プリンターを買うときの決め手になった3つのジョブとは

悩みに悩んだ挙句の挙句にブラザーのプリンタを先日買いました。

正直なところ、個人的趣味としてブラザーのようにから参入するようなメーカーの製品はあまり買いたくないのですが、今回さまざまな理由からブラザー製を選んだ経緯を説明しましょう。

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 (0)そもそもナゼ後追いメーカーの製品は買いたくないのか? 
  • これは非常に単純化して言えば、エンジニアリングにこだわった製品が好きだからです。老舗メーカーはさすがの技術力を持っているため、応援も込めて買いたいと思います。実際に、これまで自宅で使ってきたインクジェットプリンターは、キヤノン→エプソン→キヤノン→エプソンと2大メーカーが交互になっています。製品の性能がステップアップしたときがこれまでの買い換えタイミングでした。モノクロからカラー印刷できるようになったときや、スキャナー機能やファックス機能が付いたとき、6色インクになったとき、等々。エプソンとキヤノンはこうした先進的な製品をいち早く市場に出してきており、この2社に対して不満を持ったことはほとんどありません。非常によく出来た製品です(不満はWindows95時代のプリンタドライバの出来くらい)。一方で、後追いで技術が成熟しておらず、細かいところの品質が劣るケースが多いという先入観によって、後追いメーカーは避けてきました。
(1)今回プリンタを買おうと思った理由 
  • 最後に使っていたエプソン機は非常に長い間使いました。6年です。非常にヘビーユースで、インク代もバカになりません。最後は廃液タンクも一杯になり、想定されていた寿命を全うしたと思います。しかし、最後の1年はインクが詰まりやすくなったのか、インクの消耗は激しかった気がします。非常にハイスペックな6色インク機だったので、インク代が高い!互換インクを使った結果、以前のマシンではインクヘッド詰まりが異常に増えた教訓を活かし、ずっと純正インクだったのも高いインク代の要因です。エプソンのさらなる延命をすることよりも、ランニングコストが高いのを何とかしたいという動機がありました。
(2)買う際に重視しようと思った点 
  • 前述しましたが、第一にランニングコストです。本体をタダ同然で売り、消耗品で回収するビジネスなのは知っていますが、6色セットで約6000円というのはさすがに高い。しかも、ライトシアンやライトマゼンタと言った後から付け足した2色はあまり減らないので、セットで買うとこの2色は余ってしまいます。3回に2回ほど割高なバラ売りを買ってこないといけません。
  • 第二に妻が気に入ること。プリンタとは言え、リビングに置いてあると妻が気にならないといけません。彼女の要件は、ゴツつないことと、給紙トレイがあることです。給紙トレイはA4の紙を入れっぱなしにしていても、埃が溜まらないという利点があります。
  • どのメーカーにも備わっているちょっとした機能があること。例えば、CD印字や無線LAN対応は普通に有ってほしい機能です。
 (3)なぜ悩みに悩んだか? 
  • これまで愛顧していたエプソンやキヤノンのプリンタが過剰品質・過剰機能に見えてしまったのが最大の悩みです。私のようなエンジニアリング重視型人間の要望を超越するとはどういうことでしょう?例えば、エプソンは画質の違うラインナップや、かなり小型のラインナップがありますが、ランニングコストを重視したものはありません。価格は1万円を切る機種から数万円という感じで割高感はありませんが、問題はインクです。キヤノンは単純に大きすぎました。少し奇抜なデザインは狙っているのか分かりませんが、ゴツいのはウチに合いません。 エプソンやキヤノンがブラザーのような企画の製品を出していたら少しくらい高くても買っていたでしょう。
  • 製品数が多すぎるのも問題でした。ビックカメラに行くと、各メーカーから10機種弱が展示されています。丁寧にカタログを見ないと違いがわかりません。店員に聞いても、そんな小さな違いは「そうですね!グレードが違うということになってます!!」と元気よく当たり前の答えが返ってくるだけです。 これでは買う気が失せて、「安ければイイや」と思ってしまいます。
  • プリンターを買わないという選択肢もありました。実はプリンターの調子が悪いときは、セブンイレブンのネットプリントのお世話になっていました。使い方は簡単だし、ドライバーのインストールも不要、まさに「買う」から「使う」のシェアの精神で地球に優しいです。歩いて印刷物を取りに行く面倒だけが難点です。

(4)なぜブラザーに決定することができたのか? 

