要素分解の力

Written by 津田 真吾 on 2020-06-09

先日書いた『「イノベーティブ」な5つ誤解』を、あるスタートアップ創業者に読んでもらった。イノベーションだけを行うスタートアップ組織の在り方としての納得感を知りたかったからだ。

彼の感想は、全般的に納得できる示唆だという点と、「要素分解」されていてわかりやすい、とのことだった。

  

なるほど。
単にイノベーティブな組織にしよう!という声掛けよりも、分解されているとわかりやすいし、行動指針として示しやすいということだ。

もちろん、私自身もとても明確な指針だと思って、ピサノ氏の論文を紹介したわけだけれど、こちらもこうやってどこが良いのか要素分解して教えてくれると、嬉しい。

さらに、以下のようなフィードバックをもらった。
「2番の実験とやみくもなトライの違いがわかりにくい」

確かに。
この二つの違いはニュアンスで伝わるものではないかもしれない。

なので、この二つの違いを少し言語化して掘り下げてみた。

仮説検証を目的とした実験には、 「事前の狙い」「仮説」「実験コストを下げる工夫」があるものだ。つまり、何を成し遂げるための実験なのかがはっきりしているし、その目標に対する仮説がある。さらに、目標を達成するために工夫があると、リーンに仮説検証が行える。

スコット・アンソニーもイノベーションを実行するためのコツはHOPEだと『ザ・ファーストマイル』に要素を分解して書いている
H: Hypothesis 仮説
O: Objective 目的
P: Prediction 予測
E: Execution 実行

改めて要素分解の力を感じるとともに、「実験」と「試す」という言葉遣いの重みを感じた。

『ファーストマイル』は”アイデア実行”の地図 | Biz/Zine

[公開日]2014年12月05日  イノベーションは最初、「アイデア」から始まります。顧客のニーズに関すること、技術的なシーズなどの様々な「着想」から始まりますが、そこからが問題です。  飛行機であれば、離陸できる速度まで加速すれば自然に機体が浮き上がりますが、新規ビジネスではそうはいきません。実は私たちが受ける相談の多くが「いつ行動に移したらよいのか?」というものです。 …

教えるのか?学ばせるのか?

Written by 山田 竜也 on 2020-03-09

コロナウイルスは、人が会うことを必要とする業界に大きな影響を及ぼしました。音楽CDからライブに活路を見出していたエンタメ業界、来年度への布石を打とうとしていたイベント・展示会、4月の新人研修を控えた研修業界。我々も3月に予定していたセミナーやイベントは全て中止・延期になりました。

そんな中、注目を浴びているのがオンラインセミナーです。ZOOM, Skype, Hangouts, Facetime等のツールはこれまでも使われていましたが、ここにきていよいよ本格導入の流れが来るのではと期待しています。

我々もこのタイミングを利用してZOOMを使った1時間程度の無料オンラインセミナーを開催しました。1週間ちょっとの集客期間に関わらず、40名以上に申込み頂き、30人ぐらいに実際に参加頂きました。

今週金曜日にも開催しますので、是非この機会にお試しください。
3/13(金)15:00-16:00イノベーターDNA診断 特別フォローアップセミナー

普段からセミナーは行なっていますし、ZOOMも打合せ等で利用しています。ZOOMを使ったワークショップへの参加経験もありました。そういう意味では、組合せとして新しいだけなのですが、実際にやってみると色々気付きはありました。

 

ZOOMでのオンラインセミナー果たして・・・

先ず最初に、「大した準備もしていないのに、とてもスムーズに運営できたこと」、クライアント先でのテレカンでは専用システムを使っているにも関わらず、もれなく手古摺るのですが、今回はほぼノントラブルでした。参加者によっては苦労された方もいたかもしれませんが、チャットで把握した限りでは冒頭音声設定の間違いが少しあったぐらいでした。

