マシュマロチャレンジ、幼稚園を卒業したばかりの子供は本当に高いタワーを作れるのか?

Written by 山田 竜也 on 2019-11-25

先日、公立小学校1年生のクラスで1,2校時の90分間をもらいマシュマロチャレンジを行う機会を得ました。以前見た TOM WUJEC のTED TALKSの中で、「MBAの卒業生より幼稚園の卒業生の方が高いタワーを作る」と言う話があったので一度試して見たいと思っていたことが、やっと実現しました。ちなみに、MBAの卒業生向けは未だ実施していません。

 

マシュマロチャレンジは、20本のスパゲティ、90cmのマスキングテープ、90cmの紐、ハサミ1個、そして、マシュマロ1個を材料とし、4人1組で18分間で、マシュマロを一番上に乗せた自立したタワーを作り、机からマシュマロまでの高さを競うゲームです。

世界記録は99cmと言われています。自分が見たことがあるのは90cmぐらいまでです。大人から子供まで様々なシーンで活用されていて、実験し、試行錯誤することの大切さに気付くと共に、イノベーティブなチームビルディングを行うアクティビティとしても効果があります。

 

さて、当日の様子はというと、小学校1年生の段階で想像以上に知識も落ち着き度合もバラバラで、18分間のチャレンジタイムに辿り着くまでが一苦労でした。近所の子供たちの様子や公開授業で外から見ていたのでは分からなかった多様性(というかバラバラ感)にビックリし、落ち着かせようと用意してきた新ネタにもすぐに飽きられて焦り、子供たちを集中させる教育コンテンツの開発は大変だろうな〜と、喉を枯らしながら担任の先生の苦労を思いました。

そこで頭に浮かんだのが最近のトレンドの一つである学習者中心というコンセプトでした。

 

学習者中心

過去のブログ「人材育成4.0」で学習者中心と言うトレンドを紹介しました。「人材育成1.0は徒弟制度、2.0は階層別研修、3.0はアクションラーニング、4.0は学習者中心」と提供手段の視点でトレンドの変化を整理したものです。

お仕着せではなく学習者が主体的に選ぶと言う考え方に共感する人は多いと思うのですが、実現手段には課題があります。実際にバランバランな生徒たちの前に立つと、さて、どうしたものかと、この実現を求められる先生側の苦労への共感度が上がります。

学習者中心を実現するための課題は以下の3つと考えています。

・学習者への動機付け
学習者を主体とするには学習者に主体性が無いと成立しません。学習者に主体性を持たせること自体が最初の課題となります。主体性の無いままの学習者を自由にするよりは型稽古を強制した方が残るものは多いかもしれません。

・学習者の得意分野に応じた教え方
ハワード・ガードナー博士により1983年に発表されたマルチプル ・インテリジェンス理論では、知性には8つの種類があり、人は、そのうちの複数の知性を備えていて、どれが強いか弱いかという「程度」と「組み合わせ」がその人の個性になると考えられています。得意な知性を伸ばしたり、得意な知性を通して苦手な知性を学んだりという工夫がされています。

・学習者の発達段階に応じた教え方
ここでは科目や知性毎の進度に合わせるだけでなく、人間としての発達段階に合わせた自己理解や他者理解に関してもフォローが必要になってくるでしょう。専門教育に進む前の社会人としての義務教育を含む小学校ではより重要な課題かもしれません。

 

モチベーション、得意な知性、発達段階、当然これらは個人によりバラつき、組合せも様々です。生徒を中心に考えれば、こうした課題に対して応えていく事が必要なのかもしれません。一方でこれに応えるには先生側に本当にマルチな能力が要求されます。図工や音楽という水平的な成長のためのスキルには既に教科担当という形で手が打たれていますし、 社会性のある人間としての垂直的な発達段階という点でも個別の補習等で対策が取られている様です。さらに、知的、身体的という多様性もクラスを作っている学校は、近い将来の社会を感じることが出来る場所かもしれません。

「これからの時代には金太郎飴の集団よりも一人一人の個性を活かせる集団が求められている」という方向性があって、「子供の得意分野や発達のスピードは一人一人異なる」という理解が進む中で、学習者中心に対応するには、限りある先生側のリソースを何に投入して、どこをテクノロジーで補うかの議論が必要です。

学習者中心というコンセプトは、まだまだ絵に描いた餅です。テクノロジーの活用だけではなく、教育の目的から考えさなければならないし、それが多様化するということは、個々の学習者(学習者が子供であれば親に)に大きな責任がのしかかってきます。
現時点では、どこから手を付けたら良いのか、悩ましい課題ですが、先進国とされている国々の状況から個別解を探り、そこから自身の環境での個別解を探るというのが現状では無いでしょうか。個別解ばかりなので公立校への展開の難しさをより感じます。

 

ちなみに今回のクラスでの最高記録は75cmでした(拍手!)
当初のクラスの様子からは記録ゼロが続出ではないかと心配していましたが、最高記録の作品はヤジロベエの様にバランスを取る部分があって、構造的にも試行錯誤から自立させるための学習の後が見られるものでした。
サンプル数は少ないですが、小学校1年生は、上手くその気にさせられれば、少なくとも大人同等、それ以上のパフォーマンスを出せそうです。