ジョブ理論、ジョブの発見と表現のコツ

Written by 山田 竜也 on 2018-12-03

昨年、2017年の夏に「ジョブ理論」が出版されてから1年以上経ちました。
ジョブ(Jobs to be done)という言葉の認知度はジワジワと上がり、新規事業開発だけでなく、マーケティング、営業とジョブが語られる文脈も広がっています。我々は独自に開発した「JOBSメソッド」という形でジョブ理論を公開セミナー、企業研修、メンタリングの場で伝えてきました。セッションの参加者も3,000人を超え、さらに参加者の伸びは加速しています。
伝え方そのものも大分見直し、トレーニングセッションのクオリティも大分上がってきたと自負していますが、受講者が考え方を理解しても、理論を使いこなすには、訓練が必要です。特にジョブ理論はイノベーションを起こす方法とも繋がっているので、これまでの思考の仕方を変える必要があります。これこそが、ジョブ理論の価値であり、逆に実践する際の難しさとなっています。
ジョブ理論を実践する際の典型的なハードルが二つあります。一つはジョブを発見する際のハードル。もう一つは発見したジョブを表現する際のハードル。実践にてこずっている方へ、ハードルの超え方のコツをお伝えします。
 
ジョブの発見のコツ
ジョブは人間が特定の状況下でやりたい事/やらなければならない事。ソリューションはその事を実現したり/解決したりする。つまり、ジョブはソリューションに関係なく存在しているのですが、どうしても既存のソリューションの枠に嵌ってしまいジョブが見えなくなってしまう事があります。
例えば、自動車というソリューションが実現/解決するジョブは何か?を考えてみましょう。好きな時に好きな場所へ自由に移動する(機能的な目的)、ストレスを発散のために運転を楽しむ(感情的な目的)は直ぐに思い浮かぶと思います。では、エコ意識をアピールしたい(社会的な目的)はどうでしょうか?ここで「自動車は本来乗り物だしエコ意識をアピールするものではない、エコ意識をアピールするなら、そもそも自動車を使わない方がよい」と考える方は、枠に嵌っている懸念があります。
自動車を使わざるを得ない状況でもエコ意識をアピールしたいという状況はあります。例えば、運送会社の経営者が自社の環境への意識をアピールするために、ハイブリッド車を導入するという場合です。
ジョブを発見する際には、既存のソリューションの枠にとらわれずに、顧客の状況を想像し発想を広げるのがコツです。
 
ジョブの表現のコツ
ジョブを発見することはできても、頭にぼんやりとイメージは浮かんでいても、上手く表現できない。表現したときにニュアンスが抜け落ちてしまうという場面をよく目にします。
例えば、テレビが解決しているジョブを考えるとき、知識を得たい(情報番組)、映像を楽しみたい(映画)、リラックスしたい(バラエティ)等は比較的簡単に浮かんでくると思います。では、暇つぶしをしたいというジョブはどうでしょうか。そんな事言ったらテレビや番組を制作している方に申し訳ない気もしますが、娯楽があふれる今の時代には、暇つぶしの手段の一つとして雇われている/もしくは雇われていないというのが実態ではないでしょうか。
通常そのソリューションに対して使われていない様な表現にこそ、人間が本当にやりたい事が隠れていたりします。
ジョブを表現する際には、ソリューションの枠から外して、顧客の本音を表現するのがコツです。
 
発見と表現の二つのコツを紹介しました。そもそもジョブを発見するためには、ターゲット顧客の候補を探し現場で一次情報を得ることが不可欠です。貴重な一次情報からの洞察を活かすためにもこのコツを活用してください。
「ジョブ理論」を理解するところから始めたいという方には、定期的に公開セミナーを開催しておりますので、ご参加を検討ください。
直近の開催は以下です。
事業開発に役立つ「JOBSメソッド」基礎講座
2018年12月7日(金)10:00〜18:00
https://event.shoeisha.jp/bizgenews/20181207/

