ペイシェントジャーニーという必要悪

Written by 津田 真吾 on 2021-08-10

ペイシェントジャーニーという言葉があります。

ペイシェントジャーニーとは、医療系サービスを受ける人が医療サービスに辿り着き、医療サービスを受け、症状や生活の質が変化するまでの行動や感情の過程を表す言葉です。似た言葉でカスタマージャーニーという言葉がありますが、ペイシェントジャーニーは医療もビジネスだと認識してカスタマージャーニーから借りてきた概念です。

アメリカを筆頭に医療がビジネス化しています。つまり医療は国民が受ける平等な社会インフラから一歩抜け出し、医療は消費者が選ぶ「サービス」として見なされるようになっていることです。医療が「サービス」ということはどういうことかいうと、病気になったり体調が悪い消費者が、治療を受ける病院を選んだり、そもそも自主的な療養などで問題解決するかを決めるということです。

例えば、私は不調を感じると、その症状をGoogleで検索し、よくある病名であれば寝て治します。それで不安が残るようなら近くの病院をさらに検索し、受診し医師の診断を受け、治療方針を相談するといった行動をとります。最近は自分自身が病院に行くような状態になったことは一切ありませんが、家族の不調であっても同じ流れです。診察の結果、薬を処方されれば、薬局に行き、薬を購入し服薬することになります。

カスタマージャーニーを描くうえで見落としがちなのは

  1.  病院にかかってからが医療システムの入口なので、病院に行くまでの医療の「無消費」がある
  2.  病気という症状の前に不安という心理的なQOLの低下がある
  3.  ジャーニーの冒頭に、Google検索や知人の意見といった重要なプロセスがあり、医学的なエビデンスを扱うには適していない情報に患者は将来を委ねている

という3つの点です。

なので、医療系ビジネスの成功のためだけでなく、私たち自身のQOL向上のためにはペイシェントジャーニー全体を考えて向上させていかなければなりません。

しかし、しかしです。

ペイシェントジャーニーという言葉の響きはどうしても好きになれません。

なぜなら、ペイシェント(患者)という、命の危険もあり得る困った状態にいる私たちがジャーニー(長い旅路)を辿ることを前提としているからです。先ほどの例を見ても、非常に長いです。まずはちょっと心配になって、ググって、受診して、診断結果を聞いて、治療方針に合意して、処方箋を薬局に持っていき、自ら服薬します。服薬後、もう一度通院することもあれば、そのままのこともありますね。とにかく、長い!これが希少疾患だったりしたら、たらい回しの連続となり、病名を知るだけでも長いジャーニーとなってしまいます。

ペイシェントジャーニーの問題

ペイシェントジャーニーを洗い出すことから医療系の新規事業を考えている企業は少なくありません。カスタマージャーニーのようにペイシェントジャーニー全体を見渡すことはとても大切なことです。しかし、ペイシェントがジャーニーをすることを当たり前だと思ってしまうという弊害もあります。このような前提でサービスを検討しているチームには、私は「無駄な旅を患者にさせない」ように注意喚起しています。しかしながら、注意をしても患者がジャーニーをすることが当たり前すぎて、各ステップの中での小さな課題ばかりを見てしまう企業も少なくありません。さらに、患者側から自社が提供する治療サービスや医薬品、医療機器を患者が受けに「来てくれる」という前提もおかしいです。患者は「お客様」という側面を持っているサービスの受け手である以前に、体調が悪いのです!

医療が行きわたる前にはペイシェントがジャーニーすることには合理性がありました。なぜなら、医療が国民全員に行きわたる以前の時代、医師や病院は本当に不足しており、多くのステップを余儀なくされていたからです。そういう時代においては、患者ではなく貴重な医療リソースをなるべく効率的に活用する合理性はあります。しかし、医療も高度化し、一人一人の生活や人生観に即したQOLを目指す今の時代には考え方とは合わなくなっていると感じます。

