ストーリーテリングとは?

Written by 津田 真吾 on 2021-03-09
(長文ですが、文末にピッチ作成ツールと、ストーリーのフレームワークを公開しています)
目次:
 ストーリーテリングとは何か?
  ビジネスでの活用
 優れたストーリーの作り方
  ピッチ設計表
  ヒーローズ・ジャーニー
 参考書籍

ストーリーテリングとは何か?

Storytelling (ストーリーテリング)という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

ストーリーテリングとは、文字通りストーリー(物語) +テリング(語り)という意味で、聴衆に伝わり、動かす物語を語る行為や能力を指します。

近年、ビジネスの文脈でもこの言葉を見聞きすることも増えてきたこともあり、最新手法だと思われるかもしれません。しかし実は、ストーリーテリングはヒトのコミュニケーションとして比較的原始的なものなのです。文字を発明する前の人類は、言葉とジェスチャーだけで「希望」「危険」「妄想」「計画」「友情」「愛」などの抽象的な思いを伝えあっていたのです。脳科学的にも、同じ情報をストーリーの形で受け取るほうが、印象に残り、行動に移しやすいことが分かっています。

現在もストーリーテリングが有効なのは、目に見えない事柄に対して共通理解をしたいときです。ビジネスのスピードが高まり、不十分な情報やあいまいな状況で決断をする必要性も高まっています。確実なのはデータに基づいた判断を行うことですが、タイムリーにデータを収集できるとは限りません。データを集めているうちにタイミングを逃しかねません。そもそも将来に関するデータは存在せず、目に見えない将来の機会や脅威への対応も必要です。ことビジネスの文脈では、社外コミュニケーションではマーケティング・セールス、社内では「機会」と「脅威」を共有する際に最も効果を発揮します。

マーケティング・セールス

まだ購入していない商品を買うことによって、どのように世界が変わるのか?あるいは、まだ姿形もない未来の商品のニーズを把握したり、形のないサービスを売り込むには、ストーリーテリングが重要になります。成功している営業担当者はストーリーテリングと知らずに、顧客を主人公とし、商品購入から顧客が成功する(カスタマーサクセスの)物語を語っているいると言っても過言ではありません。

脅威

脅威を伝える際、例えば小売業にとって「Amazonを筆頭とするインターネット通販業者によって、売り上げは減少する脅威が迫っている」という状況を想像してみましょう。この場合、本当に減少するかどうかを含め、いつ、どのくらい売上が減少するのか、予測するのは不可能です。「データで示せ!」とか「真実を語ろう!」と言っても掛け声で終わります。このように、不確実なことを共有するためには、“そこ”に迫る(であろう)敵や、市場の変化に巻き込まれる前から、切迫した危機感を仲間と共有することが不可欠です。その際、もしそのような敵が登場した際に、どのような未来が想像されるのかを目に見えるように語る必要が出てきます。まるで同じものが目に見えるように語ることで、初めて、不確実な未来に対して確実な戦略を描くことができるのです。

機会

機会についてのストーリーは、難しいことであっても「できそうだ」と、仲間を奮い立たせる力を持ちます。“そこ”に、捕らえるべきチャンスがあり、成功しそうだと皆で思えるような何かを共有できるようになるのがストーリーです。機会の最たるものが、「新規事業」になります。従来の会社の枠を拡げ、新たな事業へと進出したり、会社を興そうとする際にはピッチという形でストーリーを語ることになるでしょう。


優れたストーリーの作り方

効果の高いストーリーのひな形として「ヒーローズ・ジャーニー」と呼ばれているものがあります。世界の神話を研究していたジョセフ・キャンベルは、その研究の結果、語り継がれるストーリーには共通するパターンをあることを発見し、そのパターンを「ヒーローズ・ジャーニー」と呼びます。今では、ハリウッドを目指す脚本家も学ぶほどの一つの体系となっており、大衆に支持される多くの小説や映画は同様のプロットが用いられているのです。ビジネスの文脈では、ピッチのバイブルと呼ばれている『巻き込む力』にも紹介されているように、事業を始めることになった経緯や、顧客の困り、事業成長の道筋などを効果的に伝えるには非常に大きな効果を発揮します。

ヒーローズ・ジャーニーは起承転結や演劇の3幕構成を補完する12のステップで構成されています。聞き手が共感しやすく、応援したくなる物語ですので使わない手はありません。要約すると、普通の日常を暮らす主人公が、目標に出会い、仲間を得ながら成長し、試練を乗り越え帰還する流れとなっています。これはビジネスを語る上でも万能なシナリオです。

新たなビジネス機会を伝えるためのピッチには、10枚構成のスライドもお勧めです。新たな事業の魅力を伝えるストーリーづくりに迷ったなら、『巻き込む力』に紹介されている10枚構成を参考にしてみてください。資金調達に成功した多くのスタートアップもこのスライド構成を用いています。

ストーリーテリングをするうえで、実はパワーポイントによるプレゼンテーションとは大きく異なる点がいくつかあります。プレゼン慣れした人ほど、ストーリーの魅力を下げてしまう可能性があるので、以下の点には注意するとよいでしょう。

  • 主人公を人間として描く  企業内のプレゼンの多くの主語は「企業」や「部署」「ブランド」など、人格を持たないため、共感するのが難しくなります。なるべくあなた自身や、消費者など、顔の見える主語で語ることが大切です。
  • スライド間の流れをつくる  網羅的に事実を述べようとすると、並列的な情報を列挙する傾向になります。短時間で聞き手から関心を勝ち取るには、時間的な流れを語るようにします。
  • マイナスもプラスになる  製品の特長を述べるように、いいことづくめのプレゼンは退屈にもなります。ところが過去の欠点をどのように乗り越えたのか、など「成長」を要素にストーリーに織り込みます。

ヒーローズ・ジャーニーの12のステップをご紹介する前に、プレゼンテーションのストーリー性を高める簡単なツールをご紹介します。スライドを書き始める前に、このピッチ設計表を埋めることで、ストーリーラインを検証し、補強できる情報を整理することができます。どうしてもスライドは情報過多になりがちで、ストーリー性が低下してしまう傾向にあるため、ストーリーを改めて検証することが大事になります。さらに、「1スライド1メッセージの原則」にも注意し、シンプルなメッセージを繋げることで、印象に残る、インパクトのあるピッチをすることができます。

ピッチ作成上の注意点なども記載されたスプレッドシートも公開していますので、ぜひご活用ください。

ヒーローズ・ジャーニーの12ステップもこちらにご紹介しておきます。

ヒーローズ・ジャーニー
出典:『巻き込む力』

参考書籍

『巻き込む力 支援を勝ち取る起業ストーリー』(エヴァン・ベアー 、 エヴァン・ルーミス)
『神話の力』(ジョーゼフ・キャンベル)

スティーブ・ジョブズの伝説的スピーチはストーリーテリングの代表的な事例ですので、最後にご紹介します。