atd2018ICEで感じた3つのこと

Written by 山田 竜也 on 2018-05-29


ASTDの頃から参加しようと思いつつ、周りから話を聞くだけに終わっていたatdに参加してきました。今年のatd2018ICE(International Conference & Expo)は5月6(日)~5月9日(水)に米国カリフォルニア州サンディエゴのサンディエゴ・コンベンション・センターにて開催されました。今年は設立75周年、しかも基調講演が元アメリカ合衆国大統領のバラク・オバマ氏ということもあり、参加者の合計は13,000名と過去最高となりました。日本からの参加も昨年より大幅増加の269名、米国外からの参加者2,450名の中では、カナダの349名、韓国の298名についで3番目でした。
atdはまだまだ日本での知名度は低いものの、世界最大級の人材開発、組織開発、トレーニング等のプロのための非営利団体です。atdの前身であるASTD(American Society for Training & Development=米国人材開発機構)は1944年に設立されている。1945年、日本でいう終戦の前の年から脈々と活動が続いていることに改めて感動しました。
全体感に関しては多くの方がレポートしていると思うので、自分が感動したポイントに絞ってお伝えします。結論としては「人材開発、組織開発、トレーニング等に関わる人は参加すべきイベント、現地でしか感じ取れないものがある!」ですが、想定と違い期待を超えていたことを3つあげます。
・大規模なのに、寄せ集めではない、目的を持ったプロの集まり
・発表会ではなく、研究会である、しかも象牙の塔では無い
・セッションとエクスポの両面でトレンドを一覧できる、日本からの出展はゼロ!?
 

大規模なのに、寄せ集めではない、目的を持ったプロの集まり


とにかく規模がでかい。日本国内でも人事関連のイベントはあるが、1日の来場者として数千名規模のものが多い。しかも、一般の参加者はほとんど無料なので、展示会に集客のためのセッションが付いているという感じが否めないが、atdはセッションだけで、14種類のトラックに分かれて300以上のコンカレントセッションがある。そして同時開催のエクスポのブースは400を超える。そこに有料の参加費を払った参加者が13,000名なので、小さな街がコンベンションセンターに移動してきた感がある。
帰りのLYFTのドライバーに聞いたのだが、Comic-Con(コミックブックのコンベンション)では50,000人以上が集まり、タクシー等では身動きが取れなくなるらしい。当然街中のホテルも満室になり、参加者の多くは数十キロ離れた街から通うようだ。こうした状況を目の当たりにすると、Airbnbが生まれたのも必然と感じられる。
これだけ大規模になると、どこで、どんなセッションがやっているのか?効率よく回れるのか?と不安になるが、事前説明会での忠告に従い、アプリをDLしてタブレットに回ったおかげで、お目当てを逃さずに回ることができた。この辺りのロジスティクスは流石に洗練されていると感じた。過去から脈々と改善されてきたのだろうが、おかげで初めての参加でも快適だった。

イベント当日のためだけのツールととらえるとアプリは冗長なのかもしれないが、参加段階で計画を立てたり、スピーカーの著作を探したり、セッションのハンドアウトを共有したりと、アプリは大活躍だった。要はちょっとしたLMSである。こうした仕組みが目的を持った学習者としてイベントに参加する上では非常に役立った。atdは単なるイベントではなく、学びのプラットフォームであることを納得した。
当然多くのスポンサーがいるものの、商品・サービスの宣伝という色はほとんど感じなかったのも、atdとしてのテーマがきちんと打ち出されていて、寄せ集めではないところが理由だったのかもしれない。いわゆる教育ベンダー側も、エコシステムを支える一つとして機能していると感じた。ブースでも無理やりの売り込み感はなく、むしろ一緒にこの会を楽しんでいるようだった。
スピーカーも出展社も参加者もスタッフも、皆が等しくプロフェッショナルとして参加している、稀有な場所だった。
 

発表会ではなく、研究会である、しかも象牙の塔では無い

各コンカレントセッションは概ね1時間〜1時間半、講演、インタラクティブセッション、グループ討議を含むワークショップありと形式は様々だ。きっちり並べられた椅子に座って話を聞くだけというものは少ないし、スピーカーも全員がプロのプレゼンターなので、内容が期待と違ったということはありうるが、事前にハンドアウトや著作などで確認できるので、外す率は少ない。