次に、「レクチャーが程よくコンパクトにまとまったこと」、対面だとどうしても参加者の表情や仕草を意識してしまうため、質問を投げかけてみたり、表現を変えて補足したりと、良く言えば丁寧、悪く言えば冗長になってしまうのですが、リアルタイムで反応を取りにくいために、その場のコンテキストに振り回されずに、コンテンツを伝えることに集中できました。

そして、「記録した動画は再利用に耐え得る」、企業内研修でも欠席者のために撮影させてくれないかという相談が良くありますが、対面でインタラクティブに行う研修では記録そのものが難しいですし、少なからず編集作業が必要になります。今回はZOOMでの記録を試みてみましたが、当日のセミナーそのままでした(元から画面越しなので当たり前ですが)これならば欠席者向けの再配布も簡単です。

 

手段での区分けには意味がない

オンラインか?、リアルか?、教えるのか?、学ばせるのか?、敢えて手段で4象限に分けてみると今回のセミナーは左上にきます。右上は良い例が思いつかなかったので?のままとしました。
(何か良い例を思いついた方、是非教えてください(^^;

 

こうして区分けしてみたものの、何れにせよ、これは手段の区分けであって、目的に応じたものではありません。一方で、手段で区分けした議論が先行してしまい、それぞれの手段毎での導入になってしまわないか不安を感じます。

一方通行の座学よりも双方向のワークショップ形式の方が学習効果が高いとも思われがちですが、分かり易いレクチャーには価値があります。ワークショップ形式で双方向での盛り上がりを重視しすぎると、場は盛り上がっても伝えられているコンテンツは少なくもなります。

今回のオンラインセミナーでは、短い時間、一方向という制約の中で行った結果、座学のレクチャーとしての完成度は高くなった気もしています。You Tuberの様に完成度を高めた動画があれば、リアルでの座学は皆でディスプレイを眺める方が効果的かもしれません。それであればいっそ動画を見るまでは事前課題にしてしまった方が良いかもしれません。

 

目的に合わせて手段を組合せる

 

手段で区分けしたり、学習者中心!と 大上段に構えると未解決のジョブを見失ってしまいます。未完成だが価値のあるテクノロジーを試す機会も減ってしまうかもしれません。
それぞれの手段の特徴を活かして、目的に合せて使える様になってきた手段を駆使するのが効果の高い学習環境を作るポイントではないでしょうか。

結局、いろいろ試してみるのが一番。試すハードルが下がっている事は何よりうれしいことです。使えるものはドンドン使い倒していきましょう。その中で有効な使い方が見つかり、未来のスタンダードになっていくばずです!

もっと効果的な研修を行うために、バズワードに惑わされずに本質を考える

Written by 山田 竜也 on 2019-12-30

もっと効果的な研修を行うためには?

結論から言えば、組織の戦略に必要な人材像を定義し、その人達がパフォーマンスを発揮するために取るべき行動を定義し、その行動を行うために必要な知識やスキルを習得する機会と環境としての研修を提供すれば良い。

研修としてはここまでかもしれないが、習得後に取るべき行動を取り、実際にパフォーマンスが上がったかを評価し、学習プロセスを改善していく必要もある。また、そもそも知識やスキルの習得が先か、先ずは行動の実践が先か、泳ぎ方を教えるか、プールに投げ込むか(適切な安全管理の下で)のアプローチの違いもある。

そもそも研修とは?という所から整理して、もっとも普及している研修の評価方法や最近のトレンドから、より効果的な研修を行う方法を考えてみたい。

 

そもそも研修とは?

