先週5月16日、ハーバード大学のクリステンセン教授が設立したINNOSIGHT社のCOOであるKevin Bolen氏を招き、日本初のワークショップを開催した。我々INDEE Japanにとって、イノベーションへの感度の高いイノベーション・イノベーターの皆さんにとって、記念すべきチーム結成の日となったと確信しています。
数時間のワークショップの中ではとても伝えきれない内容を盛込み、消化しきれない部分もあったかもしれませんが、その分考えるべき事の全体像を体系的に掴むことが出来たのではないかと思います。本コラムでは今後数回にわたり、ワークショップで得られた内容を改めて共有していきます。それでも伝えきれない部分の共有や、皆さん自身の課題への適用に関しても今後考えて行く予定です。楽しみにしていてください。
一言で言うとこのセミナーの価値は、イノベーションという漠然としてとらえ難いものに対して、程良い粒度で科学的かつ実践的な考え方を提供していることにある。もちろん、INNOSIGHT社自身も含めた実践知に基づく考え方であるというのも大きな価値だが、事実に基づく科学的アプローチがある事で更に納得感の高いものになっている。
先ずは第1弾として”望ましいイノベーション”というテーマで皆さんと考えてみたい。Kevin氏が直接この言葉を言った訳では無いが、日本におけるイノベーション、新規事業開発の現状も踏まえ、敢えて”望ましい”を枕に付けた。
”望ましいイノベーション”と聞いて、皆さんはどんな印象を受けるであろうか?
恐らく何らかの違和感を感じるのでは無いだろうか。それは”望ましい”という枕にあると思われる。イノベーションは良いモノ、求めているモノなんだから、それにわざわざ”望ましい”と付けるのはおかしい?!そう感じるのではないだろうか?
だが、ここに一つ注意すべき事がある。それが今回お伝えしたい事だ。
というのも、最近、イノベーションという言葉が氾濫し過ぎていないだろうか?イノベーションの考え方が広まるのは嬉しい事だが、流行言葉の様になってしまうのは寂しい。そういう意味でも先ずはイノベーションの定義を明確にしておきたい。定義はいろいろあるが、ここではもちろんINNOSIGHT社の定義でいこう。
INNOVATION = NEW × IMPACT
単にNEWなだけでは足りない、それが世の中に広まり、IMPACTを与えてこそ、INNOVATIONと呼べる。この定義は素晴らしい。普及するだけでなく、その先でどれだけ影響を与えられるかまでが含まれている。このIMPACTを含んだINNOVATIONこそが私たちが広めたい考え方だ。
現実的にはIMPACTを与えるまでには時間がかかる。多くの場合は何らかの新しい種は生み出せても、キャズムを超えられずに消えてしまう事が多い。せっかくの投資を何らかの形で残して次につなげるには、どのレベルのNEWで、どのレベルのIMPACTを狙うかを考えておく事が必要だ。イノベーションを興そう!と進めていたのに、いつのまにか小さくまとまってしまう。全く狙っていなかったものが大きく化けた。予測する事は出来ないが狙いは持っておきたい。
”あなたにとって、望ましいイノベーションとは?”
ここから始めてみてはいかがでしょうか。
INNOSIGHT社はここでも示唆を与えてくれています。彼らが提唱する進め方は戦略立案、組織能力開発、実行の3つのステップです。”望ましいイノベーション”の定義は、戦略立案の一項目です。イノベーションに戦略?!そんなもの立てられるか!実践者に近い方ほどそう思われるかもしれません。しかし、一方で長期的、戦略的活動が必要なのも事実です。
戦略無くしては、ダヴィンチのように芸術作品を生み出せても、エジソンのように電気による光を社会に広めることはできません。多くの人を巻き込み事をなすには、やはり戦略的なアプローチは欠かせません。特に大企業においては世に出す前に、社内という大きな壁があります。
”望ましいイノベーション”を拡めるために、戦略的に突撃して行きましょう!