Democratizingとは? 破壊的イノベーションの新しい呼び名

Written by 津田 真吾 on 2020-07-27

海外スタートアップのピッチを聞いてると、“Democratizing”(デモクラタイジング)ということをしきりに言っています。

これは直訳すると「民主化」ということなんですが、民主主義を勝ち取ったわけでもなく、普段はあまり民主主義を意識しない日本人には感覚が分かりにくいかもしれません。

そもそも、一部の君主(=王様)や貴族から国を奪還?奪取?して市民たちのものにしたのが民主主義の発端だったということを考えると、ビジネスにおける民主化というのは「一部の限られた人たちにしかできなかったことを、多くの人に届ける」ことだと捉えるとわかりやすいです。しかも、これは言い方を変えた「破壊的イノベーション」そのものです。その理由は後述しますが、「特権階級にしか許されなかったことを、一般市民にも可能にする」というのは最高でしかありません。いくつか例を挙げていきたいと思います。


焼き肉

例えば、皆さん焼き肉好きですよね?これは韓国の宮廷料理です。牛肉が大量に作られるようになり、レシピが普及し、韓国に行かなくても、貴族でなくても、多くの人が食べられるようになりました。民間の焼き肉屋さんは、宮廷料理の民主化の一例です。


ブロックチェーン

ビットコインなどの仮想通貨は「貨幣の民主化」への期待が寄せられています。現在、多くの企業や人は円やドルなどの政府発行の通貨を信用しています。この「信用」を通貨の本質歳、通貨コントロールを各国政府の特権ではなく、多くの人の相互のチェックによって「信用」を構築しようとするのが暗号通貨です。通貨発行の民主化を可能にしているのがブロックチェーン技術ということで、関心を集めています。


Twitter、Youtube

一部の権力者にしか許されなかった「大衆に意見を言う」ことを可能にしたTwitter(や、こういうブログサービス)もメディアのDemocratizationといわれますね。


マネーフォワード

会計士や税理士を雇いたいけれど、お金が無い人にはマネーフォワードは救い主です。すでにインターネットによる無料の情報によって、法律の知識は一般市民にも手に入りやすくなりました。わざわざ法律の学校に行かなくても、ネットには多くの記事が公開されていて(もちろん嘘もありますが)、以前なら専門家に頼まざるを得ないシチュエーションにおいても、特別な費用をかけることなく知識を入手することが出来るようになりました。マネーフォワードは、知識だけでなく会計や簿記の作業を単純化し、資格を持たない多くの人にとってハードルを下げたサービスと言えます。


Instagram

どうせなら撮られるなら綺麗なポートレートを撮って欲しいですよね?昔は宮廷画家に頼んで、絵を描いてもらう必要がありました。カメラが発明されてもなお、プロのカメラマンを雇う必要があったり、写真館に行かないと記念写真が撮れませんでした。今では誰もが綺麗な写真をスマホで撮ることができます。さらにInstagramを使えば色々なテイストで撮ることもできるようになりましたね。


MENOU

最後にご紹介したい例は、MENOUです。ディープラーニング技術を用いた目視検査サービスを提供しているのですが、大きな特徴は「精度の高いAI検査」を民主化している点です。特別なAIの知識やプログラミング技術を持たなくても、不良品と良品をシステムに教えるだけで、判断の仕方をAIが学び、同じ判断を繰り返すことができるソフトウェアを提供しています。機械学習エンジニアや画像処理技術者が不在の企業にとって、煩雑でコストのかかる目視検査を自動化することが可能になりました。


さまざまな例を見てきましたが、Democratizingという視点は新しい事業のタネになりそうなことを分かって頂けたでしょうか?それまで見過ごされていたローエンドの顧客や、未解決のジョブを持つ顧客を対象にした破壊的イノベーションとほぼ同義であることもご理解頂けたと思います。

既存の「貴族」に囚われず、「庶民」へと視野を広げ、より多くの人のジョブを片づけるサービスや製品がもっと登場することを期待しています。