ぶっちゃけ、イノベーションの推進にコンサルタントは必要なんです?

Written by 加藤 寛士 on 2018-12-24

こんにちは。
イノベーション支援のINDEE Japanで、デジタル領域を担当している加藤です。
 
本日はコンサルタントを使ってイノベーションの推進に取り組むメリット・デメリットを整理し、成果を残すためにはどんなコンサルタントに依頼すべきなのか?について考えてみます。
 


 

コンサルタントを使うメリットとデメリット

取り組みたい内容が、組織の活性化・制度設計なのか、アイディアに対する需要・技術の調査・評価なのか、サービス・プロダクトの開発なのかによっても異なりますが、イノベーションに取り組む際にコンサルタントを使うメリット・デメリットは以下のように整理できると思います。
 

  •  メリット
    • イノベーションへの取り組みに不慣れなため、効果的な施策が打てなかったり、調査や開発が遅延して市場から遅れを取ってしまうリスクを軽減できる
    • 外部の視点を加えることで、コアとなるアイデアから、さらなるビジネスの可能性を引き出すことができる
    • サービス・プロダクト開発の現場にコンサルタントをコーチとしてつけることで、幹部候補人材に実践を基礎とした高い教育効果を与えることができる
  • デメリット
    • 相手をよく知らないまま高額なフィーを支払った末、むしろコンサルタント側の事情で対外的なパフォーマンスにつき合わされてしまい、本質的ではない作業や面倒と付き合うことになってしまうリスクがある
    • ワークショップ実施などの施策により”イノベーティブな空気感”は醸成されるものの実績につながらず、「イノベーションの推進活動」そのものに社内で否定的な感情を生んでしまい、社員の士気が低下するリスクがある
    • イノベーションの推進を支援すると銘はうっているものの、外部のベンチャー企業に対する出資活動を支援しているだけのコンサルタントと付き合ってしまい、肝心の社内には意味のある変化を起こせないリスクがある

 
メリットに興味がある」 or 「コンサルタントに依頼したいけどデメリットは回避したい」という方は、少し長くなってしまうのですが、本記事の内容が参考になると思います。
 


どんなコンサルタントが実戦で役に立つのか?

有望な社内チームが形成されているに看板だけのコンサルタント未熟なコンサルタント足を引っ張っていて、うまくいかない例も数多く見てきました。
とくに、取り組んでいるサービス・プロダクトが、私個人も消費者として期待しているものであった場合、そのような光景を目にするとなかなか腹も立つものです。
 
そうした事案が少しでも少なくなることを願って、本記事ではイノベーションの推進に携わるコンサルタントの選定する際に重視したい点を3つお伝えしていきます。
コンサルタントの性格や得意/苦手はそれぞれですが、ご紹介する3点を高い水準で満たしていれば「こんなはずではなかった」ということはまず起こらないはずです。
 
 

視点1: いわゆる経営のエキスパートは、あまり役に立たない

 
「世界中で知られている大企業の経営にすら、コンサルティング経験があるのだから、1部門の社内風土改革ぐらいは…」
 
と思われるかもしれませんが、イノベーションへの取り組みと大企業の経営とは全く世界観が異なることには注意すべきです。
両者は言ってみれば、野球とレスリングほどに世界観が異なります。
両方を高いレベルでこなせてしまう、ジャイアント馬場のようなコンサルタントもいるのかもませんが、彼のような10年に1度の逸材にもどちらかと言えばレスリング向きというのはありましたしね…
 
大企業経営の仕事は一言で言えば、正確に判断を下すことです。
資本があり、顧客があり、顧客があり、人材があり、技術があり、協力者があり、市場があるという前提に立って、各要素の状態を的確に把握し、会社を機能させるために正確に判断することが、大企業経営で取り組むテーゼとなります。
 
一方で、イノベーションへの取り組みでは、何も存在しない状態が前提です。しかも、大企業経営のように「存在しないので買ってくる」という手法は通用しません。
なぜなら”存在しない”という言葉の次元も、大企業経営とは異なるからです。
 
イノベーションへの取り組みにおける”存在しない”とは、世界のどこにもない状態のことです。したがって「どんなものを作るのか」そのレシピすらも自分達で作り出す必要があります。
 
