最近はイノベーションという文脈だけでなく、ジョブ理論についてもご相談を頂くことが多くて嬉しい限りです。ジョブ理論についてそのようにご相談を受ける時は、大きく分けて2つのタイプがあることを先日発見しました。
- 顧客を知らないため、もっと理解したいと思っている
- 顧客を知ってはいるが、顧客に向けた働きかけに問題があると思っている
それぞれについてもう少し詳しく説明しましょう。
タイプ1:顧客を知らない
最初のタイプは、単純に「顧客を知らない」ことを自覚している企業です。代表的なのは、すでにモノを作ったけれどさっぱり売れず、作る前に顧客のことを考えていなかったことに気づくようなシチュエーションです。あるいは、新しい市場を狙いたいけれど情報が取れない、取り方がわからない、整理の仕方がわからない、やってもやっても手応えがない、といった状況です。
このような場合には、もちろん顧客との接点を増やします。具体的にはインタビューや観察(エスノグラフィー)を行います。もちろん、インタビューや観察で得た情報はJOBSメソッドを活用するなど、ジョブの観点で整理するのがよいでしょう。顧客は誰なのか?ジョブは?ジョブの目的は?ジョブ解決の障害は?代替解決策は?といった問いで得られた情報を整理します。手軽に行うにはジョブ調査もおススメです。
ジョブの観点で顧客を知ることで、その顧客が本質的にやりたかったことが見えてくるはずです。既存の市場にある商品だけでは顧客が不満である理由や、どのような商品なら新たに採用されうるのか、といった答えが得られます。
タイプ2:顧客を知っているが、見つけられない
このタイプの企業では、マーケティングが徹底されている傾向にあります。そのため、「顧客像」はしっかり持っています。にもかかわらず、その顧客像に“リーチ”できていないとの自覚症状を持っていたりするのです。
「都市部に住む20代~30代の仕事を持つ女性」「~意識が高く、習い事にも通う…」などと言ったペルソナを決めていることも少なくありません。このようにペルソナを明確にすると、「顧客像」ははっきりするものの、分かった気になるという欠点もあるのがやっかいです。
この場合は、まず抽象的な「顧客像」についてはひとまず置いておきます。そのうえで、顧客が製品を購入する必然性について考えることを行うのです。
必然性。
必然性、というのは買わないといけないような理由ということです。
都市部に住むことや、年齢は、買う人を表してはいますが、買う理由ではありません。性格も理由ではありません。私は新しい物好きですが、すべての新しいものを買ったりはしません。
風邪を引いたら、風邪薬を買うのは必然性が高いです。
同様に新築の家を買うのに、ローンを申し込むのも必然性が高いです。多くの方は、不動産を現金で買うことができず、他の個人から借りたりすることも難しいからです。つまり「ローン」という商品を買う顧客像を理解するには、いくらの家を買いたいのか?いくらの現金を持っているのか?他の現金調達手段は?といったことを理解するのが手っ取り早くなります。(これらのことをジョブ理論では「状況」と呼びます)。つまり、顧客の年齢や性別よりもはるかに知っておきたいことが山ほどあるんです。 顧客像に加えてこれらの状況を押さえておくことで、新たな顧客も見つかりようになります。