優れたエンジニアはマネージャになるべきか?の画像

私が駆け出しのエンジニアだったころ、

いや、『「エンジニア」である』ことすら認識できていなかったころ、つまり何とか仕事をして結果を出したい、貢献したいと考えているころ、『スーパーエンジニアへの道』という本に出合った。

スーパーエンジニアへの道 技術リーダーシップの人間学

スーパーエンジニアへの道 技術リーダーシップの人間学/G・M・ワインバーグ/木村 泉(コンピュータ・IT・情報科学) – 大きなシステムの形成という大変な仕事を成功させた例をみると、ほとんどが少数の傑出した技術労働者の働きに依存しているという。「アメとムチ」のみ…紙の本の購入はhontoで。

会社では、皆が忙しく、諸先輩方に仕事を教わることも大変だった。とにかく必死に喰らいついて、その諸先輩方が書いてきたドキュメントや図面を片っ端から読んだ。わからないことは、合間を見つけて色んな人に尋ねた。「なぜここの設計はこうなっているのか?」「その実験はどのくらい再現性があるのか?」「テストの結果はどういう意味があるのか?」

そうやって、やみくもに2年位やっていただろうか?
仕事は確かに覚えたし、ある程度のことは理解できたが、どうも足掻いているだけで、自分が成長している実感が得られなかったのだ。当時は自覚していなかったけれど、そういうやり方を続けていても結果は出るけれど、「マネージャ」や「リーダー」になれる気がしなかったのだ。

当時、私が配属された事業は急成長していたため、毎年増員され、優秀なエンジニアはマネージャにすぐ昇格するのが常であった。

しかし、ある日、一部の尖ったエンジニアの間ではこうも囁かれていたのである。

優秀なエンジニアをマネージャにすると、ダブルで弊害が起きる。1つは、優秀なエンジニアが一人減ることで、もう一つは未経験のマネージャが一人増えることだ。


この言葉は、正直驚いた。
事業が伸びる → 開発が増える → エンジニアが不足する → エンジニアを採用する → エンジニアを管理する必要が生じる → その辺で一番わかってそうな人をマネージャにする
という、どこでも起こり得るサイクルに冷や水を掛けるような議論だからだ。つまり、優秀なエンジニアをマネージャにすることには、経営判断とか、思想や理論に基づいて、といったセオリーがあるのではなく、事業が伸びるなかで、現実的な選択肢はそれしかないのである。

さて、『スーパーエンジニアへの道』を読んだ私は優秀なエンジニアがマネージャになることには、単純に反対できなかった。なぜなら、この本に書かれていた「スーパーエンジニア」というのはカッコいいエンジニアリングリーダー像だったからだ。優れたエンジニアが組織をリードすると、製品アーキテクチャが整い、プロダクトもすっきりする。

だからといって、優秀なエンジニアがマネージャになるべき、とも思えなかった。なぜならば、エンジニアリングを極めることと、本書に書かれているリーダーシップや「ヒューマンスキル」を身につけることは真逆に見えたからだ。昼夜図面を描き、実験に明け暮れていると却って人とは疎遠になり、コミュニケーションスキルは却って劣化する。機械は時に恐ろしい挙動を示すが、人間よりもずっと予測可能で、「作ること」ができる。技術に向け合えば向き合うほど、人と接することに億劫になる自分がいるのも事実だった。そういう状態でいきなりマネージャになり、部下の動機づけや評価、他部署との交渉や予算獲得などでいい仕事が出来るわけがない。


その後、自分の考えも紆余曲折がある。経験を重ねた結果、どっちのメリットもデメリットも理解できるようになったので整理してみたい。

優秀なエンジニアがマネージャになるメリット

  • 最初から信頼がある(エンジニアとしての実績を活かせる)
  • 技術的な難易度や重要性に応じた采配ができる(作業と開発と発明の違いがわかる)
  • 優秀なエンジニアの価値がわかる
  • いいエンジニアを見つけられる
  • 競合の技術ロードマップを読める
  • (コミュ障だとしても)エンジニアの気持ちがわかる
  • あらゆるものをハックすることに慣れている

優秀なエンジニアがマネージャになるデメリット

  • エンジニアの気持ちがわかりすぎて、開発目標が保守的になる
  • エンジニア以外の人脈やネットワークがない
  • 優秀なエンジニアリング人材が予算策定や計画立案や交渉などを行う
  • 開発ありきで、プロダクト開発以外の組織マネジメント手法が疎かになる

今はどう考えているか?

色々経て、今は違う考えに行き着いた。エンジニアのキャリアパスとして、マネージャーよりも向いている職業があると感じるようになった。

それは、一概に言えないが、起業するか、スタートアップの初期にジョインすることを勧めたい。なぜならば、上記のメリットの大きさを最もレバレッジできるからだ。デメリットを何百倍も超えるメリットを発揮することができる。仮に、スーパーなエンジニアだったとしても、事業が伸びていなければ、せっかくのアーキテクチャ構築力も、ハック能力もエンジニア目利き力も活かす場面がない。プロダクトと同時に組織を開発するような仕事は、まさにスーパーエンジニアが最も活躍する仕事だと思う。

ということで、賛同して下さるエンジニアリングをもっと高めたい人や、キャリアを発展させたい人がいましたら、こちらまでご連絡をお待ちしています。


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