日本の新規事業担当者に最も必要なこと

Written by 津嶋 辰郎 on 2019-04-15


日本の大企業内での新規事業担当者と一緒に仕事をするようになって我々ももう10年以上になる。その業務としての難しさの原因は数多くあるが、特に担当者自身にとって取り組みが必要な最も必要な課題は、


知識や情報のインプット量を圧倒的に増やす

事にあると確信している。実際こう確信する背景としては、

  • 新卒から1社のみにどっぷり浸かっているため、複数事業や他の産業の経験が少ない
  • 社会人になった後の既存事業領域以外の学習の機会が少ない
  • 展示会参加など、新しいトレンドを把握する機会が少ない
  • 社外との交流の機会が少ない

などの日本特有の労働環境や既存事業の業務環境に原因がある。

  

ここでご存じの方も多いかと思うが、敢えてアイデア発想の古典を紹介したい。


アイデアのつくり方:ジェームズ・W・ヤング

この中でも語られているように、アイデアの源泉はインプットの量であり、ゼロから何かを生み出すと言っても、真っ白なキャンパスに自由に何かを書いていいよと言われても、その元となる情報が自分の中に無ければ新しいものは生み出せないというのが真実ということである。



では特にどんな情報をインプット(または整理)すれば良いか?そのポイントを5つほど紹介したいと思う。

 

既存の自社事業のビジネスモデル(特に自社がユーザーに選ばれている本当の理由)
 長い間関われば関わるほど、実は複雑で分かり憎くなってしまうが自社のビジネスモデルというものである。ビジネスモデルキャンバスのフレームワークを学んだら、まずは自社のビジネスに対して記述してみることをオススメしている。特に比較対象として国内外の同業他社について描いてみると、同じ商品・サービスを提供している中でも、実はそれぞれ異なるビジネスモデルや価値提案で成り立っていることに多く気づくはずである。

 

技術領域以外の自社の強み
 特に研究開発機能を持つメーカーは”技術力=競争力”、”技術力=差別化要因”という枠にはまっている。しかしマチュアな事業であればあるほど実際はそうでないことの方が多い。自社のビジネスモデルを改めて分析することで、間違いなく大手企業には技術力以外に他社(破壊的なアプローチを掛けてきているスタートアップ含)にない強みが見つかるはずである。

 

注目されているビジネスモデル
 特にスタートアップや他の産業が採用している、新しいビジネスモデルは単なるアイデアから生み出されたものではなく、新しい技術(主にインターネットテクノロジー)や商習慣、規制の変化等の外部環境の変化・進化を活用して成立している。結果としてのモデルではなく、その生まれた背景を理解する事が重要である。

 

スタートアップが解決しようとしている課題(とその所在)
 特に短時間で高い成長を目指しているスタートアップが解決しようとしてる課題は、すでに顕在化している重要な課題であることが多い。特に日本にいると実感しにくい、海外先進国や新興国における課題情報から得られるインスピレーションは大きい。

 

世の中で注目されている技術分野
 技術開発の投資額が大きい領域を中心に進化していくことが考えられる。自社の既存技術を活かすに当たっても、こうした新しいトレンドの組み合わせで今まで解決が難しかったことを解決できるようになる可能性が高い。単なるトレンド情報の収集ではなく、組み合わせとしての活用方法という視点を持つだけでも見え方が変わるはず。

一方、今回はその詳細には触れないが、下記のような情報は実際は”社内説明向け”やエンタメ以外の目的ではあまり重要でない。これらの情報収集に偏りがちな方は是非時間の使い方を見直していただきたい。

  • 他社のイノベーション事例
  • 有名な企業家、学者の講演
  • 大学や研究機関のイノベーション講座  
  • 具体的な実事業ではなく”イノベーション”に関連するイベント

AIを使いこなそうとすると失敗する

Written by 津田 真吾 on 2019-04-01

人間というのは、手に道具を持つと使いたくなる動物のようだ。


「トンカチを持つとすべてがクギに見えてくる」とはうまく言ったもので、マッチを持つと、寒いわけでもなく、調理がしたいわけでもないのにもかかわらずシュッ、とすりたくなる。

