リーンに事業開発を行うには「仮説検証」が重要であるーーー①ということはかなり共有されてきた考え方だと思います。
ちなみに、INDEE Japanを設立した頃、「リーンスタートアップ」という言葉はまだ発明されておらず、私たちは「高速仮説検証」と呼んでおりました。そんな時代からは隔世の感がありますが、現在は「リーンスタートアップ」や「顧客開発」「仮説検証」という言葉は常識になりつつあります。
言葉として一般的になった一方で、案外伝わっていないのが「仮説」とは何か、ということです。
その結果、以下のような行動が散見されるのです。
- 仮説検証をしているつもりになりつつも、すでにわかっていることを再発見しているだけ
- 一番知りたいこと、学ぶべきことを実験していない
- ネガティブな反応を恐れて本当のターゲットには行かない
まずもって、「仮説」とは、未確認の現象や問題について、「こうなったらいいな」という仮の設定です。例えば、「作った製品が1000円で売れたらいいな」「1000円で100人に売れたらいいな」「こんな広告で100人がウェブサイトに集まったらいいな」といった仮説を立てるわけです。
つまり、仮説検証が進んでいないということは、以下の3つの要素の組み合わせではないかと思われます。
- 仮説が検証しなくてもよいような常識レベルである(例:個人情報は大切に扱う必要がある)
- 仮説が検証可能ではない(例:Aさんに嫌われているかもしれない)
- 仮説を検証したところでビジネスには大きな影響がない(例:10%値引きで0.5%の顧客が増える)
- 仮説を検証したくない(例:怖いお客さんだから話をしたくない)
仮説とは、元々科学的な研究や実験の中でよく使われる概念であり、仮説を立てることで、現象の原因や関係性を理解するための仮の枠組みを作り出すことができます。事業開発においても、ターゲット顧客、顧客のジョブ、提供価値、価格、チャネルなど、さまざまな仮説を置きながら進めることで、スピーディーにかつ再現性高くビジネスモデルを構築することが可能になります。
したがって、スタートアップや新規事業が立てるべき仮説の条件を「仮説要件」と呼ぶと、以下のようになるはずです。
- 仮説が事業成立にとって重要な要件である
- 仮説が間違っている可能性がそれなりにある
- 仮説が明確に定義でき、観測可能である
- 仮に仮説が否定されても学びとしてプラスである
したがって、最初に挙げた①「リーンに事業開発を行うには「仮説検証」が重要である」は仮説としては不十分になります。もし、これを仮説にしようと思えば、「仮説を100件挙げて、検証することができればPMFする」といった形に変化させる必要があります。(実際にこれに似た仮説から始まったスタートアップもありました)。
①「リーンに事業開発を行うには「仮説検証」が重要である」は、その重要性があまり定量化されておらず、観測不可能ではあります。なので、科学的には検証できない考え方かもしれません。だからこそ、経験者はその重要性を色々な形で発信しているのだと思います。
そして、仮説検証をしているはずなのに全然前に進んでいないような気がしたときは、ぜひその仮説を上の仮説要件と照らし合わせてみてください。