キラキラしているらしいです。
スタートアップの最近のブログ記事
キラキラしているらしいです。
少し前の記事になりますが、ベストセラー『地頭力を鍛える』の著者である細谷功さんが『アリの思考 vs.キリギリスの思考』という面白い記事を書いています。
ここで言うアリの思考というのは「問題解決」、キリギリスの思考というのは「問題発見」のことを指しています。アリとキリギリスの童話を知っている私たちにとっては、無条件にアリの方がアリ!と思ってしまいますが、無条件に正しいとは限りません。
「従来の枠組みにとらわれない斬新な商品やサービスを開発したい」「顧客に言われたままのことをするだけでなく、自ら能動的に顧客の課題を発見し、提案する人材が必要だ」という期待は、企業の成長が鈍化したり、国の経済停滞時には大きくなるものです。
経済が単調増加のときや、企業が単純に成長しているときは、あまりキリギリス型の人たちは評価が高くありません。勝ちパターンを忠実に守り、無駄のないオペレーションが求められるからです。こうして順調なときは、キリギリス型の人間は気が散ってしまい、余計な混乱を生むためアリ型の人間が重宝されています。
ビジネスモデルや製品の寿命を迎えキリギリス待望論が出てきたとき、それまで肩身の狭い思いをしていたキリギリスたちが元気になってきます。彼らが見つけたビジネスアイデアが成長するのを固唾を飲んで期待し、身近なところでイノベーションが起きるのを待ってしまいます。
しかし、こうして次のイノベーションが起きるのを待っているだけで良いのでしょうか?待ちすぎたり、見極め過ぎたり、というのもイノベーションキラーです。
だから、行動を!ということになるのですが、誰が主導するべきなのでしょうか? もちろん理想は、誰もがアリでありキリギリスであることでしょうが、現実的ではありません。つまりイノベーターであると同時に優秀な実行者でもあるようなことは、両立しにくいのです。このようなときは当たり前のようですが、「適材適所」しかありません。
会社では経理や知財、研究など本人の強みを活かすような配置がされているように、0から1を産んだり、1を3にしたり、3を9にしたり、9を10にしたりという役割分担をしてもいいのではないでしょうか。例えば、イノベーターDNA診断を通じて強みや弱みを把握することから着手し、次にチームをつくります。しかし、得てしてイノベーターと実行者の間には確執が起きがちです。基本的な物の考え方が異なるからです。ですので、ドライに役割を分けるというよりは、しっかりと価値観を共有し、お互いの特性を知りあって進めなくてはいけません。ファシリテーター役もいた方が良いでしょう。
単に営業担当+技術担当といった強み・弱みでチームづくりするのではなく、イノベーターとしての特性を考えて見てはどうでしょうか。
もし新たなビジネスのアイデアを出そうと、会議を重ね、ワークショップを工夫しても進まないということはよくあります。仮に良質なアイデアがたくさん出ても、新規事業に着手するところまで何か足りない、という状況をいくつも見てきました。
なぜなのか、見ていきましょう。- 数多くのアイデアを出しただけで満足してしまう。
- ビジネスをすることを前提にアイデア出しをしていることを忘れて「面白い」アイデアを出すことに興じてしまいがちです。アイデアを出す作業は個人的にもメチャクチャ楽しいので、ついついその目的を忘れてしまいそうになります。ですが、一通り盛り上がったら、ふとその目的を思い出すことを忘れずに!
