atd2018ICEで感じた3つのこと


ASTDの頃から参加しようと思いつつ、周りから話を聞くだけに終わっていたatdに参加してきました。今年のatd2018ICE(International Conference & Expo)は5月6(日)~5月9日(水)に米国カリフォルニア州サンディエゴのサンディエゴ・コンベンション・センターにて開催されました。今年は設立75周年、しかも基調講演が元アメリカ合衆国大統領のバラク・オバマ氏ということもあり、参加者の合計は13,000名と過去最高となりました。日本からの参加も昨年より大幅増加の269名、米国外からの参加者2,450名の中では、カナダの349名、韓国の298名についで3番目でした。
atdはまだまだ日本での知名度は低いものの、世界最大級の人材開発、組織開発、トレーニング等のプロのための非営利団体です。atdの前身であるASTD(American Society for Training & Development=米国人材開発機構)は1944年に設立されている。1945年、日本でいう終戦の前の年から脈々と活動が続いていることに改めて感動しました。
全体感に関しては多くの方がレポートしていると思うので、自分が感動したポイントに絞ってお伝えします。結論としては「人材開発、組織開発、トレーニング等に関わる人は参加すべきイベント、現地でしか感じ取れないものがある!」ですが、想定と違い期待を超えていたことを3つあげます。
・大規模なのに、寄せ集めではない、目的を持ったプロの集まり
・発表会ではなく、研究会である、しかも象牙の塔では無い
・セッションとエクスポの両面でトレンドを一覧できる、日本からの出展はゼロ!?
 

大規模なのに、寄せ集めではない、目的を持ったプロの集まり


とにかく規模がでかい。日本国内でも人事関連のイベントはあるが、1日の来場者として数千名規模のものが多い。しかも、一般の参加者はほとんど無料なので、展示会に集客のためのセッションが付いているという感じが否めないが、atdはセッションだけで、14種類のトラックに分かれて300以上のコンカレントセッションがある。そして同時開催のエクスポのブースは400を超える。そこに有料の参加費を払った参加者が13,000名なので、小さな街がコンベンションセンターに移動してきた感がある。
帰りのLYFTのドライバーに聞いたのだが、Comic-Con(コミックブックのコンベンション)では50,000人以上が集まり、タクシー等では身動きが取れなくなるらしい。当然街中のホテルも満室になり、参加者の多くは数十キロ離れた街から通うようだ。こうした状況を目の当たりにすると、Airbnbが生まれたのも必然と感じられる。
これだけ大規模になると、どこで、どんなセッションがやっているのか?効率よく回れるのか?と不安になるが、事前説明会での忠告に従い、アプリをDLしてタブレットに回ったおかげで、お目当てを逃さずに回ることができた。この辺りのロジスティクスは流石に洗練されていると感じた。過去から脈々と改善されてきたのだろうが、おかげで初めての参加でも快適だった。

イベント当日のためだけのツールととらえるとアプリは冗長なのかもしれないが、参加段階で計画を立てたり、スピーカーの著作を探したり、セッションのハンドアウトを共有したりと、アプリは大活躍だった。要はちょっとしたLMSである。こうした仕組みが目的を持った学習者としてイベントに参加する上では非常に役立った。atdは単なるイベントではなく、学びのプラットフォームであることを納得した。
当然多くのスポンサーがいるものの、商品・サービスの宣伝という色はほとんど感じなかったのも、atdとしてのテーマがきちんと打ち出されていて、寄せ集めではないところが理由だったのかもしれない。いわゆる教育ベンダー側も、エコシステムを支える一つとして機能していると感じた。ブースでも無理やりの売り込み感はなく、むしろ一緒にこの会を楽しんでいるようだった。
スピーカーも出展社も参加者もスタッフも、皆が等しくプロフェッショナルとして参加している、稀有な場所だった。
 

発表会ではなく、研究会である、しかも象牙の塔では無い

各コンカレントセッションは概ね1時間〜1時間半、講演、インタラクティブセッション、グループ討議を含むワークショップありと形式は様々だ。きっちり並べられた椅子に座って話を聞くだけというものは少ないし、スピーカーも全員がプロのプレゼンターなので、内容が期待と違ったということはありうるが、事前にハンドアウトや著作などで確認できるので、外す率は少ない。