そもそも、この時間帯はめぼしいものがないということが少なかった。14のセッショントラックで300にまたがる分科会から選ぶのだから、間違わなければ、一定レベルは担保されている。むしろ、参加したいものが同時間に重なっていて悩むことも多かった。
中身に関しては、どのセッションも単なる発表会ではなく、理論的背景があり、かつ、実践的なソリューションを伴っているものが多かった(つまり、使えるナレッジになっていた)ベンダーがスピーカーになっている場合でも、商品説明に終始することはなく、なぜ、そのテーマが必要かという問題提起から始まり、トレンドによる背景の補足があり、最後にソリューションとしてツールが紹介されるという形式だった。「発表会ではなく、研究会である」という理由は、この辺りにある。
例えば、初日の初回に参加したセッションは、elearningbrothers (https://elearningbrothers.com/)の以下のセッションだったが、eLearningにおいてゲーミフィケーションする際に見落としてしまいがちが重要な要素について語っていた。
タイトル:The Hero’s Journey: Exploring Often Overlooked Elements in Learning Games
スピーカー:Richard Vass, Daniel Dellenbach
ベースにあるのはジョーゼフ・キャンベルの千の顔をもつ英雄である。彼らのソリューションはeLearningの制作だが、単にインタラクティブにしただけのeLearningが多い中で、自分たちの違いをシンプルに訴求できていた。
最初は、atdの場でゲーミフィケーション?と違和感を覚えたが、人材開発に関わる人はテクノロジーには関心を持ってい無いという自分の完全な偏見だった。テクノロジーをツールとして利用するだけではなく、AIが人間の仕事を奪うと言われるような世界の変化の中で、タレント開発に関わる自分たちが仕事を再定義しなければならないという危機意識を持っていることに視座の高さを感じた。Together We Create a World That Works Better(共により良い世界をつくる)というatdのミッションに改めて共感した。
 

セッションとエクスポの両面でトレンドを一覧できる、日本からの出展はゼロ!?


「日本人から、あの、NTTか?」と聞かれることが多いと言っていたNTT Training inc. (NATIONAL TECHNOLOGY TRANSFER, INC.) Learn by doing をモットーとする技能伝承の会社です。
 
セッションできっかけを得て、エクスポでソリューションを探す。スピーカーに触発されてブースに足を運ぶ。広い会場を行ったり来たりするのは大変だが、セッションでテーマの全体感を掴み、エクスポでソリューションのトレンドが掴めるのは有益だ。テーマとしては盛り上がっていてもソリューションがなければ、課題提起だけで終わってしまう。最初はエクスポよりセッションを重視していたが、エクスポはatdの重要な要素だと再認識した。
Meet to Eat(交流食事会)で会ったサウジアラビア航空の人は、連続11年参加、4日間をかけてエクスポの全てのブースを周り、翌年の活動のネタとしていると言っていた。誰もがサムシングニューを求めている。それに答え続けていることがatdが75年も続いてきた秘密なのだろう。
残念なことに、日本企業の展示は一つもなかった。国内の展示会ではSI的に日本企業の事情に合わせた出展はよく見るが、世界的に普及させられるような製品が無いということだろう。テーマとしては禅に通じるマインドフルネスや働き方改革の最先端とも言える “ikigai” (生きがい)という言葉を耳にするのに、本来、強みでありルーツを持っているはずの日本は発信できていない。
 
厳しく言えば、「どんなに良いことを言っていても、普及させられることができなければ、存在しないに等しい」、最先端を輸入することも大事だが、せっかく良いものを持っているのだから、周りの情報に踊らされずに、本質的な発信をしていくことが大事だと思わされた。学習者として学ぶことは大事だが、貢献者として発信することにフォーカスしていくべきですね。
 

来年のatdは5/19〜22にワシントンDCで開催

興味がある方は、今から https://www.td.org/ をチェックしておくことをお勧めします。一過性のイベントへの参加ではなく、継続した学習プラットフォームとして活用すれば、その価値は何倍にもなる。そして、イベントへは目的を明確に定めて!そうすれば、収穫が得られることは間違いない!