テクノロジーは障害を取り除き、無消費をなくす

最近では私は明らかに異なるジャーニーをすることにしています。まず、不調を感じるとGoogleではなくAI受診相談Ubieを利用します。Ubieのデータベースは、万能型の検索エンジンであるGoogleではなく、医学情報だけをもとに作られています。また、人気のあるウェブサイトという検索結果ではなく、医師の思考回路のようなAIを搭載し、関連する病名を絞り込ります。なので、ジャーニーの一歩目の信頼感が全く違います。深刻な病気に関係しそうであればアラートしてくれるので、不安への対処もしてくれます。

例えば、「めまい」を感じたときに考えられる病気はこのように表示されます。

AI受診相談Ubieの画面

私が数年前から発症した花粉症の症状を入力すると、以下のような画面になります。

症状に関連しそうな病気が表示されると、近くの病院もリストアップされたりして、受診する際にも便利なのです。

全体のジャーニーが1つアプリで完結するのは嬉しいです。でも、Ubieが本当にすごいのは今まで「無消費」だった「そもそも受診するかどうか決めたい」というジョブを解決している点です。今から思い返せば、AI受診相談Ubieを使う前は、分かりやすいサイトにめぐり合うまで何度もGoogle検索をしていた気がします。

ペイジェントジャーニーであろうと、カスタマージャーニーであろうと、無消費を見つけることはとても大事です。しかし「無消費」は、消費が行われていないため従来のマーケティング手法では見逃されてしまいます。行動観察やインタビューを行って顧客の「ジョブ」を把握することが本当に大事になります。

クリステンセンは著書『イノベーションのジレンマ』に「小さすぎる市場は分析できない」ため、既存事業者は無視したり軽視してしまうと記しました。でも、「無消費」は存在していますし、適切なサービスを提供することができればサービスの消費者と変わることをUbieが証明しています。2021年6月に月間利用者数が100万人を超えたことを発表しました

―最後に―

医療システムは現在、非常に複雑な構造になっています。私たち一人一人が異なる体質を持ち、異なる生活を送っている上、病気も非常に多く存在しているからです(Ubieには執筆時点で962もの病気が登録されています)。実際、私たちがCOVIDに直面しているように新しい病気も生まれ続けています。防げる病気の予防、さらには研究者や企業、病院や医師の努力によって寿命は延びていますが、寿命が延びることによって別の病気も生じています。

なのでもし、自分や家族に何かの症状があったり、体調の悪さを感じたらスマホからAI受診相談Ubieでチェックしてみてください。その複雑さが少しシンプルになり、ジャーニーは短くなるはずです。

そしてもし、人の健康に携わるような事業をする意志があるようでしたらペイシェントはジャーニーなどしたくないんだという前提を持ってほしいなと思います。そして、もちろん、そのような思いを持っていらっしゃる方には、INDEE Japanにお声がけ頂き、共に事業を創りたいと思います。

スタートアップにとっての経路依存性とは?

Written by 津田 真吾 on 2021-06-28

どうやったら会社を成長させることができるのか?

今では本やネットの記事にあらゆる情報があふれていて、さまざまな戦略フレームワークやテクニックや事例が簡単に入手できますよね。実際、このブログにはジョブ理論ピッチのテクニック、成長戦略の描き方や事業開発のコツも紹介してきました。この手の知識はあればあるほど成功には近づきますが、知識ではカバーできないことの一つに「経路依存性」というものがあります。

経路依存性とは、簡単に言うと「物事を為す順序」ということになります。

人を増やしてから、開発をするのか?
開発を進めてから人を増やすのか?

ピッチコンテストに出てから、プロダクトをローンチするのか?
ローンチしてからピッチコンテストに出るのか?

資金調達を先に行ってから海外展開するのか?
海外展開で資金調達をするのか?

