共通体験は不安を乗り越える、イノベーションの好機!

Written by 山田 竜也 on 2020-05-22

体験してみて初めてわかる事

ようやく私の周りでも小学校のオンライン朝の会がスタートしました。早期に進めていた所からは2ヶ月近く遅れてしまいましたが、機会を逃さずに実施出来たことは成果だと思います。実施に至るまで、周囲の親と作戦を練ったり、学校に相談したりとステップを踏む中で、オンラインで実施する事への漠然とした不安感がある事に気がつきました。

 

 軽々しく試せない、公式にはアナウンス出来ない、参加出来なかった子どもの気持ちはどうするんだ、そもそも学校には設備が無い、・・・

 

やらない方向への意見が山の様に出ていたのに、
いざ実施してみると、

 

 子どもたちの笑顔が見れて嬉しい、先生が一番はしゃいでいた、皆んなの顔が見れて嬉しかった、授業までは出来なくても生活のリズムが出来て嬉しい、・・・

 

とポジティブな意見のオンパレードでした。
空気感を共有出来ないのは少し物足りないですが、一つの画面で全員の顔を正面から見られるのは、オンラインならではのメリットではと、良い面も実感出来ました。

 

選択肢を選べる状態でも選択されない

この数ヶ月でテクノロジーが急に進歩した訳では無いですし、通信インフラが整った訳でもありません。選択肢は既に用意されていたのに、やらなかっただけなのです。様々な選択肢があったとしても、我々は、ついつい、いつもの選択肢を選んでしまいます。

『現状にそれほど不満がなくて、新しいやり方の魅力を実感できなければ、不安を乗り越え、習慣を断ち切ってまで、新しい事には挑戦しない』という事は、素直な感情として理解できます。

だからこそ、色々な障害を乗り越えて、まずは、皆で体験できた事が、今後も続く変化の”きっかけ”になることを期待しています。

仮に第二波が来たとしても、『あの時の、あれを、もう一度やろう!』と今までは使わなかったオプションが、多少は馴染みのある手段に変わる事で、より多くの想定外に対応できる様になりますし、新たな手段の良い面が実感されれば、普段から効果的に使う、よりハイブリッドな授業も生まれてくるかもしれません。

 

 イノベーション = 発明 x 普及

 

イノベーションは『発明 x 普及』と定義出来ます。発明は新しい製品・サービスを作り出し、選択肢を提供します。普及はその選択肢が人々の間に広まっていき、それが社会全体に広がり、世界がアップデートされる変化です。

発明の活動と普及の変化はそれぞれ独自に進んでいます。もちろん、明確な目的を持って発明に取り組んでいる場合もありますが、そこで意図した目的とは違う目的や用途で普及が起こる事もあります。頭痛薬として発売されたコカコーラが清涼飲料水として普及していった様に、発明家の意図とは違う所で普及が進む例は意外と多いのでは無いでしょうか。

 

commons.wikimedia.org

この発明の普及のきっかけは、『いつもは水で割っていた頭痛薬コカコーラの原液を、たまたま水を切らしていたので、炭酸水で割ったら美味しかった』という体験からでした。ですが、こうした体験はなかなか意図しては出来ません。薄々思っていたとしても、選択肢に合ったとしても、薬は水で薄めるものという固定観念に凝り固まっていては実施に移されないでしょう。

 

強制的な共通体験は不安を乗り越えさせる

 

イノベーションのDNAの著者の一人、ハルグレガーセン氏は、イノベーションを生み出すための問いとして、『もし、___が出来なくなったとしたら、我々は何をすれば良いだろうか?』というものを挙げています。

コロナは多くの人に様々な制限を与えました。この事自体は多くの辛く残念な状況を生み出してしまいましたが、この体験を全員がしたことは、通常だったら、誰もが考えもしない、考えたくも無い問いに真摯に向き合わざるを得ない状況を生みました。

 

 我々は強制的に『人と距離を取りながら、様々な仕事や生活をしなければならない状況』を体験させられてしまいました。

 

オンラインでの会議、在宅勤務の社員の管理、オンラインでのホームルーム、不安に思っていた試みをやらざる得なくなった状況は、多くのイノベーションを生み出すきっかけを生み出すかもしれません。