行ってみて実感! ドバイの凄いところ

Written by 山田 竜也 on 2017-10-02

INDEE Japan設立の頃から、仲間内で話題に上っていたドバイに行ってきました。
いつもとは違う、少し軽いノリで自分が感じたドバイの凄いところをお伝えします!
テーマは、位置、水、夢、多様性、自由、そして、イノベーションです。
 
位置
先ずはドバイって何処?という人のために、ドバイはこんな所にあります。

日本から10時間40分ですが、往路は夜初の早朝着でしたので、時差的には割と快適でした。日曜の夜に移動して、月曜日に仕事して、火曜の朝便で帰れば、水曜日は朝から普通に(?)仕事ができるという弾丸ツアーも可能です。アジアのハブであるシンガポールも7時間ですから、中東はもちろんアフリカや東欧へのハブとしても、とても魅力的な位置にあります。こうした地政学的な気付きは行ってみないと分からないことの一つですね。普段から地球をいろんな角度から見る癖をつけておきましょう。
地政学ついでにもう少し拡大した地図で見てみましょう。

ペルシャ湾とオマーン湾の両方に面していることで、ホルムズ海峡を封鎖されても陸上パイプラインで抜けることができます。ドバイは7つの首長国の1つですから、実際はドバイから別の首長国であるフジャイラに抜けることになります。いずれにせよ、UAE(アラブ首長国連邦)が石油輸出の要所であることは間違いありません。実は日本はUAEのお得意様です。日系油田の約4割はUAEのアブダビにあります。また、日本の石油輸入の約24%を占め、サウジアラビアに次いで2位です。UAE結成直後の1972年から、これまでに日本がUAEに支払った輸入代金は80兆円にも登ります。これは世界最大級の政府系投資ファンドADIA(Abu Dhabi Investment Authority)の資金量にも匹敵するそうです。自国の資源を社会インフラの整備やファンドに蓄積し、次代の国家の基礎としている計画性に唸らされます。
 

行く前からこれは見なければと思っていたのが、高さ150mのドバイファウンテン

思いっきり観光ネタですが、砂漠と海(海水)しかないところで、どうやって、こんなに水の無駄遣いを!と気になっていた場所でした。
これまで60ヶ国以上の国を旅して来たなかで、一番辛いと思ったのは、水がない状況でした。温度、湿度、食事、衛生等、大抵の不自由には慣れてきたつもりだったのですが、十数年前に訪れたモンゴルのウランバートルから数百キロ西の集落でのパオ暮らし。水がないって辛い!というのを初めて実感しました。もしかしたら、水に恵まれている日本人ならではの感覚かもしれません。こうした経験があったせいもあり、ドバイファウンテンでの水の使い方にはエンターテイメントとしての感動の前に、こんな砂漠の真ん中で、なんてもったいない!という印象が強かったのですが、この水はどこから?というのを調べてみると印象は変わりました。
ドバイは水需要のほとんどを海水蒸留水で賄っていて、ドバイの造水プラントによる水の生産量はサウジアラビアに次いで世界第2位だそうです。水は日本におけるエネルギー問題と同じく、UAEでは最重要課題であり、その能力を示すことは、国力を示すこととも等しいのだと理解しました。単なるエンターテイメントではなく、社会インフラの整った国であることを示すのと、観光立国に直結するという点で眺めるとドバイファウンテンの水も違って見えてきました。水が十分ある砂漠の国であることを示す必然があるのですよね。
 

そして、ファウンテンの後ろにそびえ立つ、828mのバージュ・カリファ。

写真だとあまり高さを実感できないのですが、828m、当然634mのスカイツリーよりも高い。真下にはドバイファウンテン、ドバイモールとまさにザ・ダウンタウンです。区画としては1つにまとまっているのですが、その1ブロックがでかいです。イメージとしては、東京駅の丸の内側が丸ごとドバイモールという感じでしょうか。外は40℃越え、中は20℃台と、慣れないとこの温度差で体調を崩しそうでした。屋内がキンキンに冷えているのは暑い国ではおなじみのことですが、日差し、湿気とダブルで効いてくるドバイの街中において近代的なモールやオフィスビルはまさに人工のオアシスでした。
過酷な自然環境ではあるが、人工のオアシス(ショッピングモール)を誰もが楽しむことができる。国家が国民・住民に対して、利益を還元している。これが夢の部分です。誰もがもっと進歩できる。生活をよくすることができると、未来に対する期待感があふれていると感じました。バージュ・カリファは映画「三丁目の夕日」の頃の東京タワーなのかもしれません。この夢があるから、多くの人が惹きつけられ、本当の意味の多様性が生まれています。
 
