先日、高校生の娘と雑談していたときのことです。
英語で人狼(村人に紛れて潜む人狼を推理するカードゲーム)をやったら、英語力が高まるんじゃないかというような話をしてました。
(実際にやったらみんな無言になり、ゲームの面白さは損なわれるだろうけど。)
「強調構文で『あの人こそが人狼だ。』ってどういうの?」と娘は尋ねました。
「強調構文??」娘が何を言いたいのか、まったくわからなかった私は聞き返しました。
私はアメリカ育ちということもあり、英語でしゃべることには全く抵抗はないが、英文法、特に日本で教えているような文法用語にはめっぽう弱いのです。
とはいえ、あまり役立たずな姿をこれ以上見せたくない私は気を取り直し、娘に尋ねました。
「強調構文っていうのはわからないけど、例文を挙げてみて。」
すると、“It was her that took the pen.”
というような例を挙げました。
なるほど!
やっと意味がわかった私は、”It was him, who was the JINRO.”(本当はwerewolfと言うらしい)と正解例を示すことができたのです。
おまけに、アドバイスとして「文法だけでなく、例文をたくさん知っておくといいよ。最悪文法知らなくても言葉をさっきみたいに置き換えれば使えるから。」と付け加えました。
このやりとりをしていて、ふと気づいたことがあります。
それは、ビジネスモデルキャンバスや、JOBSメソッド、新規事業のプロセスなどのフレームワークについて感じる違和感とも近いな、というものです。
フレームワークを知ることと、使えることの間には大きなギャップがある
ビジネスモデルキャンバスの9つの箱は英文法でいうと「構文」と同じです。主語はCS顧客セグメントで、述語はVP価値提案・・・なんていう具合です。という風に考えていくと、「使える」ビジネスモデルというのは、箱を埋めるためのボキャブラリーがないと作れないことがわかります。構文の代表例文と、単語をたくさん知っていると言いたいことが色々言えるようになるのと同じで、いくつかの代表的なビジネスモデルの事例を知って、その派生系のビジネスを色々知っておくと、自分たちがやりたいビジネスをビジネスモデル化しやすいわけです。
そうそう、英語でも言いたいことがさえはっきりしてれば、文法めちゃめちゃでも何とか伝わるのと同じで、ビジネスモデルがぐちゃぐちゃでも、解決したい課題がはっきりしていれば、一人のお客さんをきっかけにビジネスが広がる可能性があります。
1つ誤解を避けたいのは、決して「文法」を否定しているつもりはないってことです。なぜなら、文法があることによって「ああ、中国語と英語って語順は一緒なのね」とか、「イタリア語とフランス語って近いのね」とか、俯瞰して理解することができます。だからといって喋れるようにはならないよ、ということです。英文法は完璧なんだけど、実際に英語を使ったことがないと、いざというときに使えないのと同じです。
つまり、成功するビジネスモデルの特徴を抽出したり、時代とともにどんなビジネスモデルの変数が増えてきているのか、とかは大括りでどんな事業に投資するのか、全体としてイノベーションをどうマネジメントするのかには役立ちます。イノベーション・マネジメントには各種フレームワークをぜひ活用してください。
逆に、実務家にとってみれば、リスニングとスピーキングを重視するのが早道なのと同じで、フレームワークよりも先に荒削りでもいいから「やってみる」「やらせてみる」ではないでしょうか。