『あの時から一気に広まって、今じゃ当たり前になった。今更もう、手放せないよね』と、なん年後かには話しているかもしれません。

世界が元に戻らずに、一歩でも進歩することを願います。

#StayHome 完全リモートワークから見えて来るもの

Written by 山田 竜也 on 2020-04-16

緊急事態宣言が発令され、4月7日~5月6日で外出自粛が要請された。オフィスはもちろん、コーワーキングスペースやカフェも閉まり、#StayHomeの掛け声の下、自宅での完全リモートワークが始まった。

 

これまで、リモートワークには、働き手の都合に配慮したポジティブなニュアンスがあった。家族を優先したスケジューリング、子供の送り迎えをして、居心地の良い自分のスペースでマイペースに仕事をし、クラウドサービスを利用して、プロジェクトメンバーとのコミュニケーションも支障なく進むと言った世界だ。

 

しかし、リモートワークという選択肢があるという状況から、#StayHome 自宅でリモートワークという選択肢しかない状況になってみると、想像と違っていたことが見えてきた。

 

「子供が静かにリビング学習する横で、自分も仕事に集中!」なんて事は幻想で、子供は外で遊べずにストレスが溜まる。学校からはたまに電話がかかってくるが、出された宿題をコツコツこなす子は、おそらく稀で、ほとんどは家でダラダラ過ごす。せめて、外に連れて行って気分転換させたいと思うが、いつもより混んでいる公園に連れて行くのは怖い。狭い家の中で家族のイライラが増していく。子供を学校に行かせるのは、勉強をさせるというより、安心安全に預かってもらえることに価値を感じていたと、親としての自分の本音も見えて来る。

 

エクストリームな状況は、これまでは、それほど気にしていなかったジョブを浮かび上がらせる。たまにリモートワークをする状況では、我慢してやり過ごしてきたり、何とか工夫してやりくりしてきた事が、それでは済まなくなる。リモートワークを推進するには、「家庭のオフィス化」が必要になるというシンプルな事実が浮かび上がってきた。それは通信環境を整えるというだけではなく、家でも(少なくともオフィスと同様に)仕事が捗る様にするという事だ。

 

オフィスのフリーアドレス化が進んだ時にも、交流を促進するという会社の意図もあった一方で、「声をかけられずに仕事に集中したい」という社員のジョブを解決するために、ヘッドフォンをかぶる姿が見られたりした。交流という付加的な価値より、作業が捗るという本質的な成果の方が優先されるのは必然かもしれない。働き方改革も自由な働き方を許容するという前提に、生産性を上げるという事があったはずだ。

 

改めてジョブの3種類の目的で考えれば、以下の様になる。先ずは仕事を捗らせたい、生産性が上げたいという機能的な目的があり、それが解決された上で、より気持ちよく働きたいという感情的な目的が出てきて、さらには、自慢できる環境で働きたいという社会的な目的が出てくる。

今回一気に「家庭のオフィス化」が進んだことで、機能的な目的の切実度が増しているのではないだろうか。これまで、「書斎が欲しい」というジョブは感情的、社会的なジョブで、あったらカッコいいなというものだった。これが機能的なジョブに変わると、「家でも仕事の生産性を上げたい」と変わる。

 

「自宅から出られず環境の変化を付けられない状況でもメリハリを付けたい」「家族と一緒のワサワサした環境でも仕事に集中したい」というジョブを解決したい、書斎を持っていない会社員のジョブはより切実になっている。

 

状況が変わると解決したいジョブが変わる。ジョブの重要度が増したり、気にする頻度が増えたり、現状の解決策への不満が吹き出してきたりする。
大きな環境の変化があった時には、改めてこれまでは気にも止めていなかった普通を見つめ直してみましょう。きっと新たなジョブの発見に繋がります。

教えるのか?学ばせるのか?

