社内ベンチャーや新規事業の課題に関するワークショップ等を行うと、挙がってくるテーマは大きく分けて、次の3つのどれかになる。

  • 会社の仕組みや方針
  • ビジネスモデル等プロジェクトの方針
  • 人選や人の能力

この中でも最も議論が盛り上がるのは、ほぼ例外なく「ヒト」の問題だ。その中でも、メンバーの能力に不安を抱えているというディスカッションが盛り上がる。なんとなくスキルが不足している感じがするものの、何がどう足りなくて、同補充したら良いか分からない症状である。そして、議論が進むと「アイツはダメだ」や「アイツは不十分だ」といった評価が始まる。

もちろん、そういう評価は不毛なもので、いかにして鍛えるのか?いかにして人材を集めるのか?という前向きな話がしたい。すると、話は必然とイノベーションのDNAの話になる。DNAは鍛えることはできるが、従来の環境では育たない。真剣に新たなチャレンジをするか、丸っきり新しい環境に身を置くことしか解決策はない。教育の専門家も同じことを言っていたが、変人と付き合うか、修羅場体験をするか、啖呵を切って新しいチャレンジに踏み出すか、この3つの方法しか大きく人は成長しない。

新たなDNAを手に入れる際、私が重視しているのが「環境」である。「環境」という言葉は分かっているようで、分かりにくい。周囲のことを指して「環境」ということが多いが、このように自分以外のことと捉えてしまうと他責のような響きがあり、あまり生産的ではない。代わりに私の人に関する「環境」の定義をお勧めしたい。それは、「そこでは何がフツウなのか?」である。例えば、英語の上達のためにアメリカに留学をするとすると、英語が普通になる。起業家になりたいなら、起業が普通な環境に身を置くべきだろう。人は日常的に普通な判断をしたり、意識せずに周囲と同じような行動を取ってしまう。そのため、「フツウ」を変える必要がある。

先ほどの英語の例で「フツウ」を変える方法は2つしかないというのが、私の考えだ。
つまり、

  1. 異質な人のチームに加わる 先ほどの英語の例で言えば、留学にあたるのがこれだ。できれば単なる異業種交流は避けた方が、効果は大きい。経験上、異業種交流会に来る人の多くは同じ課題を抱えていて、違う業界や会社に勤めていても、似た環境であることが多いためだ。
  2. 違う人をチームに加える 英語ネイティブな人のホームステイを受け入れるイメージである。ここで気をつけたいのは、外人を入れたものの、「普通」を変えない行動パターンだ。想像してみて欲しいが、せっかく英語が普通の環境にするために外国人を招いたにも関わらず、日本語が普通だからという理由で日本語を使っていたり、使わせたりしていたら英語は上達しないのも仕方がない。
先に上げた「変人と付き合う」のも「修羅場体験」をするのも「チャレンジに踏み出す」のもフツウを変える効果がある。変人という特異的な友人が近くにいると、人がやることや出来ることの平均値はズレる。修羅場体験によって、自分の限界が見え、普通に発揮できる能力は広がる。チャレンジに踏み出すと、明らかに違う世界が待っている。「普通」という言葉が違う意味を持つようになる。自分の新たな面に出会うことができるのではないだろうか。


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