”研修”という言葉から何を想起するかは様々だ。いわゆる座学のザ・トラディショナルな研修もあれば、グループワーク中心で進めていくもの、オンラインとオフラインを混ぜたもの、プロジェクトベースで進めるもの、そして、最近では脳科学、ビッグデータ、AIと手段の側からもバズワードが飛び交い、より全体像を分かりにくくしている。

そもそも研修という言葉の語源は、研究と修養から来ている。らしい。
・研究とは「物事を学問的に深く考え、調べ、明らかにすること。」
・修養とは「徳性をみがき、人格を高めること。」

こうして見ると、研修という言葉そのものには「誰かが何かを教える」という要素は含まれていない。むしろ「自分が主体となって自らを磨いていく」というニュアンスが強い。

一方、研修を英語に訳すとトレーニングとなるが、上記の日本語の定義とは違和感がある。トレーニングには冒頭の写真の様に、「誰かに、鍛えられる、仕込まれる」というニュアンスが強く、こうしたトレーニングの場に飛び込むのは自分の意思かもしれないが、その場で行なっている事は自発的には見えない。

 

トレーニング vs ラーニング

トレーニングと対比される言葉としてラーニングがある。
・トレーニングは誰かに指導されるもの
・ラーニングは自らが考え主体となって行うもの

言葉の定義としてはラーニングの方が研修にあっている気がするが、ラーニングは学習と訳される。学習の定義はというと、「知識、行動、スキル(能力)、価値観、選考(好き嫌い)を、新しく獲得したり、修正することである。生理学や心理学においては、経験によって動物(人間を含め)の行動が変容することを指す。繰り返し行う学習を練習(れんしゅう)という。」Wikipedia

 

ここで、やっと”行動が変容する”という所に辿り着く。研修を企画する際に、言葉の定義から始めていては中身に辿り着かないので、先人達の知恵を借りることにする。

 

カークパトリックの4レベル

1959年にアメリカの経営学者のカークパトリック博士が提案した教育の評価法のモデルで、カークパトリックの4段階評価法として世界的に定着している。

・レベル1:Reaction(反応)
アンケート調査などによる学習者の研修に対する満足度の評価

・レベル2:Learning(学習)
筆記試験やレポート等による学習者の学習到達度の評価

・レベル3:Behavior(行動)
学習者自身へのインタビューや他者評価による行動変容の評価

・レベル4:Results(業績)
研修受講による学習者や職場の業績向上度合いの評価

 

この4段階は個人的にも納得感があるが、レベル4を実現できている企業にはほとんど出会った事がない。また、この評価方法および実態としてレベル4までを評価できていない事が、”研修は研修に過ぎない、業績には役立たない”という印象を生んでいる気もする。

自分自身、単なる研修と言われない研修を目指して、参加者の実務と直結させる子を心掛けているが、実務をテーマにプロジェクトベースの建てつけで行なっても、依頼主や参加者のレベル1:Reaction(反応)を最大化する事には繋がるが、レベル2,3,4までを事前にデザインできたケースは少ない。
研修実施後に機会を得て、数年経っても実践し続けていたり、プロセスとして組織に定着しているのを見るのはとても嬉しい瞬間だ。

 

HRBPという追い風

HRBP(HRビジネスパートナー)という言葉もだいぶ浸透して来た気がする。今年参加したSHRM2019でも、How to Be a Better Business Partner “You are a business professional who have expertise in HR.”と言ったメッセージが実践のためのガイドラインと共に打ち出されていた。

研修の効果が業績向上に繋がるようにするには、そもそも研修をその様に設計しておく必要がある。これをやるにはビジネスに求められる要件を人材要件に変換する事ができるプロフェッショナルが必要になる。

日本の人事担当者は他部門も経験している人が多い、人事専門家が育ち難いというマイナス面もあるが、事業に貢献できる人材を定義するには都合が良い。何れにせよ、研修企画者が全てを行う事は出来ないので、事業部の適切な巻き込みが鍵となる。

 

テクノロジーによる追い風

カークパトリックのレベル3,4は測定の手間が問題だった。しかし、レベル4から逆算してKPI(Key Performance Indicator)をブレイクダウンしていけば目標値の設定は可能だし、それに必要な行動指標も定義できる。行動の測定も主観的な自己申告から客観的な行動実績に変える事ができる。日々の報告から解放される被測定者に取っても朗報になり得る。