Written by 山田 竜也 on 2020-03-09

コロナウイルスは、人が会うことを必要とする業界に大きな影響を及ぼしました。音楽CDからライブに活路を見出していたエンタメ業界、来年度への布石を打とうとしていたイベント・展示会、4月の新人研修を控えた研修業界。我々も3月に予定していたセミナーやイベントは全て中止・延期になりました。

そんな中、注目を浴びているのがオンラインセミナーです。ZOOM, Skype, Hangouts, Facetime等のツールはこれまでも使われていましたが、ここにきていよいよ本格導入の流れが来るのではと期待しています。

我々もこのタイミングを利用してZOOMを使った1時間程度の無料オンラインセミナーを開催しました。1週間ちょっとの集客期間に関わらず、40名以上に申込み頂き、30人ぐらいに実際に参加頂きました。

今週金曜日にも開催しますので、是非この機会にお試しください。
3/13(金)15:00-16:00イノベーターDNA診断 特別フォローアップセミナー

普段からセミナーは行なっていますし、ZOOMも打合せ等で利用しています。ZOOMを使ったワークショップへの参加経験もありました。そういう意味では、組合せとして新しいだけなのですが、実際にやってみると色々気付きはありました。

 

ZOOMでのオンラインセミナー果たして・・・

先ず最初に、「大した準備もしていないのに、とてもスムーズに運営できたこと」、クライアント先でのテレカンでは専用システムを使っているにも関わらず、もれなく手古摺るのですが、今回はほぼノントラブルでした。参加者によっては苦労された方もいたかもしれませんが、チャットで把握した限りでは冒頭音声設定の間違いが少しあったぐらいでした。

次に、「レクチャーが程よくコンパクトにまとまったこと」、対面だとどうしても参加者の表情や仕草を意識してしまうため、質問を投げかけてみたり、表現を変えて補足したりと、良く言えば丁寧、悪く言えば冗長になってしまうのですが、リアルタイムで反応を取りにくいために、その場のコンテキストに振り回されずに、コンテンツを伝えることに集中できました。

そして、「記録した動画は再利用に耐え得る」、企業内研修でも欠席者のために撮影させてくれないかという相談が良くありますが、対面でインタラクティブに行う研修では記録そのものが難しいですし、少なからず編集作業が必要になります。今回はZOOMでの記録を試みてみましたが、当日のセミナーそのままでした(元から画面越しなので当たり前ですが)これならば欠席者向けの再配布も簡単です。

 

手段での区分けには意味がない

オンラインか?、リアルか?、教えるのか?、学ばせるのか?、敢えて手段で4象限に分けてみると今回のセミナーは左上にきます。右上は良い例が思いつかなかったので?のままとしました。
(何か良い例を思いついた方、是非教えてください(^^;

 

こうして区分けしてみたものの、何れにせよ、これは手段の区分けであって、目的に応じたものではありません。一方で、手段で区分けした議論が先行してしまい、それぞれの手段毎での導入になってしまわないか不安を感じます。

一方通行の座学よりも双方向のワークショップ形式の方が学習効果が高いとも思われがちですが、分かり易いレクチャーには価値があります。ワークショップ形式で双方向での盛り上がりを重視しすぎると、場は盛り上がっても伝えられているコンテンツは少なくもなります。

今回のオンラインセミナーでは、短い時間、一方向という制約の中で行った結果、座学のレクチャーとしての完成度は高くなった気もしています。You Tuberの様に完成度を高めた動画があれば、リアルでの座学は皆でディスプレイを眺める方が効果的かもしれません。それであればいっそ動画を見るまでは事前課題にしてしまった方が良いかもしれません。

 

目的に合わせて手段を組合せる

 

手段で区分けしたり、学習者中心!と 大上段に構えると未解決のジョブを見失ってしまいます。未完成だが価値のあるテクノロジーを試す機会も減ってしまうかもしれません。
それぞれの手段の特徴を活かして、目的に合せて使える様になってきた手段を駆使するのが効果の高い学習環境を作るポイントではないでしょうか。

結局、いろいろ試してみるのが一番。試すハードルが下がっている事は何よりうれしいことです。使えるものはドンドン使い倒していきましょう。その中で有効な使い方が見つかり、未来のスタンダードになっていくばずです!

