スピンアウト、カーブアウトのススメ

8年前の今日、起業の気持ちを固めるきっかけになった大地震を当時のクライアント先で共同創業者と経験し、それによる首都圏の交通機関の壊滅的な麻痺を通して忘れられない数時間を過ごしました。そして同年INDEE Japanがスタートすることになります。

現在は首都圏を中心として学生や20代を中心に起業が一つのブームとなり、日本においても起業≒若者というイメージが徐々に定着しつつある気がします。しかし、我々もZENTECH DOJO Nihonbashiをスタートしてから約3年に渡り、多くの若手起業家予備軍のよろず相談にのってきた中、世の中を変えたいとかより良くしたいという強い思いがある一方、圧倒的なほどの社会経験不足と知識の少なさに対して課題を感じざるを得ないという状況を多く目の当たりにしてきました。実際そう感じる人達には、現在も正直に一度就職した方が良いとアドバイスしています。

これだけ世の中には情報が溢れており、特に首都圏では会いたい人や話を聞きたい人にもアクセスしやすい環境が整ってきたとはいえ、実際20歳で一人の人間が身につけられることは20年以上前の我々世代とさほど変わっていないというのが実感でもあります。若者発として世界に発信できる事業が生まれるには、まだまだ時間を要するというのが現場での実感です。

 

一方、大企業での新規事業立ち上げプロジェクトや社内起業プログラム等での加速支援をしていると、入社して5年程度の若手から20年以上のベテランまで非常に高い技術力や巻き込み力、また特定の分野でのネットワーキング力を持ちつつ、自らのめり込む事業テーマを持っている企業内起業家に会うことがあります。もちろん会社の文化や成長ステージによって人数の大小はありますが、どんな企業でも必ず数名は存在します。そしてそういう人達は、既存事業の推進が花形である社内ではあまり高く評価されていないというのも別の共通点です。

多くのこうした企業内起業家と触れる中で、我々は下記の二種類のタイプがいることが分かりました。

 

・元来、思いが強く、自ら提案・チャレンジを積極的に行うタイプ

・仕事を進める中で、たまたま自分がのめり込むテーマに出会ったタイプ

 

今日のスピンアウト、カーブアウトというテーマの中で、注目したいのは後者のタイプです。どうしても”起業”という文脈で人を要件を考えると、前者のような外から見ても分かり易い特性を持ち、そうした経験を積み重ねてきた人物に注目されがちです。しかし、日本の社会的な環境で、特に大企業内や大学内で過ごしている研究者・エンジニアは、後者のタイプこそが、貴重な事業の機会を持っている人物ではないかと考えているのです。

ただこの後者のタイプが組織内で事業化に取り組む場合、大きな壁が立ちはだかります。まず個人としての社内の評価が高いわけではなく、社内に強力な人脈があるわけではないため、社内への発信力(特に上層部向け)や、巻き込み力(試作開発や顧客開発に関する協力体制の構築)の圧倒的な不足です(ただ一方、社内エースではないため個人として専任化という点ではやりやすかったりするのですが・・・)。

そういう状況下では、本人にとっても会社にとっても社内で事業化を進めるメリットは殆どないと言っていいでしょう。相当、強力な新規事業支援プロセスや社内体制があれば別ですが、正直そこまでの力を持つもの社内プロセスには我々も国内外共に未だ出会ったことがありません。

そこで我々がオススメしていきたい手段が、社外に別の会社を設立して事業立ち上げを行うスピンアウト・カーブアウトです。その具体的なメリットは、

 

・無条件で担当者の専任化が可能となる 

・固定費を最小化することでのローコストオペレーションが可能となる

・共同研究開発などのオープンイノベーションがやりやすくなる

・外部資金が調達しやすくなる(エクイティファイナンス)

・判断プロセスの簡素化されることで、事業化スピードが圧倒的に早くなる

 

実際、新規事業立ち上げを必要としている内需型日本企業の問題は、既存市場が縮小傾向にあることがほとんどです。そのため、社内新規事業として提案されている筋の良いテーマの多くは既存事業と直接的に関係ないものが多くなるのは必然の結果です。そのため社内リソースが実際あまり有効に活用できないことが多く、結局、提案者の思いや実行力が最も重要なリソースということになります。であるならば最大限それを発揮できるステージを用意する方が、会社側そしてプロジェクト側の双方にメリットがあることは間違いありません。

チームのスキルと知識が不足している領域は、我々のような外部のアクセラレーターを活用したり、相性の合うベテランを支援者として補う事も可能です。また昨今多くの企業では当たり前になっている早期退職制度の取り組みを前向きに発信でいる形での制度設計をする事もできるのです。

 

そこで挙がってくる懸念が送り出す企業側との契約関係になります。しかしここも事業化が成立した後、または新会社設立x年後のレベニューシェア、優先的販売権、事業または製品のまるごとのとしての買い戻し権など新会社が目指す事業の形体に応じてクリエイティブに設定することが可能になります。

そんなに価値があるものを気易く社外に出してもいいものだろうか??・・・いやいや、

 

日本の大手企業で働く会社員は例外なく、自分が所属する会社を愛しています

 

この世界的にも稀にみる自社に対するロイアリティーが、日本企業の強さであったことを日本の経営者は忘れてしまってはいないでしょうか?企業内起業家はたとえ外に出たとしても、中長期的に間違いなく未来の自社にとって多くのものをもたらしてくれます。

どうでしょうか?特に今の日本の大手企業に働く層こそが、日本の伝統的社会と文化としての良き面を理解し大切にしようとしている人達ではないでしょうか?

 

こうした様々な理由と現場経験を通して、スピンアウト・カーブアウトこそが、現在の日本の置かれた状況に適した起業の方法論であり、多くの社内プロジェクトや企業内企業家にとって有効な手段であることを確信しています。そして、我々もこうした取り組みにチャレンジされたい企業や企業内起業家は全力でサポートいたしますので、このブログ等にピンときましたらお気軽にお問い合わせください。 

 

またスピンアウト、カーブアウト支援に着目しているプログラムでもあるKawasaki ZENTECH Acceleratorにも注目ください。

Written by 津嶋 辰郎 on 2019-03-11