最近はCVCやコーポレートアクセラレーターが大はやりで、多くの企業で導入されている。オープンイノベーションの掛け声とともに、国内外のベンチャーとの接点をつくったり、若きアイデアマンに対する門戸を開くことは、それまで自前主義を貫いていた大手企業にとって多くの刺激となっており、変革の予感がする。
だが、その「予感」は文字通り感覚で終わり、実態を伴わないものになる可能性がある。
靴ズレが起きているのだ。

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言ってみれば、CVCやコーポレートアクセラレーターは、急速に変化する市場や技術の接点をとらえるための「靴」のようなものである。
そして今、ベンチャーキャピタルやアクセラレーターといった、ベンチャーを模した仕組みに企業は足を突っ込んだのだ。表向きは新しくカッコいい革靴だが、ハイリスクな世界である。しかも足を通したばかり。
いよいよ実際に投資をしたり、協業しようとすると、靴の外見は関係なくなり、新しい革靴の歩きにくさに気づいている企業も増えているようだ。
つまり、CVCやアクセラレーターのリーダー、担当者は足がむちゃくちゃ痛いのだ。
「この足が靴に馴染むのを待つべきなのか、靴が足に馴染むのを待つべきなのか?」と自問自答したり、イベントで会った似た立場の人とああでもない、こうでもないと話が盛り上がる。
話が盛り上がることで痛みは紛れたとしても、靴が馴染むわけでもないし足の形は変わらない。
たとえ話はこの辺にして、この痛みについて書いてみようと思う。
イケてるスタートアップは、未来の事業をやっている、もしくはやろうとしている経営陣によってできている。
そして、大企業は過去の事業をやってきた経営陣が率いている。リーダーはその二つの間に挟まれて苦悩しているのだ。しかも、その苦悩はスタートアップにとってみれば、レジェンドみたいな悩みばかり。逆に企業の経営陣からみると、リーダーがやっていることは危なっかしくて仕方がない。情報も曖昧で不確実性の高いものばかりで、そのイライラをリーダーにぶつけることになる。見ていると、こうしたCVCやアクセラレーターの仕事の8割は内向きの対応で、2割だけがスタートアップに向けられているといったところだ。
したがって、痛みの8割は社内プレッシャーによるものだ。(いや、10割だと反論する人がかなり多そうなので解説すると、スタートアップをしっかり見ているだけにそのギャップに苦しめられているから2割はやっぱり社外から来ると思われる。)なんとかこの痛みを解消しなくては、懲りて2度と革靴を履かなくなったり、無理やり靴を合わせようとして靴を潰しかねない。
インソール
ここで、「インソール」に注目してみてはどうだろうか?
足の形と革靴の間のクッションの役割を果たすインソールである。靴の世界でも、クッション性だけでなく脱臭や通気性など多機能化したインソールが増えており、歩きやすさを損なうことなく色々な靴が履けるようになってきている。
インソールは会社でいうと何でしょうか?
簡単に言うと、このインソールは企業の未来絵図である。単なるビジョンや中計ではない、未来に行なっているべき事業のブループリントが必要だ。
今インソールを使っていない企業が多いので、多くの方にはピンと来ないかもしれないが、CVCやアクセラレーターが機能している企業にとっては「あ、なるほど」と納得してもらえるはずだ。
このようなブループリントがあることによって、あらかじめどんなスタートアップに触れ、提携し、出資をするのか、準備ができる。いきなり来た元気の良いスタートアップにリーダーは歓喜する一方で、社内説明する際にどんよりと悩むことが避けられる。2枚舌を使うことが一部のスキルフルなリーダーで行われているようだが、仕組みとは言い難いだけでなく、危険な戦略である。
内向きなメリットだけではない。ブループリントがあることで機会を見つやすくなる。よく、幸運の女神には後ろ髪がない、と言うが、探しているスタートアップがあれば、いち早く見つけやすくなる。
靴だけでなく、インソールにも着目してみては?

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