  • 決め手になったのは、ランニングコストが安いということです。そして、黒インクさえ残っていれば、最悪モノクロで印刷するという「クロだけ印刷」機能。しかも、黒インクのタンクはカラーインクの2倍位あります。書類を印刷することが多い、私のジョブにぴったり、ということです。
(5)私のプリンタに関するジョブとは何か? 
  • 私が家で印刷するものの中で最も画質を気にするのは「年賀状の印刷」というジョブです。とは言え、年賀状ですから、ポスター写真の画質は要りません。
  • 次に印刷しなければならないような、仕事の資料を印刷するジョブがあります。このジョブは、配布資料としてキレイに印刷したりする場合は、オフィスのプリンターやコンビニ、さらにはKINKOSなどのオプションもあります。手元で仕上がりを確認することができれば、十分です。
  • CD-Rでデータを配ることもたまにあり、ラベル印刷を行います。CDラベルはコンビニやオフィスではできないので、代替のないジョブです。
  • 重視したコンパクト性と給紙トレイは本体に必要です。また子供用の塗り絵や、子供の教材印刷、プリント等のコピーもときどき必要です。これは画質はどうでもよくて、とにかく安いのが嬉しく、あまりこだわりはありませんが、「ジョブ」という観点では「妻に文句を言われない」ということに尽きるでしょう。
 (6)なぜ後追いのブラザーが私のジョブを解決することができるのか? 
  • 後から参入するメーカーは既存のビジネスにあまり縛られていません。「換えインクで儲けよう」といった希望的な観測のバイアスが少ない商品開発ができます。
  • 続的イノベーションによる画質改善の歴史がないため、ローエンドのユーザーに絞った検討がしやすくなります。画質を重視しないようなユーザーにはどのようなジョブがあるのか、どのような価値提案をするのかといった検討に集中できます。
  • 実際に確認してみたいですが、後から参入するメーカーのエンジニアは、キヤノンやエプソンのプリンタの1ユーザーであった可能性が高いです。素人ユーザーとしての視点で、不満を挙げれば、一見枯れた市場でも未解決なジョブはまだまだ見つかります。
買ってみての実感は今のところ「不満ナシ」といったところですが、7000円台で、こういう必要十分なプリンターを買うことができることに驚きます。すごい時代になりました。もし壊れるようなら、買換えではなく、セブンイレブンのネットプリントに軍配が上がるかもしれません。
ユーザーである私の中心的なジョブである「年賀状印刷」を果たしつつ、「妻に不満を言われない」「資料印刷D-R印刷」という副次的なジョブをもっとも安価に果たした製品がすべてのジョブを「やり過ぎる」高価な製品に勝る結果となりました。

 

Written by Shingo Tsuda on 2014-09-11

事業開発とは (2)

事業開発とは何か?

事業=価値×顧客 であると、以前書かせて頂いた。今回はその続きを書こう。

この公式に従うと、事業開発とは価値の開発と、顧客の開発に分けて考えることができる。
しかし、新規事業の場合、この二つを分けて行うことができません。既存事業であれば、改良した製品やコストダウンした製品を開発し、別の部隊が営業する。それは、既存顧客に売ることを前提としていて、顧客を新たに開発する必要がないためだ。ところが、新規事業の場合、新たな顧客の開拓もしくは既存顧客の新たな需要を開拓する必要性がある。製品開発と同時並行的に行なう「リーンスタートアップ」のようなプロセスがベンチャーおいて実績があるので、参考にしたいところだ。

ではこの顧客開拓というのが、製品開発とどのように結びつくのだろうか?製品開発と営業は従来、共通言語がなく、視点も180度違う。つまり同時に行うのがやっかいだったりする。良いものを作れば売れる、とばかりに製品開発を先行させると、作り手にとって良いものであっても、買い手にはそれほどでもない・・・というような失敗は枚挙にいとまがない。逆に、顧客の要望を聞いてから開発に着手しようとすると、二つの問題が生じる。

  • 顧客は欲しいものを言語化できない。
    スティーブ・ジョブスはかつて『人は形にして見せて貰うまで自分は何が欲しいのかわからないものだ』と言っている。一般に、顧客は既存製品の欠点には気づくが、新しい何かについての意見は出せないものなのだ。同様に、一大自動車産業を作り上げたヘンリー・フォードは『もし顧客に、 彼らの望むものを聞いていたら、 彼らは「もっと速い馬が欲しい」と答えていただろう』と言っていた。
  • 多くの顧客に聞けば、要望が膨らみ、少ない顧客に聞けば、ごく一部の顧客向けの要望になってしまう。
    念入りに市場調査をすると、多くの要望が出てくる。それらをすべて盛り込んだ製品をつくれば、相当オーバースペックなものになってしまうだろう。多くのガラパゴス製品のように、良すぎて売れない製品になってしまうのだ。逆に、ある顧客の要望ピンポイントで開発をすると、その顧客には満足いくものになるかも知れないが、他の顧客のニーズには合わないものになってしまう。受託開発のような状況とも言えるだろう。

