日本でのリリースが待ち遠しいPokemon GOは史上最高のゲームとなりました。
また、スマホアプリとしても、facebookを抜いて最も利用時間の長いものになりました。
ポケモンを使った通称「位置ゲー」としてたまたまヒットしたのでしょうか。それとも、秘訣が隠されているのでしょうか。
Pokemon Goのルーツを見ていきましょう。Pokemon GoはIngressというゲームを元に作られています。Ingressは革新的なコンセプトのゲームで、Google Map上に表示される仮想的な陣取り合戦を、実際に街中を歩き回ることでプレイする拡張現実(AR)のゲームです。私も一時プレイしていたのですが、アイテムを探したり、敵陣の要所を探したりと外を歩くのが楽しくなります。実際、ネット上でのIngressの反応を見ていると、「歩くのが苦じゃなくなった」「どんどん歩いちゃう」「街を新発見した」という散歩としての楽しさを取り上げる人は少なくありません。
実は、IngressというのはGoogle社内で生まれたプロジェクトです。Google社内のNiantic LabというチームがIngressを開発し、カーブアウトしてできた会社です。カーブアウト後は外部の投資家(フジテレビを含む広告・マスメディア関連企業や数人の個人投資家)の投資を受け、その後Pokemon GOを開発するためにGoogleと任天堂、ポケモンカンパニーから3000万ドルの大型増資を引き受けています。
NianticのCEOであるHankeは元々はKeyholeという会社を2001年に立ち上げた起業家で、2004年にGoogleで買収されています。買収した後、このチームはGoogle Earthをリリース、さらにストリートビューも開発しています。
GoogleはKeyholeというベンチャーを早期に買収し、地図系のアプリを拡充することに成功しますが、IngressとNianticを切り離すことにします。Googleから切り離した方が、任天堂をはじめとする様々な企業とのコラボがしやすいからです。「位置ゲー」はゲーム内のアイテムをコレクションする楽しみを集客などに生かすことで、経済効果を生みやすいゲームです。さらに、そのバーチャルなアイテムにはブランド力のあるポケモンを使うことで、ブランドとゲーム、商業施設の相乗効果が相当期待できます。今後ディズニーキャラクターの位置ゲーなども登場するのではないでしょうか。
任天堂にしてみれば、ゲーム専用機での地位がスマホゲーム全盛期になり、出遅れ感は否めないタイミングでした。そこに、ポケモンを使ったスマホゲームのアイデアが飛び込んできたら乗らない手はありません。資本協力もしながらゲーム開発もできる機会でした。当然、ポケモンの世界観も保存されます。実世界の中でもモンスター集めに興じる体験を提供できるようになったのですから。
Niantic側、Google側、任天堂側からPokemon GOの誕生経緯を見てきましたが、このゲームがヒットした理由には普通できないようないくつかの判断があったと考えます。
- 切り離した方が大きくなるであろう社内ベンチャーをGoogleはカーブアウトした
- マスメディア関連企業との協業が成長の秘訣と見ると、戦略提携だけでなく資本提携を受け入れた
- Googleは買収した企業を内部化すると同時に、自由度と権限を与えNianticを生んだ
- IngressとPokemon GOはゲームでありながら、外を歩くゲームであり、単なる暇つぶしを超えて「健康でありたい」「外の空気を吸いたい」「好きなキャラクターを集めたい」というジョブを対象にしている
- 新しいものを受け入れるマーケットから順々にリリースし、日本のような保守的なマーケットには実績と経験を得てから導入している(AirBnBが日本初のスタートアップだったら即死です)
こういう偶然に見えるブームも、イノベーションのセオリーには逆らわずにやっているものですね。日本でのリリースが待ち遠しい限りです。