ライターを手に持つとカチカチやってしまう。
私も、初めて携帯電話を買ったときは普段話をあまりしないような人にも電話をかけたくならなった記憶がある。

そういえば、昔プレゼンのセミナーを受講したときに、指し棒は使うべきではないとその講師には教わった。それは、指すべき図がなくても振り回したり指で遊んでしまうからだそうだ。聞いてもらいたいのは話の筋だ、覚えてもらいたいのは話し手のメッセージだ。ずいぶん納得した記憶がある。


今はAIの時代。どこの企業もこぞってAIを使うのだ、と横並びに経営戦略に書かれている。横並びであること自体が悪いのではない。むしろ必然だ。これまで多いの技術導入を先送りにしてきた結果、このタイミングで何を導入するかといえば、AI以外にはないだろう。
ただ、思い出したいのは、ITの導入も消極的、クラウド導入も慎重、ダイバーシティや裁量労働などの人事政策も慎重に導入してきた過去だ。同じアプローチでは導入は先送りにされ、今回は2週遅れにもなるくらいの差がグローバルに隆盛している企業とついてしまう。
ここで、「同じアプローチ」と呼ぶのは以下のような進め方を指す。

  1. 研究室、なる組織を作り他社事例を学び、学んだことを社内プレゼンし、事業部に昇格させることを目指す。
  2. スタートアップには技術があるのではないかと探し回った挙句に、「ウチには使いこなせない」と諦める。
  3. 使い方を易しく解説してくれるITコンサル会社に多額な開発費を払い、AIっぽいが業務は何も変わらないものができる。

それぞれのステップにおける問題点は明確だ。まず、不確実性の高い新領域は網羅的に研究することは出来ない。つまり、社内コンセンサスを取ろうとすると必ずアラが見つかり、反対する人が現れるということだ。全員が賛成するようなアイデアはもう古い、と言われるように新しいアイデアこそ相談や合意を最小限にしてやってみることが大事になる。リーンスタートアップが重宝されているのは、予算をかけずにやってみることが出来るからだ。そんな手法なんか知らずとも、まずはやってみなはれ、である。

「使いこなそう」という願望が叶わないのには2つの原因がある。一つには、使う強い動機が弱いからだ。スタートアップはAIを開発する側でもあると同時に、ヘビーユーザーでもある。リソースもあまりなく、合理的にスピーディーに事業を進めざるを得ないスタートアップには、猫の手も借りたい。スマートな猫なら最高だ。成長するスタートアップはどんどん積極的に新しいサービスを使いながら、自社の事業に役立てている。
「使いこなす」ことができないもう一つの理由は、「遊び」がないからだ。目的がなくても、持っていれば「遊んでしまう」のが人の常。スマートフォンも遊んでいるうちに、「使いこなした」状態になっていったという経験をお持ちの方も多いと思う。パソコンも業務以外に使っているうちに使えるようになった側面は否めないはずだ。最強のプログラマーは、遊びが転じてプログラムを書き始めた人たちなのである。気持ちの持ちようも含めて「遊び」は不可欠だ。

調査をして、使いこなせないことがわかると、わかりやすい説明に飛びつきたくなる。そうなると、まあ高い買い物になるわけなので、そのあたりは説明を割愛しようと思うが、まじめに遊びもなく、みんなの合意を目指した結果のAIがつまらなくなるのは必然。新しい道具は、まずは一部の人で遊んでみて、結果が見えるようになってからまじめに取り組んでみてはいかがでしょうか?

スピンアウト、カーブアウトのススメ

Written by 津嶋 辰郎 on 2019-03-11

8年前の今日、起業の気持ちを固めるきっかけになった大地震を当時のクライアント先で共同創業者と経験し、それによる首都圏の交通機関の壊滅的な麻痺を通して忘れられない数時間を過ごしました。そして同年INDEE Japanがスタートすることになります。