- たくさんのアイデアが出たとしても、その中から取り組むべきものへ絞り込む「決断」ができない。
- 一つの新規事業アイデアを生むためには、殺さないといけないアイデアは山ほどあります。生かすアイデアと殺すアイデアの違いは、会議室では見つからないのです。
- アイデアを「行動」へとつなげる「覚悟」が生まれない。
- どんなに会議室でのワークショップが盛り上がったとしても、実際にビジネスを興す活動は会議室の外で行わないといけません。そこでは、どんなワークショップ手法も無力です。アイデアをお客さんや投資家、その他色々なステークホルダーに「売り込む」ためには心の底からアイデアに惚れ込まないといけませんね。
- 会社の仕組みや方針
- ビジネスモデル等プロジェクトの方針
- 人選や人の能力
クックパッドのビジネスモデルは、みんなが作った献立を、料理をしたい人たちに、インターネットを介して一部無料で提供し、広告主や一部のプレミアムユーザから広告費や会員料としてお金を頂く、となります。
クックパッドは最初、広告モデルだけでした。それが、発展し機能を増やしながらプレミアム会員からの月額使用料という新しいモデルを構築しました。このように、企業のビジネスモデルは変わっていきます。特に、ベンチャーはビジネスモデルをグルグル変えます。ハーバード大の研究によると、成功した起業家のうち、最初のビジネスモデルを変えなかったのは、たった7%しかいませんでした。ビジネスをしながらビジネスモデルを変革させる能力が、スタートアップに最も必要な力といっても過言ではありません。ピボットという言葉は、浸透しつつありますが、ピボットをしないで最初の構想通りに事業ができあがることはほとんどないのです。
最近では、「リーンスタートアップ」「ビジネスモデル」「ピボット」などのキーワードが浸透してきました。ところが、行動が伴っていないのも事実です。『リーンスタートアップ』を愛読書とする人が、20人もの部下がいながら、社内ベンチャーチームにあと100人欲しいと言ってみたり、ビジネスモデルを変えたいと言いながら、ハードウェア販売以外に興味がなかったり、顧客の評価が良かったビジネスモデルが以前報告した戦略と異なるからという理由で、軽視したりするケースは、実際にあります。笑えない話です。
- アイデアを出すが、試さない
アイデアを実行に移すための基準が高すぎるケースがよくあります。販促のアイデアや、追加機能のアイデアが90%成功する可能性がないと、やってみないのです。品質に対して文化的に染みついているものかもしれませんし、失敗を恐れてのことかもしれません。しかし、成功した起業家の話を総合すると、彼らがアイデアを試す基準は勝率なら51%~70%以上と答えます。決して無暗矢鱈に試すのではなく、ちょっと冷静に勝率を考えてみて、五分五分以上の可能性があれば、試してみて、その結果から学ぶ姿勢を持っています。私も仮説の30%~40%は間違っている前提で、一見まずそうなアイデアも試してから結論を出すようにしています。アイデアの実行規準を考え直してみてください。 - コンセンサスを取りすぎる
人が持つ仮説の30%が間違っているとしたら、成功するアイデアの30%は悪いアイデアのように見えます。二人いたら、二人ともが良いアイデアだと思うことは51%になり、三人なら66%、十人が一致して良いアイデアだと思うものは、たった3%しかないことになってしまいます。これでは、実験すらほとんど行われないことになりますね。ましてや、イノベーションは普通のことからは生まれないのです。議論を生むような、賛否が分かれるようなアイデアを試さなければいけません。あくまでも『コンセンサスを生むための仮説検証』として位置づけ、決してコンセンサスの下の予定調和的実験にしないようにしたいものです。
アウトサイダーは箱の外にいる事こそが、その最大の価値である。ただし、箱の外の人なら誰でも良い訳ではない。箱の外の人に何処を頼めば良いのか?ここが難しい所だ。相談したい内容は内部の事であれば、相手の知識やスキルの評価もし易いが、それでは箱の外にいるだけのインサイダーに依頼する事になってしまう。情報共有はし易いかもしれないが、新しい考え方を得るには必ずしも得策とは言えない。
こうしたジレンマの中、「外部の知恵を取り入れたい、オープンイノベーションを進めたいと思っているが、なかなか進まない・・・」という企業が多い。
では何か指標は無いのか?以下のチャートが役に立つ。
多少のアレンジは必要かもしれないが、基本的にはこの構造で整理可能だ。視点は2つ。1つ目は依頼の相談内容、何を支援して欲しいか?、もう一つはアウトサイダーの保有リソース、何を提供出来るか?。このニーズとシーズの組合せ毎にアウトサイダーの属性を示すしたものが先ほどのチャートである。
