AIを使いこなそうとすると失敗する

Written by 津田 真吾 on 2019-04-01

人間というのは、手に道具を持つと使いたくなる動物のようだ。


「トンカチを持つとすべてがクギに見えてくる」とはうまく言ったもので、マッチを持つと、寒いわけでもなく、調理がしたいわけでもないのにもかかわらずシュッ、とすりたくなる。

ライターを手に持つとカチカチやってしまう。
私も、初めて携帯電話を買ったときは普段話をあまりしないような人にも電話をかけたくならなった記憶がある。

そういえば、昔プレゼンのセミナーを受講したときに、指し棒は使うべきではないとその講師には教わった。それは、指すべき図がなくても振り回したり指で遊んでしまうからだそうだ。聞いてもらいたいのは話の筋だ、覚えてもらいたいのは話し手のメッセージだ。ずいぶん納得した記憶がある。


今はAIの時代。どこの企業もこぞってAIを使うのだ、と横並びに経営戦略に書かれている。横並びであること自体が悪いのではない。むしろ必然だ。これまで多いの技術導入を先送りにしてきた結果、このタイミングで何を導入するかといえば、AI以外にはないだろう。
ただ、思い出したいのは、ITの導入も消極的、クラウド導入も慎重、ダイバーシティや裁量労働などの人事政策も慎重に導入してきた過去だ。同じアプローチでは導入は先送りにされ、今回は2週遅れにもなるくらいの差がグローバルに隆盛している企業とついてしまう。
ここで、「同じアプローチ」と呼ぶのは以下のような進め方を指す。

  1. 研究室、なる組織を作り他社事例を学び、学んだことを社内プレゼンし、事業部に昇格させることを目指す。
  2. スタートアップには技術があるのではないかと探し回った挙句に、「ウチには使いこなせない」と諦める。
  3. 使い方を易しく解説してくれるITコンサル会社に多額な開発費を払い、AIっぽいが業務は何も変わらないものができる。

それぞれのステップにおける問題点は明確だ。まず、不確実性の高い新領域は網羅的に研究することは出来ない。つまり、社内コンセンサスを取ろうとすると必ずアラが見つかり、反対する人が現れるということだ。全員が賛成するようなアイデアはもう古い、と言われるように新しいアイデアこそ相談や合意を最小限にしてやってみることが大事になる。リーンスタートアップが重宝されているのは、予算をかけずにやってみることが出来るからだ。そんな手法なんか知らずとも、まずはやってみなはれ、である。

「使いこなそう」という願望が叶わないのには2つの原因がある。一つには、使う強い動機が弱いからだ。スタートアップはAIを開発する側でもあると同時に、ヘビーユーザーでもある。リソースもあまりなく、合理的にスピーディーに事業を進めざるを得ないスタートアップには、猫の手も借りたい。スマートな猫なら最高だ。成長するスタートアップはどんどん積極的に新しいサービスを使いながら、自社の事業に役立てている。
「使いこなす」ことができないもう一つの理由は、「遊び」がないからだ。目的がなくても、持っていれば「遊んでしまう」のが人の常。スマートフォンも遊んでいるうちに、「使いこなした」状態になっていったという経験をお持ちの方も多いと思う。パソコンも業務以外に使っているうちに使えるようになった側面は否めないはずだ。最強のプログラマーは、遊びが転じてプログラムを書き始めた人たちなのである。気持ちの持ちようも含めて「遊び」は不可欠だ。

調査をして、使いこなせないことがわかると、わかりやすい説明に飛びつきたくなる。そうなると、まあ高い買い物になるわけなので、そのあたりは説明を割愛しようと思うが、まじめに遊びもなく、みんなの合意を目指した結果のAIがつまらなくなるのは必然。新しい道具は、まずは一部の人で遊んでみて、結果が見えるようになってからまじめに取り組んでみてはいかがでしょうか?