現在は首都圏を中心として学生や20代を中心に起業が一つのブームとなり、日本においても起業≒若者というイメージが徐々に定着しつつある気がします。しかし、我々もZENTECH DOJO Nihonbashiをスタートしてから約3年に渡り、多くの若手起業家予備軍のよろず相談にのってきた中、世の中を変えたいとかより良くしたいという強い思いがある一方、圧倒的なほどの社会経験不足と知識の少なさに対して課題を感じざるを得ないという状況を多く目の当たりにしてきました。実際そう感じる人達には、現在も正直に一度就職した方が良いとアドバイスしています。

これだけ世の中には情報が溢れており、特に首都圏では会いたい人や話を聞きたい人にもアクセスしやすい環境が整ってきたとはいえ、実際20歳で一人の人間が身につけられることは20年以上前の我々世代とさほど変わっていないというのが実感でもあります。若者発として世界に発信できる事業が生まれるには、まだまだ時間を要するというのが現場での実感です。

 

一方、大企業での新規事業立ち上げプロジェクトや社内起業プログラム等での加速支援をしていると、入社して5年程度の若手から20年以上のベテランまで非常に高い技術力や巻き込み力、また特定の分野でのネットワーキング力を持ちつつ、自らのめり込む事業テーマを持っている企業内起業家に会うことがあります。もちろん会社の文化や成長ステージによって人数の大小はありますが、どんな企業でも必ず数名は存在します。そしてそういう人達は、既存事業の推進が花形である社内ではあまり高く評価されていないというのも別の共通点です。

多くのこうした企業内起業家と触れる中で、我々は下記の二種類のタイプがいることが分かりました。

 

・元来、思いが強く、自ら提案・チャレンジを積極的に行うタイプ

・仕事を進める中で、たまたま自分がのめり込むテーマに出会ったタイプ

 

今日のスピンアウト、カーブアウトというテーマの中で、注目したいのは後者のタイプです。どうしても”起業”という文脈で人を要件を考えると、前者のような外から見ても分かり易い特性を持ち、そうした経験を積み重ねてきた人物に注目されがちです。しかし、日本の社会的な環境で、特に大企業内や大学内で過ごしている研究者・エンジニアは、後者のタイプこそが、貴重な事業の機会を持っている人物ではないかと考えているのです。

ただこの後者のタイプが組織内で事業化に取り組む場合、大きな壁が立ちはだかります。まず個人としての社内の評価が高いわけではなく、社内に強力な人脈があるわけではないため、社内への発信力(特に上層部向け)や、巻き込み力(試作開発や顧客開発に関する協力体制の構築)の圧倒的な不足です(ただ一方、社内エースではないため個人として専任化という点ではやりやすかったりするのですが・・・)。

そういう状況下では、本人にとっても会社にとっても社内で事業化を進めるメリットは殆どないと言っていいでしょう。相当、強力な新規事業支援プロセスや社内体制があれば別ですが、正直そこまでの力を持つもの社内プロセスには我々も国内外共に未だ出会ったことがありません。

そこで我々がオススメしていきたい手段が、社外に別の会社を設立して事業立ち上げを行うスピンアウト・カーブアウトです。その具体的なメリットは、

 

・無条件で担当者の専任化が可能となる 

・固定費を最小化することでのローコストオペレーションが可能となる

・共同研究開発などのオープンイノベーションがやりやすくなる

・外部資金が調達しやすくなる(エクイティファイナンス)

・判断プロセスの簡素化されることで、事業化スピードが圧倒的に早くなる

 

実際、新規事業立ち上げを必要としている内需型日本企業の問題は、既存市場が縮小傾向にあることがほとんどです。そのため、社内新規事業として提案されている筋の良いテーマの多くは既存事業と直接的に関係ないものが多くなるのは必然の結果です。そのため社内リソースが実際あまり有効に活用できないことが多く、結局、提案者の思いや実行力が最も重要なリソースということになります。であるならば最大限それを発揮できるステージを用意する方が、会社側そしてプロジェクト側の双方にメリットがあることは間違いありません。

チームのスキルと知識が不足している領域は、我々のような外部のアクセラレーターを活用したり、相性の合うベテランを支援者として補う事も可能です。また昨今多くの企業では当たり前になっている早期退職制度の取り組みを前向きに発信でいる形での制度設計をする事もできるのです。

 

