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VCのプロセス

「投資実行」以降について、前回の続きです。

投資実行

投資案件の検討を行ったら、次に「投資委員会」と呼ばれる決議で最終的に投資を決定します。検討された投資案件と条件を前に、複数の委員が議論の末、出資を決めるのが投資委員会です。投資委員会の前にスタートアップ経営者によるプレゼンも行われるケースも多いようです。

投資委員会は、全会一致や多数決など、事前に決議ルールが決められています。事前に決議ルールが決まっていないと、「何となく」決まることになりますし、必要以上にリスク回避的になることもあります。何より、プロセスが決まっていないことで、必要以上に時間がかかってしまうという問題があります。時間は命です。特にスタートアップにとっては、毎月生存し続けるだけでもお金がかかります。成長しているスタートアップのバリュエーションは急激に増えることもあります。

社内新規事業のマイルストーン審議については、決議方法があいまいなことも多いので、これを決めておくことでスムーズに運営しやすくなるかもしれません。

投資委員会で無事投資が決まると、いよいよお金を振り込みます。社内新規事業の場合には、実際に現金を渡すことはありませんが、新規事業プロジェクトが使える予算や、許容される活動期間などが正式に付与されると、審議の結果がはっきりするでしょう。

モニタリング

VCの仕事は投資を行ったら最後、というわけではありません。出資先の会社に関与し、なるべく投資リターンを大きくするのがモニタリングです。大雑把に分ければ、3つのタイプの関与があるでしょう。

ハンズオフ (Hands-off)

ハンズオフとは、文字通り「手をかけない」方法で出資先に関与することです。スタートアップ経営者の方が、そのビジネスには詳しいであろうという前提に立てば、出資後は特に口出しもせず、支援も行わないのも理にかなっています。一方で、投資した資金の最大化を図るための最低限の関わりは行います。具体的には、1年に一度の株主総会への出席や、1~3カ月に1度程度の定期的な情報交換を求めるなど、成長を促し、スタートアップ側でおかしなお金の使い方をしていないか監視します。

ハンズオン (Hands-on)

ハンズオンとは、ハンズオフとは逆に積極的に関与し、スタートアップ側の経営をサポートすることを指します。VCはスタートアップに関する資本調達に詳しいため、資金面や事業計画の立案でのサポートが多いようです。XVCは、シードステージに出資し、ハンズオン支援を行います。早期のスタートアップは、ビジネスモデルも固まっていませんし、会社の方向性も無数にあります。どのような価値提案を行い、どのような顧客をターゲットにし、どのようにPMFを目指すのかをカベウチしながら、次の資金調達ができるよう、伴走支援を行っています。

ハンズイフ

ハンズイフとは、スタートアップが希望したときに支援する形態を指します。いわばスタートアップが助けを希望したときに支援する形態です。場合によっては遅すぎて手が付けられなくなっている…ということもあります。また、相談を受けてから対応できないことなどもあるかもしれません。XVCでは、アクセラレーターとしての期間を過ぎた後はハンズイフの支援を行っています。ハンズイフのよくある相談としては、人材紹介や資金調達となっていますが、社内新規事業においても、追加メンバーのあっせんや予算に関するものが多くなるので、相似形と言えるかもしれません。

エグジット

スタートアップとして、最後の仕事がエグジットです。一般に「上場」もしくは「M&A(売却)」の2種類のエグジットがあり、スタートアップとしてはどちらかを目指すことになります。

上場を目指す場合、JPXなどの株式市場で一般投資家を含めて広く株主を募ることになります。そのため、事業の透明化や、仕組化など一般に「ガバナンス」と呼ばれる体制づくりに取り組むことになります。売上や利益といった事業の成長以外にガバナンス体制が認められれば、晴れて上場できるようになります。したがって、VCとしてはスタートアップの社内体制が整うように力を貸すことになるでしょう。事業の成長を第一に頑張ってきたスタートアップにとって、ガバナンス体制を築くのは遠回りに感じられると思います。

一方のM&Aについては、これと言った決まったプロセスがあるわけではありません。買収したい会社から突然アプローチされることもありますし、事業売却を視野に入れながらスタートアップから事業会社にアプローチすることもあるでしょう。VCとしては、売却先の選定や紹介ができるとエグジットに貢献できます。

一方の企業内新規事業にはさほど明確なゴールがないまま進められがちです。しかし、エグジットをスピンアウト等の別会社設立、事業部の設立、もしくは既存事業部への「売却」という風に3つの出口を定めておくと、活動が明確になります。社内VCとしては、既存事業部の受け入れを支援したり、事業部設立の準備や、スピンアウト・カーブアウトの手続きができるとよいでしょう。

最後に

「VCの実務」という大げさなタイトルですが、なるべく全体感を持っていただけるよう概要だけを書きました。多数のスタートアップに投資を行うVCは、「ポートフォリオ」全体を管理し、投資リターンを求める活動を行っているため、このような俯瞰した視点になりがちです。

しかし、一つ一つのスタートアップに着目するとその「実務」というのは、はるかに複雑で奥が深いものです。あまりに俯瞰して数字だけで追いかけていると、その売上を達成するための組織や人事面の課題が見えなくなってしまいます。俯瞰して見れば見るほど、表面的な現象ではなく、構造的に何が起きているのかを把握する視点が不可欠です。マクロな視座に立ちながら、ミクロな実務につなげていけるのがVCの醍醐味ではないでしょうか。


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