日本でいちばん美味しいケーキを買ってくる能力と、市場を観察して皆に愛されるケーキを作る能力は全く異なるのと同じことです。
 


 
ところで、最近はMBAのコースなどでも『イノベーションへの取り組み方』を教える講義が増えてきたようで、知識は備えているコンサルタントも増えてきました。
もちろん知識があることはとても大切なことですし、良い風潮であると思います。
 
しかしいわゆる知識だけの、お菓子をつまみながらワイワイガヤガヤするワークショップを開催するだけのコンサルタントや、秘密の特製フォーム(笑)を埋めるだけで”イノベーションな雰囲気(笑)”を提供するだけのコンサルタントも、業界には多数存在しています。
また、コーチングと称して、場当たり的で衒学的な、マウンティングトークを繰り返すしか能がないのコンサルタントも残念ながら存在しています。
 
あなたが依頼しようとしてるコンサルタントは、「実践フェイズが具体的に支援できる実力」と「豊富な知識」の両面で本当に頼りになりますか? 依頼の前に、もう一度見直してみてください。
 
 

視点2: 戦士・魔法使いタイプよりも、勇者タイプを

 
「特定の領域で世界の頂点を極めたエクスパートなら、思いもよらない解決策を授けてくれるに違いない…」
 
と思われるかもしれませんがコンサルタントにもそれぞれ、向き不向きがあります。
 


 
コンピューターゲームには、その黎明期から人気が高く定番となっているRPGと呼ばれるジャンルがあります。
RPGは複数のキャラクターが自身の得意とする能力を発揮できる戦略を作り、強力な敵を倒すことを楽しむゲームなので、キャラクターごとの得意と苦手が明確に味付けされている事がほとんどです。
しかし戦闘が得意な戦士や魔法が得意な魔法使いなどと比較して、得意苦手があまりなく、総合力や状況適応力に優れた勇者と呼ばれるキャラクターもよく登場します。
実は、イノベーションに取り組む場合は、特定の業務・業界・オペレーションレイヤーに精通しているエクスパートよりも、状況適応力に優れた勇者タイプのコンサルタントのほうがうまく立ち回れることが多いのです。
 
例えば、エンジニアとしての実力は折り紙つきの世界的第一人者でもあっても、コンサルタントとしては、むしろ足を引っ張ってしまうということは多々起こります。
もちろんコンサルタント個人の性格や資質、視野の広さによってもその度合いは異なりますが、そうしたバックグラウンドがあると技術側面からしかイノベーションの構造を捉えられなくなる傾向があるからです。
 


  • 余談ですが、技術で突っ走って数々の変態的性能を誇るデバイスを開発したものの、買い手が全くつかないという経験を何度しても全く懲りる気配がない国を、私はよく知っています。
  • 消費者の立場からすれば、私もその国のことが大好きで「どんどんやれ」と応援しているのですが、生産者の側からしたら正直なかなかしんどいものもあることでしょう。

 
では、ここにマーケティングの実力が折り紙つきの人物も加わったら、ようやくイノベーションが実現するのでしょうか?
 
たしかに、2人の第一人者の能力を共に引き出して融合させることができれば、唯一無二の方法でイノベーションが促進できるかもしれませしれません。
しかし、あなたの会社にも世界一とはいかなくても世界で戦えるエクスパートが各分野で揃っているのではないでしょうか? とくに「現場は世界一優秀」と言われている日本企業にはそのような会社は多いはずです。
ではなぜ、あなたの会社であなたが今期待したような自然発生的にイノベーションが起こらないのでしょうか?
 


 
技術的なバックグラウンド持ち、ビジネス全般に十分な経験があるコンサルタントが、課題を的確に把握し、適宜不足している部分を補うことができればイノベーションは急速に進みます。
 
しかし、そのような働き方が得意な勇者タイプのユーティリティプレイヤーは、事業部制やセクション制で運用されている組織の中では真価を発揮できない傾向にあります。
 
そこで、組織の枠組みの外にある勇者タイプのコンサルタントは、その理想的な立場を活用してクライアントの利益に最大限の貢献することができるのです。
 
 

視点3: 「素質のある若手に自由にやらせる!」…だけでは足りません

 
「若手に自由にやらせる用意はできている。多少の失敗はフォローしてやる準備もある。」
 
という覚悟は素晴らしい(し、不可欠なも)ですが、その心意気だけではイノベーションへの取り組みは進まないこともあります。
 
イノベーティブな事業への取り組みでは、構造的に既存のビジネスと利害が対立が起こることが知られています。(イノベーションのジレンマ)
 
