XEROXのパロアルト研究所(PARC)は、初期のマウスとGUIを発明しておきながら商業化に失敗した代表例とされています。PARCで当時開発されていた試作品を見たスティーブ・ジョブズが、そのアイデアをMacintoshに入れて大ヒットした伝説はあまりにも有名です。

PARCはその1件で評判を落としていますが、レーザープリンターの開発では大きな成功をしており、必ずしも失敗ばかりとは言えないようです。

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Apple Computerにアイデアを盗まれてパーソナルコンピューターの覇者となり得るチャンスを逃したことは、相当悔しかったのでしょう。XEROXの経営陣は、この教訓からXTVというCVCを立ち上げることにしました。この時のXEROXは相当懲りたと見て、本気の組織設計をします。独断で個人が200万ドルまでを投資する権限を与えたり、他のVCとの協調投資を行ったり、独立した組織にします。さらに、成功していたVCファームに倣って、個人への報酬体系も見直し、リスクテイクを奨励しました。その結果、XTVは大きな成功を収めます。8年間で2.2億ドルという他のVCを超える利益をあげる組織になりました。


しかし、そこまでの成功をしていながらXEROXはXTVをやめてしまいます。

その理由は「やっかみ」です。そんなこと?!かのシリコンバレーでもあるんですね。


投資先のベンチャーが成功すると、もちろんのことながらXEROXよりもチヤホヤされます。また、投資をしたXTVの幹部は「キャリー」というベンチャー投資から得られる成功報酬が3000万ドルを超え、XEROX本体の経営者よりも稼ぐことになってしまいました。(当然ながら)XTVの投資先はXEROXの隣接事業なので、「XEROXが作り上げてきた基盤を使って成長した」という理屈もわかりますが、スピード感、独立性、リスクテイクがなければ何も起きなかった可能性も十分あります。では、どうあるべきなのでしょうか?


まず、考えないといけないのは、スピード感、独立性、リスクテイク、といった特性は大企業の仕組みのままでは出すことができないという点です。仕組みの問題ですらなく、むしろ価値観かもしれません。そう考えると、大企業の問題は「現状維持を目指すのか」「成長を目指すのか」といった価値観の共有されていないことにあるのではないでしょうか。意外に感じられるかもしれませんが、イノベーション戦略を立てるときには、人の感情面に対するケアも考慮します。


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