そこで挙がってくる懸念が送り出す企業側との契約関係になります。しかしここも事業化が成立した後、または新会社設立x年後のレベニューシェア、優先的販売権、事業または製品のまるごとのとしての買い戻し権など新会社が目指す事業の形体に応じてクリエイティブに設定することが可能になります。

そんなに価値があるものを気易く社外に出してもいいものだろうか??・・・いやいや、

 

日本の大手企業で働く会社員は例外なく、自分が所属する会社を愛しています

 

この世界的にも稀にみる自社に対するロイアリティーが、日本企業の強さであったことを日本の経営者は忘れてしまってはいないでしょうか?企業内起業家はたとえ外に出たとしても、中長期的に間違いなく未来の自社にとって多くのものをもたらしてくれます。

どうでしょうか?特に今の日本の大手企業に働く層こそが、日本の伝統的社会と文化としての良き面を理解し大切にしようとしている人達ではないでしょうか?

 

こうした様々な理由と現場経験を通して、スピンアウト・カーブアウトこそが、現在の日本の置かれた状況に適した起業の方法論であり、多くの社内プロジェクトや企業内企業家にとって有効な手段であることを確信しています。そして、我々もこうした取り組みにチャレンジされたい企業や企業内起業家は全力でサポートいたしますので、このブログ等にピンときましたらお気軽にお問い合わせください。 

 

またスピンアウト、カーブアウト支援に着目しているプログラムでもあるKawasaki ZENTECH Acceleratorにも注目ください。

ジョブ理論で読み解くGAFA

Written by 山田 竜也 on 2019-01-15

 スコット・ギャロウェイ著『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』は昨年2018年7月に発売され、ここ半年であっという間にビジネスパーソンの新常識として認知されました。流行語対象にノミネートされるなどビジネスだけでなく社会現象としても認識されているのは、四騎士(Google Apple Facebook Amazon )の提供するプロダクトやサービスが我々の生活にも深く根ざしていることの証明です。

クレイトン・M・クリステンセン著『ジョブ理論』は、GAFAの一年前2017年8月に発売され、ジョブという概念は新規事業開発や新商品・サービス開発に携わる人に、顧客を理解するための新たな視点を提供しました。INDEE Japanが提供するJOBSメソッド(ジョブ理論に基づく顧客理解と事業機会発見の実践的手法)の受講者は年間1,000名を超え、実践者は増え続けています。

 

今回は四騎士がなぜ顧客に雇われているかをジョブ理論で解き明かしてみます。GAFAの中で描かれている四騎士が顧客を虜にしている理由は人間の身体を使ったとてもイメージしやすいフレームワークで整理されています。「顧客を虜にするには、身体の上から順に、脳に働きかける、心に働きかける、性器に働きかける」というものです。実はこの3つはジョブ理論における「人が製品やサービスを雇う目的は機能的、感情的、社会的の3種類である」と符合します。

 

脳を虜にするGoogle, amazon

顧客が解決したいことが、機能的なもの、論理的にどちらが得か判断できるものであれば、働きかける対象は脳です。


我々が暮らす現代社会は、情報が溢れる世の中で、全てを記憶することはできない。必要な情報にたどり着くことすらできない。苦労してスクラップブックを作ってタグ付けしても、あっという間に陳腐化してしまいますよね。
記憶力の代わりにインターネットに繋がる外部記憶装置を、タグ付けの代わりに検索エンジンを提供することでGoogleは我々のいつでも必要な情報にアクセスしたいというジョブを解決しました。
心は外部に頼るのを嫌がるかもしれませんが、脳に「こっちの方が便利でしょ!」といえば即、導入してもらえます。

欲しいものが直ぐに手に入る現代社会は持続可能性という点では問題を孕んでいますが、一生活者としては、欲しいものが直ぐ手に入るのはとても便利ですよね。
自身を振り返っても、昔は空気を運んでいるかのようなamazonの箱に勿体無いな〜と違和感がありましたが、最近はなくなってしまいました。マンションの1階にコンビニがあることでお菓子や炭酸の消費は明らかに増えました。
amazonはその圧倒的な便利さ(検索、ワンクリック、物流)により欲しいものを直ぐに手に入れたいという機能的なジョブを解決しました。定期便により買い忘れを無くしたいを、リコメンドやタイムセールによりとにかく買いものを楽しみたいという感情的なジョブも解決しています。この辺りのサービスは心も掴みにきている気がします。