多様性
まるでスターウォーズの世界みたい!と思いました。

そう思った理由の一つは、想像以上に多様な国籍・民族の人たちで社会が構成されていること。そして、国籍で大体の職業が決まっていること。

  • タクシーの運転手はインド人かパキスタン人、英語のなまりと見た目で区別がつく
  • セキュリティはネパール人、傭兵の延長かな
  • レストランのフロアスタッフはフィリピン人、穏やかな微笑みが受けるのは世界共通なのかもしれない
  • 日本人に近い雰囲気のカザフスタン人のホテルスタッフ
  • インキュベーションセンターで議論している人たちは様々な人種のミックス
  • 金融街には、40℃越えの中、ブラックスーツにタイを閉めた金融人という種族がいる
  • UAE人は政府系の施設に行けば会える、イミグレーションで民族衣装が多いのは演出ではない。普段着を来たUAE人が多いだけだ

国籍や文化の異なる人が集まり、それぞれの立場や得意技を活かして社会を運営している。しかも、誰もが自分の状況の中で幸せを感じている、お互いがお互いを尊重している感じがした。職業に貴賎があるわけではなく、適材適所の役割があるだけだ。報酬が同じというわけではないが、街はきれいで、物価も安く、誰もが自分なりの文化的生活を楽しめている。そう感じた。
日本で多様性という言葉を使うときには、性別、年齢、日本人/外国人というキーワードがでるが、外国人という言葉が既に多様でない。日本とそれ以外を一括りにしているからだ。日本人はもっと世界のいろいろなことに対する解像度を上げなければと思いました。そして、自分自身も個としての魅力を上げないと通用しませんね。学歴、性別、人種、年齢、いろいろと取り払った時に自分に残る魅力は何か?Diversity & Inclusionの次代は多様性や受容性を上げることばかりが語られますが、その前提として魅力的な個人であることが大切ですね。まずは自分が好きな自分になりましょう!
 
自由、イノベーション
外部から人材を引き寄せ、最先端のいろいろな実験を自由に行える環境を提供する。それに資金も提供する。

訪問したDFA(Dubai Future Accelerators)では、21世紀にもっとも重要な機会をテーマとして多くのチャレンジを進めていました。それらはまさに社会システムにおける課題で、警察、自治体、エネルギーと水といったテーマでプロジェクトが組まれていました。今回は時間がなくて訪問できなかったのですが、アブダビ市近郊の砂漠地帯では、人口約5万人、面積約6.5km2の人工都市「マスダール・シティ」の建設が進んでいます。計画が延期され、2030年を目指すようですが、CO2排出量ゼロ、再エネによる究極のエコシティを目指す意欲的な計画です。ポスト石油社会を目指すという意味では、石油に頼るアブダビでこそ行う必然のある取り組みです。
もう少し近くの施策としては、アブダビ市の北東のサディヤット島の文化地区にルーヴル・アブダビ美術館が11月オープン予定です。本当は今回の視察の候補だったのですが、オープンが延期され、残念ながら建物の外観を見るだけになりました。この文化地区には高級リゾートやゴルフコース、ニューヨーク大学アブダビキャンパス等が誘致され、石油から文化へアブダビの魅力をシフトしようとする試みのようです。

 
まとめ
オイルマネー、世界一尽くし、金持ちの国という比較的短期の経済発展ばかりの国という印象でしたが、行ってみると、壮大な計画に基づく非常に長期的な視点で魅力づくりに邁進している国だと感じました。
その成功要因は、

  • 石油で得た投資をもとに地政学的に有利な位置を活かし、アジア、ヨーロッパ、アフリカをつなぐハブとなったこと。
  • 都市として機能するために必須となるの問題を解決し、むしろ強みとして打ち出したこと。
  • 貿易、観光での強みを究極的に打ち出し、の街を作ったこと。現在もその夢を広げ続け、夢を抱く人々を集め続けていること。
  • それにより、多様な人材を呼び寄せ、それぞれの得意を活かして、誰もが稼げる社会を生み出していること。
  • この自由度の高さを活かしてイノベーションに取り組んでいること

国家レベルでこの体制を築くのは、それこそ一朝一夕では不可能ですが、株式会社ドバイと考えれば、強力なトップダウン、外部人材の活用により成功している姿だと思います。
イノベーションを生み出したい企業の皆さん、一緒にドバイ視察に行きませんか?
まだまだ未開拓の地で、ビジネスチャンスを探しましょう!