そもそも、この時間帯はめぼしいものがないということが少なかった。14のセッショントラックで300にまたがる分科会から選ぶのだから、間違わなければ、一定レベルは担保されている。むしろ、参加したいものが同時間に重なっていて悩むことも多かった。
中身に関しては、どのセッションも単なる発表会ではなく、理論的背景があり、かつ、実践的なソリューションを伴っているものが多かった(つまり、使えるナレッジになっていた)ベンダーがスピーカーになっている場合でも、商品説明に終始することはなく、なぜ、そのテーマが必要かという問題提起から始まり、トレンドによる背景の補足があり、最後にソリューションとしてツールが紹介されるという形式だった。「発表会ではなく、研究会である」という理由は、この辺りにある。
例えば、初日の初回に参加したセッションは、elearningbrothers (https://elearningbrothers.com/)の以下のセッションだったが、eLearningにおいてゲーミフィケーションする際に見落としてしまいがちが重要な要素について語っていた。
タイトル:The Hero’s Journey: Exploring Often Overlooked Elements in Learning Games
スピーカー:Richard Vass, Daniel Dellenbach
ベースにあるのはジョーゼフ・キャンベルの千の顔をもつ英雄である。彼らのソリューションはeLearningの制作だが、単にインタラクティブにしただけのeLearningが多い中で、自分たちの違いをシンプルに訴求できていた。
最初は、atdの場でゲーミフィケーション?と違和感を覚えたが、人材開発に関わる人はテクノロジーには関心を持ってい無いという自分の完全な偏見だった。テクノロジーをツールとして利用するだけではなく、AIが人間の仕事を奪うと言われるような世界の変化の中で、タレント開発に関わる自分たちが仕事を再定義しなければならないという危機意識を持っていることに視座の高さを感じた。Together We Create a World That Works Better(共により良い世界をつくる)というatdのミッションに改めて共感した。
 

セッションとエクスポの両面でトレンドを一覧できる、日本からの出展はゼロ!?


「日本人から、あの、NTTか?」と聞かれることが多いと言っていたNTT Training inc. (NATIONAL TECHNOLOGY TRANSFER, INC.) Learn by doing をモットーとする技能伝承の会社です。
 
セッションできっかけを得て、エクスポでソリューションを探す。スピーカーに触発されてブースに足を運ぶ。広い会場を行ったり来たりするのは大変だが、セッションでテーマの全体感を掴み、エクスポでソリューションのトレンドが掴めるのは有益だ。テーマとしては盛り上がっていてもソリューションがなければ、課題提起だけで終わってしまう。最初はエクスポよりセッションを重視していたが、エクスポはatdの重要な要素だと再認識した。
Meet to Eat(交流食事会)で会ったサウジアラビア航空の人は、連続11年参加、4日間をかけてエクスポの全てのブースを周り、翌年の活動のネタとしていると言っていた。誰もがサムシングニューを求めている。それに答え続けていることがatdが75年も続いてきた秘密なのだろう。
残念なことに、日本企業の展示は一つもなかった。国内の展示会ではSI的に日本企業の事情に合わせた出展はよく見るが、世界的に普及させられるような製品が無いということだろう。テーマとしては禅に通じるマインドフルネスや働き方改革の最先端とも言える “ikigai” (生きがい)という言葉を耳にするのに、本来、強みでありルーツを持っているはずの日本は発信できていない。
 
厳しく言えば、「どんなに良いことを言っていても、普及させられることができなければ、存在しないに等しい」、最先端を輸入することも大事だが、せっかく良いものを持っているのだから、周りの情報に踊らされずに、本質的な発信をしていくことが大事だと思わされた。学習者として学ぶことは大事だが、貢献者として発信することにフォーカスしていくべきですね。
 

来年のatdは5/19〜22にワシントンDCで開催

興味がある方は、今から https://www.td.org/ をチェックしておくことをお勧めします。一過性のイベントへの参加ではなく、継続した学習プラットフォームとして活用すれば、その価値は何倍にもなる。そして、イベントへは目的を明確に定めて!そうすれば、収穫が得られることは間違いない!

