INDEE Japanメンバーが、今注目しているスタートアップ5選 (ジョブの分析付き)

Written by 加藤 寛士 on 2020-08-11

本記事では、現在INDEE Japanメンバーが”個人的に気になっている”スタートアップを1社づつ紹介し、ジョブ理論を用いた分析を行います。好評であれば、毎月継続していきたいと考えていますので、もしよければコメントなどいただければ幸いです。

津嶋 : INDEE Japanマネージングディレクター

概要

なぜ注目しているのか?

ZWIFTは、家庭にあるロードバイクの室内用トレーニング器具をインターネットに接続し、実際にペダルを漕ぐことでバーチャルなレースに参加することができるオンラインゲームです。「ゲーム」とは書きましたが、その実態は本格的なトレーニングツールの様相を呈しており、プロアスリートも日々活用しているトレーニングプラットフォームともなっています。

ZWIFTが面白いのは、自社ではシステムに必要なデバイスを開発も販売もしていないところです。ZWIFTは、様々なメーカーのデバイスを「ハック」し、ソフトウェア的に「ZWIFT対応」を実現することで、異なるメーカーのデバイスを使っているユーザーでもゲームに参加できるようなプラットフォームを形成しました。

ZWIFTのこれまで世界に存在しなかったサービスを作り出すにあたって、自らがビジネスを行うための新しい市場を「プロダクト開発」によって作り出すのではなく、「ハック」によって作り出しているところに興味深さを感じています。

 

 

ジョブ理論による分析

ジョブについて

ロードレースやトライアスロンにシリアスに取り組む際に必要となるロードバイクトレーニング。目標としているレースまでに、持久力やペダリングの技術を身につけ、地震の力を最大限に引き出す戦術を構築するためには、絶え間ない練習が必要となります。

既存解決策の問題

ロードバイクで本気でトレーニングすると、バイク並みのスピードが出てしまうため、安全なトレーニング場所を確保する必要があります。

しかし、交通状態・路面の状態・気象条件などが理想的な場所はどこにでもあるわけではありませんし、あったとしてもそこに移動するまでにも時間もかかってしまいます。そうした課題に対応するために、エアロバイクなどの室内トレーニング器具も開発されてきましたが、そうした方法で「気持ちの張り」を維持して追い込んだトレーニングを行うことはなかなか難しいという課題もあります。

解決策の優位性

ZWIFTは室内トレーニングですので、場所や時間を問わずに安全に取り組むことができます。また「様々なコースへの挑戦」「レース」「記録が残る」「ソーシャル」というゲーミフィケーション要素をモチベーションを高めるために取り込んでおり、最後まで気持ちの張りを保ったまま追い込んでトレーニングを行うことができます。

津田 : INDEE Japanテクニカルディレクター

概要

なぜ注目しているのか?

ExcelやGoogle Spreadsheetのスプレッドシート競争の上を行く、SaaSならではのデータベースも融合したソリューションは注目です。「表計算」という言葉が死語になるとしたら、こういうソリューションなのかもしれません。せっかく存在する無限の計算資源を2次元に詰め込まず、データベースを表、カンバン、ガントチャート、カレンダーなど、簡単に色々な見せ方ができます。

すでにユニコーンなので、多くの人がすでに注目してはいると思いますが、敢えてご紹介したいと思います。

 

 

ジョブ理論による分析

ジョブについて

「膨大に存在するデータを色々な切り口で整理したい」というジョブは仕事や生活の多くの場面で発生しており、デジタル技術が普及した現代では非常に普遍的なものであると言えます。

既存解決策の問題

表計算ソフトでは、大量データや複雑なデータを関連させて取り扱ったり、用途に応じて見せ方を自在に変えることには限界があります。一方で、データベースを扱うためには技術的な準備が必要で、誰にでも手軽に扱えるというものではありません。

解決策の優位性

Airtableは、誰にでも扱うことができる表計算ソフトのような操作感を実現しつつ、これまではデータベースを使わないとできなかった、データ同士の関連の設定や用途に応じた見せ方の変化を拡張的かつ直感的に付与することもできます。表計算ソフトにはなく、データベースにはある各種機能の利用について、スキル面でのハードルを下げることで広く支持を獲得し初めています。

山田 : INDEE Japanトレーニングディレクター

概要

なぜ注目しているのか?

チャレンジ社が販売しているEQG-Ⅲは、地震において大きな揺れの到来の前兆となる微細な揺れの到来を読み取り、通知する地震計です。

ユーザーが共同してコストを負担して、1つの会社が提供するサービスを享受するという中央集権的なビジネスのエコシステムがもてはやされている昨今、「地震」と「通知」というキーワード聞けば、緊急地震速報システムを連想する人がほとんどではないでしょうか?