KLIでやってはいけないこと

Written by 山田 竜也 on 2016-11-30
前回はイノベーションの進捗をはかる指標としてKLIをご紹介しました。
「行動した結果、どんな学習をしたか、どれだけ顧客のことを理解したか」を
評価指標としておいても、それだけでは人はなかなか動けません。
そもそも新しいことをやるのには抵抗があるし、
それを慣れていないやり方でいけないとなれば、なおさらです。
その気にさせるのが先か?
まずは黙ってやらせてみろなのか?
有名な
「やってみせ
 言って聞かせて
 させてみて
 ほめてやらねば
 人は動かじ」
の一節が頭をよぎります。
社内にイノベーターのメンターがいれば良いですが、そもそもそういう人がいなくて困っているわけなので「やってみせ」の段階でつまづいてしまうのが現状です。
思考よりも行動、行動することで一次情報を得る
結論としては、ここは、「とにかく行動させる」ということに尽きます。
だからと言って、「イノベーションを起こせ!」「ビジネスチャンスを見つけろ!」と掛け声をかけるだけでは空回りします。
もう少しフォーカスを絞りましょう。
KPIで言うと結果系だけでなく、そこに至る過程となるプロセス系の指標を追加するイメージです。
行動の方向性を示す前に、そもそも、なぜイノベーションが必要か?という認識を醸成しておくことが必要です。
危機感だけだと余計既存ビジネスを守る方向にも走りやすいので、既存ビジネスで稼ぎつつ、イノベーションへの新規の投資を続けることを大方針として打ち立てる必要があります。ここは仕組みを作るというよりも、トップや部門長の本気のメッセージでしか示すことはできません。
方針が示されて、どんな分野を狙えば良いのか(目指すべき成長分野)、どんなビジネスが求められているのか(自社の顧客ベースや組織能力に対しての新規度合い)、事業コンセプト(ハードウエアからサービスへのシフト等)が見えてくると、そのためにとるべき行動を考えやすくなります。また、ここが具体的に示されるほど、トップの本気度は伝わります。反面、賛否も別れます。停滞した組織にインパクトを与えるには、賛否が大きく分かれるぐらいの劇薬が必要なときもあります。
この辺りがイノベーションマネジメントとして工夫すべき最初のポイントになります。
  KLIを設定するときにやってはいけないこと①: 結果系だけを定義する
やることだけではなく、やらないことを決める
プロセス系のKPIを設定するときには、やることだけでなく、やらないことを決めることも必要です。
イノベーションも、やりましょうだと、結局やらずに終わってしまいます。退路を絶ってまでやらせるとなると、やる側もやらせる側もハードルが高くなりますが、失うものが多すぎる大企業の中で敢えて取り組ませるには、既存のしがらみから解き放つ必要があります。
一つのやり方としてよく紹介されるのが、__%ルールです。
ここで注意しなければいけないのは、「やってもいいよ」では機能しないということです。
3MやGoogleの成功例は、”やりたいことで価値を生み出したい”、”単におもしろいことをやりたい”というモチベーションを持った人が沢山いるという前提があります。こうした文化がない企業で導入しても、よほど余裕がある人か、本業が上手くいかない人の加点狙いに使われてしまいます。
「やってもいいよ」ではなく、「やれ!」にすると行動は少し変わってきます。好きにやれと言われても・・・という人には明確なテーマを与えたほうが効果的です。ただし、この場合はテーマをどう選ぶかという課題が残ります。会社としての取り組みテーマを示せていないと実行できません。
もう一つは「やらないことを決める」です。これには既存の研究テーマに期限をつけて強制退場させるという、相当現場から反対を受けそうなものもありますし、もう少しソフトにテーマそのものは変えないにしてもアプローチ方法を変えさせるというやり方もあります。
要は、「同じテーマに同じアプローチで取り組み続けて、いつまでたっても進展がない」という事態をなくすのが目的です。惰性で続けてしまっているプロジェクトを見つけたら、テーマとアプローチの双方での見直しをオススメします。
  KLIを設定するときにやってはいけないこと②: やることだけを定義する