 

心を虜にするfacebook

誰かに認められたい、一人ではないことを確認したい。それをしたからといってお金がもらえる訳でもなく、何か得する訳でもない。脳で考えれば実名登録のリスクも分かるのにやめられない。それは心を虜にされているからです。


ここにも我々が暮らす現代社会の問題が内包されているかもしれません。身近な少数との深いつながりよりも、より多くの人からの日々のいいね!やコメントが欲しい。コミュニティから自分が外されないことを確認して安心したい。facebookはオンラインで簡単に承認欲求を満たすことで、忙しい中でも面倒くさい人間関係に煩わせずに自分の存在を確認したいアピールしたいという感情的なジョブを解決しています。
最近はメッセンジャーで業務連絡を行ったり、facebook広告で集客したりと機能的なジョブの解決にも使われています。facebookは心を虜にすることを足がかりに脳への侵食を開始してきています。グループ傘下のinstagramは自分自身をよく見せたいというジョブを解決し性器にもアプローチしています。

 

性器、異性にモテたい!ならばApple

脳や心を凌駕する人間のもっとも根源的な欲求に働きかける。論理や感情を超えたところで強烈な信者を獲得するには性器に働きかけます。 


Appleも当初はコンピューター会社でした。それもオタクの。カラフルなiMACが出た頃からイメージが変わってきて今やすっかり高級ブランドです。自分も含めですが、Apple製品を使っている人のジョブは、自身は最先端やオシャレに疎くてもスマートで行けてる人に見られたいという社会的ジョブだと思います(笑)脳で冷静に考えると値段ほどの機能はないですよね。もちろん機能を素晴らしいUXに翻訳する能力は素晴らしいですが。スペック以上の価値をUXとして届けられるApple、GAFAの中でマーケットシェアではなく、利益シェアでダントツというのも頷けます。

 

Google, Amazon, Facebook, Appleの四騎士はそれぞれ機能的、感情的、社会的でコアなジョブを解決することで顧客を獲得しています。現在はお互いのコアから浸食し合い、何かを買うならGoogleよりもamazonで検索するといった状況も出てきています。根っこにある各社のビジョンは揺らいでいません。

大きな市場を狙うには、より本質的なジョブを捉える必要があります。年の初め今年のビジネスを考える際に、自社の掲げるビジョンと顧客のジョブとのフィットを妄想してみてはいかがでしょうか。きっと新たな取り組み目標が見つけられます。

ぶっちゃけ、イノベーションの推進にコンサルタントは必要なんです?

Written by 加藤 寛士 on 2018-12-24

こんにちは。
イノベーション支援のINDEE Japanで、デジタル領域を担当している加藤です。
 
本日はコンサルタントを使ってイノベーションの推進に取り組むメリット・デメリットを整理し、成果を残すためにはどんなコンサルタントに依頼すべきなのか?について考えてみます。
 


 

コンサルタントを使うメリットとデメリット

取り組みたい内容が、組織の活性化・制度設計なのか、アイディアに対する需要・技術の調査・評価なのか、サービス・プロダクトの開発なのかによっても異なりますが、イノベーションに取り組む際にコンサルタントを使うメリット・デメリットは以下のように整理できると思います。
 

  •  メリット
    • イノベーションへの取り組みに不慣れなため、効果的な施策が打てなかったり、調査や開発が遅延して市場から遅れを取ってしまうリスクを軽減できる
    • 外部の視点を加えることで、コアとなるアイデアから、さらなるビジネスの可能性を引き出すことができる
    • サービス・プロダクト開発の現場にコンサルタントをコーチとしてつけることで、幹部候補人材に実践を基礎とした高い教育効果を与えることができる
  • デメリット
    • 相手をよく知らないまま高額なフィーを支払った末、むしろコンサルタント側の事情で対外的なパフォーマンスにつき合わされてしまい、本質的ではない作業や面倒と付き合うことになってしまうリスクがある
    • ワークショップ実施などの施策により”イノベーティブな空気感”は醸成されるものの実績につながらず、「イノベーションの推進活動」そのものに社内で否定的な感情を生んでしまい、社員の士気が低下するリスクがある
    • イノベーションの推進を支援すると銘はうっているものの、外部のベンチャー企業に対する出資活動を支援しているだけのコンサルタントと付き合ってしまい、肝心の社内には意味のある変化を起こせないリスクがある