企画や調査の段階ではこの問題は顕在化しにくいのですが、実践フェイズに入ると壁として立ちはだかります。
社内のメンバーだけで進めようとすると、どうしても感情的にもビジネス的にも社内協力が得られなということが起こるのです。
 
「みんな薄々感じていたけれど…」 という状況で、ひとりひとりキーパーソンの意見を確認し、チームの背中を押してやる。それもよくあるコンサルタントの仕事の一つです。
 
世代・職位・立場超えた調整力が発揮できるか?も、コンサルタントに必要な素養として確認してみてください。
 


 
今回はイノベーションに取り組むにあたって、コンサルタントとの関係性について注意すべき点をまとめてみました。
 
次回は『オレたちはコンサルタント無しでやる』と決めた方向けに、最低限知っておいた方が良いことをまとめるつもりです。
それでは。良い年末をお過ごしください。

忖度というイノベーション・キラー

Written by 津田 真吾 on 2017-06-28

忖度が悪いという雰囲気は、日本が良くなっている兆しかもしれませんよ

先週、知人が言った言葉にハッとした。
確かに、以前は「空気読めよ ( ̄∩ ̄#」とばかりに、それまでの「雰囲気」や「流れ」、つまり前例と習慣に従った行動がよしとされた。
しかし、今は上司に忖度することは「悪」とまではいかないものの、格好悪いことだという認識が広まってきているのではないだろうか?
 
上司や関係部署に忖度すると、間違いなくイノベーションは起きない。
組織は既存事業を行うために設計されているからだ。各部署は、決まった事業を営むためのルールやプロセスが敷かれており、適したスキルを持つ人たちが集まっている。したがって、これらのルールやプロセスに従い、スキルを最大限に活かそうとすると、今やっていることからはさほど変わらないことしかできない。

The Window of Opportunity

「だから新規事業開発室を立ち上げた」とか「だから新規事業立ち上げプロセスを決めた」といった企業も増えているのは事実だ。それでもなお、「忖度」はイノベーション・キラーである。
そう断言する理由はこうである。

  • 想定可能な新規事業は過去にトライして失敗しているか、目新しさがなくて社内でのサポートが得られない。
  • 想定外の新規事業は、想定されたプロセスやルール、価値観を逸脱している。

クリステンセンも『イノベーションのジレンマ』で次のように語る。「組織の能力は無能力の決定要因である」。つまり、組織にとって特定のビジネスが得意であればあるほど、それ以外のビジネスは不得手になる。
忖度をしていると、ビジネスチャンスというのは簡単に逃げてしまう。Window of Opportunity、つまりビジネスチャンスの“旬”は本当に短い。私自身、早すぎて失敗したこともあるが、遅すぎて失敗した時の方が痛いし、引きずってしまう。

忖度ではなく、何をするか?

では忖度をせずに、どうすれば良いのだろうか。これには2つのアプローチがあると私は考えている。
一つは外堀アプローチである。外堀を埋め、「やらない理由」を排除していくアプローチである。ちょっとずつ外側から突破するこのやり方には忍耐強さが求められ、時間のかかる方法であるため、イノベーティブな匂いはしない。やっている本人からしてみれば、大企業の身動きの悪さとイノベーティブなアイデアを同時に目の当たりにせざるを得ないという精神的な辛さがある。この強烈な対比は、スタートアップと組もうとする大企業担当者の最大のフラストレーションと同じだ。ところが粘り強くこの外堀アプローチを続けていると、社内外に予想外の応援者がひゅっと現れることもある。
一般に企業内アントレプレナーはこのアプローチを取っているのではないだろうか。
外堀アプローチに加え、もう一つのアプローチである外圧アプローチを加えるのはとても有効である。つまり、顧客からの外圧を使うのだ。社内からの提案だけでは突破できないことも、「その新しいサービスが欲しい」といった顧客の生声とともに届けるのである。顧客開発を先回りして行うというリーンスタートアップな方法とも言えるが、単にビジネスリスクを下げているだけでなく、社内コンセンサスを得られるという点で効果的な手法となる。顧客だけでなく、シーズ思考になっている企業内では、強力なパートナーのバックアップも意味を持つことが多い。
まだまだ時間はかかるかもしれない。でも、既存の枠に忖度するのではなく、チャレンジする風潮はとにかく歓迎する。