また、その手前のレベル2の学習到達度に関しても、エビングハウスの忘却曲線を逆手に取って、効果的なタイミングでリマインドを促したり、AIボットで実践結果に応じた取るべき行動のリコメンド等も可能になる。

測定と強化の両方でテクノロジーは大きな可能性を秘めている。全員に人間のコーチを雇う事は出来なくても、ロボットコーチなら全員に平等に提供可能かもしれない。参加者を増やしたいが費用が足りないという問題からも解放される。

 

カークパトリックの新4レベル

全ての動きは繋がっている。2016年にはカークパトリックの「新4レベル」を解説したKirkpatrick’s Four Levels of Training Evaluation (2016)が出版された。
HRBPの流れと呼応し「レベル1,2を中心としたこれまでの研修効果測定をやめ、新しい4レベルのプロセスで結果を出し、戦略実行に貢献するビジネスパートナーを目指そう」というメッセージが打ち出された。
具体的には、「レベル4→レベル3→レベル2→レベル1」という順番で設計する重要性を強調している。経営者から見れば当たり前の事かもしれないが、この順番の変更には大きな意味があるし、実現には様々なハードルがある。

 

それでも、流れは変わりつつある!?

人材を人財として活かしたいという要求が高まり、研修を単なるきっかけに終わらせないためのテクノロジーによる支援が可能になって来ている。
マスマーケット向けに大量の商品を均一に送り出すためのトレーニングが工場を中心に成果をあげたが、大量生産消費の世界から持続可能性とバランスを考える時代に求められるトレーニングは当然変わっていく必要がある。テクノロジーを前提とする時代には、研修自体もテクノロジーを取り込んでいく必要がある。

研修の目的を明確に定め、レベル4から設計し、批判を恐れずに、従来の枠から出て色々試していけば、かなり面白い事ができるはず!

人材育成に悩めるマネージャーのために。「どうして成長しないんだ」というフラストレーションから解放される方法

Written by 星野 雄一 on 2019-12-23

長年、人に関わる支援をやる中で、人材育成に悩める多くのマネージャーにお会いする。 私も実務としても人材育成には長年携わってきたので、お気持ちはとてもわかる。

 

先日、研究畑で今は事業開発に取り組んでいるマネージャーの方とお話をした。

その方は事業がだんだん成長し、部下も増えてくる中で人材育成が自身の課題になっていた。 「本も色々と読み、部下のモチベーションを上げたり、フォローをしたりしているんですけどね。なかなか思うように伸びないです」と仰っていた。

これは、私もかつて思っていた考え方だ。

 

「人は努力すれば成長できる」と思う人は多いだろう。ましてやマネージャーになるような方、また起業家として困難を超え続けている方はその経験の裏付けもあり、信じて疑わない。だから、社員の育成でも「きっと努力をすれば自分のようなスキルまでたどり着ける。目標設定が低いからダメなんだ。モチベーションが上がってないから全力を尽くさないんだ、フォロー・指導すれば成長の速度が速くなるはずだ。」という意識の元で育成を始めてしまう。

もちろん、そのアプローチで伸びる人もいるだろう。一方で目論見通りに成長しない人も多い。いや、どちらかと言うと、かなりの確率で目論見通りに成長しないのではないだろうか。

この状況を図に示すと、こんな葛藤だろうか。

この概念で捉えているマネージャーは、人は誰もが同じような成長直線の傾きを持っており、ただ適切な指導がされてないから加速していないと考えているように見える。

 

本当にそうなのだろうか?

