超要約「ジョブ理論」の画像

『ジョブ理論』の反響にお応えし、短時間でジョブ理論とは何かを知りたい方のための記事です。
色んなところにジョブ理論(Jobs-to-be-done 略してJTBD)について書いてきて散らばってしまったので、反省も込めてここにまとめます。
ジョブ理論

【ジョブ理論とは?】
ジョブ理論とは、人がどのようなものを買い、どのようなものを買わないのか、を説明する理論です。
いくつかの特徴がありますが、代表的なものを挙げてみましょう。

  • ある特定の状況で人が成し遂げたい進歩を“ジョブ”と呼ぶ
  • 消費とは“ジョブ”を片づけようとして、特定の製品やサービスを“雇う”ことである
  • 人は置かれた状況によって何を“雇う”か左右される
  • “ジョブ”には機能的な側面だけでなく、感情的、社会的側面がある

クリステンセンがイノベーションの研究をしているときに、製品の特性ではなく、顧客の状況顧客が片づけるべきジョブが新しい製品が消費されるかどうかを決定づけていることを発見し、理論化しました。
例えば、「伸びてだらしなくなった髪を整えたい」という進歩をしたい忙しい男性にとっては、サービスがよくて時間もかかる床屋ではなく、QBハウスのようなシンプルで立ち寄りやすい立地の床屋を“雇う”のです。あくまでも本人が、その状況において目指していることに適した解決策であるポイントが重要です。

“片づけるべきジョブ”は Job-to-be-done の訳で、以前は“片付けるべき用事”“片づけなくてはならない用事”とも訳されたことがありますが、最近はJobはジョブ、Job-to-be-doneは片づけるべきジョブで統一されています。

【ジョブとニーズって何が違うの?】

ニーズとジョブの違いは何だろう?・・・・このような疑問を持つ人は少なくありません。その疑問に関して一つ問題なのは、「ニーズ」はあまり明確に定義がされていないことです。


一般的に「ニーズ」とは、「顧客が商品に向ける関心や行為などの現象」という意味で使われていることが多いようです。つまり、人の消費行動が表面化し、商品やサービスに向けられた状態を「ニーズがある」と呼んでいます。「潜在的ニーズ」という使い方がされるときには「ジョブ」と近い概念かもしれませんが、高い解像度で顧客を理解する上ではジョブという考え方は重要です。


一方で、「ジョブ」はニーズが生まれたり(生まれなかったり)する源泉です。ニーズの対象とある製品がなくても存在しますし、目にすることができます。


人はジョブを解決するために製品を雇う結果を、私たちはニーズがあると呼んでいます。そのため、新商品や新規事業を考える上では必ず顧客の「ジョブ」を捉える必要があります。「ニーズ」を見ていたのでは、結果論になってしまうのです。ニーズとジョブの関係は、「落下」と「重力」の関係に似ているのです。

【ジョブとインサイトって何が違うの?】

インサイトというのは、「顧客に対する深い洞察」を指します。簡単には手に入らない情報のことです。把握しにくいという点では、ジョブもインサイト大事な顧客情報という点で同じですが、解像度が違う概念といえるでしょう。


【流行ってるの?】

流行ってます!


クリステンセン氏にとって4年ぶりという待望の新刊ということもあって、著書『ジョブ理論』はとても売れています。日本経済新聞でも大きく取り上げられ、ハーバードビジネスレビューが選ぶ2017年のビジネス書にも3位にランキングされました
クリステンセンの知名度だけではありません。「状況」といった定性的な情報を重視する点から、従来のデータ偏重型のマーケティングに一石を投じる形となっており、議論を巻き起こしています。過去のデータを使って未来の商品開発をすることへの閉塞感が背景にあります。
経営書中心だと思われていたクリステンセンがマーケティング(の間違い)に言及している点もあって、広告代理店やマーケティング関連企業も「ジョブ理論」を評価しているようです。



ただ、日本では今流行の手法のように見えますが、実は「ジョブ理論」という書籍が完成する前、『イノベーションへの解』にてクリステンセンは“片づけるべきジョブ”についての理論と方法論を解説しています。海外ではJTBDとも呼ばれ、親しまれている手法ですが、14年近く経った今、ようやく認知されつつあると言ってもいいでしょう。

【クリステンセン教授って誰?】

クリステンセンは『イノベーションのジレンマ』という本を書いたことで一躍有名になりました。『イノベーションのジレンマ』は、優れた企業が「破壊」される現象を分析し、イノベーションとは何か?破壊的技術とはどういうものか?なぜ大企業は成功体験に縛られるのか?を紐解いた伝説の一冊です。この「破壊」(Disrupt)という言葉や理論は、技術に依存しすぎる企業への大きな警鐘となり、世界中の経営者に読まれると同時に、シリコンバレーの起業家たちのバイブルとなりました。(2021年11月11日加筆)2020年1月23日に惜しまれて亡くなりましたが、多くの起業家や経営者にその精神は残っていると言えるでしょう。


『イノベーションのジレンマ』の要約はこちら

【どうやって使うの?】

ジョブ理論は、従来のマーケティングが重視するデータを重視しません。現在のマーケティングは「性別、年齢、年収、住所、職業」などのデモグラフィックなデータと消費行動を結びつけようとします。ですが、私たちがどのようなモノを買うのかということと、年齢などのデータには因果関係はありません。ジョブ理論を活用するためには、従来のデータ偏重型マーケティングから一歩身を引いて、顧客が置かれている状況や目指している進歩を捉える必要があり、そのメソッドを身に付けるために一定の訓練が必要です。
このメソッドを私たちは「JOBSメソッド」と呼んでいます。


INDEE Japanでは、新規事業のテーマ創出、新商品のコンセプト立案、新しいマーケティング提案やサービスデザイン、スタートアップの立上支援などにJOBSメソッドを活用しています。また、マーケティング調査会社と提携し、ジョブ調査も行なっています。

【もっと知るには?】

著書では、クリステンセン著『ジョブ理論』『イノベーションへの解』がオススメです。
『ジョブ理論』日本語版の解説は私、津田真吾が書かせて頂きました。

(2018年3月21日加筆)『「ジョブ理論」完全理解読本 ビジネスに活かすクリステンセン最新理論』を発刊しました。

WEB記事でしたら、Biz/zineにて連載しています。


各種セミナーやワークショップでしたら、不定期ですがINDEE Japanにて開催していますので、ときどきホームページをチェックしてください。


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