Jobs to be done に着目する

では、どうしたら良いだろうか?
ポイントは顧客の代わりに、何が欲しいのかを表現してあげることにある。
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一言で言うと、顧客がやりたいこと(Job)ができるような、解決方法を提供することだ。顧客が何をやりたいのか、に着目し、それを手助けする方策を提供するのだ。クリステンセンは、これを Jobs to be doneの発見と呼んでいる。こう書くと簡単だが、顧客がやりたいことは、あいまいだったりする。また、「ジョブ(用事)」という名のもと、やりたいことが「不安を解消したい」とか「いい気分になりたい」など、感情的な場合もあるだろう。さらには「周囲に認められたい」、「無難に済ませたい」などといった社会的なジョブもある。
そのため、粘り強く多面的に観察し、顧客を知ることを行う必要がある。場合によっては、調査する人に日記までつけてもらい、家の中まで追跡することも行うのだ。このとき、売りたいものがはっきりしすぎていると、恣意的な目で見てしまい、顧客の本当の姿を見誤ってしまうので気をつけたい。

この一見主観的な方法論をJOBSメソッドとして、学びやすい形にしています。ワークショップの形でJOBSメソッドを学べるような講座や、新規事業のための調査も行なっているので、事業立ち上げのきっかけにしてみてください。

Written by Shingo Tsuda on 2013-11-04

ゴミ処理から見える哲学とインセンティブ設計

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 これは良くある日本の歩道のゴミ捨て場の写真です。曜日毎に捨てて良いものが書かれています。英語も併記されています。表示としてはとても分かり易いと思います。でも、ゴミが回収された後も、この標識は残ったままです。歩道として美しいか?というと・・・、あまりそうとは言えません。
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 こちらはどうでしょう?こちらはドイツのある街の朝の商店街です。ゴミで隠れていますが、特に日本の様な標識はありません。ゴミの量も大量です。何でこんな所に?と旅行者目線で思ってしまいますが、昼間にもう一度行くと美しい歩道に戻っていました。
 ドイツの街を歩いて思ったのですが、ゴミ箱があまりありません。そして、日本ではコンビニのゴミ箱にお世話になる事も多いと思いますが、コンビニもありません。ゴミを捨て易いという便利さが無い代わりに、ゴミ箱の無いきれいな街並みが保たれています。
 分かり易さという意味では標識があった方が良いです。きちんと説明があった方がゴミを出す方も迷わないでしょう。回収する側も決まったポイントを周ればすみます。でも、そのために景観が損なわれてしまっては元も子も無い気がします。
 ゴミ処理に関してはいろいろ議論されているのでしょうし、事実、日本の街は段違いに清潔だと思います。ただ、もったいないなと思うのは分かり易さ・便利さのために美しさが損なわれてしまっているのではないかと感じる事です。ここまでしなくても分るのにと思う標識・景観に溶け込んでいないモノを見るたびに思います。
 例えば、ゴミの回収問題ではなく、街を美しく保つ問題としてとらえればゴミ回収の仕方も変わって来るのかもしれません。こうした見方の転換は社会課題に取組む際に大切です。既存の見方だけでは、どんどん部分最適に進み、袋小路に入り込んでしまいます。ブレイクスルーを生み出すには前提を取り除き、見方を変える必要があります。
 但し、ブレイクスルーなアイデアを実現するためのハードルはあがります。見方を変えるとステイクホルダーが変わります。より全体最適を考えると増えて行きます。ステイクホルダーが増えたら彼らを巻込むためのインセンティブが必要になります。
 街を美しくしよう!というビジョンを掲げたとして、どれだけの人が不便さに納得するでしょうか?情緒的な価値で機能的な価値に立ち向かうのはなかな手強いものです。特にゴミ処理の様な日々のルーティン的なテーマに関しては非常に難しいです。
 日本では、この難しい問題に真っ向から向かっている気がします。地域でゴミ拾い活動をしたり、企業で河川を清掃したりという意識を高める活動です。活動の効果なのかは分かりませんが、日本は清潔ですし、ゴミの分別もきっちり行われている事が多いでしょう。
 ドイツでは(ある街での話ですが)ゴミ処理に対してより経済的なインセンティブ設計がされています。各家庭は3種類のゴミ箱を市からレンタルします。リサイクルできるもの/リサイクルできないもの/生ごみです。そして容積に応じて料金が決められており、リサイクルできるものの方が安くなっています。ゴミを捨てる際の工夫・減らす努力で毎月数百円レベルの節約が出来るそうです。
 家庭ゴミの捨て方、街中のゴミ箱とダイレクトにリンクはしないかもしませんが、「ゴミ処理にはお金がかかるよ!」というメッセージを住民に発して、更に「地域全体としては儲かる!」という事も示していくという事が、ドイツのゴミ処理における哲学の様な気がします。街の美観を保つ・古いものを活かすという哲学と、その哲学を浸透させるための合理的なインセンティブ設計の組合せがアイデアを具現化する肝なのではないでしょうか。
 今週はパシフィコ横浜で Smart City Week 2013 が開催されています。いろいろな事例を見聞きして思うのは、答えは一つではないという事です。それぞれ歴史の異なる街を相手にしているのですから当たり前なのですが、想像以上にその地域に根ざす事がスマートシティを成立させるために重要だと感じました。
 その地域に根差した哲学を具現化するためのインセンティブ設計のヒントを探しに訪れて見てはいかがでしょうか。
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Written by Tatsuya Yamada on 2013-10-22