「事業開発」、”Business Development”という名刺を持つ人が増えている。欧米の企業、特にベンチャーでは”Biz Dev”という役割は市民権を獲得したと言ってもいいだろう。もちろん、非常に曖昧で何をする仕事なのかというと会社によって、いや、個人個人でまちまちである。日本企業でも「企画」というようなイメージで使われている。日本企業の「企画」部門では、売上予測を行っているところや、商品のアイデア出しをしているところ、リソース配分をしているところなど、十社十色である。何らかの企てをすることで、役割を果たしたことになるであろう。同様に、「事業開発」、”Business Development”には曖昧さが伴う。営業をやっているようで、開発もやっている。特許調査をしている時もあれば、ライセンシングしていることもある。あるいは協業相手を探していたり、プロモーションを行っていたりする。そう聞くと、企画部門よりもとらえどころがないように映るはずだ。

とらえどころがない。が、この仕事が必要なのだ。

事業が望ましいサイズになっていないときは、事業を開発する必要がある。必要だからこそ、事業開発部や事業開発担当などという部署や役割を作り、誰かが担うことになる。そして、いざ担当になるとその曖昧さが不安を呼び、何をして良いか分からなくなる。混乱すると人は思考停止し、できる仕事をひたすらすることで気を紛らわすか、まったく何もしなくなる。いずれにしても、事業を大きくするというミッションに貢献できなくなる。

この混乱を整理するのは、意外と簡単である。
実は、事業開発を行う上で、たった2つのことだけを知っていればいい。むしろ行動力が物を言う…

その2つの事というのは、以下の二つの問いに対する答えだ。

  • 事業とは何か?
     当たり前すぎるように感じるかも知れないが、案外定義できないのが事業とは何か、という問いだ。もちろんこれは各社各様なのだが、「冷蔵庫をつくること」、「エネルギーを売ること」と、自社視点になってしまう。提供する価値 × 顧客(市場) という両面から定義してみてはどうだろう。
  • 事業として不足している点を補うにはどうすべきか?
     「事業」とは何かが明確になると、不十分な「事業」つまり「事業未満」のいわばプロジェクトには何が不足しているのかがはっきりする。例えば、「顧客像がない」「海外展開のパートナーがいない」「低コストで生産できていない」などである。不足していることが一つ位だと、欠点がはっきりするし、手の打ちようもはっきりするので、あまり問題にならないが、プロジェクト初期には「ないないづくし」なので、明確に問題点を定めるのは困難である。問題点を定めることに成功したら解決に近づいたと言えるが、解決には別の課題がある。一つはリソース不足であり、もう一つは事業化のノウハウ不足である。

リソース不足にノウハウ不足というと、あまりに手のつけられない問題のように感じるかもしれないが、このように制約条件が厳しい中で活躍するのが事業開発担当者なのである。

例えば、医薬品メーカーには「事業開発」という部門があり、多くの方が従事している。外のシーズを中に取り込んだり、社内のシーズを外に売り込んだりと、ゴールの決まっていない取引を作ろうと画策しています。成果の挙げている事業開発担当者にはいくつかの特徴があります。

  • 社内でできないことをわきまえている
  • 社外で起きていることをよく知っている
  • それぞれの技術を「価値」軸でとらえている
  • 色んな人とつながっている
  • ディールをまとめる際には融通が利き、歩み寄る

スティーブン・ブランクが言っているように『顧客と顧客が抱える課題を深く理解し、顧客に製品を買ってもらうまでの繰り返し可能なロードマップを発見する』のが事業開発のゴールであり、2つの問いの答えを発見するまで相当な活動量が必要とされる。その活動も、ネットワークを持ち、「価値」を理解し、ビジネスモデルの知見を持つ外部の支援者を用いるとスムーズになるはずである。

ブログ記事「事業開発」につづく。


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