ジョブ理論を話をしていると、最もよく聞かれるのが「ニーズ」「ジョブ」の違いについてです。次によく聞かれるのが、「インサイト」「ジョブ」の違い。

この手の質問に答えるのは、正直言うと、とっても難しくて困るんですが、何が難しいのかというと、「ニーズ」や「インサイト」というのはあまり定義されずに使用されているからです。

あまり定義されていないということは、その概念は“ぼんやりしている”ということです。例えば、「ニーズ」という言葉は「ウォンツ」という言葉と対比して使用されることがある場合には、ただ単に“Want”として欲しいのではなく、“Need”として必要としている風に多少定義がくっきりするかもしれません。ですが一般的に、「ニーズ」とは「顧客が望むコト」「顧客が欲しいモノ」と広がりのある意味を持っているようです。このように広がりを持っている言葉であるため、現象として表れている「顧客が商品に対して向ける関心や行為」を指して「ニーズ」と呼んでいるのが現状です(その辺はこちらに書いています)。「潜在的ニーズ」という文脈であったり、望んでいる状態を指して「ジョブ」を指すケースもあるのでベン図に描くとこんな感じでしょうか?

同様に、「インサイト」とジョブの関係を整理すると、下図のようになるかと思います。インサイトというのは、「顧客に対する深い洞察」を指します。簡単には手に入らない情報のことですね。これもたくさんあります。

量が質を担保する時代は終わった

多くの人にとって、こんなに厳密に「ニーズ」とか「インサイト」を定義することは大事ではないかもしれません。しかし、これから売れるものを作ろう、成功する事業を立ち上げよう、という場面においては命取りになりかねません。ぼんやりとした状態で「ニーズ」や「インサイト」を見ていると、情報の量に圧倒されてしまいます。顧客はAも欲しい、Bも欲しい、Cがやりたいと言っている・・・と、莫大な情報の量にうずもれてしまうでしょう。

人間はコンピュータと違い、多くの情報を同時に扱うことはできません。一度に処理しきれない情報を前にすると、多くの人は:

  • 思考停止
  • 見たいものだけを見る

という行動を取ってしまいます。どっちも冷静な人ならやらないことですね。ですが、解像度高く情報を取捨選択していると、きちんと処理できるようになります。究極のところ、お客様はどんな状況からどんな進歩をしたいと思っているのか?さえ知っていれば、お客様の身長や性格、家族構成などの情報は不要なのです。

「足りない」と感じるとき、もしかしたら解像度が足りないのかもしれません。


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