イノベーションコンサルティングにはいくつかのパターンがあります。核となる技術・試作品は出来上がっていて顧客開発をメインで進めるパターン、既存の顧客に対して新たな提供価値を創出するパターン、そして、ざっくりとテーマは決まっているものの、想定顧客も必要な技術も見えていないパターンです。
3つ目の場合、テーマとして設定されるのは、今後の成長が見込めそうな領域や、大きな社会課題となっているものが多いです。グリーンエネルギー、高齢化社会、医療・ヘルスケア、教育、ロボット、食料と水、交通システムといった感じです。
テーマを設定した後に、決めるのが、いつを想定して未来を描くかです。あまり近すぎてはイノベーティブなアイデアを実現出来ませんし、遠すぎると実感を持って考える事が難しくなります。最近ですと2020年のオリンピックイヤーがイメージし易いタイミングです。
いつをどうやって決めるかに公式はありませんが、考え方のポイントは2つあります。企業が置かれた状況とテーマとなる業界における商品・サービスのライフサイクルです。
企業が置かれた状況にあまり縛られ過ぎると、それこそイノベーションのジレンマに嵌ってしまうのですが、社内起業を上手く進めるためには考慮しておく必要があります。この場合のいつは最終的なビジョンを実現する時期ではなく、マイルストンとなる最初のビジネスの立ち上がりをイメージしておくと良いでしょう。
業界における商品・サービスのライフサイクルの場合は、飲食店の業態の様に数ヶ月で出来るものから、モノ造りをともなう場合であれば数年がかりになるものもあります。社会問題となればそれこそ世代が変わるぐらいの時間が必要です。
先日、来日中のアダムカヘン氏の来日イベントに参加しました。南アフリカでのアパルトヘイトから民主化への移行、内戦終了後のグアテマラでの国家ビジョンづくり等、国や社会に関わる問題の解決に尽力して来ている世界的紛争解決ファシリテーターです。こうした困難な課題においては、ステイクホルダーを集めて同じ場に付くだけで数年を要する事もあります。お互いの関係性を理解し、新しいシナリオを描こうと考えるまでには更に時間がかかります。
南アフリカでのモンフルール・シナリオ・プロジェクトは1991〜1992年に実施されました。私はその5年後の1997年にケープタウンを訪れたのですが、アパルトヘイトに触れたのは博物館の中だけでした。私が見たのは表面的な部分に過ぎないかもしれませんが、世界は変わって行くという事を実感しました。
この日はもう一方、カナダからモニカ・ポールマン氏が参加されていました。カルガリーで街の100年に及ぶサステナビリティ・ビジョンを描くプロジェクトの連携と戦略分野におけるリーダーを務めた方です。なぜ、100年か?、理由は非常に明確でした。ほとんどの公共インフラのライフサイクルが70−80年なので100年後となれば全てを置き換えられる前提に立てるという事です。
ビジネスの世界における事業開発としては長過ぎますが、ビジネスの前提となる社会の姿、変化の方向性を考える上では、100年とは言わずとも数十年後を想定し、サンクコストや現在の強みから離れて考える事は有効です。
100年後の世界を想像してみてください。あなたには何が見えますか?
ちなみに100年前は1914年、この時代にはこんな事がありました。
・パナマ運河が開通
・兎追いしかの山〜の故郷がヒット
・第一次世界大戦が勃発
・東京駅の赤煉瓦の駅舎が完成