世界は螺旋で進歩する

Written by 山田 竜也 on 2020-02-10

D2C(Direct to Customer)の出現

D2C(Direct-to-Consumer)という言葉をご存知でしょうか。卸売店・小売店などの流通を介さず、ECサイトで直接ブランディング・販売を行い、企業から消費者にダイレクトに商品を届ける仕組みのことです。

テスラもD2Cですし、眼鏡のWarby Parker(ワービーパーカー)、最近話題のAllbirds(オールバーズ)という靴もD2Cとカテゴライズされています。

また、言葉としては、シェアリングエコノミーにより増えてきたC2C(個人間商取引)もありますし、一般消費者向け商品を生産するメーカーの間に卸売が入ったB2B2Cもあります。色々なアルファベットの組合せが余計に複雑にしている様な気もしますが、一般消費者向けの製造業を対象にシンプルに考えれば、作り手と消費者の関係の違いで定義できます。

 

生産者 −> 卸売業者 −> 小売業者 −> 消費者

 

生産者 <−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−> 消費者

 

単に仲介業者を減らすだけだと、中抜きするだけですが、新たに着目されている理由はDirectという言葉が示す様に、直接顧客と関係を結べる事にあります。作り手と消費者の関係が双方向になるのです。

これにより、amazon primeやFacebookの様なソフトウエア商品では無い自動車や靴がソフトウエア商品の様な関係性を顧客と直接結ぶことが出来ます。顧客との関係性が直接になれば、製品開発に役立つ情報がダイレクトに取れますし、顧客との関係を深めてLTV(Life Time Value)ベースでのビジネスに繋がります。

 

こうした商取引きは新しいのか?

「生産者が作ったものを直接消費者に届け、顧客との関係をダイレクトに結ぶ」このモデル自体は特に新しくありません。オーダーメードで限られた数の靴や服を売る様な工房型の店は古くからあります。オーダーメードでなくても常連さんを抱える老舗のパン屋さんやケーキ屋さんもあります。
但し、こうして始まった店も顧客数が増え、直接顔の見えない顧客に商品を届ける様になると間に流通業者が入り、大量生産、大量販売が進み、顧客との接点が小売店側に移りB2B2Cの状態になります。販売量が増えてもネットでのお取り寄せの様な形で顧客との直接の関係を維持している場合もあります。

工房型の直接取引、卸売業・小売業を介した大量販売、ネットでの直接取引、結局はいくつかのパターンが繰り返し現れるだけの気がします。同じ所をグルグル回っているだけで、そこに進歩は無い様にも見えます。

 

では、何が新しいのか?

D2Cの本質的な新しさは、SPAと比較すると分かり易いです。どちらも自社で企画、生産した商品を消費者に直接届けるという点は同じです。違いは顧客情報の活用度合いにあります。顧客が商品を購入した販売時点までか、使用後も含めたライフサイクルまで捉えているかにあります。

使用後の反応こそを大事にしているのがD2C企業と言えます。購入時のBig Hireより使用後のLittle Hireにこそ、顧客に選ばれ続けるヒントが眠っているからです。

認知 −> 購入 −> 利用 −> 利用の継続 −> ジョブの解決

生産者 <−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 顧客からの発信

先ほどの製品やサービスを届ける流れを顧客の視点で書くと上の様になります。

Big Hireは顧客が製品やサービスを購入した瞬間です。この時点ではその製品やサービスを購入したいという顧客のニーズは満たされていますが、顧客がその製品やサービスで解決したかったジョブは未解決のままです。Little Hireとは顧客が製品やサービスを利用した瞬間、もしくは利用し続けてジョブが解決した瞬間です。そして、この瞬間になって初めて顧客からの発信が始まります。生産者が得たいフィードバックが得られる様になります。

例えば、楽器は多くの人が一度はトライし挫折するものの典型です。購入した瞬間には高揚感はありますが、本当に解決したいジョブはその先の弾けた瞬間にあります。そして、そこまで辿り着くには時間がかかります。ギターで有名なフェンダー(Fender)は、ギターを始めた人の90%は1年後には挫折してしまうという状況を発見し、ギターが上手くなり演奏を楽しめるリトルハイヤの瞬間までを支援するために、フェンダープレイ(Fender Play)という初心者のプレイヤーを対象としたオンラインギター学習システムを開発しました。

もちろん、どの企業も販売後の顧客の利用状況を掴もうとしています。昔も購入した製品にユーザー登録の葉書は付いていましたが、ほとんど使われる事はありませんでした。新たな商品解決のための情報は、別途、マーケティング調査を行って入手している場合がほとんどです。

自分たちが良いと信じるものを作り、顧客と直接関係を結び、顧客からのフィードバックを重視して、一緒に良いものを作っていくのが、D2C企業の戦略と言えるでしょう。

 

何が新しさを支えているのか?