Written by 山田 竜也 on 2018-05-29

ニューヨークでUBERとLYFTとTAXIを乗って気づいたこと(2)

前回はこちら

ニューヨークでUBERとLYFTとTAXIを乗って気づいたこと(1)

LYFT, UBER, TAXI が片づけるジョブ

タクシーやライドシェアサービスが共通するのは「移動したい」というジョブを片づける点です。
特に、荷物を持っていてなるべく歩きたくないとき、初めての街で迷いたくないとき、暑かったり寒かったり雨だったりで外を歩くと不都合なときに、タクシーやライドシェアを「雇い」たくなります。考えてみると、乗る前にだいたい行き先は決まっているんですよね。だから、捕まえるときは「その場」に来て欲しいし、行き先はすでに決まっている「目的地」ということになります。ジョブを言い換えると、
今いる場所から、次の目的地まで楽に移動したい。
 
そのジョブの体験を左右するところはいくつかあることがわかります。
 
(1)車を呼ぶ(配車)
(2)車を待つ
(3)車に乗る
(4)行き先を告げる
(5)移動の車中
(6)降車
(7)支払い
UBERやLYFTは、この全体を新しいものに変えています。配車はアプリでGPSの位置情報を活用したものしています。待つ時間は最寄りの空車をアサインすることで短縮化するとともに、待ち時間を表示しています。車を乗る際、荷物があれば手伝ってくれますし、車内は一般的なタクシーよりもはるかに清潔です。到着までの時間も表示され、最適経路から遠回りしているかどうかが一目瞭然です。降りるときも荷物を降ろしてくれ、支払いの必要もありません。特にチップについては額を考えたり、ねだられたり、断ったりといった煩わしさからも解放されます。
スマホのアプリのUIや経路検索、最寄りの空車をマッチングしたりするIT面の特徴、「シェアリング」といった目新しい側面に目がいってしまいますが、現在地から目的地まで移動したい、というジョブに注目したLYFT対UBERの競争には期待しています。ライド全体の評価が可視化され、比べられるようになったことで、タクシーの清潔さや、ドライバーの親切さといった人的な側面にも日が当たるようになったことも注目に値します。
 
日本では、タクシー業界が保護されていることもあり、ライドシェアのサービスは上陸していません。その代わり、「配車アプリ」が登場しています。全国タクシーという先行者がいる中、DeNAはタクベルというサービスをリリースするなど、数多くの企業が参入しています。しかし、利用者にとっては、配車をアプリでできる程度。タクベルでは支払いも楽になったようですが、全体のプロセス、つまり移動というジョブをもっとも気持ちよく片づけてくれる会社が市場シェアをとるのではないでしょうか。消費者としても、もっとよくなることを期待したいですね。
 
 

Written by 津田 真吾 on 2018-04-18

ニューヨークでUBERとLYFTとTAXIを乗って気づいたこと(1)

先日、ニューヨークに行きました。
ニューヨークは、イエローキャブと言われるタクシーがよく流していて便利な街として有名です。地下鉄ももちろん便利なのですが、タクシーなら行きたい場所の玄関まで乗せて行ってくれるので、楽ですよね。
最近は、UBERやLYFTといったライドシェア、つまり白タクも流行っているので、圧倒的なタクシー優位なニューヨークのマンハッタンでどういう違いがあるのか試してみることにしました。
事前の想定としては、3つ。

  1. いっぱいタクシーが流しているのに、スマホを出してアプリを起動して、行き先を登録する体験って煩わしいんじゃないか?
  2. LYFTは後から参入した分、UBERより良いサービスを提供しているかもしれない
  3. タクシー優位の街にUBERやLYFTは十分あるだろうか?

 
そして、実際に3種類すべて乗ってみての気づきは:

