、「定期的に運動することの爽快さ」に加えて、「みんなでひとつのことに取り組んでいるという一体感」、「名前を呼んで、ほめたり、はげましたりしてもらえること」がリワードとして機能しています。


大の大人が「そんなこと」で? と感じられたかもしれませんが、ささやかなミントの清涼感ですら世界を一変させるきっかけになったのです。再び「ささやかなリワード」が1億人の生活習慣を変えるということも十分に起こり得るのではないでしょうか?

実際に「そんなこと」でも十分すぎるほどリワードとして機能しているようです。私もたまにグループランニングに参加させていただいているのですが、朝2回参加、夜2回参加するようなほぼLiveRunの中毒(笑)とも言える方も何人も見受けられます。デジタルテクノロジーを活用したつながりのなかにリアルなものを求めていく。とても現代的なリワードですね。



新規事業開発におけるキューとリワードの設計

LiveRunが、スマートフォン普及拡大を背景にキューとリワードを設計し挑戦を始めているように、新しいテクノロジーやビジネスモデルを駆使してこれまでになかったキューやリワードを作り出すことができるようになってきました。

弊社では「デジタルテクノロジーや心理学・行動経済学を活用した習慣形成」も視野に入れた、新規事業開発の総合的なコンサルティングサービスを展開しております。

お気軽にご相談ください。



行動経済学をプロダクトデザインに応用する

本記事は、『行動を変えるデザイン』を参照して執筆しました。情報は少し古いですが、心理学や行動経済学をに活用していくかを丁寧に解説したおすすめ本です!

生と死 Innovation for Life vol.1

Innovation for Lifeのテーマは人類にとっての永遠のテーマである死について取り上げてみました。

 

我々は死と向き合う事でより生きることの意味が見えてくるのではないでしょうか?

 

私自身は、日本人の伝統的な行事や風習、そして生活習慣に多くの影響を与えてきている禅をルーツとする武道の体験を通して、武士の人生哲学に興味を持つことになりました。

スティーブ・ジョブスや、ベン・ホロイッツなど海外の多くのイノベーターもこの禅や武士道に惹かれる事には何か本質的な共通点があると考えています。

 

江戸という、戦がない平安の時代を治める為政者となった武士が、自らを律して生きていくために定めた行動規範が武士道であり、そこに不確実性が高く、生きる目的を見失いつつある現代を生きる我々にとってのヒントがあると考えています。

 

もし明日死を迎えるとしても、悔いの無い毎日を過ごしていますか?

 

自信をもって”はい”と応えられなければ、是非これを機会にその理由を探ってみてはいかがでしょうか?

 

Innovation for Life vol.1 生と死

不確実性が益々高まる現代社会において、幸せな人生をおくるために大切なことを考える問いを発信することでみなさまとご一緒により良い未来そして社会を創っていくチャンネル Innovation for Life・・・第一話のテーマは生と死 何カ所かカットしたのですが・・・時間は約8:00と少し長めにになりましたm(__)…

Vol.1 生と死

本コンテンツもイノベーションの作法通りに実践を通して改善、改良していきます。

みなさまからもご感想やご要望をお待ちしております。