今日は、以前あげた以下の3つの課題領域から、「ビジネスモデル等プロジェクトの方針」について考えて見ましょう。
- 会社の仕組みや方針
- ビジネスモデル等プロジェクトの方針
- 人選や人の能力
ビジネスモデルとは何か、と聞かれると一言で言えば、「儲け方」と答えるようにしています。つまり、何を、誰に、どんな形態で提供し、誰から、どんな形態でお金を頂くか?
クックパッドのビジネスモデルは、みんなが作った献立を、料理をしたい人たちに、インターネットを介して一部無料で提供し、広告主や一部のプレミアムユーザから広告費や会員料としてお金を頂く、となります。
クックパッドは最初、広告モデルだけでした。それが、発展し機能を増やしながらプレミアム会員からの月額使用料という新しいモデルを構築しました。このように、企業のビジネスモデルは変わっていきます。特に、ベンチャーはビジネスモデルをグルグル変えます。ハーバード大の研究によると、成功した起業家のうち、最初のビジネスモデルを変えなかったのは、たった7%しかいませんでした。ビジネスをしながらビジネスモデルを変革させる能力が、スタートアップに最も必要な力といっても過言ではありません。ピボットという言葉は、浸透しつつありますが、ピボットをしないで最初の構想通りに事業ができあがることはほとんどないのです。
ビジネスモデルの試行錯誤を高速化することが、このフェーズでは最重要項目です。単に上手くいくビジネスモデルを沢山試すことができるだけでなく、間違ったコンセプトを深追いしすぎないための高速仮説検証なのです。つまり、的中率を上げつつ、外した時の痛みも小さくします。ビジネスモデルの中でも、顧客は何人いて、どれだけお金を払ってくれるかというのが、最も不確実な要素です。この点を早期に検証することを「リーンスタートアップ」、その結果としてビジネスモデルを変えることを「ピボット」と言います。
最近では、「リーンスタートアップ」「ビジネスモデル」「ピボット」などのキーワードが浸透してきました。ところが、行動が伴っていないのも事実です。『リーンスタートアップ』を愛読書とする人が、20人もの部下がいながら、社内ベンチャーチームにあと100人欲しいと言ってみたり、ビジネスモデルを変えたいと言いながら、ハードウェア販売以外に興味がなかったり、顧客の評価が良かったビジネスモデルが以前報告した戦略と異なるからという理由で、軽視したりするケースは、実際にあります。笑えない話です。
なぜこうした笑えないことが起きるのか?実は、イノベーションを阻む2つのことが起きています。
- アイデアを出すが、試さない
アイデアを実行に移すための基準が高すぎるケースがよくあります。販促のアイデアや、追加機能のアイデアが90%成功する可能性がないと、やってみないのです。品質に対して文化的に染みついているものかもしれませんし、失敗を恐れてのことかもしれません。しかし、成功した起業家の話を総合すると、彼らがアイデアを試す基準は勝率なら51%~70%以上と答えます。決して無暗矢鱈に試すのではなく、ちょっと冷静に勝率を考えてみて、五分五分以上の可能性があれば、試してみて、その結果から学ぶ姿勢を持っています。私も仮説の30%~40%は間違っている前提で、一見まずそうなアイデアも試してから結論を出すようにしています。アイデアの実行規準を考え直してみてください。 - コンセンサスを取りすぎる
人が持つ仮説の30%が間違っているとしたら、成功するアイデアの30%は悪いアイデアのように見えます。二人いたら、二人ともが良いアイデアだと思うことは51%になり、三人なら66%、十人が一致して良いアイデアだと思うものは、たった3%しかないことになってしまいます。これでは、実験すらほとんど行われないことになりますね。ましてや、イノベーションは普通のことからは生まれないのです。議論を生むような、賛否が分かれるようなアイデアを試さなければいけません。あくまでも『コンセンサスを生むための仮説検証』として位置づけ、決してコンセンサスの下の予定調和的実験にしないようにしたいものです。