近い言葉に「優先順位」というものがありますが、ちょっと意味が違います。例えば、「マーケティングと開発の優先順位をつける」というのは、どっちも大事で、どちらにより時間とお金をかけるのか?という問題ですが、「経路依存」というのは、ある一方向に進んでしまうと戻れず、「違う景色」の中で次の意思決定をしないといけないことを指します。いわゆる「タラレバ」です。

さっきの例でいえば、開発を先に進めるとバグも埋め込まれてバグフィックスに向いた人を雇いたくなってしまいます。逆に、人を先に増やす決断をすれば、開発メンバーが豊富になりますが、分業されたアーキテクチャになります。順序が違うと、人数やプロダクトが同じように見えても、その中身は結構違うものになってくるのです。

スタートアップの経営者(社内スタートアップのリーダ含む)は、次の一手として何をするべきか悩んでいます。自覚しているかどうかは人によるけれど、今何をするべきか悩んでいたり、次の一手を最適化したい、成果を最大化したいと願っています。

「経路依存性」という言葉を知らなくても、次の一手に苦労し、色々な人に相談する人がいます。色々な人の話を聞くのは一見悪くない判断のような気がしますが、スタートアップの早期であれば早期であるほど、これはマズい結果となる可能性があるんです。早いステージのスタートアップは、プロダクトが存在していても完成度は低く、顧客もユーザーも多くいません。リソースも少なく、知名度も皆無です。そういう時期に得られるアドバイスは、間違っていません。「開発を進めた方が良い」「メンバーを増やそう」「資金調達を教えよう」「顧客を紹介しよう」など、ないないずくめのスタートアップにとって、指摘されることはは当たっています。話にウソがないだけに、アドバイスを聞いている起業家は納得してしまいます。親切な助言者が多くなると、いわゆる「アドバイスのフォアグラ状態」に陥ってしまいます。

「アドバイスのフォアグラ状態」にあるリーダーは、山積みになった重要課題に直面し、何から手を付けてよいのか硬直してしまいます。概してスタートアップを始めるような人は行動力が高いのですが、重要な課題をたくさん目の前に置かれるとさすがに体が止まってしまうようです。

「今、何をするべきか?」という問いは将棋に喩えると、「次の一手」ということです。一手一手ごとに盤面は変わり、その順序の大切さを忘れてはいけません。特に、大切なのはMVPをいつローンチするのか?そのフィードバックを得てプロダクトに改善を重ねるのと、資金調達や開発チームの増強はどういう順序で行うのか?といった意思決定です。さらには、社員第一号はビジネスサイドなのか技術サイドなのか?といった意思決定も、未来の経路を決定づけているので注意が必要ですね。

この先はポジショントークも含まれていますが、やっぱりコミットしていない人からのアドバイスはある程度割り引いた方が良いと思います。そして「専門家」も、その専門性に偏った助言をする傾向にあるので、そういうバイアスに気を付けた方がよいです。税理士の意見を聞いたがために、スタートアップに時期尚早な会計システムを導入してしまい、売り上げもほとんどないのにもかかわらず、細かな原価計算の集計作業に疲弊してしまった悲劇なども見てしまいました。こういう経路依存性をもたらす意思決定をするときに信頼する相手が“Skin in the Game”=リスクを背負っているかどうか、は非常に大事なファクターになるのではないかと思うんです。アドバイスによる中長期的な影響を共有できるのか、ということです。

さらにポジショントークを超えて暑苦しいかもしれませんが、こうした思いが私たちが立ち上げたシードアクセラレーター(ZENTECH DOJOX-DOJO)に込められています。起業家と一緒にリスクを取り、「アドバイスのフォアグラ状態」を避けることで未来への経路を高めていきたいと思います。

コロナで見つけた世界遺産。

Written by 津田 真吾 on 2021-06-21

新型コロナによるステイホーム生活を少しでも楽しむため、私のエンタメ習慣は大きく変わりました。どう変わったかというと、大きく2つあります。

一つは、NETFLIXとAmazon Primeなどのストリーミングサービスによって、映画や連続ドラマの消費が増えたことです。圧倒的に、増えました。減った通勤やその他の移動時間は「SUITS」や「愛の不時着」「クイーンズ・ギャンビット」が埋めた計算になります。ですが、ドラマの本数と時間を合計すると、かなり睡眠も削ってしまってる気がします……。映画も結構見ましたので、色々紹介したいのですが、また別の機会にさせてください。

もう一つは、ゲームです。ゲームと言っても、アナログなボードゲームです。このボードゲーム、通はボドゲと呼ぶそうですが、ボードがなく、カードだけとか、サイコロとカードといった組み合わせも、ボドゲです。