ここでコンテンツとは依頼主が知りたい情報や答えである。業界情報の取得、制度変更の予測等が該当する。一方でプロセスとは(答えは誰も知らない、これから自分たちで考えなければ行けないという前提で)考え方の導きや考え続ける支援を行うものである。自社のビジョンの構築や戦略の組織への落とし込みなどではプロセスの支援が重要になる。
知識・スキル・マインド・人脈は、特定の個人と切り離されたもの〜特定個人に根ざしたもののグラデーションである。下になるほどプロセス的な支援において大切になるのは感覚的に理解して頂けるだろう。
以上、ステレオタイプな分類である事はご容赦頂きたい。何処の世界でもそうだが、昨今、職分の境目は曖昧になってきており、一つの役割だけでビジネスを行っているものは少ない。ただ、役割として整理する事で、適材を探す上での指針にはなるだろう。
例えば、いわゆる士業に代表される専門家は、依頼主が求める正しい答えをその知識から見つけるのが役割だが、依頼主の納得感を高めるには、よりプロセス的な踏み込みも必要になる。コーチだからコンテンツは知らなくて良いでは、経営者を相手にしたビジネスコーチングは勤まらない。また、経営者のメンタルサポートという観点ではカウンセラー的な要素も必要になってくる。アウトサイダーへの依頼をする際には何を支援して欲しいか、何は自分たちが主導したいかよく整理してみると良い。その上で胸襟を開いて期待に応えられるかを率直に問う事が、アウトサイダーをパートナーとして活用するポイントだ。
ちなみに私たちINDEE Japanは、事業開発のメンバーとしてプロジェクトに深く入り込むところを強みとしている。このパターンの弱みは、一般的には担当メンバーの属人性が高くなってしまう事にある。対策として我々は各プロジェクトにチームで対応する事をモットーとしている。また、個々が深く個別課題に取り組みつつ、チームとしてのレバレッジを効かせるために、メンバーが底流となる共通言語・原理原則を共有している。これにより、たとえその場には1人のメンバーしかいなくても、チームの総力を提供する事が出来る。
いわく、イノベーションとは何か?Sカーブとは何か?イノベーターのDNAとは何か?といった部分である。ちなみにこうした手法は門外不出の秘伝の書ではなく、私たちが広めていきたい考え方そのものである。
私たちのDNAとも言えるメソドロジーを世の中に広く伝えていくために、スタートアップ支援、イノベーションコンサルティングとは別に、オープンセミナーも開催している。
次回は11月27日(水)に日本橋野村カンファレンスで開催する。ジョブスの発見!と題して、価値あるビジネスチャンスを発見するポイントをお伝えする。アウトサイダーの活用の一つとして、是非ご参加頂きたい!!
- 顧客は欲しいものを言語化できない。
スティーブ・ジョブスはかつて『人は形にして見せて貰うまで自分は何が欲しいのかわからないものだ』と言っています。一般に、顧客は既存製品の欠点には気づきますが、新しい何かについての意見は出せないものです。一大自動車産業を作り上げたヘンリー・フォードは『もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは「もっと速い馬が欲しい」と答えていただろう』と言っています。 - 多くの顧客に聞けば、要望が膨らみ、少ない顧客に聞けば、ごく一部の顧客向けの要望になってしまう。
念入りに市場調査をすると、多くの要望が出てきます。それらをすべて盛り込んだ製品をつくれば、相当オーバースペックなものになってしまうでしょう。多くのガラパゴス製品のように、良すぎて売れない製品になってしまいます。逆に、ある顧客の要望ピンポイントで開発をすると、その顧客には満足いくものになるかも知れませんが、他の顧客のニーズには会わないかも知れません。受託開発のような状況とも言えるでしょう。
ポイントは顧客の代わりに、何が欲しいのかを表現してあげることです。
そのため、粘り強く多面的に観察し、顧客を知ることを行います。場合によっては、調査する人に日記までつけてもらい、家の中まで追跡することもします。このとき、売りたいものがはっきりしすぎていると、恣意的な目で見てしまい、顧客の本当の姿を見誤ってしまうので気をつけましょう。
そう世界はいつでもあなたの準備を待っている。
喫茶店でブログを書こうとパソコンを開いたところ、隣のお客さんの会話が耳に入ってきました。
見たところ50代のサラリーマン風の男性3人のダイエット話です。ある程度食べた方が痩せるだとか、筋トレも代謝を上げるためにした方がいいだとか、どういう食べ物を控えるだとか。かなり盛り上がってそれぞれの方法論を語り合っていました。ついにダイエットにもっとも縁遠い人たちにも普及したか、という気づきとともに一種の違和感がありました。
どの位強く痩せたいと思っているのでしょう?