KLI (Key Learning Indicator)を設定しよう

Written by 山田 竜也 on 2016-11-09

以前書いたように、イノベーションとは「何か異なるやり方で、インパクトのある価値を生み出すこと」です。

インパクトのある価値が生まれるかどうかは、やってみなければ分からないので、重要なのは異なるやり方を試すことです。(実はイノベーションの世界もいろいろ研究されてきており、成功確率をあげる方法はいろいろとありますが)やらないと、インパクトを生むことはできません。

異なるやり方って何なんだ!と思われた方へ、

平たく言うと「慣れていないことへの挑戦」です。

自戒を込めてなのですが、慣れていないことをやるのは誰でも嫌なものですよね。

しかも、イノベーションの世界は不確実性が高いので、頑張ってやったとしても成果が上がるかは分かりません。

かといって、慣れていないことに挑戦しなければ(やり方を変えなければ)、得られる結果は従来と同じです。

「Innovate or Die …」

「やらなければならない・・・」という空気はしだいに現実味を帯びて、様々な業界を侵食しています。

とはいえ、一般的な願望としては、「なるべく楽して儲けたい」ですよね。

「楽して・・・」というと反論もあるかと思いますが、ドMの人は別として、なるべく効率的にビジネスを進めたい誰しも思うのではないでしょうか。

成熟した大企業でイノベーションを起こすにはどうすればよいのか?

危機感の醸成、啓蒙、トレーニング等、人材に働きかけるソフトな取り組みはいろいろありますが、制度として行動を促し、方向性を示すものも必要です。

既存事業と新規事業のKPI

すでに行なっている既存事業であれば、今期の売り上げのようにKGI(Key Goal Indicator)を設定し、顧客の訪問数、提案に至った回数、受注件数をKPI(Key Performance Indicator)にするという具合に、KPIの設定はイメージしやすいものとなります。

しかし、イノベーションではこうは行きません。新製品の投入率、戦略的な特許の取得件数、イノベーションパイプライン強度(イノベーションプロジェクト数 x 将来の収益の見込み)といったものもありますが、定量的とは言い難いですし、何より人の行動を促すという点で不十分と言わざるを得ません。

KLIとは何か?

では、どうすれば良いか?

お勧めしたいイノベーションのKPIは、ずばり!どれだけ学習したかです。

イノベーションの実行が難しいのは、不確実性が大きいからです。

プロジェクトの先行きは見えないし、顧客が買ってくれるかどうかも不明。さらに、思いがけないコストが乗っかってくる可能性もありますし、仕入先の品質も安定していないこともよく起こります。

そのように数多く存在する不確実性が減少することがイノベーションプロジェクトの進捗といってもよいでしょう。

したがって、新規事業のKLIとして、未知数として知らないことや、仮説に過ぎなくて不確実なことが減っているかどうかを計測してはどうでしょうか。

「ザ・ファーストマイル」には、2つの重要なツールが紹介されています。

一つは、仮説を重要度によって分類する方法です。これは、仮説(つまり、いずれ学ばないといけないこと)の重要性と確信度から、仮説検証の優先順位を決めるツールです。

もう一つは、確実性の遷移表です。事業の確実性(もしくは不確実性)を測り、事業として進捗している度合いを見る方法です。

この2つのツールを参考にKLIを設計してみてはどうでしょう。

勉強と学習

最後に、学習と勉強の違いに触れておきましょう。

これまで「学習」という言葉を選んで使っています。

しばしば「知る」こと「勉強」することと混同されていますので、説明します。

「勉強」は事実の確認に過ぎないが、「学習」には再現性を求める。

例えば、「火を触るとヤケドをする」と知ることと、「ヤケドをしない所作」を学ぶことは違います。

KLIというと、ついつい分厚いレポートをたくさん読みたくなりますが、それは入り口にしか過ぎません。

  • この業界はこうなっている (勉強)

  • この業界ではこうすれば売れる (学習)

この2つの表現を見てわかるように、勉強はあくまでも過去の事実やその仮説でしかありません。それに対して、学習は検証された仮説です。

このように、学習の観点を加えてイノベーションプロジェクトを進めてみましょう。