普段私はAI化とかDXとか言ってますがエンタメという「楽しみ」や「味わい」というジョブに関してはアナログは最高です。楽しみは非効率な方が良いんです。(感情的ジョブを効率的にという事業アイデアの相談を受けますが、この辺は別の機会に述べたいと思います。)そういう意味で、世界がどんどんデジタルになったとしても、遺産のようにボードゲームは残るのではないでしょうか?それはまるで、オンライン化が進んだ現代において世界の旅行市場が成長し続けているのと同じかもしれません。チェスもボードゲームの一種ですが、AIに人間がかなわなくなったとしても、根強いファンはいます。むしろ「クイーンズ・ギャンビット」によって世界的なチェスブームが再来したくらいです。

我が家でも新型コロナの流行とともに、家族全員が家にいる時間が増えました。うちは5人家族なのですが、週末も出かけなくなり、夫婦に加え、中学生と高校生と大学生の5人が一緒に楽しめるものを、ということでボドゲ、しかも世界的に人気の高い世界遺産級のものに手を出しました。いくつか紹介したいと思います。

モノポリー Monopoly

最初は元々家に会ったモノポリーから始めました。これは言わずと知れた不動産売買ゲームです。運の要素もありますが、有利な交渉をタイミングよく仕掛けることで不動産を独占し、多くの富を手に入れることがゴールです。中学生も十分に楽しめました。たぶん、小学校高学年から普通に遊べるのではないでしょうか。欠点としてはとてもゲーム時間が長くなることがあるのと、最後の最後はサイコロの目で大きく勝敗が決まる運ゲー感が残ることです。しかしボードゲーム界の殿堂入りをしているとも言えるモノポリーは何回やっても飽きることなく楽しめます。最初はルールを知らなかった子供たちも、ゲームの盤面に書かれている価格ではなく、自分にとっての価値を感じながら交渉をするほどゲームに熟達することができました。

カタン Catan

モノポリーが盛り上がったので、これもボードゲーム界の代表と言えるカタンもやってみることにしました。通常のカタンは最大4人までしかプレーできないので、最大6人まで同時に遊べるようになる拡張版という追加キットも入手。多くのボードゲームの定員は4人となっているため、こうした拡張キットは嬉しいですね。ゲームバランスが多少変わりますが、違いを味わうという楽しみ方もあるかもしれません。

さて、このカタンというゲームは、島の開拓者となってプレイヤーが資源を獲得しながら道や町をつくっていくゲームです。サイコロの目によって獲得する資源が決まります。なので「確率」についても一定の理解がないと勝てません。さらに獲得した資源の使い道には戦略性が求められます。家族5人でやると、この戦略性に面白いほど差が表れました。モノポリーでは、交渉の巧拙というのが勝敗を分けますが、カタンでは状況に応じた戦略を選択できるかどうかがカギになります。プレイヤーによっては、戦略の好き嫌いがあったり、盤面に応じた変化が取れなかったりします。私自身、このことに気づくのが遅く、ずいぶん子供たちに悔しい思いをさせられました。プレイスタイルも色々なパターンがあるので、子供たちの色んな頭の使い方に感心するという、子供の成長も楽しめる味わい深いゲームです。

カルカソンヌ Carcassonne

カタンを相当やり尽くすと、ちょっと毛色の違うゲームを探すことにしました。特に、カタンもモノポリーも最後までやると1時間を軽く超えてしまうので、ゲーム時間の短めのものを探し、約45分というカルカソンヌというゲームを買いました。これは、道や城や広場などが描かれたカードを繰り出しながら盤面を拡大していく「陣地拡大ゲーム」です。広い陣地を一気に囲うことで、大量得点を狙ったり、小さく堅実に得点を重ねたり、より細かい戦術が大事なゲームです。細かい戦術に加え戦略的に他のプレイヤーより多くの得点を獲得することで勝利できます。このゲームはやってみると、麻雀に似た感覚で、運よりも他者との駆け引きやリスクの取り方が大事な要因となっているようです。そのため、家族のなかではボロ勝ちしてしまい、評判悪かったです。ルールは簡単ではありますが、戦術と戦略がないと、上級者にはまったく歯が立たないため、相手を選ぶゲームと言えるかもしれません。