  • タクシーは、ドライバーによるバラツキが大きい。空港では、公認のタクシーへの案内なども充実していて確かに乗り易い。逆に、行き先を知らないドライバーも多いし、結局スマホの画面を見せながらナビしてあげることもよくあった。親切なドライバーもいて、移住してきたばかりという雰囲気を出している若者は、一所懸命にフレンドリーに話しかけたり、荷物を持ってくれたりした。しかし、メーターを倒さずに価格交渉をしようと試みてきた輩もいて、ちょっと嫌だ。発展途上国で毎回交渉するのは仕方がないが、先進国の公認タクシーでこれをやられると疲れる。
  • UBERドライバーは十分にいる。出かけるちょっと前に呼ぶなら、あまり待たずに車が来ます。ドライバーはみんな礼儀正しく、荷物を積むのもフットワーク軽い。市内の渋滞によって「あと5分」というアプリの表示はあまりあてにならないので注意が必要ですが、もしかしたらわざと短めに表示しているのかも。滞在中雨に振られたが、出かけるちょっと前に配車をして、来そうになったら外に出るとあまり濡れない。タクシーだと濡れながら拾わないといけない。
  • LYFTもたくさんある。UBERと掛け持ちのドライバーが多いようだが、看板をつけている車はないので、正確にはわからない。ドライバーは皆親切。UBERよりもアプリは軽い気がする。あまり言語化できないけれど、立ち上げてから予約までの体験はベター。良い車(キレイ&新しい)が多い印象だし、少し安い印象なので、もし総合判定ならLYFTを使うかな。唯一の欠点は、予約ができないこと。早朝のフライトに合わせて車を呼びたいなら、UBERは前の晩に時間指定の配車ができるのでとても便利だが、LYFTにはその機能がまだ実装されていない。
  • ホテルリムジン・・・これが最悪。空港に行くためにホテルのベルボーイにタクシーを頼んだ。そしたら、あのリムジンはタクシーと同じ料金だからといって勧めてくれた。ホテルが勧めるなら問題がないだろうと安心して乗ったところ、通常60ドル位のところ80ドル請求された。ちなみに、LYFTなら45-50ドル位だった距離だ。帰国日だし、クレームをする体験も消耗するだけなので泣き寝入りということになるが、ちょっといいホテルのベルボーイだからといって簡単に信用してはいけませんね。多分、一見さんであることを見越したぼったくりなんだと思います。

なぜぼったくりが起きるか?

価格というものは、買い手はなるべく安い方がいいし、売り手はなるべく高い方がいいわけです。タクシー利用者には旅行者が多く、そのため、移動したいという動機は強いです。そこで、タクシーのドライバーという売り手は、払ってくれる範囲内で高い値段を請求するということが起きます。もちろん、法外な金額を請求されて怒る客や、支払いを拒否する客も出ます。あるいは、他のドライバーはもっと安いといってクレームをするかもしれません。ですがタクシーなんて、2度同じドライバーに当たることはとても稀なので、「2度と乗らない!」と脅されたところで痛くも痒くもありません。乗客はタクシー以外の移動手段もないことが多く、ぼられる可能性が高くても仕方なく利用せざるを得ないケースが多くなります。
一方で、ドライバーはいつも同じ街を走っています。当然、ドライバー同士はコミュニケーションを取っています。あの客はいくら払ってくれたとか、ロシア人は怒ると払わないとか、どんどんノウハウが溜まっていきます。そんな知恵を身につけたドライバーによるいわゆる「ぼったくり」が横行しても何ら不思議はありません。

ぼらないドライバーが一番損

そうかと思えば、品位のあるドライバーもいます。プロ意識からとても誠実なドライバーや、ぼったくりが行われると街全体の魅力が下がり、旅行者や出張者が減るといった長期的で全体的な影響を気にしているドライバー。彼らはお客さんとの関係を一期一会の精神でしっかりとしたサービスを行うことで、その評判が街全体へと波及することを知っています。ですが、そういう意識の高い人は残念ながら一部です。意識の高いドライバーが良い評判を作り出し、ぼったくるドライバーがその評判を換金するとも言えます。
例えば、日本のタクシーでぼられることはあまりないです。そうすると、日本のタクシーは優良なドライバーが多いという評判で、お客さんが集まります。そのイメージに油断した客からぼったくると、とっても儲かります。いわゆるフリーライダーとして、他人の評判にただ乗りしているわけです。一度大手のタクシー会社に入社することで、会社の評判を簡単に手にすることができるのです。
タクシーに限らず、大きな組織になると、過去の実績や仲間の実績があることによって、一人がサボったり、ズルをしても、給料をもらえます。逆に、頑張っても収入があまり増えなかったり、評価された1年後の給料に反映されるなど、頑張るインセンティブも弱くなってしまうということが起きます。タクシーは政府がコントロールしている規制産業なので、クビにするなどの厳しい罰則や、極端な成果報酬を敷くことが難しいという側面もあります。

UBERやLYFTはインセンティブHACK

ご存知の方も多いと思いますが、UBER や LYFTを利用すると、ドライバーを評価するように求められます。つまり「評判」がすぐに個人に」紐づくのです。タクシー会社ではありません。しかも、その評判は配車を行う際にお客さんに直接伝わります。ドライバー個人が良心的なサービスをするインセンティブが働き、悪いサービスを提供しない仕掛けです。