 

むしろそう思っているから指導はうまくいかないのではないだろうかと感じる。人には何か固定された成長直線というものがあるのではなく、その人それぞれの成長の仕方があるという立ち位置に立つと、こんな景色が見えてくる。

ある社員の能力1に関して持っている成長直線の傾きは上記の通り。マネージャーの期待値には達していないが、本人の伸び代からすれば適切に頑張っている。ちなみに縦軸はスキルで見れば、企画力、発想力、論理的思考力など。Excel使いこなし力といった形で噛み砕いても良いだろう。もう少し総合的に職種目線で置くのもよい。研究能力、事業開発能力、総務能力などが挙げられる。

一方で同じ社員の能力2はマネージャーの期待よりもはるかに高い。伸び代はもっとあるが、現在の職場・仕事で期待値以上に伸ばす機会がなく、発揮されていない。

 

このように、人、さらに能力の種類によって、持っている成長直線の傾きが違うと考える方が現実的ではないだろうか。向いている仕事というのは傾きが急だし、向いてない仕事は傾きが緩やかである。もともとの成長の傾きが緩やかなら、もしモチベーションを上げる関わりをしても、効果的な指導をしても、緩やかな坂を加速して進むだけで、いつまで経っても期待値には到達しないし、本人も辛い。逆に傾きが急な能力においては、こちらの指導が想像以上に効く。一方、今の仕事でその能力がそれほど必要なければ、本来の能力向上のスピードよりも鈍化した状態になっている。これは勿体ないことである。

 

これはマネージャー自身も同じことが言える。たまたまその会社・組織で求められている能力に関する自身の成長直線の傾きが期待通りかそれ以上だったと。

 

もし、自部門で求めている能力に対して、その人の傾きが緩やかであれば、本人の希望はあるにしても早いうちに部署異動した方が良いだろう。また、自社で求めている能力に対してその傾きであれば、残念かもしれないが、お互い別れた方が賢明だろうし。その方がお互い良い人生を歩めるだろう。

 

この見極めと、見極めた上での支援こそがマネージャーが本当にやるべきであろう。マネージャーは人材育成をするのではなく、人材成長をプロデュースするのだ。

 

そのためには、社員の考えを把握するためにコミュニケーションを取ったり、適切なテーマを与えてその時の反応や行動、アウトプットなどを細かく見ておく必要がある。その際に重要なことは「この人の輝く場所はどこだろうか?」という目線で見ることである。その上でうちの会社や部署で活躍できるのか?という見極めになる。順番は重要である。順番を間違えると最初の図表と一緒になる。

現在の悩みから解放されたい方は是非目線を変えた上で社員の発言や行動を観察していただきたい。

 

最後に、INDEE Japanでは、事業開発部門やスタートアップの人材成長や組織成長をプロデュースする取り組みも行っているので、もし解決が難しそうであれば、一度お問い合わせを。

マシュマロチャレンジ、幼稚園を卒業したばかりの子供は本当に高いタワーを作れるのか?

Written by 山田 竜也 on 2019-11-25

先日、公立小学校1年生のクラスで1,2校時の90分間をもらいマシュマロチャレンジを行う機会を得ました。以前見た TOM WUJEC のTED TALKSの中で、「MBAの卒業生より幼稚園の卒業生の方が高いタワーを作る」と言う話があったので一度試して見たいと思っていたことが、やっと実現しました。ちなみに、MBAの卒業生向けは未だ実施していません。

 

マシュマロチャレンジは、20本のスパゲティ、90cmのマスキングテープ、90cmの紐、ハサミ1個、そして、マシュマロ1個を材料とし、4人1組で18分間で、マシュマロを一番上に乗せた自立したタワーを作り、机からマシュマロまでの高さを競うゲームです。

世界記録は99cmと言われています。自分が見たことがあるのは90cmぐらいまでです。大人から子供まで様々なシーンで活用されていて、実験し、試行錯誤することの大切さに気付くと共に、イノベーティブなチームビルディングを行うアクティビティとしても効果があります。

 