一見商取引のパターンがグルグル回っているだけの様にも見えますが、それを支えるインフラは変わってきています。インターネット、決済サービス、物流サービスがあるからこそ、メーカーと消費者の直接取引が可能になります。SPAとD2Cを分ける消費者からの発信は、インスタグラムなどのSNSの発展により可能になりました。

どんな商品において、どの様な商取引の形態が望まれているか?様々な商品が溢れかえる現代に置いては、より自分だけの特別な商品を使いたいという感情的なジョブが強くなります。好きなブランド、自分が推しているブランドを周囲に示したいという社会的なジョブも生まれてきます。

「こうしたジョブの変化と、それを実現するテクノロジーの変化」は即ち、螺旋を上から見たときに、どのジョブが強くなっているかと、螺旋を横から見たときに、どのジョブを解決できるテクノロジーが用意されているかに相当します。

 

2つの視点で世界を見れば、世界は確実に進歩しています。
世界は螺旋で進歩するのです。

もっと効果的な研修を行うために、バズワードに惑わされずに本質を考える

Written by 山田 竜也 on 2019-12-30

もっと効果的な研修を行うためには?

結論から言えば、組織の戦略に必要な人材像を定義し、その人達がパフォーマンスを発揮するために取るべき行動を定義し、その行動を行うために必要な知識やスキルを習得する機会と環境としての研修を提供すれば良い。

研修としてはここまでかもしれないが、習得後に取るべき行動を取り、実際にパフォーマンスが上がったかを評価し、学習プロセスを改善していく必要もある。また、そもそも知識やスキルの習得が先か、先ずは行動の実践が先か、泳ぎ方を教えるか、プールに投げ込むか(適切な安全管理の下で)のアプローチの違いもある。

そもそも研修とは?という所から整理して、もっとも普及している研修の評価方法や最近のトレンドから、より効果的な研修を行う方法を考えてみたい。

 

そもそも研修とは?

”研修”という言葉から何を想起するかは様々だ。いわゆる座学のザ・トラディショナルな研修もあれば、グループワーク中心で進めていくもの、オンラインとオフラインを混ぜたもの、プロジェクトベースで進めるもの、そして、最近では脳科学、ビッグデータ、AIと手段の側からもバズワードが飛び交い、より全体像を分かりにくくしている。

そもそも研修という言葉の語源は、研究と修養から来ている。らしい。
・研究とは「物事を学問的に深く考え、調べ、明らかにすること。」
・修養とは「徳性をみがき、人格を高めること。」

こうして見ると、研修という言葉そのものには「誰かが何かを教える」という要素は含まれていない。むしろ「自分が主体となって自らを磨いていく」というニュアンスが強い。

一方、研修を英語に訳すとトレーニングとなるが、上記の日本語の定義とは違和感がある。トレーニングには冒頭の写真の様に、「誰かに、鍛えられる、仕込まれる」というニュアンスが強く、こうしたトレーニングの場に飛び込むのは自分の意思かもしれないが、その場で行なっている事は自発的には見えない。

 

トレーニング vs ラーニング

トレーニングと対比される言葉としてラーニングがある。
・トレーニングは誰かに指導されるもの
・ラーニングは自らが考え主体となって行うもの

言葉の定義としてはラーニングの方が研修にあっている気がするが、ラーニングは学習と訳される。学習の定義はというと、「知識、行動、スキル(能力)、価値観、選考(好き嫌い)を、新しく獲得したり、修正することである。生理学や心理学においては、経験によって動物(人間を含め)の行動が変容することを指す。繰り返し行う学習を練習(れんしゅう)という。」Wikipedia

 

ここで、やっと”行動が変容する”という所に辿り着く。研修を企画する際に、言葉の定義から始めていては中身に辿り着かないので、先人達の知恵を借りることにする。

 

