以前書いたように、イノベーションとは「何か異なるやり方で、インパクトのある価値を生み出すこと」です。
インパクトのある価値が生まれるかどうかは、やってみなければ分からないので、重要なのは異なるやり方を試すことです。(実はイノベーションの世界もいろいろ研究されてきており、成功確率をあげる方法はいろいろとありますが)やらないと、インパクトを生むことはできません。
異なるやり方って何なんだ!と思われた方へ、
平たく言うと「慣れていないことへの挑戦」です。
自戒を込めてなのですが、慣れていないことをやるのは誰でも嫌なものですよね。
しかも、イノベーションの世界は不確実性が高いので、頑張ってやったとしても成果が上がるかは分かりません。
かといって、慣れていないことに挑戦しなければ(やり方を変えなければ)、得られる結果は従来と同じです。
「Innovate or Die …」
「やらなければならない・・・」という空気はしだいに現実味を帯びて、様々な業界を侵食しています。
とはいえ、一般的な願望としては、「なるべく楽して儲けたい」ですよね。
「楽して・・・」というと反論もあるかと思いますが、ドMの人は別として、なるべく効率的にビジネスを進めたい誰しも思うのではないでしょうか。
成熟した大企業でイノベーションを起こすにはどうすればよいのか?
危機感の醸成、啓蒙、トレーニング等、人材に働きかけるソフトな取り組みはいろいろありますが、制度として行動を促し、方向性を示すものも必要です。
既存事業と新規事業のKPI
すでに行なっている既存事業であれば、今期の売り上げのようにKGI(Key Goal Indicator)を設定し、顧客の訪問数、提案に至った回数、受注件数をKPI(Key Performance Indicator)にするという具合に、KPIの設定はイメージしやすいものとなります。
しかし、イノベーションではこうは行きません。新製品の投入率、戦略的な特許の取得件数、イノベーションパイプライン強度(イノベーションプロジェクト数 x 将来の収益の見込み)といったものもありますが、定量的とは言い難いですし、何より人の行動を促すという点で不十分と言わざるを得ません。
KLIとは何か?
では、どうすれば良いか?
お勧めしたいイノベーションのKPIは、ずばり!どれだけ学習したかです。
イノベーションの実行が難しいのは、不確実性が大きいからです。
プロジェクトの先行きは見えないし、顧客が買ってくれるかどうかも不明。さらに、思いがけないコストが乗っかってくる可能性もありますし、仕入先の品質も安定していないこともよく起こります。
そのように数多く存在する不確実性が減少することがイノベーションプロジェクトの進捗といってもよいでしょう。
したがって、新規事業のKLIとして、未知数として知らないことや、仮説に過ぎなくて不確実なことが減っているかどうかを計測してはどうでしょうか。
「ザ・ファーストマイル」には、2つの重要なツールが紹介されています。
一つは、仮説を重要度によって分類する方法です。これは、仮説(つまり、いずれ学ばないといけないこと)の重要性と確信度から、仮説検証の優先順位を決めるツールです。
もう一つは、確実性の遷移表です。事業の確実性(もしくは不確実性)を測り、事業として進捗している度合いを見る方法です。
この2つのツールを参考にKLIを設計してみてはどうでしょう。
勉強と学習
最後に、学習と勉強の違いに触れておきましょう。
これまで「学習」という言葉を選んで使っています。
しばしば「知る」こと「勉強」することと混同されていますので、説明します。
「勉強」は事実の確認に過ぎないが、「学習」には再現性を求める。
例えば、「火を触るとヤケドをする」と知ることと、「ヤケドをしない所作」を学ぶことは違います。
KLIというと、ついつい分厚いレポートをたくさん読みたくなりますが、それは入り口にしか過ぎません。
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この業界はこうなっている (勉強)
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この業界ではこうすれば売れる (学習)
この2つの表現を見てわかるように、勉強はあくまでも過去の事実やその仮説でしかありません。それに対して、学習は検証された仮説です。
このように、学習の観点を加えてイノベーションプロジェクトを進めてみましょう。