気が利く人、気が利かない人
気が利く人、気が利かない人、いますよね。
では、”気が利く”って何なのでしょうか?
普段この言葉を使うシーンとしては、仕事の場面での顧客や上司への対応、パーティーでの振る舞い、日頃のちょっとした気遣いが浮かぶと思います。これだけだと何だかホスピタリティ、お・も・て・な・し、と同じにも捉えられるのですが、もう少し違う要素が含まれているのではないでしょうか。
最近、思いがけず、入院病棟での看護師さんの振舞いを長く観察する機会を得ました。そこで、新人からベテランまでの看護師さんを見て、お話を聞いて、見えてきた”気が利く”を自分なりに言葉に落としてみたいと思います。
”気が利く”の一つの要素は、目の前の相手への配慮にあると思います。ググるとこんな言葉が出てきました。
「気が利く人」に共通する7つの特徴
1.挨拶・感謝・お礼を大切にする。
2.場を読み、全体を見渡す。
3.人が嫌がりそうなことを率先してやる。
4.思い込みで行動しない。
5.「お先にどうぞ」。人に譲れる。
6.「気配り」を相手に気付かせない。
7.「あえて何もせず、見守る」ができる。
(https://tabi-labo.com/220714/sensible-ppl-chara)
”目の前の相手への配慮”と言う言葉では、確かにこうした要素で言い表せているかもしれません。
でも、これだけでは何か足りない気がします。
目の前の人への配慮だけでは何が足りないか?
例えば、仕事帰り、軽い気持ちで検査結果を聞きに病院に行ったら、
「即入院してください、手術します。」
とお医者さんに真顔できっぱり言われました。
どんな気持ちがすると思いますか?
明日の仕事の予定、家族の事、会社の同僚の事、しばらく会っていない両親、誰に何を伝えよう?そもそも直ぐ手術って?と頭の中は混乱し不安が駆け巡ります。
こんな時、目の前の相手へ寄り添ってあげるだけで不安は解消されるでしょうか?
どうしたら、この不安から救い出し、導いてあげることが出来るでしょうか?
ベテランの看護師さんの対応に、すごく感動したことがあったので、思わず、「どうして、そんなに気の利いた対応ができるのですか?」と聞いた時、その答えを得た気がしました。彼女の言葉はこうでした。
「私たちは、今の患者さんがどういう状態にあるかを、しっかり申し送りして共有して理解します。身体の状態はもちろん、どんな気持ちか、何を言っていたか、ご家族はお見舞いに来ていたか、仕事の復帰を焦っていたか、等。そして、もう一つ、これからどんな治療が行われるのか、先生がどんな方針を立てているのか、退院までの計画はどうなっているのか。今の状態、今後の方針の2つから、今日は何をどんな順番で行えば一番いいかを考えているんです。」
今の患者さんに寄り添う看護師さん、そして、患者さんを快方に向かわせるために方針を立てる医師、この2つが入院患者の不安を取り除いているのだな、と実感した瞬間でした。
敢えて言語化すると、突然、普段と違う環境に投げ込まれた人の不安を取り除くには2つの要素が必要と言えそうです。
今の目の前の相手に寄り添い理解する力 x 未来の相手の状態を示し希望を与える力
実はこの2つの要素は、企業で新規事業開発に放り込まれた人を導く時にも必要な視点です。緊急入院とは異なるかもしれませんが、普段と違う場所に放り込まれて、勝手も分からず不安という意味では、かなり似ている部分があると思います。
新規事業開発であれば、
・今のその会社の状況は?
・担当者の経験値や状況は?
・これまでに染み付いた習慣や文化は?
を理解しながら、
そこをスタート地点として、未来のありたい姿に持っていくには、
・どのぐらいストレッチさせられるのか?
・そもそも目標をどのぐらいに置くべきなのか?
こうした事を考えながら、ベストな着地点をクライアントと一緒に見つけていきます。
今のその会社に寄り添う、未来を指し示すという点では、まさに、看護師と医師の二役が必要を使い分けながらの仕事になります。
では、この”気が利く力”はどうすれば高められるのでしょうか?
看護師さんと言えども、流石に新人さんは自分のことに精一杯で、今の状態と今後の方針から、先回りして”気が利く力”を発揮するどころか、周りが見えていないこともありそうでした、
心も身体も病んでいる状態の人たちばかりの空間に社会人としていきなり立たされるのですから無理もないと思います。勤務中はいつ患者さんに呼び出されるかもしれません。不安な状態にある患者さんは、普段よりもセンシティブで我儘になっている。しっかりとした技術を求められる上に、接客業としてのヒューマンタッチな振る舞いも求められる職場です。日々現場でフィードバックが受けられる。大変ですが、”気が利く”力を鍛えるには、打って付けの職場だなと思いました。
日々リアルなフィードバックを受けられる場は本当に重要です。
このリアルなフィードバックサイクルを回し続けることが”気が利く力”を高める方法だと思います。
リアルな、対面での、直接の、明確な言葉と態度によるフィードバック、
それはロジカルで腹落ちするもの、不条理で感情を伴うもの、両方必要です。
看護師さんの様に、日々、多様で、センシティブで、我儘な、生の人間に対応してフィードバックを強制的に受ける職場は別として、
我々の働く環境は、日々の業務はチャットの報連相で、ワンオンワンミーティングもオンラインで済ますことが多くなっています。直接の刺さるフィードバックを受ける機会は減っています。
敢えて、スローダウンして、深く対話する時間をとってみてはいかがですか。
一朝一夕では無理かもしれませんが、続けていけば、きっと、成長のきっかけを作り出すことができます。
時間と手間がかかることには、時間と手間をかけるしかない。
これも一つの真理です。