しかしチャレンジ社には、そうした戦略の裏を行くからこそ生まれる価値を提供しています。具体的には、どのような価値でしょうか? 以下、ジョブ理論を用いた分析をご参照いただければ幸いです。

 

 

ジョブ理論による分析

ジョブについて

チャレンジは”揺れる前の10秒が命をつなぐ”という価値を掲げています。チャレンジの地震計は、大きな揺れの到達に未然に備える時間を作り出すことで「地震から命を守る」という非常に重要度が高いジョブに取り組むことを助けています。

既存解決策の問題

地震の到来を未然に知らせる仕組みとして、日本では緊急地震速報がよく知られています。しかし、緊急地震速報は全国の要所要所に設置された地震計から集めた観測データを用いて通知を行う仕組みであるため、直下型の地震では揺れる前の通知が間に合わない場合があります。病院 ・ 学校 ・ 工場というようなわずかな通知時間の差が生死をわける可能性がある場所ではこれは大きな課題です。
また、緊急地震速報のようなシステムを構築し運用していくためには数百億円もの投資が必要となるという課題もあります。そうした公共投資が難しい国では、地震の到来を通知するシステムにはより確かな需要があります。

解決策の優位性

チャレンジの地震計を用いれば、病院・学校・工場のような、とくに地震のリスクが高い場所に直下型地震に対応するための”命を守るための数秒”を作り出すことができます。また、巨額の公共投資が難しい国においては、直下型地震以外の地震の発生通知も含めて対応ができる方法としてより大きな価値を発揮します。

星野:組織開発・事業開発ディレクター

概要

なぜ注目しているのか?

続きまして、少し身近な言語関連のサービスをご紹介します。会話の文字起こしや機械翻訳などのツールはAI技術の急速な普及を基盤として精度が加速しています。従来はGoogleなどによって誰でも使えるようにサービス化はされてはいたものの、アウトプットにはかなりの手直しを加えないと十分な精度はならす、結局人の手で翻訳をしたほうが効率が良いという状況にありました。

ししかし、「会話や動画・音声ファイルから自動的に文字起こしを行うotter」 や「ソーシャルに学習をおこなって成長するAIを活用した高精度機械翻訳である DeepL 」に触れて、そうした昔の印象は大きく変化した感を受けました。またこの技術の発展によって、より身近な存在になると思いますので、皆様にも紹介させていただきたいと考えています。

 

ジョブ理論による分析

ジョブについて

企業においては何かと情報をまとめるという業務が付きまといます。議事録を作る、イベントの参加報告を行うといった業務には未だ多くの方が携わっていることでしょう。特に外国語で行われた講演を人に伝えるための文字起こしに苦労されている方は多いのではないでしょうか。英語が堪能でない方にとってはリスニングだけでは苦しいので録音して後で何とかまとめようという流れで取り組んでいたでしょう。この手間を減らしたいというジョブは昔から今もなお残るものでした。

otterとDeepLを組み合わせるとそうした翻訳のジョブを機械的に解決できます。(otterで動画や音声から自動生成したテキストファイルに対して、deeplを用いて機械翻訳をかける)

既存解決策の問題

外国語の音声を日本語に文字変換する時には、外国語の音声を外国語の文字にする、次にその外国語を日本語に翻訳するというステップを踏みます。ところが従来のツールは精度がイマイチで手直しが多く発生し、工数が発生するという悩ましさがありました。この工数が避けなかったり納期がタイトな場合は、致し方なくコストを掛けて翻訳家・専門家へ依頼していたことでしょう。

解決策の優位性

文字起こしのOtterと翻訳のDeepLはどちらも精度が高いことが特徴です。これによって音声データ→Otter(文字起こし)→DeepL(翻訳)で日本語らしい文章に変換してくれます。少しマニアックな単語は手直しも必要だが、それもAI学習を重ねることで改良されることが期待されます。

実際、今回のコロナ禍によって海外カンファレンスが軒並みオンライン化したことを受け、オンラインカンファレンスにいくつか参加しましたが、時差があるのでライブでは参加せずに配信されているビデオを2つのツールで日本語変換し、ストレスなく内容をキャッチアップできました。

この2つの技術が連携すると、多くの人が海外のTVやライブ動画を精度の高い同時通訳と共に、一部のインテリではなく多くの人が海外の情報を身近に楽しめる日も近づくのかと想像せざるを得ません。

加藤

概要

なぜ注目しているのか?

特定の状況下で、不快な身体症状とともに強い不安感に襲われてしまう不安障害という病気。例えば「学校or 会社に行く」というようなことが特定の状況になってしまうと、学校や会社に行くことができなくなってしまいます。魔法アプリは、VR技術を用いて不安障害の治療をサポートするサービスです。

私自身は不安障害になった経験はないですが、知人が不安障害によって学校や仕事をやめてしまったのを見てきた経験から「不安障害の人も、再び自分らしく社会の中で活動できるようにする」という課題には注目してします。

こうした技術の普及によって、不安障害になってしまっても思い通りに人生を生きることを諦めない人が増えていくと良いですね。

ジョブ理論による分析

ジョブについて

現代社会において「学校や会社に行く」というジョブは、患者の人生に大きな影響を与えるため、当事者にとって重要度が非常に高いことが特徴と言えます。

既存解決策の問題

不安障害の治療に有効と言われている暴露療法は、少しづつ不安を引き起こす「特定の状況」慣らしていくことで行われます。具体的には、実際に少しづつ学校や職場にいる時間を長くしていくことで、不安による発作を起こす必要がないことを心身に教える過程を繰り返して行います。

しかし暴露療法では、「療法を受ける最中に発作が起きてしまうのでは?」という不安感から療法を受けること自体に強い恐怖感を抱く患者も多くいます。こうした恐怖感は、予期不安と言われ実際に「特定の状況」に置かれなくても、想像しただけで発作が起こるなど、より症状が悪化してしまうケースも有るようです。

解決策の優位性

暴露療法のプロセスにバーチャルリアリティーを用いることで、安全な場所で自分のペースで治療に取り組むことができます。また、もし暴露療法中に症状がでてしまっても誰かに迷惑をかけることもないため、心理的な負担なく予期不安を軽減しながら治療に取り組むこともできるのではないかと期待しています。