ワイナリーの四季 Viticulture

これまでの3つのゲームは、プレイヤー同士の戦いという側面が強く、場合によってはバチバチと喧嘩にも発展しかねません。子供によっては負けたことなどを根に持ち、相手が4人いるにも関わらず特定の相手に厳しく交渉したり、邪魔をしたりと個人攻撃的な行動を取ります。そうなると「仲良くみんなで楽しみたい」というジョブの不満点となり、せっかくのゲームが台無しになり得ます。そこで見つけたのがこの「ワイナリーの四季」というゲーム。このゲームは相手とは確かに競うのですが、それぞれのプレイヤーが、自分のワイナリーを開発し、価値の高いワインをつくっていくゲームで、相手の邪魔はほとんどできません。着々と、粛々と自分のワイナリーを経営するので、ゲームと言っても競うというより自分の趣味に打ち込めるような楽しみですね。有名なボードゲームではないですが、結構好きです。ワイン好きなら好きなワインをつくる感覚も得られてもっと楽しめるかもしれません。

おススメは?

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言葉が世界観をつくる

Written by 山田 竜也 on 2021-06-14

5月の連休前に子供が通う小学校で、全校児童に一人一台タブレットが配られた。まだオンライン授業的な使い方はされておらず、動画見たり宿題のドリルを解くくらいだが、色々触りながら使い方を覚えている様だ。
おそらく、子供達は多くの親より早く使いこなせるだろう。まさに、習うより慣れろを実感する瞬間だ。
 
先日、お絵かきツールでカラフルな同心円の模様を描いていたので、聞いてみた。
「きれいに描けてるね、この色はどうやって選んだの?」
「タブレットから出てきた」
「(カラーパレットの順番なのかな・・・)どうして出てきた順に選んだの?」
「きれい好きだから」
「???」
 
頭の中に?マークが浮かびながら
ここで頭ごなしはいけないと思い、彼の世界観を除いてみた。
「きれいってどういう事?」
「きれいには二つあるんだよ」
「汚れているのをきれいにするの、きれいでしょ」
「後は・・・」
 
言葉が出てこなかった様なので、こちらから質問をしてみた。
「整理されている、整っている?」
「きちんと守っている事」
 
どうやら、規則やルールを守る・従うという事も、彼の世界観の中では”きれい”と定義されている事が分かった。
クリーンな政治家といった文脈なら、理解できなくもない意味のチョイスだが、当然そんな文脈を知っているとは思えない。
改めて、単語は文脈次第だなと思うと同時に、文脈や、その言葉をチョイスしている背景、そして、相手の中にある世界観を理解しないと、発言の真意は分からないと気付かされた。

 
 
 
もちろん、普段から、文脈を意識したコミュニケーションはとっている(つもりだ)し、仕事柄、背景は読んでいるつもりだが、文脈の更に深い所にある相手の価値観や見ている(見えている)世界観まで思いを馳せていることは少ないかもしれない。
 
意識をしていると言っても、そもそも、仕事や普段の生活の中では世界観まで違う人とコミュニケーションする機会は少ない。日本の、東京の、企業の、そこで働く人の、と、幾つものアンド条件で絞り込まれた人と接している中では、ある意味、ビジネスという共通言語の中で話している。この時点で既に偏った世界観の中にいるのかもしれない。
 
子供は最も身近にいる、最も離れた世界観の持ち主だ。
彼らの世界観を覗くことは、無意識に凝り固まっている大人の世界観に揺らぎを与えるための良い刺激になる。
 
一方で、彼らの世界観は、日々の言葉のシャワーの中で、形成されつつある壊れやすいものだ。こちらが理解できない表現(言葉の稚拙さ)を頭ごなしに叱ってしまうと、自分と異なる物の見方に気付く機会を失ってしまうし、子供の脳を雁字搦めに縛り付け、新しい物の見方を潰してしまうかもしれない。
 
 
”言葉が世界観をつくる”という事を実感するとともに、アンラーニングの不要な真っ白な脳に、良いシャワーを浴びせていこうと思い直すきっかけになった。
 
在宅勤務で家族で過ごす時間が増える中、我々大人はより振る舞いを見直す必要があるかもしれません。

ハード以外のハード系スタートアップとは?