そして、何よりも大事なのが、ドライバーになるようなドライバーは「個人の評判で仕事をした方が得な人」が多いということです。特に初期のドライバーとしてUBERやLYFTに登録するドライバーは、タクシー会社勤めだと報われない人たちです。シェアリングエコノミーということで、エコな生活を実現しつつ、タクシー会社の経費を中抜きする「もったいない」商法だと思われがちですが、コスト面の話だけではありません。ドライバーが優れたサービスを提供したくなる仕組みを提供し、結果として移動の経験が良くなっている点がこれだけ普及している背景にあります。

タクシーが規制産業であることを考えると、タクシーのサービスの仕組みは法律が規定しています。メーターを義務化することや、料金体系を画一化することで、法律はサービスを高めようとします。これにより極端なぼったくりや、交渉によるバラツキは防ぐことができます。それでも遠回りをしたりするなどして料金を多めに取るドライバーは残ってしまいます。ドライバーのインセンティブの仕組みとしては大きな差です。UBERはタクシー会社と比較されることの多い会社ですが、実はタクシーを規制する政府とも比較しても興味深い点があります。「公共性」という理由で政府が介入している産業も、「フリーライダー問題」によって顧客に不満足が生じているなら、人間をHACKしたスタートアップは勝てる可能性が十分にあると言えるでしょう。

もっと書きたいことがあるので、次はジョブを考えます

Written by 津田 真吾 on 2018-04-17

考える戦略と考えない戦略

「もうちょっと考えた方が良いんじゃないか?」
戦略上の失敗には、ちゃんと考えようよ。と誰もが思う場面がある一方で、
「考えすぎじゃない?余計なことを考えずに行動あるのみ」
考えずに動いた方が良いというアドバイスが適切な場面も存在します。
 
なぜかな〜と考えていたところ、実は、これら2つのアドバイスにはパターンがあることを発見したのです。
まず、前者のもっと考えた方がいいケースというのは、新しいことに“取り組もう”としているときや、“変わろう”と思っている時に起きるのです。「新しいことをやらなきゃ」「変わらなきゃ」というときに、あまり考えずに過去の「クセ」で行動してしまう。意識して変えることを忘れてしまったときに「考えようよ」ってなるんです。いつも行っていることは習慣化しているので、「自動操縦」モードで従来のやり方になってしまいます。新しいことにチャレンジしようとしているとき、古い習慣に抵抗するために「考え」が必要になりますね。
 
「考えすぎ」になるのは、もうチャレンジが始まっているにも関わらず、同じモードで「考え」ばかりが先行してしまうときです。動いてみないとわからないことを考えばかりが先行してしまって、余計に動けなくなる症状のことです。この症状は「何事も深く考えないと…」という思い込みがある場合に発症しやすいように見えます。考えた結果、覚悟を決めているにも関わらず、そのまま考えっぱなしというのはもったいない。「やるやる詐欺」に陥る前に動きたいところです。
とにかく一歩踏み込んでから考える習慣は大事かなと。

Written by 津田 真吾 on 2018-02-13

超要約「ジョブ理論」

『ジョブ理論』の反響にお応えし、短時間でジョブ理論とは何かを知りたい方のための記事です。
色んなところにジョブ理論(Jobs-to-be-done)について書いてきて散らばってしまったので、反省も込めてここにまとめます。
ジョブ理論

【ジョブ理論とは?】
ジョブ理論とは、人がどのようなものを買い、どのようなものを買わないのか、を説明する理論です。
いくつかの特徴がありますが、代表的なものを挙げてみましょう。

  • ある特定の状況で人が成し遂げたい進歩を“ジョブ”と呼ぶ
  • 消費とは“ジョブ”を片づけようとして、特定の製品やサービスを“雇う”ことである
  • 人は置かれた状況によって何を“雇う”か左右される
  • “ジョブ”には機能的な側面だけでなく、感情的、社会的側面がある

クリステンセンがイノベーションの研究をしているときに、製品の特性ではなく、顧客の状況顧客が片づけるべきジョブが新しい製品が消費されるかどうかを決定づけていることを発見し、理論化しました。
例えば、「伸びてだらしなくなった髪を整えたい」という進歩をしたい忙しい男性にとっては、サービスがよくて時間もかかる床屋ではなく、QBハウスのようなシンプルで立ち寄りやすい立地の床屋を“雇う”のです。あくまでも本人が、その状況において目指していることに適した解決策であるポイントが重要です。