 
メリットに興味がある」 or 「コンサルタントに依頼したいけどデメリットは回避したい」という方は、少し長くなってしまうのですが、本記事の内容が参考になると思います。
 


どんなコンサルタントが実戦で役に立つのか?

有望な社内チームが形成されているに看板だけのコンサルタント未熟なコンサルタント足を引っ張っていて、うまくいかない例も数多く見てきました。
とくに、取り組んでいるサービス・プロダクトが、私個人も消費者として期待しているものであった場合、そのような光景を目にするとなかなか腹も立つものです。
 
そうした事案が少しでも少なくなることを願って、本記事ではイノベーションの推進に携わるコンサルタントの選定する際に重視したい点を3つお伝えしていきます。
コンサルタントの性格や得意/苦手はそれぞれですが、ご紹介する3点を高い水準で満たしていれば「こんなはずではなかった」ということはまず起こらないはずです。
 
 

視点1: いわゆる経営のエキスパートは、あまり役に立たない

 
「世界中で知られている大企業の経営にすら、コンサルティング経験があるのだから、1部門の社内風土改革ぐらいは…」
 
と思われるかもしれませんが、イノベーションへの取り組みと大企業の経営とは全く世界観が異なることには注意すべきです。
両者は言ってみれば、野球とレスリングほどに世界観が異なります。
両方を高いレベルでこなせてしまう、ジャイアント馬場のようなコンサルタントもいるのかもませんが、彼のような10年に1度の逸材にもどちらかと言えばレスリング向きというのはありましたしね…
 
大企業経営の仕事は一言で言えば、正確に判断を下すことです。
資本があり、顧客があり、顧客があり、人材があり、技術があり、協力者があり、市場があるという前提に立って、各要素の状態を的確に把握し、会社を機能させるために正確に判断することが、大企業経営で取り組むテーゼとなります。
 
一方で、イノベーションへの取り組みでは、何も存在しない状態が前提です。しかも、大企業経営のように「存在しないので買ってくる」という手法は通用しません。
なぜなら”存在しない”という言葉の次元も、大企業経営とは異なるからです。
 
イノベーションへの取り組みにおける”存在しない”とは、世界のどこにもない状態のことです。したがって「どんなものを作るのか」そのレシピすらも自分達で作り出す必要があります。
 
日本でいちばん美味しいケーキを買ってくる能力と、市場を観察して皆に愛されるケーキを作る能力は全く異なるのと同じことです。
 


 
ところで、最近はMBAのコースなどでも『イノベーションへの取り組み方』を教える講義が増えてきたようで、知識は備えているコンサルタントも増えてきました。
もちろん知識があることはとても大切なことですし、良い風潮であると思います。
 
しかしいわゆる知識だけの、お菓子をつまみながらワイワイガヤガヤするワークショップを開催するだけのコンサルタントや、秘密の特製フォーム(笑)を埋めるだけで”イノベーションな雰囲気(笑)”を提供するだけのコンサルタントも、業界には多数存在しています。
また、コーチングと称して、場当たり的で衒学的な、マウンティングトークを繰り返すしか能がないのコンサルタントも残念ながら存在しています。
 
あなたが依頼しようとしてるコンサルタントは、「実践フェイズが具体的に支援できる実力」と「豊富な知識」の両面で本当に頼りになりますか? 依頼の前に、もう一度見直してみてください。
 
 