Written by 津田 真吾 on 2021-06-06

私たちは「ハード系」のスタートアップを支援しています。

なぜ「ハード系」という微妙な言い方をするかというと、実はAIソフトウェアを開発しているスタートアップも支援しているからです。例えば、Ubieは AI問診やAI受診相談というサービスを展開するSaaS企業です。DeepEyeVisionはAIを用いた画像診断支援を提供しています。MENOUは、医療画像のアノテーションや外観検査をAIで自動化するサービスを展開しています。

AIと聞けば、最近でこそ最先端の技術を持ったセクシーなスタートアップという印象を持つかもしれませんが、数年前までは怪しさ満点で実用性に疑問符が付くのが世間一般の評価でした。しかもAIを医療や、地味な製造業の目視検査に用いるなんて…と、懐疑的な目で見られるのもしばしば。当時のAIが注目されていたのは、猫と犬を見分けるとか、ゲームに人間に勝ったり、とセンセーショナルさが先行していたように思います。そういうセンセーショナルさから、広告やマーケティング目的のAIは、実用性以上に見た目の印象(ハイプ)が先行しました。

ところが、AIをヘルスケアや製造業の過酷な労働環境に応用しようとしているスタートアップも一定数います。彼らは目立つマーケティング向けのAIを尻目に、本当に役立つAIを開発し、本当に人に信頼されるサービスを提供するために起業した人たちばかりです。目立たない、地味なAIスタートアップです。

地味AIはハードなのか?

それでは、こうした地味な課題に取り組むAIスタートアップはハードなのでしょうか?「なぜハードウェアスタートアップは“ハード”なのか?」にも書きましたが、ハード系スタートアップが難しくなる理由は以下の通りです。

  1. 物理法則に支配されている
  2. ものづくりに時間がかかる
  3. いずれ製造コストの安い競合に市場を奪われる
  4. スケールするための投資が必要
  5. ピボットができない

この5つの点を一つ一つ見ていきましょう。

まず、1はそのまま“地味AI”に当てはまります。2については、一見ソフトウェアで構成されるものづくりに時間があまりかからない印象を持つかもしれませんが、そうとも限りません。なぜなら、信頼のおけるデータをたくさん取得し、それを正しく学習することで初めて実用レベルになるからです。現場のデータを取り、データを整え、データに正しくアノテーションを施し、機械学習を行うのは一朝一夕ではできません。

例えば、UbieやDeepEyeVisionは医師が、MENOUでは目視検査の熟練者がこの学習に深くかかわっています。

POC(概念検証)レベルのものが出来たとしても、実用レベルには届かないAIが多いのは、この活動の難しさを示唆しています。しかも、こうして手間暇をかけたAIも劣化版AIが参入するリスクが潜んでいます。3のコピー製品リスクは地味AIスタートアップも抱えているのです。

4のスケーラビリティも、学習工程を効率化し、再現可能にする投資はそれなりに必要です。物理的な生産設備や流通が不要になるので、ハードウェアほどではないですが。ピボットについてはどうでしょう?AIの「実用」を目的としているスタートアップにとって、実はあまりピボットする余地はありません。これまでの経験上、ハード系スタートアップがPMFさせるための道筋は、それほど多くの選択肢はありません。確率の高いものから順に、素早く検証していく必要は他のハード系スタートアップ同様あるのです。

この先はポジショントークですが、ハード系スタートアップに取れる選択肢の引き出しを持っていて、どんなビジネスモデルの仮説を持てるのか、確率の高いものから仮説検証する手順などは、やみくもに取り組んでも分からないことです。仮説の質が高く、手順の引き出しが多いメンターがいるかどうかは、大きな力になるはずです。

X-DOJOでは、AIをハードに実用化するスタートアップを引き続き募集しています。