“片づけるべきジョブ”は Job-to-be-done の訳で、以前は“片付けるべき用事”“片づけなくてはならない用事”とも訳されたことがありますが、最近はJobはジョブ、Job-to-be-doneは片づけるべきジョブで統一されています。


【ジョブとニーズって何が違うの?】

ニーズとジョブの違いは何だろう?・・・・このような疑問を持つ人は少なくありません。一つ問題は、「ニーズ」はあまり明確に定義がされていないことです。


一般的に「ニーズ」とは、「顧客が商品に向ける関心や行為などの現象」という意味で使われていることが多いようです。つまり、人の消費行動が表面化し、商品やサービスに向けられた状態を「ニーズがある」と呼んでいます。


一方で、「ジョブ」はニーズが生まれたり(生まれなかったり)する源泉です。ニーズの対象とある製品がなくても存在しますし、目にすることができます。


人はジョブを解決するために製品を雇う結果を、私たちはニーズがあると呼んでいます。そのため、新商品や新規事業を考える上では必ず顧客の「ジョブ」を捉える必要があります。「ニーズ」を見ていたのでは、結果論になってしまうのです。


【流行ってるの?】

流行ってます!


クリステンセン氏にとって4年ぶりという待望の新刊ということもあって、著書『ジョブ理論』はとても売れています。日本経済新聞でも大きく取り上げられ、ハーバードビジネスレビューが選ぶ2017年のビジネス書にも3位にランキングされています
クリステンセンの知名度だけではありません。「状況」といった定性的な情報を重視する点から、従来のデータ偏重型のマーケティングに一石を投じる形となっており、議論を巻き起こしています。過去のデータを使って未来の商品開発をすることへの閉塞感が背景にあります。
経営書中心だと思われていたクリステンセンがマーケティング(の間違い)に言及している点もあって、広告代理店やマーケティング関連企業も「ジョブ理論」を評価しているようです。



ただ、日本では今流行の手法のように見えますが、実は「ジョブ理論」という書籍が完成する前、『イノベーションへの解』にてクリステンセンは“片づけるべきジョブ”についての理論と方法論を解説しています。海外ではJTBDとも呼ばれ、親しまれている手法ですが、14年近く経った今、ようやく認知されつつあると言ってもいいでしょう。


【クリステンセン教授って誰?】

クリステンセンは『イノベーションのジレンマ』という本を書いたことで一躍有名になりました。『イノベーションのジレンマ』は、優れた企業が「破壊」される現象を分析し、イノベーションとは何か?破壊的技術とはどういうものか?なぜ大企業は成功体験に縛られるのか?を紐解いた伝説の一冊です。この「破壊」(Disrupt)という言葉や理論は、技術に依存しすぎる企業への大きな警鐘となり、世界中の経営者に読まれると同時に、シリコンバレーの起業家たちのバイブルとなりました。


『イノベーションのジレンマ』の要約はこちら


【どうやって使うの?】

ジョブ理論は、従来のマーケティングが重視するデータを重視しません。現在のマーケティングは「性別、年齢、年収、住所、職業」などのデモグラフィックなデータと消費行動を結びつけようとします。ですが、私たちがどのようなモノを買うのかということと、年齢などのデータには因果関係はありません。ジョブ理論を活用するためには、従来のデータ偏重型マーケティングから一歩身を引いて、顧客が置かれている状況や目指している進歩を捉える必要があり、そのメソッドを身に付けるために一定の訓練が必要です。
このメソッドを私たちは「JOBSメソッド」と呼んでいます。


INDEE Japanでは、新規事業のテーマ創出、新商品のコンセプト立案、新しいマーケティング提案やサービスデザイン、スタートアップの立上支援などにJOBSメソッドを活用しています。また、マーケティング調査会社と提携し、ジョブ調査も行なっています。


【もっと知るには?】

著書では、クリステンセン著『ジョブ理論』『イノベーションへの解』がオススメです。
『ジョブ理論』日本語版の解説は私、津田真吾が書かせて頂きました。

(2018年3月21日加筆)『「ジョブ理論」完全理解読本 ビジネスに活かすクリステンセン最新理論』を発刊しました。

WEB記事でしたら、Biz/zineにて連載しています。


各種セミナーやワークショップでしたら、不定期ですがINDEE Japanにて開催していますので、ときどきホームページをチェックしてください。

Written by 津田 真吾 on 2017-12-30