カークパトリックの4レベル

1959年にアメリカの経営学者のカークパトリック博士が提案した教育の評価法のモデルで、カークパトリックの4段階評価法として世界的に定着している。

・レベル1:Reaction(反応)
アンケート調査などによる学習者の研修に対する満足度の評価

・レベル2:Learning(学習)
筆記試験やレポート等による学習者の学習到達度の評価

・レベル3:Behavior(行動)
学習者自身へのインタビューや他者評価による行動変容の評価

・レベル4:Results(業績)
研修受講による学習者や職場の業績向上度合いの評価

 

この4段階は個人的にも納得感があるが、レベル4を実現できている企業にはほとんど出会った事がない。また、この評価方法および実態としてレベル4までを評価できていない事が、”研修は研修に過ぎない、業績には役立たない”という印象を生んでいる気もする。

自分自身、単なる研修と言われない研修を目指して、参加者の実務と直結させる子を心掛けているが、実務をテーマにプロジェクトベースの建てつけで行なっても、依頼主や参加者のレベル1:Reaction(反応)を最大化する事には繋がるが、レベル2,3,4までを事前にデザインできたケースは少ない。
研修実施後に機会を得て、数年経っても実践し続けていたり、プロセスとして組織に定着しているのを見るのはとても嬉しい瞬間だ。

 

HRBPという追い風

HRBP(HRビジネスパートナー)という言葉もだいぶ浸透して来た気がする。今年参加したSHRM2019でも、How to Be a Better Business Partner “You are a business professional who have expertise in HR.”と言ったメッセージが実践のためのガイドラインと共に打ち出されていた。

研修の効果が業績向上に繋がるようにするには、そもそも研修をその様に設計しておく必要がある。これをやるにはビジネスに求められる要件を人材要件に変換する事ができるプロフェッショナルが必要になる。

日本の人事担当者は他部門も経験している人が多い、人事専門家が育ち難いというマイナス面もあるが、事業に貢献できる人材を定義するには都合が良い。何れにせよ、研修企画者が全てを行う事は出来ないので、事業部の適切な巻き込みが鍵となる。

 

テクノロジーによる追い風

カークパトリックのレベル3,4は測定の手間が問題だった。しかし、レベル4から逆算してKPI(Key Performance Indicator)をブレイクダウンしていけば目標値の設定は可能だし、それに必要な行動指標も定義できる。行動の測定も主観的な自己申告から客観的な行動実績に変える事ができる。日々の報告から解放される被測定者に取っても朗報になり得る。

また、その手前のレベル2の学習到達度に関しても、エビングハウスの忘却曲線を逆手に取って、効果的なタイミングでリマインドを促したり、AIボットで実践結果に応じた取るべき行動のリコメンド等も可能になる。

測定と強化の両方でテクノロジーは大きな可能性を秘めている。全員に人間のコーチを雇う事は出来なくても、ロボットコーチなら全員に平等に提供可能かもしれない。参加者を増やしたいが費用が足りないという問題からも解放される。

 

カークパトリックの新4レベル

全ての動きは繋がっている。2016年にはカークパトリックの「新4レベル」を解説したKirkpatrick’s Four Levels of Training Evaluation (2016)が出版された。
HRBPの流れと呼応し「レベル1,2を中心としたこれまでの研修効果測定をやめ、新しい4レベルのプロセスで結果を出し、戦略実行に貢献するビジネスパートナーを目指そう」というメッセージが打ち出された。
具体的には、「レベル4→レベル3→レベル2→レベル1」という順番で設計する重要性を強調している。経営者から見れば当たり前の事かもしれないが、この順番の変更には大きな意味があるし、実現には様々なハードルがある。

 

それでも、流れは変わりつつある!?

人材を人財として活かしたいという要求が高まり、研修を単なるきっかけに終わらせないためのテクノロジーによる支援が可能になって来ている。
マスマーケット向けに大量の商品を均一に送り出すためのトレーニングが工場を中心に成果をあげたが、大量生産消費の世界から持続可能性とバランスを考える時代に求められるトレーニングは当然変わっていく必要がある。テクノロジーを前提とする時代には、研修自体もテクノロジーを取り込んでいく必要がある。

研修の目的を明確に定め、レベル4から設計し、批判を恐れずに、従来の枠から出て色々試していけば、かなり面白い事ができるはず!