さて、当日の様子はというと、小学校1年生の段階で想像以上に知識も落ち着き度合もバラバラで、18分間のチャレンジタイムに辿り着くまでが一苦労でした。近所の子供たちの様子や公開授業で外から見ていたのでは分からなかった多様性(というかバラバラ感)にビックリし、落ち着かせようと用意してきた新ネタにもすぐに飽きられて焦り、子供たちを集中させる教育コンテンツの開発は大変だろうな〜と、喉を枯らしながら担任の先生の苦労を思いました。

そこで頭に浮かんだのが最近のトレンドの一つである学習者中心というコンセプトでした。

 

学習者中心

過去のブログ「人材育成4.0」で学習者中心と言うトレンドを紹介しました。「人材育成1.0は徒弟制度、2.0は階層別研修、3.0はアクションラーニング、4.0は学習者中心」と提供手段の視点でトレンドの変化を整理したものです。

お仕着せではなく学習者が主体的に選ぶと言う考え方に共感する人は多いと思うのですが、実現手段には課題があります。実際にバランバランな生徒たちの前に立つと、さて、どうしたものかと、この実現を求められる先生側の苦労への共感度が上がります。

学習者中心を実現するための課題は以下の3つと考えています。

・学習者への動機付け
学習者を主体とするには学習者に主体性が無いと成立しません。学習者に主体性を持たせること自体が最初の課題となります。主体性の無いままの学習者を自由にするよりは型稽古を強制した方が残るものは多いかもしれません。

・学習者の得意分野に応じた教え方
ハワード・ガードナー博士により1983年に発表されたマルチプル ・インテリジェンス理論では、知性には8つの種類があり、人は、そのうちの複数の知性を備えていて、どれが強いか弱いかという「程度」と「組み合わせ」がその人の個性になると考えられています。得意な知性を伸ばしたり、得意な知性を通して苦手な知性を学んだりという工夫がされています。

・学習者の発達段階に応じた教え方
ここでは科目や知性毎の進度に合わせるだけでなく、人間としての発達段階に合わせた自己理解や他者理解に関してもフォローが必要になってくるでしょう。専門教育に進む前の社会人としての義務教育を含む小学校ではより重要な課題かもしれません。

 

モチベーション、得意な知性、発達段階、当然これらは個人によりバラつき、組合せも様々です。生徒を中心に考えれば、こうした課題に対して応えていく事が必要なのかもしれません。一方でこれに応えるには先生側に本当にマルチな能力が要求されます。図工や音楽という水平的な成長のためのスキルには既に教科担当という形で手が打たれていますし、 社会性のある人間としての垂直的な発達段階という点でも個別の補習等で対策が取られている様です。さらに、知的、身体的という多様性もクラスを作っている学校は、近い将来の社会を感じることが出来る場所かもしれません。

「これからの時代には金太郎飴の集団よりも一人一人の個性を活かせる集団が求められている」という方向性があって、「子供の得意分野や発達のスピードは一人一人異なる」という理解が進む中で、学習者中心に対応するには、限りある先生側のリソースを何に投入して、どこをテクノロジーで補うかの議論が必要です。

学習者中心というコンセプトは、まだまだ絵に描いた餅です。テクノロジーの活用だけではなく、教育の目的から考えさなければならないし、それが多様化するということは、個々の学習者(学習者が子供であれば親に)に大きな責任がのしかかってきます。
現時点では、どこから手を付けたら良いのか、悩ましい課題ですが、先進国とされている国々の状況から個別解を探り、そこから自身の環境での個別解を探るというのが現状では無いでしょうか。個別解ばかりなので公立校への展開の難しさをより感じます。

 

ちなみに今回のクラスでの最高記録は75cmでした(拍手!)
当初のクラスの様子からは記録ゼロが続出ではないかと心配していましたが、最高記録の作品はヤジロベエの様にバランスを取る部分があって、構造的にも試行錯誤から自立させるための学習の後が見られるものでした。
サンプル数は少ないですが、小学校1年生は、上手くその気にさせられれば、少なくとも大人同等、それ以上のパフォーマンスを出せそうです。