最近は「~ピッチ」といったイベントも多く、「ピッチ」という言葉が一般的になってきました。
でも、ピッチとプレゼンの差って????
はっきりと答えられる方はとっても少ないのではないでしょうか?
野球において、ピッチ (Pitch) とは、ピッチャー (Pitcher) がバッター (Batter) に投げる球、のことです。ピッチャーは三振を取りたい。バッターはホームランを打ちたい。そういう違う立場です。ピッチャーもバッターも存在しないと野球は始まりませんから、敵対しているわけではありませんが、立場は逆です。
ビジネスにおいても、「ピッチ」は異なる立場の人に投げる提案となります。「プレゼン」は事前にアジェンダがあり、組織内で頻繁に行われます。一方の「ピッチ」は仲間内ではなく異なる立場にいる人にしか使わない言葉です。日本ではスタートアップのピッチという文脈が強いですが、英語圏ではセールスピッチという言葉があるように、売り込みの時の方が「ピッチ」は行われています。
つまり、心がけとして3つ大事なことがあります。
(1)相手がわからなくて当たり前、見送って当たり前。相手は何も前提知識がないという想定をした方が良いです。言葉は易しく、新しい概念は簡単に説明できるように、一度に伝えるメッセージは少なめに、などとシンプルでイージーに仕立てる必要があります。難しいことをやっている、と自らのアイデアを難しく伝えたくなる欲望に駆られますが、グッとこらえましょう。
(2)相手との利害は一致していない。売り手と買い手のように、ピッチの受け手はあなたの味方ではありません。少なくとも最初は疑心暗鬼に聞いているはずです。買い手は、買うかどうかを見極めてから欲しくなったら交渉を始め、条件に合えば最後に買うのです。ピッチの目的は、相手に欲しいと思わせることです。相手が欲しいと感じてくれれば、“プレゼン”へと進み、条件の交渉や、細かい説明を求められることにもなるでしょう。
(3)売り込むのはアイデアだけではない。技術だけでもありません。自分が発見したマーケット、自分が考え出した解決策、そして自分自身を売り込み、今後応援するのに値する人だということを伝えることが大事です。
で、具体的にどうしたらいいの?ってことについては、『巻き込む力』のテンプレートに従っておいて問題ありません。特に基本の10スライドに敢えて自分のストーリーを当てはめてみることをお勧めします。たった10枚、各メッセージを1枚ずつに絞り込むプロセスによってスタートアップ創業者としての「捨てる力」が生まれるはずです。
つまり、「概要」「機会」「問題」「解決策」「トラクション」「顧客または市場」「競合」「ビジネスモデル」「チーム」「調達資金の用途」という10個の要素について簡潔に語れるように絞るのです。
最後に注意したいのは、コンテストの「ピッチ」です。多くのピッチコンテストでは、その場のピッチパフォーマンスが評価されることになります。素晴らしいステージマンシップを発揮すること自体は悪いことではありません。ですが、ビジネスとして立ち上げていく能力とはあまり関係がないことに注意してください。コンテストで勝てなくても、スタートアップできないわけでも、調達ができないわけでも、顧客に愛されるプロダクトを作れないわけでもないのですから。