視点2: 戦士・魔法使いタイプよりも、勇者タイプを

 
「特定の領域で世界の頂点を極めたエクスパートなら、思いもよらない解決策を授けてくれるに違いない…」
 
と思われるかもしれませんがコンサルタントにもそれぞれ、向き不向きがあります。
 


 
コンピューターゲームには、その黎明期から人気が高く定番となっているRPGと呼ばれるジャンルがあります。
RPGは複数のキャラクターが自身の得意とする能力を発揮できる戦略を作り、強力な敵を倒すことを楽しむゲームなので、キャラクターごとの得意と苦手が明確に味付けされている事がほとんどです。
しかし戦闘が得意な戦士や魔法が得意な魔法使いなどと比較して、得意苦手があまりなく、総合力や状況適応力に優れた勇者と呼ばれるキャラクターもよく登場します。
実は、イノベーションに取り組む場合は、特定の業務・業界・オペレーションレイヤーに精通しているエクスパートよりも、状況適応力に優れた勇者タイプのコンサルタントのほうがうまく立ち回れることが多いのです。
 
例えば、エンジニアとしての実力は折り紙つきの世界的第一人者でもあっても、コンサルタントとしては、むしろ足を引っ張ってしまうということは多々起こります。
もちろんコンサルタント個人の性格や資質、視野の広さによってもその度合いは異なりますが、そうしたバックグラウンドがあると技術側面からしかイノベーションの構造を捉えられなくなる傾向があるからです。
 


  • 余談ですが、技術で突っ走って数々の変態的性能を誇るデバイスを開発したものの、買い手が全くつかないという経験を何度しても全く懲りる気配がない国を、私はよく知っています。
  • 消費者の立場からすれば、私もその国のことが大好きで「どんどんやれ」と応援しているのですが、生産者の側からしたら正直なかなかしんどいものもあることでしょう。

 
では、ここにマーケティングの実力が折り紙つきの人物も加わったら、ようやくイノベーションが実現するのでしょうか?
 
たしかに、2人の第一人者の能力を共に引き出して融合させることができれば、唯一無二の方法でイノベーションが促進できるかもしれませしれません。
しかし、あなたの会社にも世界一とはいかなくても世界で戦えるエクスパートが各分野で揃っているのではないでしょうか? とくに「現場は世界一優秀」と言われている日本企業にはそのような会社は多いはずです。
ではなぜ、あなたの会社であなたが今期待したような自然発生的にイノベーションが起こらないのでしょうか?
 


 
技術的なバックグラウンド持ち、ビジネス全般に十分な経験があるコンサルタントが、課題を的確に把握し、適宜不足している部分を補うことができればイノベーションは急速に進みます。
 
しかし、そのような働き方が得意な勇者タイプのユーティリティプレイヤーは、事業部制やセクション制で運用されている組織の中では真価を発揮できない傾向にあります。
 
そこで、組織の枠組みの外にある勇者タイプのコンサルタントは、その理想的な立場を活用してクライアントの利益に最大限の貢献することができるのです。
 
 

視点3: 「素質のある若手に自由にやらせる!」…だけでは足りません

 
「若手に自由にやらせる用意はできている。多少の失敗はフォローしてやる準備もある。」
 
という覚悟は素晴らしい(し、不可欠なも)ですが、その心意気だけではイノベーションへの取り組みは進まないこともあります。
 
イノベーティブな事業への取り組みでは、構造的に既存のビジネスと利害が対立が起こることが知られています。(イノベーションのジレンマ)
 
企画や調査の段階ではこの問題は顕在化しにくいのですが、実践フェイズに入ると壁として立ちはだかります。
社内のメンバーだけで進めようとすると、どうしても感情的にもビジネス的にも社内協力が得られなということが起こるのです。
 
「みんな薄々感じていたけれど…」 という状況で、ひとりひとりキーパーソンの意見を確認し、チームの背中を押してやる。それもよくあるコンサルタントの仕事の一つです。
 
世代・職位・立場超えた調整力が発揮できるか?も、コンサルタントに必要な素養として確認してみてください。
 


 
今回はイノベーションに取り組むにあたって、コンサルタントとの関係性について注意すべき点をまとめてみました。
 
次回は『オレたちはコンサルタント無しでやる』と決めた方向けに、最低限知っておいた方が良いことをまとめるつもりです。
それでは。良い年末をお過ごしください。