そういえば、ダイエット法の話をする割には、どの位痩せたいのか、という話はあまり聞かないのはなぜなのでしょう。
「どの位」というのはどの程度、つまり何キロではなく、どれだけ強くダイエットしたいと思うか、です。例えば、「海外旅行に行きたい」といったような願望については、「私はすごくハワイに行ってみたいので、貯金をしている」と、対象に対する夢や熱意、行った時の期待に対する話に華が咲くことでしょう。あまり貯金の手法について侃々諤々とやることは少ない気がします。しかし、ダイエットの話題はいつも新しい手法や方法論についてばかりです。
私はダイエットの専門家ではないので、何もダイエットの話をしたいわけではありません。でもダイエットと新規事業にはおかしな共通項がありそうです。
新規事業と掛けて、ダイエットと解く
その心は...
1.いつかは取り組まないといけないと誰もが思うこと
2.数多くの方法論があるものの、万能なものはないこと
多くの人はダイエットを試みたことがあったり、してみたいと思っているかと思います。同様に、新しい事業を望んでいる会社は数多くありそうです。ところが、どの程度強く新規事業を望んでいるか、というのが明確になっていることはあまりありません。そして、取り組む際も、アイデア募集をしてみたり、事業買収に取り組んでみたり、とりあえず子会社を作ってみたり、と色々な方法を検討したり、試してみたりします。
ここで、ダイエット失敗パターンについて考えてみましょう。
すると、ダイエットは痩せる前に続かなくなるか、痩せた後、リバウンドしてしまうかの二つのパターンがあることがわかります。実はいずれも痩せ方にばかり着目していて、痩せた体を維持することを忘れているからです。
痩せるために食事はバナナだけにして無事に痩せることに成功したとして、そのままバナナだけの一生を過ごすのでしょうか。コンテストで勝つために一瞬だけ痩せれば良いというのでない限り、よりスリムで健康的な体を維持したいというのがダイエットの目的のはずです。
これを新規事業に当てはめてみると、立ち上げるべき事業は、瞬間風速で収益を上げるような「取引」ではなく、継続性のある「営み」であるはずです。つまり、続けることができるような「形」を見つけるのがスタートアップのゴールです。そのための方法論はたくさんありますが、万能な方法論はたった一つしかないと考えています。
それは ―試行錯誤― です。
「試行錯誤なんて方法論じゃない」という苦情も聞こえてきそうですが、試行錯誤にもノウハウがあります。いくつか紹介しましょう。
- 好きなことからやってみる
続けるにはこれしかありません。「強み」から考える人もいますが、強いことと好きなことは少し違うことが多いです。続けることを考えて、好きなことからやってみてはどうでしょうか。私自信は食べるのを我慢するよりは、体を動かすのが好きなので、意識して運動することをしています。 - 機会に着目する
着たい洋服がある人はダイエットに成功しやすいと言われています。痩せたらどうなるか、という機会に着目しているからです。繰り返しになりますが、現在持っている「強み」にこだわり過ぎず、事業が成功したらどうなるか、ということから考えてはどうでしょう。機会はなくなることはありますが、強みははなくなることはありません。 - 上手にやることにこだわらない
新しい取り組みなのですから、上手なわけがありません。続けながら上達すればいいのです。初めての携帯電話は音声もとぎれとぎれで、非常に重いものでした。それが現在は、小型化軽量化と通信の品質向上が進み、近い将来、光通信よりも早いデータ通信までできるようになると言われています。むしろ、伸びしろがある方が、学習意欲は高まり、続けやすいです。 - 徐々に始める
ジョギングを始めるならいきなり42.195kmを毎日走る計画を立てても無理があります。徐々にペースを上げたり、距離を延ばしたり、自分にあった運動の仕方を考えた方が良いでしょう。新規事業もいきなり100億円のビジネス計画を立てるのは無理があります。 - 他人の力を借りる
新しい取り組みなので、どうしても情報は不足します。友人がやっているスポーツジムに通ってみてはどうでしょう。思いがけず、相性のいい運動に巡り合えるかもしれません。同様に、仮にそれが断片的で理解しにくいことであっても、社外の情報を頼ってみてはどうでしょう。新しいビジネスのタネになるかもしれません。人はどうしても自分が経験したことがあり、理解できる情報ばかりを求めてしまいますが、この心理バリアを乗り越えることで新しいことを起こすきっかけになります。 - 失敗ではなくトライととらえる
