「“きく”を漢字で書くと・・・?」と聞かれたら、
既に一つ答えを書いてしまいましたが、“聞く”が浮かびますよね。「門に耳をそば立てて中の音を聞く」と習った記憶もありますが、 “英語のHEAR” 、音として聞こえるかどうかですね。最近のオンライン会議ではこの“聞く”が上手くいかなくて、イライラする事もあります。
そして、もう一つは、“聴く”。コーチングやコミュニケーション系の仕事をしている人にはお馴染みの”傾聴”です。こちらは十四の心を持って相手の話に深く耳を傾けるという様な説明もありましたが、 “英語のLISTEN” 、意識して音楽や言葉の中身に深く耳を傾けるとしていう意味です。
そして、もう一つは、“訊く”です。これは少しニュアンスが違っていて、聞いたり、聴いたり、するためにこちらから尋ねて言葉を導くものです。 “英語のASK” になるのではないでしょうか。
実は、この3つを上手く使い分ける事が、相手から本音を引き出し、ジョブを探っていくときのコツになります。
そもそもジョブインタビューの目的はジョブを発見することです。“聞く”ことでデモグラや購買情報といった顧客情報は集める事はできますが、そうした情報は顧客の消費行動と相関関係があるものの、なぜ買うのか?という因果関係はわかりません。因果関係に迫るには、顧客の気持ちや性格、好みといった所にまで、意識して耳を傾け“聴く”必要があります。
しかし、それでも、顧客が特定の商品やサービスを雇う理由であるジョブにまではたどり着けません。例えば、洋服が好きで、いつもおしゃれな最先端のファッションを身に付けている人だからと言っても、全ての商品をファッション性に拘って選ぶ人は少ないのではないでしょうか。ジョブを解決する先の目的は機能的/感情的/社会的の3種類です。そのジョブの目的は何かをいろんな角度から尋ね”訊く”事で何が本音かが見えてきます。
そして、その本音は本人の口からは発せられないままの場合もよくあります。“訊く”ことで出てきた言葉を真摯に“聴く”ことでジョブの深堀りが進んでいきます。このループを回していくことがジョブインタビューのコツです。
では、どこまでループを回せば、ジョブを掴めるのか?
一つの基準は相手の感情が動く所を探す事です。具体的には、笑いが起こったり、口調が砕けたり、特徴的な言葉遣があったり、会話をしていく中で場の雰囲気が変わるような時に、相手が重要なメッセージを発している事があります。
経験豊富なインタビュアーは、表層的な会話にならないように、敢えて挑発的な質問をして、相手の感情を動かすようなことをすることがあります。
ジョブインタビューの場合にも、相手のリップサービスに惑わらされずに、本当の理由を探る必要があります。自社の商品に対して、「御社の製品は品質が良くて安心だからいつも買っているんです」と口では言っていても、実は本当の理由は「昔からの惰性で買っているだけ、新しいの選ぶのめんどくさい」かもしれません。昔は買った理由、もしくは、きっかけがあったけど、今は理由はないという状態です。相手の表面的な言葉だけを拾っていたら、全く違う方向に進んで行ってしまうかもしれません。
- ”訊く”ことで出てきた言葉を真摯に”聴く”ことでジョブを深堀りする
- 相手の感情の動きから重要なメッセージを読み取る
ジョブインタビューは最初は戸惑うかもしれませんが、実践した数だけ確実に上達します。但し、“訊く”で踏み込まずに繰り返しているだけでは、ジョブにはたどり着けませんし、上達もしません。
是非、真摯に一歩踏み込む事から始めてください。
先日、宣伝会議さんに取材を受けました。
『「ジョブ」と「雇用」の関係から考える顧客体験を起点としたブランドの存在意義』というテーマでジョブ理論についてマーケティング文脈で語らせてもらいました。10/9(金)に宣伝会議デジタル有料版での公開が予定されております。(https://mag.sendenkaigi.com/)
山田の取材記事は、公開当日の、1日だけ無料公開となるようです。機会があれば覗いてみてください。