「歴史の年号を覚えて将来の役に立つの?」
「π(円周率)って社会に出て何か役に立つの?」
って、時々子供に聞かれませんか?そもそも自分自身が勉強が嫌になって「こんなの役に立つのかな?」なんて疑問に思ったことがあるかもしれません。
先日、テレビのバラエティー番組で円周率が役に立つ場面が紹介されていました。一見無駄な小数点以下が無限に続く無理数πが日々役に立つ場面として、ケーキ屋さんで丸いケーキの側面を囲うフィルムの長さを測ったり、美容院で髪の毛を巻く時のカーラーの径を測るシチュエーションなどが紹介されていて、なるほどな~なんて一瞬納得したものの、じっくり考えてみるとちょっとモヤモヤが…
「学校で習うけれど社会に出て一番役に立たない知識ランキング」があるとすれば、πよりもきっと微分・積分は上位にランクインしそうなのですが、微分、これはとてもとても役に立つんだと強く反論したいです。
目次
医療崩壊を防ぐための微分
病院には限られた数のベッドしかなく、それ以上の患者がいると診てもらえません。治療さえ受ければ治るけれど、治療がなければ亡くなってしまうような病気もあります。そのような事態を防ぐため、緊急事態宣言が敷かれ、「新規感染者数」が日々管理されています。「新規感染者数」が増えているかどうか、減っているかどうかを私たちはとても気にしています。新規感染者がゼロでない限り、患者は増え、ベッドを使用してしまうにも関わらず、新規の感染者が減っていれば安心し、増えていれば不安、というお馴染みの構図です。
これはなぜかというと、入院者数だけを見ていると「対策が遅れる」からです。ベッドが埋まりきってから対策をしても遅すぎます。入院者数が増えていれば、ベッドに余裕があってもいずれは埋まってしまいます。そのため、入院者の数を微分した新規の入院者や感染者を見る必要があるのです。さらに、増え方の増減、つまり患者数を2回微分した数も見ることによって、「先行指標」を手に入れることができるのです。
売上は遅行指数
同じように、売上というのは一定期間(大抵は1年間)に会社が売り上げた金額です。売上から費用を引いた利益に対して課税されますので、売上や費用の管理については義務づけられていますし、売上から利益を計算するP/L(損益計算書)は経営の基本とされています。しかし、この通りに売上で自社の管理を行っているとすれば、これは大きな間違いかもしれません。1年経って予定を下回っていれば、すぐに対策をしたとしてもその結果は1年後にやっとわかる。仮に月次で売上管理を行っていたとしても、1カ月単位での改善しか望めません。
そこで微分の登場です。売上という遅行指標に対応する「先行指標」を手にいれることで一気に有利に立てます。実店舗なら来店者数の増減、オンラインなら新規ユーザー数、B2Bなら新規リード数などをウォッチしておくとよいでしょう。
チャーンとは
実は最強の先行指数は「Churn = チャーン」なのです。Churnとは見慣れない英単語ですが、攪拌するという意味から転じて顧客の離脱を指すようになりました。これは特にSaaSのようなサブスクモデルにおいては重要な変化率を表す数字です。例えば、テレビCMをきっかけに新発売された商品を購入しても、期待したジョブを解決してくれなかったために、使わなくなったり、捨てたりしたモノありませんか?このようなとき、一旦は売上があがったとしても、チャーンが発生し、もう二度と顧客化が望めない状態を作ってしまいます。逆にチャーンがゼロ、つまり一度購入した顧客が離脱しない状況を作り出すことができれば、新規を獲得した分だけ純増する状態になります。微分最強。
それって役に立つの?って次聞かれたら
微分はその中でもかなり強い部類に入りますが、一見役に立たないけれど将来のカギを握るようなことは他にもたくさんあります。学んだときにはメリットが感じられなかったとしても、スティーブ・ジョブズがかつて「Connecting Dots」と呼んだように、後になって断片的な知識やスキルが繋がるということは珍しくありません。なので、次、子供に「~って役に立つんですか?」って聞かれたらスティーブ・ジョブズのスピーチを引用するかもしれません。