新しい取り組みなのですから、難しいこともあります。トライしてみて結果が出なかったり、続かない場合は、理由を振り返って方針を変えましょう。「痩せるのが無理だった」と結論づけるのは早すぎます。理由を振り返って、次の一手を考えます。人間は学ぶ動物です。トライから学ぶことで、より早く自分に向いたやり方に辿り着くことができます。新規事業においては、顧客について学ぶことは果てなく続くと考えた方が良さそうです。
スカンクワークとは一般に、企業内で一部の有志が新しい事業や技術を「隠れて」開発することを指す。企業内新規事業の多くはスカンクワークもしくは「アングラ」(アンダーグランド)プロジェクト出身と言われている。その真偽のほどは確認のしようがないが、そのような事例は多く耳にする。筆者自身その手のプロジェクトには良く参加していたし、スカンクワークから生まれた新規事業の部門に所属もしていた。スカンクワークという言葉が有名になったのも、ロッキード・マーティン社でステルス戦闘機などの革新的な研究を極秘で行っていたためである。隠しているつもりがなくても、生まれた瞬間はとても小さいため隠れてしまい、新規事業の多くは企業内では「アングラ」から始まったように見えてきた。
さらに、新規事業の多くは世に出せるかどうかわからない上に「前例」がなく、「戦略的」に「アングラ」に進められてきた側面もある。「戦略的」と表現したのも、企業戦略というよりは、新規事業を推進するイントラプレナーたちの個人的な戦略としてである。取り組む前から定量的なデータや失敗しない根拠を延々と報告するよりは、まずは部門予算の範囲内で地ならしや実験をしたりすることをやってきた。また、それを監督する経営層も余裕があって黙認してきたという話もよく聞く(これこそ正に戦略的と言える)。こうして、新規事業を成功させたければ多少なりとも不透明なスカンクワークをやらなくてはいけないと考えられていた。
ところが、最近は「コンプライアンス」である。企業の透明性が高まっている。小さな支出や先行投資すべてに稟議があり、スカンクワークも許されなくなってきている。何か備品を買うにしても、現業との必然的なつながりを説明するように求められ、少しでも遊び心があるものは却下。これは社内の新規事業が生まれにくいということを意味するのでしょうか?
そんなことはないと考えています。
実際に、社内に新規事業部門を携える企業は増えている。これは取りも直さず、新規事業への期待が強く「アングラ」な偶然には頼っていられない様子を表している。専任部隊にして、きちんと予算も与えられている。さらに、そのような部門は従来「花形」な既存コアビジネスからは金食い虫と呼ばれ、肩身の狭い思いをしてきているのに対し、現在では「期待の星」として次の事業の柱として期待されている。つまり、新規事業は一定の割合で生み続け、一定の割合でなくなるものだという認識が企業トップで共有されつつある結果だと考えてよいだろう。新規事業への温かい眼差しの一方で、企業トップはコンプライアンスを重んじ、株主をはじめとするステークホルダに説明責任が伴う難しい立場になってきたと捉えた方が対策が見えてくる。
- 予算の目的を変える~顧客開拓主義~
技術開発から顧客開拓・市場検証を目的とした活動に対して承認してもらってはどうだろう。従来のスカンクワークは技術開発として、「技術的にできる」証明であった場合が多い。成熟産業を抱える大手企業においては特にそうである。技術的な実証より市場での成功を示すことのほうが、リスク回避策になる。工場を一つ経てた上に、ほとんど売れない商品が在庫の山になることと比べ、テストマーケティングでの失敗は本当に些細なものでしかない。またこのような「作る前に売る」活動は技術開発よりも低予算であるので承認へのハードルも低い。 - 会社が承認しなくてもできることは多いことに気づく~手作り主義~
既存事業で育った人間は、どんな仕事にもお作法があると信じている。先輩の見よう見まねであれ、マニュアルであれ、社内規則であれ、何がしらの手順に従ったことだけが許されているという誤解があるようだ。しかし、新規事業を立ち上げる前には正しいお作法などない。お作法を見つけるのが新規事業開発の役目だと考えよう。すると、お金を掛けずにできることの多くは承認不要ということに気づくはずだ。社外の人にアイデアをぶつけてみる。専門家に意見を聞く。手作りプロトタイプを製作する。実に多くのことが行える。その際、精度や品質といったことが気になるタイプの人がいるが、あくまでも初期の実験であることを心に留めておこう。徐々に精度は向上させればよい。